アースルーリンドの騎士 幼い頃

あーす。

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第三章『三人の子供と騎士編』

盛大にごった返す屋敷内

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 浴場を出ると、テテュスはディングレーに抱きついた。
「同じ、香りだ!」
ディングレーは笑ってテテュスを抱き上げ、その頬に顔を寄せて香りを嗅ぎ、言った。
「うん…同じだな!」
いつもは滅多に、にこりともしない強面のディングレーが、心から笑う様子を。
ギュンターもゼイブンも目を丸くして見た。
「…あいつ、実は子供好きなのか?」
ギュンターの問いを聞き、ローフィスは馬の側で手綱を引くと、二人に振り向き、素っ気なくつぶやく。
「そうらしい」

ディングレーはテテュスを腕に抱いたまま、三人に振り返る。
「だってテテュスは、可愛いだろう?
アイリスの息子に思えない」
皆が一斉にアイリスを見、途端彼は、顔を下げきった。



 果樹園から庭に戻ると、ごった返しが収まりつつあった。
数人の騎士が行き来し、召使い達に飲み物を振る舞われ、屋敷では大勢の召使いが忙しく、血の付いた外階段やテラスを拭いている。

だがアイリスや騎士達を見つけると、皆が微笑んで会釈した。
まるで嵐から護ってくれた守護神に、心からの感謝を捧げるみたいに。

庭で報告を受けていたライオネスが、アイリスを見つけ、顔を上げる。
「…報告を受けた酒場にも出向き、縄打たれた賊を逮捕し、総勢が62名にものぼる」

オーガスタスが、ため息混じりにつぶやく。
「思ったより、少ないな」
ライオネスが、オーガスタスを呆れたように見た。
「剣士じゃなく、盗賊なのに?
剣士より厄介でしょう?」
ディングレーがぼそりとつぶやく。
「それは確かにそうだ」

「奴ら、金品を奪う為にあまり真剣に立ち向かって来ないで、時間稼ぎばかりしませんか?
あなた方のような強い相手には、余計にそうでしょう?」
ギュンターは下向き、吐息を吐く。
「…マトモにかかって来たのは、俺が賞金首だと知って、追いかけて来た時の、奴らだけだ」
ライオネスが、頷く。
「最近この辺りを狙う一味の間で、近衛、もしくは中央護衛連隊の騎士に賞金がかかってる。
隊長を仕留めれば大金が貰えるそうだ。
一度連中に、情報を流さねばと思っていた矢先だ」
ギュンターが、思わず顔を上げる。
「情報?」
ライオネスは頷く。
「軍は長が死んでも、幾らでも後釜が居る程層が厚く、幾ら殺しても無駄だと」

ギュンターは近衛の名物色男、年上の部下、ディンダーデンと同じ濃紺の瞳をした、が、その弟よりも年長で、うんと落ち着きのある、若々しく凛々しいライオネスを見た。
「…だがあんたが狙われて死んだら、美人の奥さんが泣き崩れるぞ…」
ライオネスは癖の無い艶やかな濃い栗毛の長髪を揺らし、ギュンターを、そっと見た。
「ソフィスに、会ったっけ?」
ギュンターは、頷く。
「一度だけ」
ライオネスは笑った。
「君の記憶に残る位の美人だから、彼女の後を引き受ける男も多数居るだろうな」
ギュンターは俯くと、ぼそりと言った。
「だが彼女はあんたにぞっこんだ。
いつ死んでもいいように言うのは、彼女に残酷だろう?」
ライオネスはついそっと、ギュンターに顔を傾ける。
「別に彼女に、惚れてないだろう?」
ギュンターはその男を見て言った。
「惚れて無い俺ですら、気の毒と思う程だ」

それを聞いた途端、ライオネスは言葉を慎み、ギュンターの気遣いに微笑んだ。
「覚えておこう」
ギュンターは盟友、ディンダーデンが秘かに惚れてる兄嫁、ソフィスを思い浮かべ、小声でささやいた。
「そうしてくれ」

