アースルーリンドの騎士 幼い頃

あーす。

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第三章『三人の子供と騎士編』

12 ゼイブンの剣

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 ゼイブンは講義を見て、感心した。
まるで軽い体操のように、ローランデはテテュスとファントレイユの剣を同時に受け、次いでレイファスとテテュス。
レイファスとファントレイユ。
と、二人ずつを相手に余裕だった。
「…大したもんだ。10人があっという間に死ぬ筈だ」
感心するゼイブンに、ディングレーがそっと尋ねる。
「で、あんたは一度も、教えて無いのか?」

ゼイブンはその男らしい、男前の王族を睨む。
「自分が死なないタメの訓練以外にどうして、剣なんてぞっとするシロモノを持たなきゃならないんだ?
持つなら女の腰がいいに、決まってるだろう?」

皆がゼイブンの徹底ぶりに、呆れ果てて吐息を吐いた。
「…良くそこ迄女の事だけで、頭が一杯に出来るな」
ゼイブンはそう言う金髪美貌の野獣(ギュンター)を、はすに見つめた。
「…あんたはトチ狂ってあの、凄腕の剣士に惚れて以来、彼の事で頭がいっぱいなんだろう?
俺の事、言えるのか?」

皆の視線が集まり、ギュンターは肩で息を吐くと、肘をテーブルに付けて前髪に触れる仕草で顔を隠し、俯いた。

それ見た事かとゼイブンに頷かれ、ディングレーがギュンターを肘でどつく。
「本当に、反論出来ないのか!」
オーガスタスが、無理だろう。と顔を下げきる。
ローフィスが俯いて、大きなため息を吐きだした。

が、ファントレイユがかなりの気迫でローランデに一撃を放った時、ようやくゼイブンは息子を見つめる。
テテュスの方が明らかに、剣士としてその剣捌きは勝れていた。
アイリスよりも真っ直ぐな気性で、だがその独特の溜めや間、そして剣を振る時の優美さは、荒削りではあったが確実にアイリス譲りだ。
そして、一瞬の鋭さも。

だがファントレイユは、テテュスに負けない気迫の持ち主で、一瞬、静止したように気を溜め、そして鋭く突っ込む様は確かに幼いながら、並外れた迫力があった。

「…生き残れそうだな」
ローフィスに言われ、ゼイブンは息子を見つめた。
確かに小さかった。
が、ちゃんと凛々しい騎士に見えた。

ゼイブンはそれでもため息交じりに言葉を吐き出す。
「…俺はちゃんと親心があるから、苦労させたく無い。
セフィリアの気持ちは解る。
餓鬼の頃病気がちで、ずいぶん他の餓鬼より苦労してる。
進路次第でこの先、楽して楽しい人生を、幾らだって送れるんだ。
だが…確かにそれで済む、度量じゃ無いようだ」

オーガスタスが、頷いた。
「あれでやり用を覚えれば…器用で頭がいい。
剣の腕だけで無く、他の手を使って勝てるだろう」
ディングレーがぼやく。
「あんたやギュンターのような、半分喧嘩のような剣術か?」
ギュンターが肩をすくめた。
「相手がへなちょこなら、足を掛けて転ばし、気絶させた方が早いだろう?
俺だってゼイブン同様、剣を振ったら殺しちまうからな!」
ゼイブンが、ギュンターを睨んだ。
「だがあんたは殺しても気分が落ち込んだりは、しないだろう?」
ギュンターは唸った。
「へなちょこを斬り殺すと俺だって、落ち込むさ」

それを聞いて、ゼイブンが目を見開く。
「…なんだ…」
皆がゼイブンを見た。
「…俺だけがびびりじゃ、無いんだな。
あんたみたいな勇猛な男でも、そうか?」
オーガスタスは言い諭す。
「それはびびりじゃなく、ちゃんと良心があるって事だろう?」
だがゼイブンは俯く。
「…生死を分かつ戦場で、良心が役に立つか?
ともかく、相手を殺しゃ、勝ちなんだ。
俺は『私欲の民』の略奪を、餓鬼の頃見たが最悪だった。
命乞いする年老いた男迄殺す。金の指輪を奪う為に。
奴らに人間は見えていない。見えてるのは、金に成るかどうかだ。
そして金になりゃ…殺して略奪する。
…良心の役立つ隙が、どこにある?」

