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第五章『冒険の旅』
ギュンターとローランデの胸の内
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ディングレーが髪を布で拭き、濡れてずっしり重い上着を脱ぎ捨て、シャツに手を掛けようとした時。
ローフィスの姿を見つけ、思わず湧き出る質問を口にした。
「止めてなきゃ、どうなってた?」
ローフィスはその明るい青の瞳をじろりと、整いきった王族の男前に投げ、唸る。
「襲いかかっておっ始めてた」
ディングレーは暫く、言葉を失った。
ローフィスは、頭の中が真っ白になった男に、尚も続けて現実を叩き込む。
「俺がローランデと二人切りで過ごす奴(ギュンター)の元へ、使者で出向いた時も、食卓の席で目前で、やってたからな」
ディングレーは俯いたまま、無言で表情すら無くしていた。
「…やってたっ…てのはつまり………?」
「服着たまんまでも出来るだろう?
ギュンターは自分の膝の上に、ローランデを乗せていた」
それで、ディングレーにもようやく、情景が飲み込めた。
「…あんたはそれで、どうしてたんだ?」
「飯を食ってた」
「…………つまり、飯喰ってる最中に奴は………始めてたのか?」
ローフィスはたっぷり頷く。
ディングレーは口籠もりながらも、つぶやく。
「…だが今回はその前に、シェイルと決闘になってるだろう?」
「シェイルは俺が止める。
地下道に入る前に怪我されると、まずい。
オーガスタスだって本心は放っときたいが、子供達の手前、止めた」
ディングレーは思い切り、顔を下げた。
「…つまり、子供達が居なかったらその…俺の前でも平気で始めてたって?」
ローフィスは思い切り、頷いた。
だがディングレーは俯いたまま、ぼそりと言った。
「…そんなもの、俺は見たく無いぞ?」
「ギュンターに言え。
奴に聞く耳が、あるんなら」
ディングレーはもっと顔を下げ、重いため息を、吐き出した。
「…つまりそこ迄…奴は切羽詰まってたのか?」
ローフィスは髪を振って顔を背けた。
「奴の眼中には、ローランデしか居ないって事だな!」
ディングレーはまたもう一つ、とびきり重い吐息を吐き、普段ギュンターが姿を現した途端、その場全部の視線が吸い寄せられるように集り来るのを物ともしないで。
颯爽と肩で風を切り歩く格好良さを思い返すと、周囲を全く構わない今回の醜態に、ギュンターの余裕の無さと想いの深さを改めて思い知らされ、顔を深く、深く下げた。
ファントレイユはゼイブンが、戻って来るのを見つめる。
「ローランデ、大変?」
ゼイブンはギュンターに振り向くと
「あんな野獣に惚れ込まれちゃな!」
とぶっきらぼうに言い、布をばさっ!と投げた。
「とっとと着替えを済ませろ!」
言われてファントレイユは、その父親同様の淡く長い栗毛を揺らし、人形の様に綺麗な顔の、淡いブルー・グレーの瞳を父親に向けて頷き、濡れて足に張り付くズボンを脱ごうと屈み、足先の裾を掴んでもがき始めた。
とうとう、ころん!とお尻を草の上に付いて、うんうん唸って裾を引っ張っていると、ゼイブンが横で両手を腰に付け、ため息混じりに見つめる。
「尻から先に脱ごうという発想は、無いのか?」
ファントレイユは、今度は腰にまとわりつく布を、座ったまま引き下げ始める。
でも、やっぱり腿に張り付いて、それ以上は下がらなくて、じたばたってると、とうとうゼイブンの吐息が聞こえた。
レイファスが、少し離れた場所でささやいた。
「立ったまま、下に真っ直ぐ降ろすんだ」
見るとレイファスは、そうしてとっくに足先に、濡れたズボンを降ろしていた。
「……………」
ファントレイユは腿迄降りた布を纏いつかせたまま、立ち上がろうとした。
蹌踉めき転びかけるとゼイブンの手が、掴んで支えてくれた。
「いいから、座れ」
ファントレイユは再び腰を降ろす。
