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第七章『過去の幻影の大戦』
神聖神殿隊副長ローレスの指示で行われる真の幻影判定
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アースラフテスは顔を、上げた。
皆が見守る中、微笑んで見せる。
一斉に融合から無事戻る長にほっとし、癒し手は融合したゼイブンの容態が、安定してると確認し、長が入り広げたゼイブンの心の亀裂を閉じ始めた。
サーチボルテスの視線を感じ、アッカマンも頷いて見せる。
神聖神殿隊副長、ローレスが吐息を吐いて腕組んだまま、自らの長を伺い見る。
「ここでずっと、彼らに張り付いてる気ですか?」
「不満か?」
アースラフテスに尋ねられ、明るい金髪のグレーの瞳の、その細面の副長は呟く。
「長の貴方には別に配慮すべき事がある」
アースラフテスは、どんな時でも冷静極まりない優秀な副長に告げた。
「今は非常時だ。
それはそう気づいたものの仕事だ」
ローレスはそう言って仕事をあからさまに押しつける、長を苦々しく見た。
背を向けるローレスは心話で怒鳴ってた。
『幻術使いは私の元へ飛んで来い!』
が、結界の周囲を調べていたダンザインが気づいてローレスに話しかける。
『今起こってる幻術を、判定者達に見せる気か?』
ローレスは囁く。
『ワーキュラス殿が入られ回路が出来た今、すり替えられて中に居る、候補者達の様子は解る。
真の判定を下すには、見て頂くのが一番早い。
そうすれば夢の傀儡靴王から皆を取り戻せた後直ぐ、ギュンター殿を中央護衛連隊長として容認し、手続きに移れるでしょう?』
ダンザインはそのローレスの楽観主義に絶句した。
アースラフテスはその様子を、感じ取って囁く。
『一連の最高指揮官ダンザイン殿は、ヘタをすれば判定者達に、取り込まれた者達の最後を見せる事に成るかもと、危惧していらっしゃる』
ローレスは素っ気なく言った。
『光竜神ワーキュラス殿が我々の側に居て、それは有り得ない』
無言のダンザインに、アースラフテスでさえかける言葉が見つからなかった。
ローレスは長の様子に、言葉を足す。
『ご心配には及びません。
幻術使いは、ギュンター殿とグーデン殿の思念しか手繰れない。
他は見せたくても、見せられるだけの能力は我々の幻術使いには無い』
その、幻影判定の行われる筈だった部屋には大勢の『光の民』達が、横たわるギュンターとグーデンとを取り囲み、その身に光の力を送りながら様子を伺っており、周囲の椅子には判定員達が、飲み物と食べ物を振る舞われ、休んでいた。
が、エルベスは現れた副長に詰め寄る。
「どうなっている?!」
ローレスはギュンターとグーデンを導いた幻術使いを呼び寄せ、空間から次々に飛来する他の幻術使い達を集めると、心話で告げる。
『邪魔の無い今は肉体を伝い精神迄手繰れる筈だ。
その場の幻影を、判定者達に見せられるか?』
二人の幻術使いは再び、グーデンとギュンターの精神を手繰る。
今度は邪魔な障壁無しに、遠い空間へと吸い込まれている二人の存在を、微かに感じた。
『…けど、とても遠い』
一人の言葉に、もう一人も頷く。
ローレスは他の幻術使いに、二人を手助けするよう頷く。
エルベスは振り返るローレスが、椅子に掛けろ。と言った気がし、いつの間にかその大きく居心地良い椅子に、腰を下ろす自分を意識した。
白い靄が頭の中を覆い尽くし…エルベスは自分がまるで、酒に酔って眠りに着こうとしているかのように感じる。
暫くし、霞んだ…青が頭上に見える。
それが空だと気づき、次に…微かに黄金の髪を振り戦う、男の姿がぼんやりと伺い見え…そしてやがて鮮明に、ギュンターが髪を振り豪快に剣を振り戦う姿が、浮かび上がり始めた。
戦場だ。
周囲に同様、戦う男達が、居るようだったが、まるで望遠鏡でギュンターの姿をだけを捕らえているかのように…彼だけは見えてその周囲は、歪んで鮮明では無い。
一方、次に浮かび上がるグーデンの姿は、だらしないものだった。
寝台の上に、酒と食べ物。
周囲に侍るのは豊満な女性だけで無く、裸の少年迄居た。
激しく戦うギュンターとは対照的に、グーデンは侍る者達の身に悪戯に触れながら酒を煽り、美しく盛られた料理を指で摘み自分の口へと、運んでいた。
「…どこに居るんだ…?