ディングレーが吐き捨てるようにそう言うゼイブンの横顔を、思わず見た。
綺麗な鼻筋の、整った美男の色男を。
オーガスタスが少し労りを見せて、尋ねる。
「…子供の頃で、怖かったのか?」
ゼイブンはオーガスタスに振り向く。
いつも親しげな微笑の、大らかな男は真顔に成ると、その体格に似合わぬ小顔で、鳶色の瞳がとても暖かく、ずいぶん端正に見えた。
「…いや。だが殺し合いがどういうものか、解った。
追いつめられた盗賊が命乞いし、それを受け入れて背を向けた騎士のその背を、盗賊が刺し貫くのを見たしな。
…つまり、気を抜けば生きられない。
ずっと、自分を殺す相手に気を配り続けるのは、くたびれ果てる作業だ。
俺は楽天的で気楽な男だから…。戦場でそれはまずい。
だから…出来ればずっと、お気楽でいたいんだ」

ローフィスが、俯いた。
「…誤解されがちだが、ゼイブンはこれでも正義感が強い。
もめ事は大嫌いだと言いながら、女、子供、老人は結局、護ってる」
だがそう言うローフィスを、ゼイブンは睨んだ。
仕方無しに、ローフィスはため息混じりに付け足す。
「…だがそう評価されるのが大嫌いで、ファントレイユとレイファスを盗賊から護ったとしても、尊敬されたりするのは嫌なんだろう?」
ゼイブンは、頷いた。
「息子を護るのは当然だし、俺はいつだって弱い者を護るべきだなんて、思ってない」
ディングレーが呆けた。
「…それでどうして、護ってる?」
ゼイブンがいきなり怒鳴った。
「俺だって知るもんか!見てられなくてつい勝手に体が動いてる!
自覚してやってんなら、評価されて当然だとは思う。
だが気づいたらしてた事で、感謝されてもな!
重いんだよ」
「…ヘンな奴」
ギュンターがぼそりと言い、ゼイブンが睨むが、オーガスタスは笑っていた。
「…つまり、人が良いんだ。が、そう思われたく無いんだろう?」
ゼイブンはぶすっとした。
「アテにされても困る。お気楽でいい加減な女好きで十分だ。
俺は清廉潔白で、誰の期待にも応えるローランデとは違うからな!」

途端、皆が一斉に黙った。
つい、ゼイブンが皆の顔を見回す。
「…どうした?」
ディングレーがぼそりと告げる。
「ローランデのようには誰も、成れない」
オーガスタスも大きく、頷く。
「ありゃ、餓鬼の頃から使命を叩き込まれてる」
ギュンターは頭を抱えた。
「自分より、領民の命の方が大切だ」
ローフィスが、大きなため息で“同感だ"と告げた。

「…どうして私の話に、成ってる?」
その声に、全員が座ってる椅子から、飛び上がりそうに驚いた。
見るとローランデは剣を下げて、テーブルの前に立っていた。
「…肩慣らしは終わった。
ゼイブン。剣を持って来てくれ」
名指しで言われてテーブルの皆の視線を浴び、彼は息子、ファントレイユのあどけない瞳が、じっと自分を伺う姿を目に、凄腕の剣士を見ないでぼやく。
「…俺に、息子の前で恥をかけって?」
だがローランデは素っ気なく言う。
「恥をかくかどうかは、君次第だ」

ゼイブンはくるりと背を向けるローランデの取り澄ました端正な横顔をチラと見、オーガスタス、そしてギュンター、ディングレーを順に、見た。

「…お前の番だ。俺もやられた」
ディングレーが、ゼイブンに告げる。
ローフィスは、さっさと椅子を立て。と肘で小ずく。
ゼイブンは仕方無しに立ち上がると、テテュスの横に居るアイリスに怒鳴った。
「…何とか、しろ!」