ゼイブンは横から、腿に団子のように固まる布の端を持って、足先に強引に引っ張り下げた。
「こんな事してると、子持ちに成った気分だぜ」
その言葉に全員が、びっくりした瞳で一斉にゼイブンに振り向く。
「…だって、子持ちだろう?」
ディングレーの言葉にゼイブンは、足首近く迄引き下ろしたズボンの端を持つ手を止めて、固まる。
「そういうセリフは、独身男が言うもんだ!」
ディンダーデンに迄怒鳴られ、ゼイブンはまだ、固まっていた。
ファントレイユが動かないゼイブンに不安げに、ささやく。
「僕、本当にゼイブンの息子だよね?」
ローフィスが固まるゼイブンの背に、蹴りを入れて怒鳴った。
「息子を不安にさせるな!」
ギュンターはシェイルが、レイファスの濡れ髪を布で甲斐甲斐しく拭き、優しく面倒見ている姿を見つめる。
その向こうでローランデが濡れた剣を拭き上げ、輝きを確かめる姿をそっと、盗み見た。
ローランデが気づき、振り向く。
途端、彼を腕に抱く甘い幻想が立ち上り、ローランデもそれに捕らわれそうになって、慌てて首を横に振って俯いた。
また、顔を上げた時ローランデの青の瞳は
『一行が誰の為に危険を冒し『神聖神殿』迄行こうとしている?』
と、問いかける視線を向ける。
その真っ直ぐな青の澄んだ瞳に、ギュンターは一瞬胸が、詰まった。
言いたかった。
皆は俺の為に。
そして俺は…お前の為だと。
だがローランデには言葉にしなくても、それが解ったかのように一瞬、悲しげに眉を寄せた。
ローランデが“生きて欲しい”と望まなければギュンターは、ディアヴォロスの配慮等蹴って、単独でメーダフォーテとノルンディルに挑みかかる気だ。
彼にとってはその方が、皆を危険に巻き込むよりずっと、気が楽なのだろう。
でも…自分の命なのに。
ギュンターはもし、ノルンディルを殴り殺し死刑判決を受けても、その縄が首にかかり足板が外れ落ちる瞬間ですら、自分の行為に微塵の後悔も見せず、胸を張って逝ってしまう気だ。
ローランデは胸が、潰れそうに感じた。
ギュンターに
『もし、君が逝ってしまったら自分でも自覚無く、君の後を追ってまだ八歳の息子、マリーエルを悲しませる』
と自分の命を盾に、脅迫のようにギュンターの、メーダフォーテとノルンディルへの報復を押し止めた。
ローランデの幸福の為に命を捧げる。
と誓ったギュンターはそれで仕方無く、報復を諦め、今大人しくディアヴォロスの用意した中央護衛連隊長の地位に座るべく、今ここに、こうして仲間に囲まれている。
危険な獣。
それは…そうかもしれない。
彼が死んでしまったら、途方に暮れてきっとその姿を探し回り、この世で永久にそれが見つからないとしたら…。
きっと…あの世に迄、探しに行きそうだから…。
自分にとって彼は、とても危険な…いや多分、最悪に危険な、とても魅力的な獣だ。
ローランデの青の瞳が泣き出しそうで、ギュンターは一つ、吐息を吐き出した。
二人の様子に気づいてたオーガスタスが、背を向けたままギュンターの耳元にささやく。
「惚れた相手を悲しませるなんざ、最低の愛し方だ!」
ギュンターは、異論を唱えようとした。
途端、気づいた横のディングレーに顔を覗き込まれる。
「俺達の同行を、負担に思ってるだろう?」
そう言われ、ギュンターはその男らしい顔を見つめ返し、戸惑うがつぶやく。
「オーガスタスとローフィスはともかく、お前やアイリスは間違いなくとばっちりだ」
ディングレーはその金の髪の美貌の野獣の弱々しい表情を見つめ、たっぷり頷いた。
「俺はディアヴォロスに命を捧げてる。
彼の望みは命が消えても叶える。
これでは不十分か?!」
オーガスタスも、背を向けたまま濡れたシャツを着替えながら、怒鳴った。
「大概、開き直れ!」
ギュンターは項垂れると、オーガスタスの促しと、その黒髪の男の、一途な健気さに俯いた。
「頷け!」
ディングレーの、その深い青の瞳に真っ直ぐ見つめられてそう言われ、ギュンターはしぶしぶ、頷く。
ディングレーはぽん!とその肩を揺れる程叩いて言った。