ライオネスはその場を去ろうとし、立ち止まる。
「…弟…ディンダーデンは君に、面倒をかけているか?」
皆がつい、その会話に振り向いて聞き入る。
ギュンターは静かにつぶやいた。
「俺の部下…と言っても…。
面倒見られてるのは、俺の方だ。
彼が居なければ俺は、負傷した部下を担いで仲間の元まで、戻れなかった事が、多々ある」
ライオネスは、笑った。
「“金髪の守護者"の異名を取る君の、それは大層な評価だな?」
ギュンターは素っ気なく言った。
「だが、事実だ。
本来は彼が。
隊長を任ずる筈だが、他人の面倒を見るのが大嫌いで自分に向かないと、俺に譲った。
俺が死んだら今度こそ自分が隊長を引き受けるしか無いから、仕方なく俺を、護ってる」

ライオネスは、くすくす笑った。
「…無茶をするなと、伝えてくれ。
それと女遊びは控えるようにと。
次々に隠し子が発覚しても、俺は面倒見ないとも」
ギュンターは肩をすくめた。
「伝えておこう」

ローランデ始め、皆がギュンターを見つめながら、歩き来るギュンターを迎える。
ギュンターが、ローランデの横を通り過ぎ様、そっと告げた。
「覚えてるだろう?
ライオネスは俺の同じ隊の、ディンダーデンの兄貴だ」
ローランデは、頷いた。
シェイルがそれを聞き、びっくりしてライオネスを見つめ直す。
「本当に、血が繋がってる?!」
オーガスタスは、俯き加減で頷く。
「兄貴は愛妻家で、弟はギュンターとつるんで、酒場で女を口説く楽しみを男達からかっさらう、遊び人か」
ゼイブンも唸る。
「ディンダーデン?
都の酒場で女達から、よく聞く名だ」
オーガスタスが肩をすくめ、ゼイブンはその素晴らしく背の高いオーガスタスを見上げ、尋ねる。
「長身で体格のいい、アイリスみたいな焦げ茶の髪の、いけすかない流し目の色男だろう?」
ギュンターはハスにゼイブンを見た。
「お前にいけすかない色男と呼ばれてもな」

ディングレーは、二人を見て思わず言い捨てる。
「女を取っ替え引っ替え遊ぶ所は、ギュンターも含め、どんぐりの背比べだ」
ゼイブンとギュンターはお互いを見ると、互いを指さし、怒鳴り合った。
「こいつと、一緒にするな!」

二人の声が揃って、全員の笑い声が、上がった。



 朝日差す朝食の席で、ライオネスはアイリスに、やはり丁重な態度を取った。
「最近この辺りにアジトを構えた一味で…一通り見回って、そのアジトも突き止め出向いた。
が、数人が奪った金品の見張りの為に、残っていただけだった」
皆は腹ぺこだったので黙々と食事を口に運んでいたが、アイリスだけは食事の手を止め、彼に顔を傾け、ささやく。
「…屋敷の東側の石塀にどうやら、大きな裂け目があったようで…」
ライオネスは笑った。
「召使いが下僕に草刈りを命じた際、どうやら裂け目を隠していた茂みも一緒に、刈ってしまったようで…。
それが昨日の昼だそうだ。
その夜襲われるとは、運が悪かったですね」

それを聞くなり、皆が顔を一斉に上げる。

アイリスが顔を上げると、給仕をしていた侍従の一人が、その責任者を呼ぶかどうか、緊張の面持ちで主人の顔色を、伺った。
アイリスは顔を下げ、ライオネスにつぶやく。
「運が、良かったんでしょう…。
この辺りを荒らし回る賊を、一晩で駆除出来たんですから」

執事がアイリスにそっと近づき、屈む。
「…でも、妹様のご子息を危険に晒したのですから…。
問題の男達をいつでも別室に、お呼び致します」
だがアイリスはその、柔らかな栗色の鼻髭を蓄えて品のいい執事に、笑いかけた。
「ジャンス。
罰則を危惧してるのなら必要無いと、その男達に伝えなさい。
彼らは命じられた仕事をしたまで。
だいたい、盗賊達を連れて来たのは近衛の騎士なんだし。
草を刈った男を罰したりしたら、騎士らの責任まで、問う事になる」

