アースルーリンドの騎士 幼い頃

あーす。

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第六章『光の里での休養』

『光の民』と『影の民』の歴史とレイファスの決意

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 レイファスは夢の中で、家庭教師の教えてくれた『光の国』の話を思い浮かべてた。

大昔…『光の国』(アシュランド・リンデーネス)に、人間はいなかった。
けれど迷い込んだアースルーリンドの人達が、帰れなくなってそこで暮らすしか、なくなった。

『光の国』は岩ばかりの平地や崖だらけで、水が流れる場所ですら、岩場だった。
獣だらけのアースルーリンドと違い、獣がいない代わりに、食べられる植物は少なく…。

皆、僅かな食料で何とか生き延び、やがて村が出来、その村も、増え始めた。
それでも圧倒的に自然が世界の殆どを占めていた。

必死に僅かな植物を育てるけど。
強い風や乾燥した気候に、どの植物も貧弱で…。

皆、ボロをまとい、生きるのに必死だった。

ある日、村で生まれた青年が。
青空を駆けていく、黄金の竜を見上げた。

金に輝く、神々しい竜。

『ああ、あんな風に…食べるものの心配をせず、悠々と生きていられたら…』

その青年はある時、黄金の竜が空から舞い降り、鱗を一つ、落としていくのを見た。
青年は大事そうに鱗を手に取り…輝く光を帯びているのを見て、神棚を作って奉ろう。
そう、思った。

鱗を手に入れた青年の村は、その時から植物が枯れることなく大きな実を付けるようになり…。

けれど誰もが、それを竜の鱗のお陰だとは、知らなかった。

ある時、隣村の子供が、竜の鱗を盗んだ。

青年の村の植物たちは…たちまち以前のように、強風で弱り…貧弱な実しかつけず…。
そして盗んでいった隣の村では、作物が良く育つようになった。

それ以来…竜の鱗。
は豊作をもたらす。
と噂が広まり、多くの人間達が、竜に鱗を乞うた。

竜は気づくと、鱗を落としていく。

やがて鱗のある村は、食べ物に恵まれ…更に怪我をしても病気になっても、鱗の側では、直ぐ癒える事に人々は気づく。

そして何世代か経った頃…。
人は村から離れても、竜の鱗と繋がり、光と共にあるようになり…。

そんな者は、鱗のない貧しい村へと出向き、光を届けた。

やがてアースルーリンドの民だった人達は『光の民』となった…。

人の住む場所は光で満ち始め、中央の、光と共にある人達集う場所は、濃い光で満たされた。
それでも辺境は、まだまた光の薄い場所もあり、貧しい人達もいた。

濃い光の中、人々は能力に目覚め、次々と多様な能力を身につけた人達が生まれ…能力があるのが、当たり前の世代が出来た。
けれど優れた能力者に、慢心する者が現れ…。
人々を、自分に従わせようとし始めた。
強引に。

そして諍いが起きた。

支配しようとする者達は戦いに破れ、始めは牢獄へ。
けれど彼らは直ぐ逃げ出してしまう。

ある者が…空間の繋がった、かつての故郷アースルーリンドでは…。
しばらくは能力が使えるが、光を使い果たすと、能力を失うことを知った。

そして支配しようとし、敗者となった罪人達は、『光の国』アシュランド・リンデーネスを追われ…アースルーリンドに、落とされた…。

そこでの彼らは能力を失い、惨めな生活を送ることとなった。

彼らはアースルーリンドの人達になじめず、岩山にひっそりと、みすぼらしく暮らしていた。
けれど一人の賢者が。
能力の源を、光ではなく、人を苦しめる事で得る方法を見いだした。

…彼らは再び、能力を得た。
アースルーリンドの人々に、苦痛と恐怖を与えて。

『光の民』達は…自分たちが罪人をアースルーリンドに落としたことで、人々が苦しんでいることに気づくと。
アースルーリンドに降り立って、『影の民』となった、罪人達と戦った。

けれど『光の民』らは、アースルーリンドでは光を使い果たすと、能力を無くす。
それで人間と組んで、小さな光の結界を作り出し、もしくは能力を無くしかけると『光の国』に戻り…。
幾度目かの戦いで、とうとう『影の民』を、別次元に封印した…。

二度と封印が開かれないよう、アースルーリンド各地に封印を張り、神聖神殿に大元の大封印が置かれ。
封印を守護する為に、『光の王』がアースルーリンドに降臨することとなって、アースルーリンドの民を護った。

けれど飢えた『影の民』は、封印を揺さぶり、隙を作って、“障気”を飛ばし、人を苦しめて食事とする…。
以来、『光の王』とその護衛達は、子を作ってアースルーリンドの西の聖地と東の聖地に結界を張り、住みついて、『影の民』の“障気”から、人々を護ってる…。

近衛連隊は、侵略する他国や盗賊…人間と戦うけど。
神聖神殿隊付き連隊は…“障気”を見つけ、応急処置をし、神聖騎士や神聖神殿隊騎士を召還し、戦いを要請する…。

レイファスは他人事の様に、その講義を聞いていた事を思い出す。
『影の民』なんて、存在してる事すら、知らなかった。

だから体力自慢の近衛連隊も、他人事の様に思えたし、当然神聖神殿隊付き連隊騎士、なんて、あり得ない。
そう…思ってた。

せいぜい、中央護衛連隊か…宮廷警護、宮中護衛連隊…。
王都で騎士するだろうと…。

けれど…『光の民』を思い浮かべると、どうしてだか『影の民』の恐怖より、彼らが大好きで、彼らと共に戦いたい。
そう自然に思ってる自分を見つける。

幻の、ウェラハスが微笑んでる気がした。

そしてローフィスやゼイブンのように、自在に馬を操る自分も、思い浮かべた。

『テテュスはきっと、近衛に進む。
ファントレイユは…どうなんだろう?
華やかだから…宮廷警護が、向いてるのかも。
でも僕は…』

きっと、神聖神殿隊付き連隊騎士になる…。

それを思い浮かべると、レイファスは眠りながら、微笑んだ。

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