アイリスは肩をすくめて応える様子が無く、ゼイブンは俯いて、首を横に振った。
レイファスの横に居たシェイルが、腕組んだ。
「剣持って突っ立ってろ!ローランデが勝手に、捌いてくれる」
ゼイブンは彼を睨んで、歯を剥いた。
怒りながら、剣を持つローランデの前に立ち、シェイルから剣を受け取ると、その刃先を見て怒鳴った。
「…潰してないぞ!真剣だ!」
シェイルは頷いた。
「だからギュンターも怪我をした」

ゼイブンは剣を持ったまま、固まった。
「…冗談だろう?」
顔を上げて向かいのローランデの顔を伺うが、文句無く端正な貴公子は、真顔。
青い瞳で真っ直ぐ、見つめてくる。

アイリスが、口開く。
「…せいぜいローランデの剣でなぶられて怪我でもし、女の事は暫く忘れて息子の事でも、考えてやるんだな」

かっ!と怒った感じが、した。
がゼイブンの表情はまるで変わらない。
その、動作も。
だがブルー・グレーの瞳が冷たく、アイリスを見据え続ける。

「君の相手はこっちだ」
ローランデが声を掛ける。
が、ゼイブンの視線はアイリスから離れない。
アイリスはゼイブンの真っ向から向ける眼差しを受け、微笑をもらすとローランデに言った。
「…この通り、侮辱されると本気に成る」

テーブルの男達は一斉にローフィスを見た。
が、ローフィスはその通りだ。
と、頷いた。

ディングレーが、さっき迄話してた時と、表情のガラリと変わるゼイブンの様子に、思わず感想を漏らす。
「…真顔だと、ずいぶん美形に見える」
オーガスタスが笑った。
「いつもふざけてて、一時も真顔じゃないって事か?」
ギュンターが、そう言うオーガスタスをチラリと横目で見た。
「…顔立ちが綺麗でも、そうは見えない奴は大勢居るぜ」
オーガスタスがギュンターを、見返す。
がギュンターは続けた。
「真顔に成ると毎度、あれこいつ、かなり整った顔してるな。
と、突然気づくんだ」
言われてギュンターの紫の瞳で見つめられ、オーガスタスは吐息を短く吐いた。
「…それはもしかして、俺の事か?」
ギュンターは、ディングレーも見た。
「…俺もか?」
ギュンターはため息付いた。
「ごつくてがさつなイメージを、いつも裏切られる」
ディングレーとオーガスタスは、顔を見合わせて肩をすくめた。

ローフィスは頬杖して意見する。
「お前自身はその綺麗な顔が真っ先に目に入るから、がさつだとかごついは、後から沸いて出るもんな」
ギュンターが腕組み、明るい栗毛と青い瞳の、優しい凛々しさを持つローフィスを睨んだ。
「願ったりだ」

ファントレイユはゼイブンが、見た事も無いほど真剣な表情をしてるのに見入った。
…表情が引き締まると、ブルー・グレーの瞳が輝きを放ち、ギュンターと並んでも遜色無いほどの美男に見える。

ローランデがささやく。
「剣が嫌いなら、私に斬り殺されても、仕方無いな?」
ゼイブンが、そう告げるローランデを見つめ、刃先を潰してい無い剣を、軽く握り直す。

レイファス迄もがつい、そのいつも陽気な男の真剣な顔が、本来の顔立ちの美しさを見せつける様子を、呆けて見つめた。
ずいぶん怒っているようなのに…だが、笑った。
「通常通りの戦法で、いいんだな?」
ローランデは頷く。
ゼイブンは心の中で、そっとささやく。
“さすがにこの男だけは、敵に回したく無いが、そうも、いかないようだ"

その誰もが認める凄腕の剣士を目前で敵として迎えると、今まで戦っていた100人を相手にしたような、大きさがあった。
正面に相対し、その“強さ"をびんびん感じる度、怒りがふつふつと沸き上がる。
ゼイブンが、真剣腹の底から、自分をこの状況に叩き込んだアイリスとローフィスに怒りまくってるのを、彼らは知っていた。
が、怒れば怒る程ゼイブンはそれを、見せない。
彼は怒る時、それは静かに腹を立てていた。
普段陽気で隙だらけの男が、その隙を全く無くした時。
彼はぞっとする程冷たい男に見えた。

