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第五章『冒険の旅』
ローランデを怒らせるギュンターと子供達の反応
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ローフィスの背に続いて、奥の廊下へ入ると、レイファスがファントレイユとテテュスにささやいた。
「あんな先輩が居ると、大変だよね」
アイリスがテテュスの後ろでそっと言った。
「でも、ああいう部下が居るのも、とっても大変だ」
先頭でローフィスが大きく頷き、ファントレイユの背の後ろでゼイブンが怒鳴った。
「それは俺の事か?」
ローフィスは振り返らなかったし、アイリスはつぶやく。
「解ってたら、言う必要は無いと思う」
ギュンターより先に、ディンダーデンが唸る。
「アイリス。お前でも大変なんて事が、あるのか?」
皆が彼の言葉に振り向く。
ローフィス迄後ろを向いて、言った。
「アイリスはどれだけ大変でも、決して大変そうな顔をしない」
シェイルが継ぎ足す。
「…だから可愛げが無いと、皆思ってる」
アイリスはその評価に、ぼやいた。
「だって大変そうな顔したって、誰も私に代わって何とかしてくれる訳じゃ、無いだろう?
なら、全然余裕の顔した方がマシだ」
ギュンターが唸る。
「だが、周囲の理解と同情は得られるぞ?」
ディンダーデンも大きく、頷いた。
オーガスタスが、言った。
「無駄だ。
理解と同情で、事態が良くなると、アイリスは考えていない」
ディングレーが、頑健な肩と見事な黒髪を揺らし、面倒臭げに吠えた。
「いいじゃないか。
同情なんて買わなくても、結局奴は一人でやり遂げる才気があるんだから」
「…でも、大変なら私はいつでも、力に成るつもりがあるのに」
皆が一斉にそのローランデの言葉に、慌ててギュンターの顔色を伺った。
アイリスは尊敬する先輩の言葉に、微笑むとささやく。
「貴方の、そのお気持ちだけで十分なんです」
ギュンターが憮然と唸った。
「だ、そうだ。奴の力になる必要なんて無い。
どんな事でも切り抜けられて、周囲の理解も同情も、要らない男なんだからな!」
皆がギュンターの嫉妬心顕わなのを感じ、吹き出すのを我慢した。
が、ローランデはギュンターを見上げ、つぶやく。
「でも君にとっても、後輩だろう?」
ギュンターが怒鳴り返す。
「あいつの性格を、綺麗に忘れてるだろう?!」
シェイルが隣の親友に、すかさず言う。
「妬いてるんだ。ギュンターは。
奴はレイファスにまで妬きかけたんだから、君がそこ迄持ち上げたら、アイリスが今度はギュンターに、睨まれるだけだ」
ローランデは困ったように、ギュンターを見つめた。
アイリスはぼそっと零す。
「ギュンターにはとっくに睨まれてる」
ギュンターは頷くと、アイリスを見つめた。
「連中に、ローランデに本当に一度も手出ししてないか、確認を取ってもいいな?!」
ローランデが途端、憤慨した。
「どうしてそう、カンぐるんだ!」
ギュンターは言い返す。
「確認を取れば、もうカンぐらずに済むだろう?」
ローランデはかんかんだった。
「つまり、私の言葉を信用出来ないんだな?!」
ローフィスもオーガスタスも、ディンダーデンもディングレー、ゼイブンですらギュンターの事を、内心
『馬鹿な奴』
と思った。
当然、ギュンターはローランデに猛烈に怒られ、弱り切った。
レイファスはファントレイユを見た。
レイファスもギュンターが、お馬鹿な事を言ってローランデを怒らせたと分かったし、テテュスにも分かった。
けどファントレイユは人形のような、感情を出さない綺麗顔のまま。
テテュスはレイファスの表情から、それが分かって、そっと尋ねる。
「…ファントレイユ。
ギュンターに、賛成?」
レイファスがつぶやく。
「賛成も反対も、無いよね?」
ファントレイユは頷く。
その後、俯く。
「…でも…どっちかって言えば、賛成かな?