「素直だと、お前でも可愛い」
ギュンターは暫く
『可愛い?』
と、その言葉を心の中で、繰り返し続けた。
間も無くディンダーデンが座り、革袋に入れた神聖騎士団の用意してくれた弁当が濡れて無いかを確かめ、それを摘み始めると、ローフィスもオーガスタスも習って座り、酒瓶から酒を喉に流し込み、アイリスはテテュスを前におやつを広げ、シェイルもゼイブンも革袋からおやつを取り出すと、ファントレイユとレイファスは駆け寄って横に座り、頬張り始めた。
ギュンターがその平和な光景を眺めながら、草の上に腰掛けると、ローランデがそっと横に、座る。
「…まだ…私が寄ると駄目か?」
ギュンターは、当然だ。と言おうとした。
が、ローランデの澄んだ青い瞳が注がれるその先を、ふと見ると、ディングレーがエリスが草を食べるその真っ黒い大きな首に、座ったまま手を巻き付けて微笑みながら撫で、ディンダーデンが皆の様子に、彼迄酒瓶を取り出して本格的に休憩に入り、ギュンターはそれを静かに眺めていてつい、言葉を飲み込む。
が、思い直してそっとささやく。
「…お前を本気で愛してるから、置いて先に、死んだりしない」
ローランデは一瞬肩を揺らしたが、俯いた。
ギュンターは、自覚が無い。
一旦その気になると、気持ちより計算より、咄嗟に体が、動く男だから。
ローランデが、その言葉を信じたくても出来ない自分に、ギュンターより顔を背けて震えた。
「それが本当だと、心から嬉しい」
やっとそう言うと、ギュンターが口を開くより先に、立ち上がった。
振り向くその青の瞳はこう、告げていた。
『私以外の誰でもいい…。
好きになって、離れていってくれて、構わない』
ギュンターは胸がずきん。と痛み、彼の方が泣き出しそうになった。
死なれるくらいなら、飽きられて捨てられたた方がマシだ。
と、ローランデがその瞳で告げるので。
オーガスタスをそっと伺い見ると、オーガスタスは頷いた。
『言った通りだろう』
その鳶色の瞳に一つ、頷き、また吐息を吐くと、レイファスがまるで、慰めるようにギュンターの横にやって来て、その小さな体を寄せた。
「ローランデの事で、悩んでる?」
ギュンターはその小さく可憐な子供に、一瞬顔を揺らし、けど頷く。
レイファスは一つ、吐息を吐く。
「好き過ぎると、余裕が無くなって、結局相手は息が詰まって、離れて行くって」
ギュンターはずきん。と胸が痛むが、表情を変えなかった。
レイファスは一つ、吐息を吐くと、悲しげに言った。
「凄く好きなのに、それって残酷な事だよね?」
ギュンターはレイファスに同情されてる。
と感じたが、微かに頷いてささやく。
「そうだな」
「だからね。
そういう時は凄く好きな気持ちを、相手に押しつけないで、少し離れた所からじっと、見守るべきなんだって。
そう聞いた時、それって凄く、大変だし、辛い事だよね?って聞いたんだ」
「誰にだ?」
レイファスはその、あどけないくっきりとした青紫の瞳を、上げた。
混じりっけの無い紫色のギュンターの、瞳の美しさと顔を傾ける、すっと真っ直ぐな形の綺麗な鼻筋と、細くしなやかな頬と顎の線の、その美貌に見とれながら、答える。
「家庭教師」
ギュンターが頷くと、金の濡れた髪が陽に照らされ艶やかに輝く。
「それで?」
ギュンターが言うので、その、まだ湿った肩を乾いた上着の下に包んだ、ギュンターの冷えた体を意識し、レイファスは続けた。
「でもそんな大変な思いは、相手を必ず揺さぶって、相手は振り向かずにいられなくなるし、最悪…。
振られても…自分自身もその苦労で大きくなれるし、結局は自分を成長させる、大事な事なんだって。
それに…」
「まだあるのか?」
「そういう思いをしたら、もし失っても、次に愛した人が出来た時。
相手をとても大切に出来て、深い愛情で結ばれるから、本気で好きな相手が出来たら、そうするよう、頑張れって」
ギュンターは俯くと、吐息を吐いた。
「最近の家庭教師は、そんな事迄教えるのか?」
