アースルーリンドの騎士 幼い頃

あーす。

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第六章『光の里での休養』

目覚めるローフィスに、駆け寄る一同

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 シェイルが身を、ふと起こす。
寝ていた筈だが、どういう訳かすっ。と一気に眠気が覚める。

外は夜明けで陽が差し、どんどんと空が、明るく成って行く。
窓の外のその光景を見つめていたらどうしても我慢出来なくなって、シェイルは寝台を抜け出した。

…廊下を、まるで探すように彷徨う。

夢で…会った途端ローフィスに抱きついた。
言葉も…出なかった。
夢中でしがみついて涙が止まらず…口から出たのは、恨み言だった。

「…置いて…逝く気だったのか……?
ひどいじゃないか……。
私より先に死ぬだなんて絶対…許さない………」

あんまり泣いてきつくしがみつくから、ローフィスは困ってた。
吐息混じりに呻き声がする。

「性がないだろう?
フォルデモルドは…オーガスタスとやれないから、俺に当たり散らしてた。
いつもの奴なら隙だらけだが…怒り狂って俺に剣をぶん回す。
あれは俺も、計算外だった。
奴(フォルデモルド)にとっちゃ…待ち焦がれたたった一回の機会だったんだろう…。
オーガスタスはいつも奴を相手に、しやしなかったから…。
思い切りオーガスタスに剣を振れる。
そう思って相手が俺じゃ、火に油を注いだみたいに怒りに燃えがって、手の付け用が無かった」

シェイルの…大きなエメラルド色の瞳から真珠のような涙が次々に滴り落ち、その手がそっ…とローフィスの頬に置かれ、思わずローフィスは顔を、傾ける。

泣いているシェイルの唇にそっ…と口付けたがそれは…涙の味が、した。
「もう…泣くな……」

ローフィスの、参ったような声音に…それでも気なんか、収まらない。
「…だってまだあんたは目覚めない…。
あの時(※『赤い獅子と淑女』ローフィスの証言、の時の事)だって………ぐったりと真っ青なあんたを見続けてる間、どんな気持ちだったのか…解ったりしないだろう………?
自分が死ぬのは構わない…。
けどあんたが死ぬのをこの目で見る事だけは…絶対に嫌だ!」

ローフィスの…吐息がまた漏れる。
「それは究極の我が儘だシェイル。
俺に絶対お前より後に死ねって?」
「そうじゃなきゃ、許さない!
絶対に許さない!
俺は…あんたに看取られて死にたい!
あんたに手を握られて……!
そしたら“死”だって、怖く無い!」

ローフィスがまた…吐息を吐きそして…唇に口付けた。
それが…暖かくってどれだけ…嬉しかったかしれない。

ローフィスは…きっと泣き止ませたくて口付けたのに結果…もっと俺を泣かせる事に成り、弱り切っていた……。

必死で…夢で無い実物のローフィスを探していると、一人の“里”の男が姿を現す。
もう一人が後ろから姿を見せ、呻いた。

「やれやれ…。悲鳴のような心の叫びだ。
お客人。
人間界はじゃそれは誰も聞こえないだろうが、ここでは違う」

初めに顔を出した、端正で冷静な人物がささやく。
「我々にとってそれは、万人をも揺り起こす激しい悲鳴だ。
ローフィスはまだ、深い眠りに付いている。
眠りが深ければ深い程、回復は早い…。
それで良ければ、添い寝してやるか?」

シェイルはその案内人に頷いた。
背後から来た、ぶっきら棒な物言いの、奔放にくねる髪の男にハンケチを差し出されてようやく…シェイルは自分が、泣いている事に気づいた。

その、金の光に包まれた寝台でローフィスが、仰向けて目を閉じる姿を見た途端、シェイルは駆け寄った。
声も無くローフィスを掻き抱くと、その顔を覗き込み、ポロポロと涙を滴らせる。

涙はぽつり…ぽつり…とローフィスの頬に落ち、そして頬を伝い落ちて行った。
ふっ…。
と体が暖かくなり、見ると端正な顔の男の手から金の光が自分に向け、放たれていた。