誘拐されたと言ったが…我々が大騒ぎしてるさ中、甥はずっとこんな……………」
驚き呆れるゲロスの声に、エルベスはその場に自分だけで無くダーフスを始め…判定者達が皆、夢現のその様子に、見入ってると気づく。
が解説は聞こえて来ない。
グーデンは道化に芸をさせて、侍(はべ)る者達と声を上げて笑い、音楽を奏でる奏者にもっと、明るい曲を鳴らせと命じていた。
グーデンを推す、ゲロスでさえつい、見捨てたく成る程の体たらくに、エルベスもダーフスも吐息しか出ない。
が、ギュンターは激しく戦っていた。
一瞬で身を屈め、襲いかかり一撃で敵を斬り殺す様は、野生の豹を彷彿とさせる。
その美貌は誰よりも勇敢で頼もしく皆の瞳に映り、エルベスもダーフスもようやく本来の彼の様子に、心から安堵した。
ガスパスの自室で、ディスバロッサが呻く。
「…まずいな…」
メーダフォーテが、ディスバロッサから送り込まれる頭の中の映像に眉間を寄せる。
続々と…まだ続々と列を成し、アーマラスの兵達は戦場に馬で駆け込み、解き放たれて行く。
まだこれ位の数なら…まだ………。
しかし映像は間違いなく、アーマラスの騎兵の数が上回ってる。と知らせた。
メーダフォーテは呻く。
「ムストレス殿に…『闇の帝王』をもう十分に操れるかと、聞いてくれ」
ディスバロッサは直ぐ顔を、上げた。
ムストレス…『闇の帝王』は配下の主立った者達の中に居た。
異形の…禍々しさを隠そうともしない『影』の大物達の間で…ムストレスは自分が善良な…自分のような大勢を冷血で処刑して来た男でさえ善良だと思える程、忌まわしく残忍な、『影』の大物達に気圧されていた。
「あの様子ではまだ、無理だろう…。
どうする?
ぼやぼやしてると全滅する」
落ち着き払った子供の風体のディスバロッサに言われ、メーダフォーテは無言で要請した。
ディスバロッサは直ぐ要請に応え、主要人物達の映像を、メーダフォーテの頭の中へと送る。
オーガスタスが見える。
その赤毛の長身。
援軍が無くともたった一騎で敵を圧倒する、余裕の剣捌き。
長い手足を存分に使い、剣を自在に振り回し上から横から、時には下から振り入れながら、もうあっと言う間に五人を斬った。
横に入り込む敵を蹴り倒し直ぐ背後から剣を振る男にもう、刃を浴びせてる。
その豪快な剣は、近くで見ると身震いを覚える程の、圧倒的強さ。
更に当の本人は遊技をこなすように、微笑をその顔から絶やさない。
ざっ!
ディングレーが長い黒髪を散らし激しく剣を振る。
敵の骨を抉り、引き様突き出す。
敵は胸を深々と射貫かれ、ディングレーが剣を引くと同時に背後に仰け反る。
その、激しく男らしい戦い様はまさしく「左の王家」一族の男の戦い様。
ギュンターは黄金の髪を振り一瞬で敵の懐に頭を下げて突っ込むと、剣を真横に薙ぎ払う。
ざっっっっ!
敵は腹を深く抉られ、血を吹き出して仰け反った。
直ぐ背後からの剣を振り向きもせず避け、一瞬で身を返して斬り返す。
剣を振り切った所を斬られ…男は目を見開き血を、肩から胸にかけて一気に吹き出した。
ざっ!