レイファスは俯くと、手に持つお菓子を一口、かじって口をもぐもぐさせてつぶやいた。
「僕、でも出来そうに無い。
好きだったら側にやっぱり、ずっと居たいよね?」
ギュンターはつぶやく。
「そうだな…。
だが、相手が本当に心から大切なら…家庭教師の言う事が正しい方法だ」
レイファスはチラ…。とギュンターを見上げた。
ギュンターが、深いため息を付くのを、見て言う。
「ギュンター、ローランデ相手にそれって、出来そう?」
ギュンターは肩を揺らし、つぶやく。
「出来なくても、するしか無い」
レイファスは、ギュンターを見上げた。
横顔だったけれど、彼の金の髪が、無敗の王が被る王冠のように輝き、思わず笑った。
「ギュンターなら出来そう」
ギュンターはその無邪気な肯定に、思わずそう言うレイファスに振り返った。
が、レイファスはもう尻を持ち上げてシェイルの元へと駆け込み、膝を付いて次のお菓子を摘み上げていた。
テテュスとファントレイユが心配そうに、ギュンターの元から帰って来るレイファスを座って出迎えた。
ファントレイユが、ギュンターに聞こえないよう小声でささやく。
「ギュンター、どうだった?」
テテュスも、レイファスを覗き込む。
が、レイファスは鮮やかに笑うと、二人に言った。
「ギュンター、きっと大丈夫だよ!」
ファントレイユとテテュスは顔を見合わせ、途端氷が溶けるように笑った。
ゼイブンはそれを見て吐息を吐き、シェイルはぼやいた。
「あいつは誰からでも同情を買う、奇特な男で運が強いから、心配するだけ無駄だ!」
レイファスが頷き、テテュスもファントレイユも一緒に心配事が無くなったように、おやつを頬張った。
ローフィスは立って全員が、各々(おのおの)自分の馬に革袋を乗せるのを、見つめた。
ゼイブンが、ファントレイユを前に乗せ、馬上に跨って姿を見せ、頷く。
ローフィスはレイファスを、両脇に手を入れ馬の鞍の上に降ろし、後ろに飛び乗り、オーガスタスを見つめる。
オーガスタスは手綱を繰り、一声低い声で叫ぶ。
「行くぞ!」
ローフィスとゼイブンは先を蹴立てて走り、オーガスタスの後ろから、ディンダーデンがギュンターに頷きながら、二頭は一気に駆け出す。
ローランデはギュンターの背を見つめ後に続き、シェイルは親友の横顔を、見守った。
ローフィスは二人きりの時、言った。
ローランデは自覚無く、ギュンターに本心では惚れている。と。
だから
『ギュンターなんて思い切りすっぱり、ふっちまえ!』
と言う忠告は的外れだと。
だがそれでもシェイルは、ローランデに言ってやりたかった。
『すっぱりふっちまうのが、あいつの為だ!』
今でも口を突いてそれが出そうで、むずむずした。
が、ローランデが気づき、視線を向けて微笑むので、彼の様子に一気に安堵し、シェイルは嬉しそうに、親友に微笑み返した。
大木が連なる森に差し掛かると、ローフィスが振り向き怒鳴る。
「後少しで洞窟入り口だ!」
皆が一斉に顔を、引き締める。
ディンダーデンが、後ろのアイリスに怒鳴る。
「どれ位で洞窟を抜ける?!」
アイリスが、怒鳴り返す。
「私の最速で、六点鐘程だ!」
皆が一斉に、洞窟内を想像しようとし、でも出来ずにいた。
オーガスタスが、目前の親友ローフィスに問いかける。
「さぞかし起伏に富んだ、愉快な場所なんだろうな?」
ローフィスは振り向くと、オーガスタスの真剣な鳶色の瞳が注がれるのを見た。
「…いや。かなり平坦だが…」
ギュンターが、後ろから怒鳴る。
「だが?!」
「洞窟を住処とするごろつきと出くわすと、駆除しないと」
ディンダーデンも馬上で怒鳴る。
「任せろ。そっちは得意だ!」
ゼイブンが振り返らないまま、呻く。
「障気付きの化け物だと、厄介なんだ。これが………」
ギュンターがディンダーデンを見ると、彼は眉間を寄せた。
「それは当然、お前らが何とかするんだろう?!」
ゼイブンもローフィスも首をすくめ、ディングレーも後方のアイリスに振り向き、アイリスに
“当然、お前がやるな?"