胸が…金に透けて光っていた。
途端…シェイルはローフィスに抱きついたまま、崩れ落ちるように目を、閉じた。

二人の“里”の男は、やれやれ…と、その様子を見る。
「…ローフィスが目を開けたら…また恨まれるぜ?」

サーチボルデスはそう言うアッカマンを見た。
その端正で冷静な男は、げんなりして呻く。
「ゼイブンにも、言われそうなのに?」

奔放にくねる髪の男は、やはりげんなりして俯き、頷いた。



ファントレイユが人の動く気配に目を、開ける。
ゼイブンは隣に居ず、皆がとっくに寝台から身を起こし、身支度してるようだった。

ゼイブンが足元に居るのを見つけ、目を擦りながら呻く。
「もう…出発?」
「寝ぼけてるな…。
ローフィスの、目が醒めた」

ファントレイユは一気に跳ね起きる。
そして、布団を取り払って寝台を、抜け出した。

廊下に出ると、陽の光差し込む大きな窓が、白い壁と柱に陰影を作り、その先をレイファスと…テテュスが走ってた。

その先にはギュンターとディンダーデンの大きく逞しい背が、やはり前を走るディングレーの背を追っていた。

レイファスは振り向くと、ファントレイユに叫ぶ。
「シェイルが、居ない!」

背後からゼイブンとローランデがやって来て、ゼイブンが怒鳴った。
「ローフィスの横にいるだろう!きっと!」

ファントレイユも必死に走ったが、遅れそうで足がもつれ、ローランデに腕を掴まれて助けられた。
ゼイブンがチラ…とローランデを見る。
ローランデは怒りを含む鋭い青の瞳を真っ直ぐゼイブンに投げ、言った。
「転んでからじゃ、遅いだろう?」

ゼイブンは仕方成しにもう片腕を掴む。
両側から両腕を取られ、宙に足が、浮いたようにファントレイユは駆ける。
テテュスとレイファスと並び、レイファスに怒鳴られた。

「ずるい!ファントレイユ!」

ギュンターは前を走り行く、ディングレーの背を見つめる。
自分が本気で駆けて、誰かに後れを取る事は滅多に無いばかりか、相手はディングレーだ。
奴が本気でこれ程早く駆ける様を、初めて見た。

横のディンダーデンも、同感のようだった。
歯を、喰い縛ってる。

目印のように金に光ってるその扉に、ディングレーは速度を少しも緩めず肩をぶつけ開け、中へ飛び込む。
ギュンターとディンダーデンは扉の前で歩を止め、息を切らして肩を大きく上下させ、休む。
ディンダーデンが、息切れ混じりにぼやいた。
「あれの、どこが上品な王族の血を受け継ぐ大貴族だ?」

ギュンターは切れた息を整えながら、肩を竦めて扉に手を、掛ける。
「あいつは否定してるが、ローフィスが大好きなんだ」

ディンダーデンは切れた息を途端忘れ、吹き出す。
「…まさか、ゼイブンだけで無くローフィス迄も、あいつ(ディングレー)押し倒してないよな?」

ギュンターは暫く扉に手を掛けたまま、固まって俯く。
ディンダーデンはその様子に、声を掛ける。

「寄らなきゃ良かった。
と思ってるか?昨夜。もしかして」

ギュンターは隣の悪友のふざけた笑顔を睨み付け、唸る。
「夢の中で見た、あいつ(ディングレー)の下敷きに成ったゼイブンを思わず…ローフィスに置き換えちまったじゃないか!」

ディンダーデンはその青の流し目を、焦る悪友に投げ、笑いながら肩を竦める。
「知るか!
自分の想像力を恨め!」

がふと見ると、テテュスとレイファスがあどけない顔で自分達を見上げていて、ファントレイユを真ん中に抱えたゼイブンとローランデにきつい瞳で見られ、ディンダーデンは首を竦め、ギュンターは憮然。と手に掛けてた扉を押し開けた。