真一文字に銀の閃光が走る。
次々に喉に刺さり瞬時に四人が、喉に深々と銀に光る短剣を突き刺したまま、後ろに倒れ行く。
…シェイル!
メーダフォーテはその美しく可憐な美青年を、睨め付ける。
ディアヴォロスが到着する前に…何としてもシェイルを捕らえたかった。
「ここからアーマラスの兵の心を、操れるか…?
奴らをこちらに取り込めば…ギュンター、ディングレー、オーガスタスを殺れる。
シェイルを捕らえるのは簡単だ」
が、ディスバロッサはメーダフォーテの問いにすげなく言った。
「…無茶言うな。
幾ら力が強いとは言え、『闇の第二』はまだ餓鬼だ。
あんな大勢を一気に、操れる訳が無い。
もう少し近い距離で…隊長クラスの男の二人程度なら心を、乗っ取れるが。
…だが「金髪の一族」は隊長の言葉より長の言葉を聞く。
心を乗っ取って味方を攻撃せよ!
なんて命を出したら、命を出す隊長が兵に斬り殺されるのがオチだ」
メーダフォーテは唇を噛んだ。
「つまり、撤退しか無いと?」
ディスバロッサは静かに言った。
「余力を、残したいなら直ちに」
メーダフォーテはそっ…と言った。
「ムストレス殿はまだ、『影の民』の配下を使えないらしいが…貴方はどうだ?
『闇の第二』として、配下の男達の心を乗っ取り、自在に操れるか?」
ディスバロッサはその時ようやくその事に思い当たり、無邪気に見える程にっこり。と微笑った。
『闇の第二』は子供ながら元『光の民』。
それは美しい面立ちをしていたが、中に入っているのは同様「左の王家」でも美貌を誇るディスバロッサ。
残酷さを漂わせた無邪気な微笑に、メーダフォーテは心がぞっ…と冷たく震え上がりながらもその美しさに見とれた。
「一人、程度なら操れる。
大物だし、今の戦況を多分、ひっくり返せるだろうな」
メーダフォーテはその提案に、ゆっくり、頷いた。
皆が見守る中、微笑んで見せる。
一斉に融合から無事戻る長にほっとし、癒し手は融合したゼイブンの容態が、安定してると確認し、長が入り広げたゼイブンの心の亀裂を閉じ始めた。
サーチボルテスの視線を感じ、アッカマンも頷いて見せる。
神聖神殿隊副長、ローレスが吐息を吐いて腕組んだまま、自らの長を伺い見る。
「ここでずっと、彼らに張り付いてる気ですか?」
「不満か?」
アースラフテスに尋ねられ、明るい金髪のグレーの瞳の、その細面の副長は呟く。
「長の貴方には別に配慮すべき事がある」
アースラフテスは、どんな時でも冷静極まりない優秀な副長に告げた。
「今は非常時だ。
それはそう気づいたものの仕事だ」
ローレスはそう言って仕事をあからさまに押しつける、長を苦々しく見た。
背を向けるローレスは心話で怒鳴ってた。
『幻術使いは私の元へ飛んで来い!』
が、結界の周囲を調べていたダンザインが気づいてローレスに話しかける。
『今起こってる幻術を、判定者達に見せる気か?』
ローレスは囁く。
『ワーキュラス殿が入られ回路が出来た今、すり替えられて中に居る、候補者達の様子は解る。
真の判定を下すには、見て頂くのが一番早い。
そうすれば夢の傀儡靴王から皆を取り戻せた後直ぐ、ギュンター殿を中央護衛連隊長として容認し、手続きに移れるでしょう?』
ダンザインはそのローレスの楽観主義に絶句した。
アースラフテスはその様子を、感じ取って囁く。
『一連の最高指揮官ダンザイン殿は、ヘタをすれば判定者達に、取り込まれた者達の最後を見せる事に成るかもと、危惧していらっしゃる』
ローレスは素っ気なく言った。
『光竜神ワーキュラス殿が我々の側に居て、それは有り得ない』
無言のダンザインに、アースラフテスでさえかける言葉が見つからなかった。
ローレスは長の様子に、言葉を足す。
『ご心配には及びません。
幻術使いは、ギュンター殿とグーデン殿の思念しか手繰れない。