と、念押しした。
ローフィスの姿を見つけ、思わず湧き出る質問を口にした。
「止めてなきゃ、どうなってた?」
ローフィスはその明るい青の瞳をじろりと、整いきった王族の男前に投げ、唸る。
「襲いかかっておっ始めてた」
ディングレーは暫く、言葉を失った。
ローフィスは、頭の中が真っ白になった男に、尚も続けて現実を叩き込む。
「俺がローランデと二人切りで過ごす奴(ギュンター)の元へ、使者で出向いた時も、食卓の席で目前で、やってたからな」
ディングレーは俯いたまま、無言で表情すら無くしていた。
「…やってたっ…てのはつまり………?」
「服着たまんまでも出来るだろう?
ギュンターは自分の膝の上に、ローランデを乗せていた」
それで、ディングレーにもようやく、情景が飲み込めた。
「…あんたはそれで、どうしてたんだ?」
「飯を食ってた」
「…………つまり、飯喰ってる最中に奴は………始めてたのか?」
ローフィスはたっぷり頷く。
ディングレーは口籠もりながらも、つぶやく。
「…だが今回はその前に、シェイルと決闘になってるだろう?」
「シェイルは俺が止める。
地下道に入る前に怪我されると、まずい。
オーガスタスだって本心は放っときたいが、子供達の手前、止めた」
ディングレーは思い切り、顔を下げた。
「…つまり、子供達が居なかったらその…俺の前でも平気で始めてたって?」
ローフィスは思い切り、頷いた。
だがディングレーは俯いたまま、ぼそりと言った。
「…そんなもの、俺は見たく無いぞ?」
「ギュンターに言え。
奴に聞く耳が、あるんなら」
ディングレーはもっと顔を下げ、重いため息を、吐き出した。
「…つまりそこ迄…奴は切羽詰まってたのか?」
ローフィスは髪を振って顔を背けた。
「奴の眼中には、ローランデしか居ないって事だな!」
ディングレーはまたもう一つ、とびきり重い吐息を吐き、普段ギュンターが姿を現した途端、その場全部の視線が吸い寄せられるように集り来るのを物ともしないで。
颯爽と肩で風を切り歩く格好良さを思い返すと、周囲を全く構わない今回の醜態に、ギュンターの余裕の無さと想いの深さを改めて思い知らされ、顔を深く、深く下げた。
ファントレイユはゼイブンが、戻って来るのを見つめる。
「ローランデ、大変?」
ゼイブンはギュンターに振り向くと
「あんな野獣に惚れ込まれちゃな!」
とぶっきらぼうに言い、布をばさっ!と投げた。
「とっとと着替えを済ませろ!」
言われてファントレイユは、その父親同様の淡く長い栗毛を揺らし、人形の様に綺麗な顔の、淡いブルー・グレーの瞳を父親に向けて頷き、濡れて足に張り付くズボンを脱ごうと屈み、足先の裾を掴んでもがき始めた。
とうとう、ころん!とお尻を草の上に付いて、うんうん唸って裾を引っ張っていると、ゼイブンが横で両手を腰に付け、ため息混じりに見つめる。
「尻から先に脱ごうという発想は、無いのか?」
ファントレイユは、今度は腰にまとわりつく布を、座ったまま引き下げ始める。
でも、やっぱり腿に張り付いて、それ以上は下がらなくて、じたばたってると、とうとうゼイブンの吐息が聞こえた。
レイファスが、少し離れた場所でささやいた。
「立ったまま、下に真っ直ぐ降ろすんだ」
見るとレイファスは、そうしてとっくに足先に、濡れたズボンを降ろしていた。
「……………」
ファントレイユは腿迄降りた布を纏いつかせたまま、立ち上がろうとした。
蹌踉めき転びかけるとゼイブンの手が、掴んで支えてくれた。
「いいから、座れ」
ファントレイユは再び腰を降ろす。
ゼイブンは横から、腿に団子のように固まる布の端を持って、足先に強引に引っ張り下げた。
「こんな事してると、子持ちに成った気分だぜ」
その言葉に全員が、びっくりした瞳で一斉にゼイブンに振り向く。
「…だって、子持ちだろう?」
ディングレーの言葉にゼイブンは、足首近く迄引き下ろしたズボンの端を持つ手を止めて、固まる。