戸を開けるとディングレーの背の向こう、奥の寝台にローフィスは枕を背に、半身起こしていた。
その横奥に、ローフィスの腰に腕をすがりつくように回す、シェイルの寝姿。

だが、その寝顔は安らかだった。

「ヨォ…」
ローフィスの声が掠れていて、ファントレイユの瞳が一気に涙ぐむ。

テテュスが、立ち尽くすディングレーの背を追い抜いてローフィスに駆け寄り、寝台に駆け上がってその首にしがみつく。

ローフィスは途端、笑った。
「凄い歓迎だな?」

が、テテュスが胸に顔を埋めたままで、ローフィスは真横に立つディングレーに視線を向ける。
「…アイリスはまだ、目覚めないのか?」

ディングレーは無言で頷く。
ローフィスはテテュスの背を抱くとささやく。

「覚えとけ…。
いざと成れば“里”を頼る事を…。
それでも…ここ迄来られなければ、その前に息を引き取る事もある…。
オーガスタスは闇の傷を負ったが、幸い神聖騎士達が居たから間に合った。
それに…お前の親父は頼りに成る」

ローフィスがそう言った時、ようやくテテュスは顔を、上げる。
両腕を、ローフィスの首に回したまま。

「…あいつのお陰でこうしてる。
なぁ?大した奴だろう?」

テテュスはもう瞳を潤ませていたけど、言葉を返した。

「でも…嘘を言ったって。
オーガスタスが本当に来るって、思って無かったって」

ローフィスは一つ、頷く。
「ディングレーが俺に向かって走ってたから…時間を稼ごうと思ったんだろう?」

テテュスは頷く。
「…アイリスの…お陰?
アイリスって、凄い?」

ローフィスは優しい顔をして頷く。
テテュスはだが、ローフィスのいつもと変わらぬ笑顔が嬉しいようにしがみついたまま、頬に涙を一筋伝わせ、ささやく。

「…でも…。
でもローフィス傷が抉れてた!
三カ所も斬られて血がどっ!と溢れて…なのに…アイリスを助けて馬を走らせてた!
凄く…痛かった筈なのに!」

ローフィスは吐息を一つ、吐く。

「テテュス。咄嗟の時には痛みは、吹っ飛ぶもんだ。
ずっと。って訳じゃないが。
だから馬で駆けてる途中、激痛で二度程気を失いかけたし、アイリスもだ。
一瞬、奴の腕から力が抜けて、馬から転げ落ちるんじゃないかと思った事もあった」

テテュスの、瞳が見開かれる。
ローランデの、静かな声がした。

「でも気を取り直し、君にしがみついた。
そうなんだろう?」

ローフィスは顔を上げる。
レイファスが青く成って俯き、ささやく。

「痛かったのはギュンターだよ………。
真っ青な顔で体中から血を流して…なのに平気な顔で馬に乗った後、一気に痛んでた」

ディンダーデンが横のギュンターを見、ディングレーは振り返ってわざわざギュンターを見つめる。
二人に見つめられて、ギュンターはぷりぷり怒った。

「…それはお前が…痛くないの?なんて聞くからだ!
気の利いた奴なら決して聞かない」

レイファスが、その元気なギュンターの物言いに途端、口を尖らせる。

「…だって傷だらけなのに、全然平気そうに見えたから」

ローフィスはくすくす笑った。

「アイリスは他人にはったりカマすが、ギュンターは自分に“痛くない”とはったりカマしてたんだろう?」

ギュンターが俯いて深い、吐息を吐く。

「…そうなの?」
レイファスに尋ねられて、ギュンターは仕方成しに頷いた。
「痛い。だなんて思ったら、動けなくなる」

ローランデがギュンターを見上げ、そっと言った。
「…だから…気を失うまで動き続けるのか?
だけどそれは大概………」

ローランデも泣きそうで、ギュンターは慌ててつぶやく。
「だってあの場合、無茶をしなきゃ生き残れなかったろう?」

ディンダーデンは吐息を吐く。
「まあ…。
お前は息を引き取る寸前迄動き続けて、相手をビビらせるな」

ファントレイユは恐怖に目を見開き、だがギュンターは嗤った。
「それは願ったりだ」

ゼイブンは息子の様子に、吐息を吐く。
「ファントレイユ。
近衛の男は常に“死”が間近だから、ああいう事も平気で言う。
お前も将来近衛なんかに行ったら、あれが日常会話だと肝に銘じとけ」