他は見せたくても、見せられるだけの能力は我々の幻術使いには無い』
その、幻影判定の行われる筈だった部屋には大勢の『光の民』達が、横たわるギュンターとグーデンとを取り囲み、その身に光の力を送りながら様子を伺っており、周囲の椅子には判定員達が、飲み物と食べ物を振る舞われ、休んでいた。
が、エルベスは現れた副長に詰め寄る。
「どうなっている?!」
ローレスはギュンターとグーデンを導いた幻術使いを呼び寄せ、空間から次々に飛来する他の幻術使い達を集めると、心話で告げる。
『邪魔の無い今は肉体を伝い精神迄手繰れる筈だ。
その場の幻影を、判定者達に見せられるか?』
二人の幻術使いは再び、グーデンとギュンターの精神を手繰る。
今度は邪魔な障壁無しに、遠い空間へと吸い込まれている二人の存在を、微かに感じた。
『…けど、とても遠い』
一人の言葉に、もう一人も頷く。
ローレスは他の幻術使いに、二人を手助けするよう頷く。
エルベスは振り返るローレスが、椅子に掛けろ。と言った気がし、いつの間にかその大きく居心地良い椅子に、腰を下ろす自分を意識した。
白い靄が頭の中を覆い尽くし…エルベスは自分がまるで、酒に酔って眠りに着こうとしているかのように感じる。
暫くし、霞んだ…青が頭上に見える。
それが空だと気づき、次に…微かに黄金の髪を振り戦う、男の姿がぼんやりと伺い見え…そしてやがて鮮明に、ギュンターが髪を振り豪快に剣を振り戦う姿が、浮かび上がり始めた。
戦場だ。
周囲に同様、戦う男達が、居るようだったが、まるで望遠鏡でギュンターの姿をだけを捕らえているかのように…彼だけは見えてその周囲は、歪んで鮮明では無い。
一方、次に浮かび上がるグーデンの姿は、だらしないものだった。
寝台の上に、酒と食べ物。
周囲に侍るのは豊満な女性だけで無く、裸の少年迄居た。
激しく戦うギュンターとは対照的に、グーデンは侍る者達の身に悪戯に触れながら酒を煽り、美しく盛られた料理を指で摘み自分の口へと、運んでいた。
「…どこに居るんだ…?
誘拐されたと言ったが…我々が大騒ぎしてるさ中、甥はずっとこんな……………」
驚き呆れるゲロスの声に、エルベスはその場に自分だけで無くダーフスを始め…判定者達が皆、夢現のその様子に、見入ってると気づく。
が解説は聞こえて来ない。
グーデンは道化に芸をさせて、侍(はべ)る者達と声を上げて笑い、音楽を奏でる奏者にもっと、明るい曲を鳴らせと命じていた。
グーデンを推す、ゲロスでさえつい、見捨てたく成る程の体たらくに、エルベスもダーフスも吐息しか出ない。
が、ギュンターは激しく戦っていた。
一瞬で身を屈め、襲いかかり一撃で敵を斬り殺す様は、野生の豹を彷彿とさせる。
その美貌は誰よりも勇敢で頼もしく皆の瞳に映り、エルベスもダーフスもようやく本来の彼の様子に、心から安堵した。
ガスパスの自室で、ディスバロッサが呻く。
「…まずいな…」
メーダフォーテが、ディスバロッサから送り込まれる頭の中の映像に眉間を寄せる。
続々と…まだ続々と列を成し、アーマラスの兵達は戦場に馬で駆け込み、解き放たれて行く。
まだこれ位の数なら…まだ………。
しかし映像は間違いなく、アーマラスの騎兵の数が上回ってる。と知らせた。
メーダフォーテは呻く。
「ムストレス殿に…『闇の帝王』をもう十分に操れるかと、聞いてくれ」
ディスバロッサは直ぐ顔を、上げた。
ムストレス…『闇の帝王』は配下の主立った者達の中に居た。
異形の…禍々しさを隠そうともしない『影』の大物達の間で…ムストレスは自分が善良な…自分のような大勢を冷血で処刑して来た男でさえ善良だと思える程、忌まわしく残忍な、『影』の大物達に気圧されていた。
「あの様子ではまだ、無理だろう…。
どうする?