「そういうセリフは、独身男が言うもんだ!」
ディンダーデンに迄怒鳴られ、ゼイブンはまだ、固まっていた。
ファントレイユが動かないゼイブンに不安げに、ささやく。
「僕、本当にゼイブンの息子だよね?」
ローフィスが固まるゼイブンの背に、蹴りを入れて怒鳴った。
「息子を不安にさせるな!」
ギュンターはシェイルが、レイファスの濡れ髪を布で甲斐甲斐しく拭き、優しく面倒見ている姿を見つめる。
その向こうでローランデが濡れた剣を拭き上げ、輝きを確かめる姿をそっと、盗み見た。
ローランデが気づき、振り向く。
途端、彼を腕に抱く甘い幻想が立ち上り、ローランデもそれに捕らわれそうになって、慌てて首を横に振って俯いた。
また、顔を上げた時ローランデの青の瞳は
『一行が誰の為に危険を冒し『神聖神殿』迄行こうとしている?』
と、問いかける視線を向ける。
その真っ直ぐな青の澄んだ瞳に、ギュンターは一瞬胸が、詰まった。
言いたかった。
皆は俺の為に。
そして俺は…お前の為だと。
だがローランデには言葉にしなくても、それが解ったかのように一瞬、悲しげに眉を寄せた。
ローランデが“生きて欲しい”と望まなければギュンターは、ディアヴォロスの配慮等蹴って、単独でメーダフォーテとノルンディルに挑みかかる気だ。
彼にとってはその方が、皆を危険に巻き込むよりずっと、気が楽なのだろう。
でも…自分の命なのに。
ギュンターはもし、ノルンディルを殴り殺し死刑判決を受けても、その縄が首にかかり足板が外れ落ちる瞬間ですら、自分の行為に微塵の後悔も見せず、胸を張って逝ってしまう気だ。
ローランデは胸が、潰れそうに感じた。
ギュンターに
『もし、君が逝ってしまったら自分でも自覚無く、君の後を追ってまだ八歳の息子、マリーエルを悲しませる』
と自分の命を盾に、脅迫のようにギュンターの、メーダフォーテとノルンディルへの報復を押し止めた。
ローランデの幸福の為に命を捧げる。
と誓ったギュンターはそれで仕方無く、報復を諦め、今大人しくディアヴォロスの用意した中央護衛連隊長の地位に座るべく、今ここに、こうして仲間に囲まれている。
危険な獣。
それは…そうかもしれない。
彼が死んでしまったら、途方に暮れてきっとその姿を探し回り、この世で永久にそれが見つからないとしたら…。
きっと…あの世に迄、探しに行きそうだから…。
自分にとって彼は、とても危険な…いや多分、最悪に危険な、とても魅力的な獣だ。
ローランデの青の瞳が泣き出しそうで、ギュンターは一つ、吐息を吐き出した。
二人の様子に気づいてたオーガスタスが、背を向けたままギュンターの耳元にささやく。
「惚れた相手を悲しませるなんざ、最低の愛し方だ!」
ギュンターは、異論を唱えようとした。
途端、気づいた横のディングレーに顔を覗き込まれる。
「俺達の同行を、負担に思ってるだろう?」
そう言われ、ギュンターはその男らしい顔を見つめ返し、戸惑うがつぶやく。
「オーガスタスとローフィスはともかく、お前やアイリスは間違いなくとばっちりだ」
ディングレーはその金の髪の美貌の野獣の弱々しい表情を見つめ、たっぷり頷いた。
「俺はディアヴォロスに命を捧げてる。
彼の望みは命が消えても叶える。
これでは不十分か?!」
オーガスタスも、背を向けたまま濡れたシャツを着替えながら、怒鳴った。
「大概、開き直れ!」
ギュンターは項垂れると、オーガスタスの促しと、その黒髪の男の、一途な健気さに俯いた。
「頷け!」
ディングレーの、その深い青の瞳に真っ直ぐ見つめられてそう言われ、ギュンターはしぶしぶ、頷く。
ディングレーはぽん!とその肩を揺れる程叩いて言った。
「素直だと、お前でも可愛い」
ギュンターは暫く
『可愛い?』
と、その言葉を心の中で、繰り返し続けた。