皆の視線が一斉集中したギュンターは、俯いて、大きな吐息を吐き出した。

「しかし、近衛の騎士はちゃんと襲撃した賊を、払っていらっしゃるではありませんか」
アイリスは微笑を浮かべたまま、すかさず返答する。
「それは別の話だ。
戦うのは騎士の務めで、君達は危険を避けるのが役目。
その役目を危機の時、皆が果たしたのだから。
それはそれでいい」
「しかし…裂け目をそのまま放置した責任は私に、あります」
アイリスはますます、笑った。
「別室に男達を呼ぶと言っておいて、いざと成れば君は責任を全部、自分が負う気だったな?
では責任を取り、裂け目を閉じて置いておくれ」
執事は主のその命令に、少し感激の面持ちを伺い見せ、その後丁重に頭を下げた。

だが、まだその場を動かないジェンスに、アイリスは言った。
「…罰はそれだけだ」
ジェンスは少し困惑の表情を見せて、小声で意見する。
「でもそれでは、示しが付きません」
アイリスは顔を上げ、斜め後ろに立つジェンスを見た。
そして彼に顔を寄せ、屈むジェンスに、こっそりささやく。
「召使いを統率するのに、不便かい?
じゃ、私にたくさん、見えない場所をぶたれたと。
びっこを引くなり、演技したまえ」

皆がそう言う呆れたアイリスに目を丸くし、声を落として笑った。
ジェンスは笑顔で“演技しろ"と促す、甘い主人に一つ、ため息を付くと、そっと頷いた。
「努力いたしましょう」
アイリスが、そうしてくれ。と頷き返す。

見るとライオネスはすっかり笑いに、入っていた。
「いきさつは良く、知らないが…」
アイリスがすかさず尋ねた。
「賊達は、何と言っています?
近衛の騎士を仕留めて、屋敷で宝も手にするつもりだったと?」
ライオネスが真顔に成る。
「賊達が言うには、近衛や中央護衛連隊の騎士を仕留めたり、名のある屋敷を襲撃して成功すると、盗賊集団の名が上がって、同じ宝物を持っていっても商人達は名のある盗賊に、余分に金を払うそうです」

オーガスタスは俯く。
「…そういう商人は、盗賊よりタチが悪い。
盗賊をアースルーリンドに焚き付けているのは、大抵が悪徳商人だ」
ライオネスも、頷く。
「綺麗な子供。
それに、装飾品や織物。
他国と交流が無いので、アースルーリンドで奪った物品は他国では、それは高価な値で取引されるから、商人も盗賊も、この地の物を奪うのに目の色変える」
ディングレーが、唸った。
「アースルーリンドの品を取引する大きな結社が、他国にあると聞いたが…国外じゃ我々は、どうしようも無いしな」

アイリスは、子供達がじっと聞き入る様子を目に止め、眉を顰めた。
「…もう、よそう。子供達が不安になる」

三人はいきなり視線が自分達に集まり、ぎょっとして、慌ててスプーンを取って口に運んだ。
レイファスが、言った。
「でも、そういう奴らから人を護るから、騎士はみんなに尊敬されてるんでしょう?」
ライオネスが、その愛らしい子供の質問に微笑む。
「まあ…そうだ」
アイリスはライオネスに微笑みかけ、説明した。
「彼らは皆、騎士に憧れてるので」

ライオネスは改めて自分を見つめてる、三人の子供を見返し、そっと言った。
「大した剣の教師がたくさん居るから、羨ましい限りだ」
だが、ローフィスがぼやく。
「人間的に手本に成るかどうかは、別にして」

途端、ゼイブンとギュンターがほぼ同時に、顔を上げる。
「…それは、俺の事か?」
ギュンターが言うと、ゼイブンも口を開く。
「これはこれで、いい手本だろう?」
ローフィスは喚く二人を見、肩をすくめた。
「…誰とは言わなくても、身に覚えのある奴は自(みずか)ら、名乗り出る」