だってさっきのディンダーデンの時だって…」
と、アイリスやギュンターよりほんの少しだけ長身で、体格良くて怖そうなディンダーデンを、チラ…と見た後。
顔を下げて小声で言った。
「毒薬は使ってない。
って言っても、ゼイブンは信じなかったけど。
神聖騎士が本当だ。って頷いたら、ゼイブン納得した」
レイファスが口を開きかけたけど。
テテュスが先に言った。
「…でももし、君の取っておいたおやつが無くなって、僕が疑われて。
取ってないよ。
って言っても君に信じて貰えなかったら…僕、悲しいかな」
ファントレイユはそう言うテテュスに振り向く。
「テテュスの言った事、僕絶対疑ったりしない」
テテュスはぱっ!と顔を輝かせて、嬉しそうにファントレイユを見つめた。
レイファスはそれを見て、チラ…とギュンターを見る。
子供達の会話を聞いていた大人達と、それにローランデまでもが、一斉にギュンターを見るので。
とうとうギュンターは、よそを向いてバックレた。
「あんな先輩が居ると、大変だよね」
アイリスがテテュスの後ろでそっと言った。
「でも、ああいう部下が居るのも、とっても大変だ」
先頭でローフィスが大きく頷き、ファントレイユの背の後ろでゼイブンが怒鳴った。
「それは俺の事か?」
ローフィスは振り返らなかったし、アイリスはつぶやく。
「解ってたら、言う必要は無いと思う」
ギュンターより先に、ディンダーデンが唸る。
「アイリス。お前でも大変なんて事が、あるのか?」
皆が彼の言葉に振り向く。
ローフィス迄後ろを向いて、言った。
「アイリスはどれだけ大変でも、決して大変そうな顔をしない」
シェイルが継ぎ足す。
「…だから可愛げが無いと、皆思ってる」
アイリスはその評価に、ぼやいた。
「だって大変そうな顔したって、誰も私に代わって何とかしてくれる訳じゃ、無いだろう?
なら、全然余裕の顔した方がマシだ」
ギュンターが唸る。
「だが、周囲の理解と同情は得られるぞ?」
ディンダーデンも大きく、頷いた。
オーガスタスが、言った。
「無駄だ。
理解と同情で、事態が良くなると、アイリスは考えていない」
ディングレーが、頑健な肩と見事な黒髪を揺らし、面倒臭げに吠えた。
「いいじゃないか。
同情なんて買わなくても、結局奴は一人でやり遂げる才気があるんだから」
「…でも、大変なら私はいつでも、力に成るつもりがあるのに」
皆が一斉にそのローランデの言葉に、慌ててギュンターの顔色を伺った。
アイリスは尊敬する先輩の言葉に、微笑むとささやく。
「貴方の、そのお気持ちだけで十分なんです」
ギュンターが憮然と唸った。
「だ、そうだ。奴の力になる必要なんて無い。
どんな事でも切り抜けられて、周囲の理解も同情も、要らない男なんだからな!」
皆がギュンターの嫉妬心顕わなのを感じ、吹き出すのを我慢した。
が、ローランデはギュンターを見上げ、つぶやく。
「でも君にとっても、後輩だろう?」
ギュンターが怒鳴り返す。
「あいつの性格を、綺麗に忘れてるだろう?!」
シェイルが隣の親友に、すかさず言う。
「妬いてるんだ。ギュンターは。
奴はレイファスにまで妬きかけたんだから、君がそこ迄持ち上げたら、アイリスが今度はギュンターに、睨まれるだけだ」
ローランデは困ったように、ギュンターを見つめた。
アイリスはぼそっと零す。
「ギュンターにはとっくに睨まれてる」
ギュンターは頷くと、アイリスを見つめた。
「連中に、ローランデに本当に一度も手出ししてないか、確認を取ってもいいな?!」
ローランデが途端、憤慨した。
「どうしてそう、カンぐるんだ!」
ギュンターは言い返す。
「確認を取れば、もうカンぐらずに済むだろう?」
ローランデはかんかんだった。
「つまり、私の言葉を信用出来ないんだな?!」
ローフィスもオーガスタスも、ディンダーデンもディングレー、ゼイブンですらギュンターの事を、内心
『馬鹿な奴』
と思った。
当然、ギュンターはローランデに猛烈に怒られ、弱り切った。
レイファスはファントレイユを見た。
レイファスもギュンターが、お馬鹿な事を言ってローランデを怒らせたと分かったし、テテュスにも分かった。
けどファントレイユは人形のような、感情を出さない綺麗顔のまま。
テテュスはレイファスの表情から、それが分かって、そっと尋ねる。
「…ファントレイユ。
ギュンターに、賛成?」
レイファスがつぶやく。
「賛成も反対も、無いよね?」
ファントレイユは頷く。
その後、俯く。
「…でも…どっちかって言えば、賛成かな?
だってさっきのディンダーデンの時だって…」
と、アイリスやギュンターよりほんの少しだけ長身で、体格良くて怖そうなディンダーデンを、チラ…と見た後。
顔を下げて小声で言った。
「毒薬は使ってない。
って言っても、ゼイブンは信じなかったけど。
神聖騎士が本当だ。って頷いたら、ゼイブン納得した」
レイファスが口を開きかけたけど。
テテュスが先に言った。
「…でももし、君の取っておいたおやつが無くなって、僕が疑われて。
取ってないよ。
って言っても君に信じて貰えなかったら…僕、悲しいかな」
ファントレイユはそう言うテテュスに振り向く。
「テテュスの言った事、僕絶対疑ったりしない」
テテュスはぱっ!と顔を輝かせて、嬉しそうにファントレイユを見つめた。
レイファスはそれを見て、チラ…とギュンターを見る。
子供達の会話を聞いていた大人達と、それにローランデまでもが、一斉にギュンターを見るので。
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