間も無くディンダーデンが座り、革袋に入れた神聖騎士団の用意してくれた弁当が濡れて無いかを確かめ、それを摘み始めると、ローフィスもオーガスタスも習って座り、酒瓶から酒を喉に流し込み、アイリスはテテュスを前におやつを広げ、シェイルもゼイブンも革袋からおやつを取り出すと、ファントレイユとレイファスは駆け寄って横に座り、頬張り始めた。
ギュンターがその平和な光景を眺めながら、草の上に腰掛けると、ローランデがそっと横に、座る。
「…まだ…私が寄ると駄目か?」
ギュンターは、当然だ。と言おうとした。
が、ローランデの澄んだ青い瞳が注がれるその先を、ふと見ると、ディングレーがエリスが草を食べるその真っ黒い大きな首に、座ったまま手を巻き付けて微笑みながら撫で、ディンダーデンが皆の様子に、彼迄酒瓶を取り出して本格的に休憩に入り、ギュンターはそれを静かに眺めていてつい、言葉を飲み込む。
が、思い直してそっとささやく。
「…お前を本気で愛してるから、置いて先に、死んだりしない」
ローランデは一瞬肩を揺らしたが、俯いた。
ギュンターは、自覚が無い。
一旦その気になると、気持ちより計算より、咄嗟に体が、動く男だから。
ローランデが、その言葉を信じたくても出来ない自分に、ギュンターより顔を背けて震えた。
「それが本当だと、心から嬉しい」
やっとそう言うと、ギュンターが口を開くより先に、立ち上がった。
振り向くその青の瞳はこう、告げていた。
『私以外の誰でもいい…。
好きになって、離れていってくれて、構わない』
ギュンターは胸がずきん。と痛み、彼の方が泣き出しそうになった。
死なれるくらいなら、飽きられて捨てられたた方がマシだ。
と、ローランデがその瞳で告げるので。
オーガスタスをそっと伺い見ると、オーガスタスは頷いた。
『言った通りだろう』
その鳶色の瞳に一つ、頷き、また吐息を吐くと、レイファスがまるで、慰めるようにギュンターの横にやって来て、その小さな体を寄せた。
「ローランデの事で、悩んでる?」
ギュンターはその小さく可憐な子供に、一瞬顔を揺らし、けど頷く。
レイファスは一つ、吐息を吐く。
「好き過ぎると、余裕が無くなって、結局相手は息が詰まって、離れて行くって」
ギュンターはずきん。と胸が痛むが、表情を変えなかった。
レイファスは一つ、吐息を吐くと、悲しげに言った。
「凄く好きなのに、それって残酷な事だよね?」
ギュンターはレイファスに同情されてる。
と感じたが、微かに頷いてささやく。
「そうだな」
「だからね。
そういう時は凄く好きな気持ちを、相手に押しつけないで、少し離れた所からじっと、見守るべきなんだって。
そう聞いた時、それって凄く、大変だし、辛い事だよね?って聞いたんだ」
「誰にだ?」
レイファスはその、あどけないくっきりとした青紫の瞳を、上げた。
混じりっけの無い紫色のギュンターの、瞳の美しさと顔を傾ける、すっと真っ直ぐな形の綺麗な鼻筋と、細くしなやかな頬と顎の線の、その美貌に見とれながら、答える。
「家庭教師」
ギュンターが頷くと、金の濡れた髪が陽に照らされ艶やかに輝く。
「それで?」
ギュンターが言うので、その、まだ湿った肩を乾いた上着の下に包んだ、ギュンターの冷えた体を意識し、レイファスは続けた。
「でもそんな大変な思いは、相手を必ず揺さぶって、相手は振り向かずにいられなくなるし、最悪…。
振られても…自分自身もその苦労で大きくなれるし、結局は自分を成長させる、大事な事なんだって。
それに…」
「まだあるのか?」
「そういう思いをしたら、もし失っても、次に愛した人が出来た時。
相手をとても大切に出来て、深い愛情で結ばれるから、本気で好きな相手が出来たら、そうするよう、頑張れって」
ギュンターは俯くと、吐息を吐いた。
「最近の家庭教師は、そんな事迄教えるのか?」
レイファスは俯くと、手に持つお菓子を一口、かじって口をもぐもぐさせてつぶやいた。
「僕、でも出来そうに無い。
好きだったら側にやっぱり、ずっと居たいよね?」
ギュンターはつぶやく。