ファントレイユはいきなり涙が引っ込み、ささやく。
「あれが、普通?」

ゼイブンがたっぷり、頷く。
「それぐらい無茶じゃなきゃ、敵を薙ぎ倒して生き残れない」
「だから…ギュンターも今迄生き残ってきた?」

ディンダーデンが振り向き、その青の流し目で見つめ笑う。
「まあ…命のやり取りを、スリルと楽しむくらいの神経でないとな!」

レイファスが、腕組みしてプンプン怒った。
「でも心配する人がたくさん居るのに!
凄く、非常識だ!」

ローフィスがまた、笑った。
「だから…非常識なのが近衛だ」

ディングレーがようやく、ローフィスの横に来てその肩に手を添える。
「元気そうだ」

ローフィスは肩を竦める。
「ああ。くたばってないぞ?」

ギュンターも近寄り、笑う。
「アイリスの、作戦勝ちだとオーガスタスが言ったか?」
ローフィスも笑う。
「お前の夢にも、出て来たか?」

ディンダーデンが肩を竦める。
「間違い無く次にお前がばっさり殺られるシーンを、思い描いたな」

ローフィスはその色男を見つめ、真顔で言った。
「オーガスタスにお前の声が、届いてたらしいな?
お前の親友が殺られる。そう怒鳴ったそうじゃないか」

テテュスはそう言うローフィスをじっと見つめ、レイファスはファントレイユを見て、尋ねた。
「聞こえた?」

ファントレイユは首を横に振る。
ゼイブンはファントレイユの背後で腕組みし、唸った。

「心で、怒鳴ったんだろう?
“里”に居ると、心通者が大勢居るから、心の声も言葉として聞こえたりする。
心の篭もった、強い言葉だけだが」

レイファスが、ゼイブンに振り向く。
「心の声………?」

ローフィスが、まだ戸口近くにいるゼイブンに視線を向ける。
「だがあの場でも、お前の声は聞こえたぜ。
ハデに怒鳴りつけてたな?
サーチボルテスとアッカマンを」

ゼイブンは腕組みしたまま、俯いて頭を揺らす。
ローフィスはつぶやく。

「今頃二人は、お前を避ける算段をしてるだろうな」
ゼイブンは顔を上げると、唸る。
「俺から逃げるって?
だが神聖神殿隊付き連隊の“里”での顧問だ。
俺から何時迄逃げ切れるか、見物だな?」

ローフィスは肩を竦める。
「でも結局、連中のお陰で助かったろう?」

ゼイブンは目を剥く。
「距離があったって!
俺が“ソノ気”で奴らを怒鳴りつけたら聞こえたんだ!
距離がある事が、何もしなかった言い訳になるか!!」

ローフィスは途端、笑う。
「ほら…!
お前は本気出せば大した奴なんだ」

皆がゼイブンに振り向き、ゼイブンは口を、ぱくぱくさせた。
横でローフィスの胴に腕を回したシェイルが、五月蠅さに身を起こすし呻く。
「…いつも頼りの、あんたもアイリスもくたばる寸前だから…!
頼れなくて自分でやるしか、性がなかっただけだろう?」

ゼイブンは代弁されて、微かに頷く。
「…まあ、そう言った内容の事を、言うつもりでは居た」
が、途端目を見開く。
皆はゼイブンを見ていたが、ゼイブンのびっくりして固まる表情に思わず揃ってローフィスに視線を戻し、絶句した。

