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第五章『冒険の旅』
動く死体と光の道筋
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死体はゆらり…と身を揺らし、次々に立ち上がり、そして少しずつ、歩き始める。
たった今斬り殺したばかりの鮮血滴る、目のイってる血まみれの死体が動く、あまりの凄惨な光景に。
ディンダーデンがつい、眉間を寄せまくって一歩目前のローフィスに詰め寄り、耳元に屈み込んで低く怒鳴る。
「本当に、勝算があるんだろうな!」
ローフィスは振り向かないまま、素早く言った。
「この空間を作ってる御大を倒さないと、元居た場所に戻れない」
ギュンターが唇を噛み、ささやく。
「御大ったって、姿が無いぞ?
本当に倒せるのか?」
「神に、祈ってろ!」
「…そんなの、アリか?!」
ディンダーデンが思い切りぼやいてギュンターを見、ギュンターも情けない顔でディンダーデンを見つめ返し、死体が続々と起き上がって血を滴らせながら、たどたどしい足取りで周囲を取り巻き始めるのを目に、二人同時にやれやれ。
と、顔を下げて首を横に、振った。
ディングレーが、テテュスの手を握りぼやく。
「いつ迄立ちん坊だ?」
アイリスはまだ空間を探っていたが、ゼイブンに振り向く。
「ゼイブン!」
ゼイブンは俯くと、一つため息を吐いた後、胸元から一掴みの粉を握り、周囲にばっ!と振り撒いて、神聖呪文を唱え始めた。
粉は周囲の空間の上に浮かび、白く光り始める。
ファントレイユもテテュスも、その光景に言葉を無くす。
ローランデもシェイルも見つめていると、光の粉は空間を、白く光る部分と薄暗い部分に照らし出す。
ゼイブンが更に声を上げると、馬達が走り去った前方は、真っ白く光った。
途端、ゼイブンは唱えるのを止め、ほっ。と吐息を吐いてつぶやく。
「あっちは安全だ。
この辺りで影に成ってる場所はヤバいから、白く光る所を通って安全地帯迄行くぞ!」
シェイルとローランデは頷き、ゼイブンが呪文を止めた途端、薄く成る白い光を目安に、そっと歩き出す。
ディングレーがテテュスを促すと、テテュスはアイリスに振り向く。
その幼い息子の自分を案ずる、邪気の無い瞳に。
アイリスは振り向いて微笑み
『ディングレーと行って』
とその濃紺の瞳で、告げる。
ディングレーもテテュスの手をきつく握る。
テテュスが見上げると、やっぱりディングレーの深い青の瞳は、大丈夫だ。と告げていた。
たった今斬り殺したばかりの鮮血滴る、目のイってる血まみれの死体が動く、あまりの凄惨な光景に。
ディンダーデンがつい、眉間を寄せまくって一歩目前のローフィスに詰め寄り、耳元に屈み込んで低く怒鳴る。
「本当に、勝算があるんだろうな!」
ローフィスは振り向かないまま、素早く言った。
「この空間を作ってる御大を倒さないと、元居た場所に戻れない」
ギュンターが唇を噛み、ささやく。
「御大ったって、姿が無いぞ?
本当に倒せるのか?」
「神に、祈ってろ!」
「…そんなの、アリか?!」
ディンダーデンが思い切りぼやいてギュンターを見、ギュンターも情けない顔でディンダーデンを見つめ返し、死体が続々と起き上がって血を滴らせながら、たどたどしい足取りで周囲を取り巻き始めるのを目に、二人同時にやれやれ。
と、顔を下げて首を横に、振った。
ディングレーが、テテュスの手を握りぼやく。
「いつ迄立ちん坊だ?」
アイリスはまだ空間を探っていたが、ゼイブンに振り向く。
「ゼイブン!」
ゼイブンは俯くと、一つため息を吐いた後、胸元から一掴みの粉を握り、周囲にばっ!と振り撒いて、神聖呪文を唱え始めた。
粉は周囲の空間の上に浮かび、白く光り始める。
ファントレイユもテテュスも、その光景に言葉を無くす。
ローランデもシェイルも見つめていると、光の粉は空間を、白く光る部分と薄暗い部分に照らし出す。
ゼイブンが更に声を上げると、馬達が走り去った前方は、真っ白く光った。
途端、ゼイブンは唱えるのを止め、ほっ。と吐息を吐いてつぶやく。
「あっちは安全だ。
この辺りで影に成ってる場所はヤバいから、白く光る所を通って安全地帯迄行くぞ!」
シェイルとローランデは頷き、ゼイブンが呪文を止めた途端、薄く成る白い光を目安に、そっと歩き出す。
ディングレーがテテュスを促すと、テテュスはアイリスに振り向く。
その幼い息子の自分を案ずる、邪気の無い瞳に。
アイリスは振り向いて微笑み
『ディングレーと行って』
とその濃紺の瞳で、告げる。
ディングレーもテテュスの手をきつく握る。
テテュスが見上げると、やっぱりディングレーの深い青の瞳は、大丈夫だ。と告げていた。
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