アースルーリンドの騎士 幼い頃

あーす。

文字の大きさ
上 下
138 / 389
第五章『冒険の旅』

動く死体と光の道筋

しおりを挟む
 死体はゆらり…と身を揺らし、次々に立ち上がり、そして少しずつ、歩き始める。

たった今斬り殺したばかりの鮮血滴る、目のイってる血まみれの死体が動く、あまりの凄惨な光景に。
ディンダーデンがつい、眉間を寄せまくって一歩目前のローフィスに詰め寄り、耳元に屈み込んで低く怒鳴る。
「本当に、勝算があるんだろうな!」

ローフィスは振り向かないまま、素早く言った。
「この空間を作ってる御大を倒さないと、元居た場所に戻れない」
ギュンターが唇を噛み、ささやく。
「御大ったって、姿が無いぞ?
本当に倒せるのか?」
「神に、祈ってろ!」
「…そんなの、アリか?!」
ディンダーデンが思い切りぼやいてギュンターを見、ギュンターも情けない顔でディンダーデンを見つめ返し、死体が続々と起き上がって血を滴らせながら、たどたどしい足取りで周囲を取り巻き始めるのを目に、二人同時にやれやれ。
と、顔を下げて首を横に、振った。


ディングレーが、テテュスの手を握りぼやく。
「いつ迄立ちん坊だ?」
アイリスはまだ空間を探っていたが、ゼイブンに振り向く。
「ゼイブン!」
ゼイブンは俯くと、一つため息を吐いた後、胸元から一掴みの粉を握り、周囲にばっ!と振り撒いて、神聖呪文を唱え始めた。

粉は周囲の空間の上に浮かび、白く光り始める。
ファントレイユもテテュスも、その光景に言葉を無くす。

ローランデもシェイルも見つめていると、光の粉は空間を、白く光る部分と薄暗い部分に照らし出す。
ゼイブンが更に声を上げると、馬達が走り去った前方は、真っ白く光った。
途端、ゼイブンは唱えるのを止め、ほっ。と吐息を吐いてつぶやく。
「あっちは安全だ。
この辺りで影に成ってる場所はヤバいから、白く光る所を通って安全地帯迄行くぞ!」

シェイルとローランデは頷き、ゼイブンが呪文を止めた途端、薄く成る白い光を目安に、そっと歩き出す。
ディングレーがテテュスを促すと、テテュスはアイリスに振り向く。
その幼い息子の自分を案ずる、邪気の無い瞳に。
アイリスは振り向いて微笑み
『ディングレーと行って』
とその濃紺の瞳で、告げる。

ディングレーもテテュスの手をきつく握る。
テテュスが見上げると、やっぱりディングレーの深い青の瞳は、大丈夫だ。と告げていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

処理中です...