「そうだな…。
だが、相手が本当に心から大切なら…家庭教師の言う事が正しい方法だ」
レイファスはチラ…。とギュンターを見上げた。
ギュンターが、深いため息を付くのを、見て言う。
「ギュンター、ローランデ相手にそれって、出来そう?」
ギュンターは肩を揺らし、つぶやく。
「出来なくても、するしか無い」
レイファスは、ギュンターを見上げた。
横顔だったけれど、彼の金の髪が、無敗の王が被る王冠のように輝き、思わず笑った。
「ギュンターなら出来そう」
ギュンターはその無邪気な肯定に、思わずそう言うレイファスに振り返った。
が、レイファスはもう尻を持ち上げてシェイルの元へと駆け込み、膝を付いて次のお菓子を摘み上げていた。
テテュスとファントレイユが心配そうに、ギュンターの元から帰って来るレイファスを座って出迎えた。
ファントレイユが、ギュンターに聞こえないよう小声でささやく。
「ギュンター、どうだった?」
テテュスも、レイファスを覗き込む。
が、レイファスは鮮やかに笑うと、二人に言った。
「ギュンター、きっと大丈夫だよ!」
ファントレイユとテテュスは顔を見合わせ、途端氷が溶けるように笑った。
ゼイブンはそれを見て吐息を吐き、シェイルはぼやいた。
「あいつは誰からでも同情を買う、奇特な男で運が強いから、心配するだけ無駄だ!」
レイファスが頷き、テテュスもファントレイユも一緒に心配事が無くなったように、おやつを頬張った。
ローフィスは立って全員が、各々(おのおの)自分の馬に革袋を乗せるのを、見つめた。
ゼイブンが、ファントレイユを前に乗せ、馬上に跨って姿を見せ、頷く。
ローフィスはレイファスを、両脇に手を入れ馬の鞍の上に降ろし、後ろに飛び乗り、オーガスタスを見つめる。
オーガスタスは手綱を繰り、一声低い声で叫ぶ。
「行くぞ!」
ローフィスとゼイブンは先を蹴立てて走り、オーガスタスの後ろから、ディンダーデンがギュンターに頷きながら、二頭は一気に駆け出す。
ローランデはギュンターの背を見つめ後に続き、シェイルは親友の横顔を、見守った。
ローフィスは二人きりの時、言った。
ローランデは自覚無く、ギュンターに本心では惚れている。と。
だから
『ギュンターなんて思い切りすっぱり、ふっちまえ!』
と言う忠告は的外れだと。
だがそれでもシェイルは、ローランデに言ってやりたかった。
『すっぱりふっちまうのが、あいつの為だ!』
今でも口を突いてそれが出そうで、むずむずした。
が、ローランデが気づき、視線を向けて微笑むので、彼の様子に一気に安堵し、シェイルは嬉しそうに、親友に微笑み返した。
大木が連なる森に差し掛かると、ローフィスが振り向き怒鳴る。
「後少しで洞窟入り口だ!」
皆が一斉に顔を、引き締める。
ディンダーデンが、後ろのアイリスに怒鳴る。
「どれ位で洞窟を抜ける?!」
アイリスが、怒鳴り返す。
「私の最速で、六点鐘程だ!」
皆が一斉に、洞窟内を想像しようとし、でも出来ずにいた。
オーガスタスが、目前の親友ローフィスに問いかける。
「さぞかし起伏に富んだ、愉快な場所なんだろうな?」
ローフィスは振り向くと、オーガスタスの真剣な鳶色の瞳が注がれるのを見た。
「…いや。かなり平坦だが…」
ギュンターが、後ろから怒鳴る。
「だが?!」
「洞窟を住処とするごろつきと出くわすと、駆除しないと」
ディンダーデンも馬上で怒鳴る。
「任せろ。そっちは得意だ!」
ゼイブンが振り返らないまま、呻く。
「障気付きの化け物だと、厄介なんだ。これが………」
ギュンターがディンダーデンを見ると、彼は眉間を寄せた。
「それは当然、お前らが何とかするんだろう?!」
ゼイブンもローフィスも首をすくめ、ディングレーも後方のアイリスに振り向き、アイリスに
“当然、お前がやるな?"
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