その言葉に二人が思い切り顔を下げ、知らんぷりをしたがもう遅く、皆にくすくす笑われた。


 だが朝食後、まだ庭で後片づけを続ける召使い達を見、ローランデは子供達に少し眠っていいと告げた。
テテュスが、異論を唱える。
「眠く、ありません」
ローランデは優しく笑う。
「庭はまだ使えないし、君達は夕べまともに眠って無いだろう?」
アイリスもささやいた。
「皆、夕べの戦闘で疲れている」

皆はこれくらいの事はしょっ中で平気だったが、アイリスに視線を送られ、わざとらしく欠伸をしたりし、眠そうなフリをした。
「夕べ一晩戦ったから、彼らも休ませないと」
が、アイリスの言葉にファントレイユが、ムキに成って言った。
「…でも、ローランデは平気でしょう?」
ローランデは微笑むと、彼にそっと屈む。
「睡眠不足の君達と剣を交え、間違って傷つけたりしたら、君に無関心なフリをしているゼイブンに絶対、睨まれるからね?」
ゼイブンはそれを聞いて俯き、大きなため息を、吐いた。

ファントレイユは夕べ、盗賊に捕まえられると思った瞬間。
自分の前に滑り込んで来てくれた、ゼイブンの広い背中を思い出すと、顔を揺らした。
そして顔を上げ、ローランデに尋ねる。
「ゼイブンは、立派な騎士ですね?」
ファントレイユが言うと、ゼイブンは慌てて、顔をファントレイユに向けて叫ぶ。
「騎士はあれが出来て、当たり前だ!」
だがローランデは、微笑んで頷いた。
「とても、立派な騎士だ」
ゼイブンはローランデを、睨んだ。
「レイファスは大好きだそうだが、俺は貴様が大嫌いだぞ!」

オーガスタスが笑った。
「照れるからな!」
ローフィスも振り向く。
「恥ずかしいしな!」
ディングレーは、気の毒げに俯いた。
「誉められると実は、身の置き場が無いんだろう?」
ゼイブンはすかさず言った。
「お前らも、嫌いだ!」
ギュンターが、睨んだ。
「好きだなんて言われちゃ、大迷惑だ」

レイファスはつい、その様子を見てつぶやく。
「ゼイブンとギュンターって、本当は仲が、良いんだね」
皆は一斉にその言葉に振り向き、テテュスは目を丸くした。
「だってしょっ中、喧嘩してる」
「でも、夕べ一緒に酒場に行ったし。
本当に仲が悪いと、喧嘩もしないで口を、きかなくなる」
シェイルが途端、全開で笑う。
「確かに、そうだ」
「レイファス。
その見解だけは、今後の俺とお前の為にも、引っ込めといた方がいいぞ」
ギュンターが静かに言って、レイファスは肩をすくめた。
「どっちも遊び人だから、こだわりがある?」
ギュンターが、唸った。
「俺はこいつの、ヘンな所だけ要領がいいのに我慢出来ない!」
ゼイブンは肩をすくめる。
「俺はお前がいつ牙を剥くか解らない猛獣だから、扱いに気を使って疲れる」
「嘘付け!」
また、始まった。
と、皆が言い争う二人を放ってその場を一斉に離れ、アイリスとローランデとシェイルが、面白そうに見つめる子供達を、寝かせ付ける為に引っ張って行った。


彼らが去った後、ローランデの消えた背を、じっと追うように見つめるギュンターに、ゼイブンは大きな吐息を吐くと言った。
「…らしく、ないな?」
ギュンターが唸った。
「言ってろ」
ゼイブンは肩を、すくめた。
「俺なら、指を銜えて眺めて無い」
ギュンターが、きつい紫の瞳で振り向いた。
「お前ならだろう!」
ゼイブンは銀に近い栗毛を揺らして俯き、思い切り吐息を吐き出し、言う。
「こっそり上手くやる方法を、知らないのか?」
ギュンターが腕を組んで余所を、向いた。
「方法が、あるか?
どこにローランデを連れ込むか、アイリスにバレバレだろう?
奴の屋敷なんだから!」
ゼイブンは思わず顔を上げる。
「…なんだ。不案内なのか?
領地の外の、酒場の反対側の道をずっと行くと。
細い折れ道が、右に見える」
ギュンターはここに来た時、その道を見た事を思い出した。
「直ぐ行けば、屋敷に出る手前の道か?」
ゼイブンは頷くと、先を続けた。
「小さな東屋がある。
だがアイリスの持ち屋だから、小さいといってもロマンチックで豪勢な建物だ。
正面の裏側の窓の鍵が壊れてるから、侵入は簡単だ」