ぼやぼやしてると全滅する」
落ち着き払った子供の風体のディスバロッサに言われ、メーダフォーテは無言で要請した。
ディスバロッサは直ぐ要請に応え、主要人物達の映像を、メーダフォーテの頭の中へと送る。
オーガスタスが見える。
その赤毛の長身。
援軍が無くともたった一騎で敵を圧倒する、余裕の剣捌き。
長い手足を存分に使い、剣を自在に振り回し上から横から、時には下から振り入れながら、もうあっと言う間に五人を斬った。
横に入り込む敵を蹴り倒し直ぐ背後から剣を振る男にもう、刃を浴びせてる。
その豪快な剣は、近くで見ると身震いを覚える程の、圧倒的強さ。
更に当の本人は遊技をこなすように、微笑をその顔から絶やさない。
ざっ!
ディングレーが長い黒髪を散らし激しく剣を振る。
敵の骨を抉り、引き様突き出す。
敵は胸を深々と射貫かれ、ディングレーが剣を引くと同時に背後に仰け反る。
その、激しく男らしい戦い様はまさしく「左の王家」一族の男の戦い様。
ギュンターは黄金の髪を振り一瞬で敵の懐に頭を下げて突っ込むと、剣を真横に薙ぎ払う。
ざっっっっ!
敵は腹を深く抉られ、血を吹き出して仰け反った。
直ぐ背後からの剣を振り向きもせず避け、一瞬で身を返して斬り返す。
剣を振り切った所を斬られ…男は目を見開き血を、肩から胸にかけて一気に吹き出した。
ざっ!
真一文字に銀の閃光が走る。
次々に喉に刺さり瞬時に四人が、喉に深々と銀に光る短剣を突き刺したまま、後ろに倒れ行く。
…シェイル!
メーダフォーテはその美しく可憐な美青年を、睨め付ける。
ディアヴォロスが到着する前に…何としてもシェイルを捕らえたかった。
「ここからアーマラスの兵の心を、操れるか…?
奴らをこちらに取り込めば…ギュンター、ディングレー、オーガスタスを殺れる。
シェイルを捕らえるのは簡単だ」
が、ディスバロッサはメーダフォーテの問いにすげなく言った。
「…無茶言うな。
幾ら力が強いとは言え、『闇の第二』はまだ餓鬼だ。
あんな大勢を一気に、操れる訳が無い。
もう少し近い距離で…隊長クラスの男の二人程度なら心を、乗っ取れるが。
…だが「金髪の一族」は隊長の言葉より長の言葉を聞く。
心を乗っ取って味方を攻撃せよ!
なんて命を出したら、命を出す隊長が兵に斬り殺されるのがオチだ」
メーダフォーテは唇を噛んだ。
「つまり、撤退しか無いと?」
ディスバロッサは静かに言った。
「余力を、残したいなら直ちに」
メーダフォーテはそっ…と言った。
「ムストレス殿はまだ、『影の民』の配下を使えないらしいが…貴方はどうだ?
『闇の第二』として、配下の男達の心を乗っ取り、自在に操れるか?」
ディスバロッサはその時ようやくその事に思い当たり、無邪気に見える程にっこり。と微笑った。
『闇の第二』は子供ながら元『光の民』。
それは美しい面立ちをしていたが、中に入っているのは同様「左の王家」でも美貌を誇るディスバロッサ。
残酷さを漂わせた無邪気な微笑に、メーダフォーテは心がぞっ…と冷たく震え上がりながらもその美しさに見とれた。
「一人、程度なら操れる。
大物だし、今の戦況を多分、ひっくり返せるだろうな」
メーダフォーテはその提案に、ゆっくり、頷いた。
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