シェイルが、テテュスからローフィスの首を奪い返すとそのまま顔を傾け、熱烈な口つげを、ローフィスにしていたので。

ゼイブンが顔を俯け、シェイルに呻く。
「…子供が見てるって、知ってんだろう?!」

ディンダーデンが腕組みし、くすくす笑う。
「独り占めしたくて、じりじりしてんな!」

ギュンターが、唸った。
「違う。“お前ら邪魔だ。とっとと失せろ”と言ってる」

ローランデは苦笑する。
「多分、そんな内容だ」

ディングレーは仕方なさそうにテテュスの腕をそっと握り、振り向くテテュスに優しい表情を見せる。
「甘えたいんだ。させといてやろうぜ」

テテュスは呆けてシェイルを見たが、あんまり熱烈に抱きしめて口付ける彼は迫力で、まだ力の入らないローフィスはされるがままだった。

レイファスがぼそり。とつぶやく。
「…どう見てもローフィスが襲われてる」

ファントレイユも、頷く。
「再会の口づけって、僕もっと、ロマンチックだと思ってた」

テテュスは二人の意見を背後を振り向き聞いて、ディングレーを見上げた。
「襲うのが、甘えてるの?」

ディングレーは苦笑した。
「まあ…表現方法は人それぞれだし、ローフィスもまんざらじゃないだろう?
自分がまだ、ロクに動けないから不満だろうが」

テテュスは頷くと、寝台を降りてディングレーに背を促され、その場を後にする。
が、チラ…と振り向くのを、忘れなかったが。

テテュスが寝台を離れると、ローフィスは枕に背を持たせかけてシェイルにのし掛かられ、唇を思い切り塞がれていた。
皆が部屋を後にする中、ディンダーデンがぼそり。とささやく。

「ああ…シェイルお前、近くに居なかったしローフィスの事しか念頭に無かったろうが…。
夢でちゃんと、ディングレーは再現していたぜ!」

ディングレーは途端、テテュスの背に手を添えたまま一瞬で固まる。
シェイルはようやく顔を上げると、ぼやく。

「ちえっ。見逃したぜ。
これもあんたが俺に、心配掛けるせいだ」

言うとローフィスが返答を言葉にする前にまた、のし掛かって唇を、熱烈に奪った。

ディンダーデンは背を向けて部屋を出ながら、ぼそり。とつぶやく。
「剥かれて、最後迄喰われるんじゃないのか?あいつ(ローフィス)」

ディングレーがその言葉にまた、固まり、ギュンターは憤慨して悪友を見つめ、シェイルに顎をしゃくった。
「あいつが殺気だって俺を止めにかかるのは、絶対自分も欲求不満だからだ!」

ローランデが鋭く釘を刺す。
「自分と一緒にするな!」

ギュンターはローランデを見つめると、ぼやく。
「どうしてあいつは許されるんだ!
俺の事を心配したんなら、お前だってあれを俺にやっても、俺は大歓迎するぞ?!」

ローランデが途端唸った。
「君は両手広げて待ち構えてるだろう?!
ローフィスは動けないから、襲われるんだ!」

ゼイブンが振り向く。
「ギュンターも、動けなかったら襲うのか?」

ローランデはゼイブンを睨んで言った。
「…私が襲いかかったら、どれだけくたばってても絶対ギュンターは回復する」

途端、ディンダーデンが声をたてて笑った。
「違いない!」

ギュンターはローランデに顔を傾け、尋ねる。
「本当に、俺が動けなかったら襲うのか?」

だがローランデはぷんぷん怒った。
「男の襲い方なんて、私に解る訳無いだろう!」

その言葉に、ギュンターががっくり肩を落とすのに、ゼイブンがぼそり。とつぶやく。
「日頃一方的に、攻めてちゃな…」

ディングレーも同意した。
「襲って貰いたいなら襲い方くらいちゃんと伝授しといて、たまにはしおらしくしてないと…」

ギュンターは目を剥くと、ディングレーに怒鳴る。
「お前、俺に言えるのか?
少年のゼイブンにがっついて攻めまくってた癖に!」

ディングレーが一瞬で固まり、ディンダーデンはぽん。とディングレーの背を叩く。
「攻めの激しさは、ギュンターと間違い無く張る」

ディングレーはそう言って去って行く面々の、背に怒鳴った。
「…たから…!
あれは14の時の話だ!」

ギュンターはぼそり。とつぶやく。
「今は間違い無く、パワーアップしてるな」

ディンダーデンは、無言で頷いた。
 
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