ギュンターは頷くと、つぶやく。
「流石に、そういう場所を押さえるのは慣れてるな?」
ゼイブンも、頷いた。
「セフィリアに、昔はよくここに引っぱり出され、数日宿泊し、息抜きが必要だった」
ギュンターはまた、頷く。
が、俯いた。
「で?…だが俺はローランデの、側にも寄れない」
「俺なら、呼び出せる。
それにどうせ皆は子供と一緒に昼寝か、酒を飲んでくつろぐ気だろう?」
ギュンターが、顔を、上げる。
「どういう了見だ?同情か?」
「…まあ、方向性は全く理解出来ないが、禁欲の辛さだけは、解る」
ギュンターはゼイブンを見、ゼイブンもギュンターを、見返した。



 ローランデはシェイルとアイリスと共に、子供達と一緒の客用寝室の寝台で転がり、くつろいで居た。
他の連中は思惑通り、続きの間でくつろぎきって、酒を飲み始めてる。

ゼイブンは部屋の戸口でこっそり、ローランデを呼んだ。
ゼイブンの手招きに気づき、ローランデは戸口から顔を出すゼイブンの元へ行くと、ゼイブンはローランデを廊下に導いた。
「…話か?」
廊下に出たローランデにそう聞かれ、ゼイブンは部屋の扉を閉めて彼の正面に立つと、頷く。
「ファントレイユの事だ」
ローランデは微笑んだ。
「やっと真面目に取り組む気に成ったのか?
確かに仕事柄そうそう出来るとは思わないが、それでも一緒に居る時、少しでも様子を見れば…」
が、足音を殺す男、ギュンターが背後からふいに忍び寄る。

ローランデは油断仕切っていたが、咄嗟に振り向いたものの鳩尾を殴られ、気絶してギュンターの腕にぐったりと、身を、投げた。
ゼイブンはそれを見て、目を、見開いた。
「…皆がお前を、遠ざける筈だ。
惚れた相手によくそんな、手荒なマネが出来るな?」
ギュンターは、肩をすくめる。
「女じゃないし。
気絶するツボを、軽くはたいただけだ」

「……………………軽く?」
とてもそう、見えなくて。
ゼイブンは何か、言おうとしたが、ギュンターは気絶したローランデを肩に担ぐと
「後は、任せる」
と言って、さっさと背を向けた。

ゼイブンは事の次第が皆にバレると、自分が言い出したと申告しなけれゃならなくて、だがどうせ、ギュンターは自分と違ってこっそり上手くやるタイプじゃないし絶対バレると感じ、青冷めて固まった。

無言で、部屋に入るとアイリスに聞かれる。
「ローランデは?」
ゼイブンは、もうここでバラした方が良いかも。
とは…一瞬思った。
が、思考回路がどこまでも遊び人の味方。
のゼイブンは、結局それを口に出来なかった。

「…ああ…。ちょっと用が、あるそうだ」
シェイルは欠伸をし、レイファスと一緒になって、眠りこけた。
アイリスは幸せそうにテテュスの添い寝をし、ファントレイユはゼイブンが横に転がると、嬉しそうに横に、寝そべった。
「…抱きついたら、気持ち悪い?」
ファントレイユにつぶらな瞳で聞かれ、ゼイブンはつぶやく。
「白状しろ。本当は、怖かったんだろう?夕べ」
だがファントレイユはゼイブンを見ると、即答した。
「ゼイブンが僕の事、うんと大事って認めたら、白状する」
ゼイブンはため息と共に、思わずつぶやいた。
「…白状、しなくていい」



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