ゼイブンの、薄い髪の色もその淡いブルー・グレーの瞳も、いつもは優しささえ感じさせる、とても柔らかい印象なのに。
今はその全てを取り払い、冷気を纏い冷酷さすら、感じさせる。

「…何でも、有りだな?」
そう、微笑を浮かべローランデに告げるゼイブンは、背筋が凍るような冷気を帯び、ファントレイユはゼイブンのそんな姿を、初めて目にして凝視し、レイファスはいつも陽気な男が温度を失う様子に言葉を無くした。

テテュスはその綺麗な顔立ちから放たれる、氷のような微笑が『死の大天使』のように見えて、恐怖すら感じ、秘かに震う。

が、対するローランデに怯む様子は微塵も無く、皆がゼイブンの変わり様にも動じないローランデに、心から感動した。
ゼイブンが、ローランデに体を横向けた瞬間、短剣がローランデの顔めがけ放たれていた。

がっ!
ローランデは予告無く、投げる様子すら伺わせないゼイブンの急襲に感心したものの、難なく剣を立ててそれを顔の前で弾く。
レイファスは次にゼイブンの長剣が襲い来ると思った。
が、ゼイブンは直ぐ、次を投げていた。

次。また次。
ゼイブンは相変わらず、全く投げる素振りすら見せずローランデを見据えたまま、ゆったりと歩を進めて一気に襲わない。
が、ローランデは彼が、シェイルにも劣らない短剣使いだと気づく。

その振りは全く、剣筋を読ませないどころか、いつ投げたのか、気づかぬ程のさりげなさだ。

軽く肩が上がり、下げた手首が微かに振れた、だけで。
もう、短剣は飛んでいた。

ゼイブンはローランデが、流麗な動作で左の脇差しを抜き様銀の弧を描き、一瞬で自分目がけ走る銀の閃光を、次々に叩き落とす様子を見。
右に持つ剣を下に下げたまま、少しずつ歩を進めながら次、そしてまた次の短剣を放つ。

「…接近戦は不利だと読んだか」
ディングレーが言うと、ローフィスもローランデを見つめながらぶっきら棒につぶやく。
「俺だって、嫌だ」
オーガスタスもギュンターも、その言い草に肩をすくめた。

早い…。
ローランデは短剣を叩き落としながらもゼイブンの動向を見守った。
左肩が後ろに下がったと思うと、いきなり不意打ちのように短剣が急襲する。
がっ!がっ!
二本が立て続けに飛び、ローランデが左右の剣を振って弾き、が一瞬の隙に真正面から、胸目がけて飛ぶ短剣が視界に飛び込む。

瞬間、良く訓練されたローランデの右肩が後ろに下がり、胸を狙う短剣がそれた、その一瞬だった。
ローランデは直ぐ体勢を戻すと、上から振り下ろされるゼイブンの長剣を頭上で、受けた。

がっ!
だが直ぐに左手から、体めがけて潜り込むように飛ぶ短剣を、長剣を頭上で受け止めたまま体を思い切り捻り避けると、崩れた体制めがけてゼイブンが、瞬間長剣を振り上げて二度目を振り下ろす!

がっ!
ローランデは殆ど膝を付く程低く、そして仰け反るようにして頭上を襲うゼイブンの長剣を、右手の剣で受け止める。
ファントレイユもテテュスも、レイファスも、ローランデが一瞬でも気を抜けば切って捨てられる勢いの剣を、それでもぎりぎりで受けるのを見つめ、息を飲んだ。

ローランデ相手に、ギュンターやアイリスですら、攻撃出来なかったのに…!

がちん…!がちん!
二度、三度。
火花を散らしながら襲い来るゼイブンの長剣を頭上で受けるものの、吐息を付く間すら与えず、ゼイブンの左手が一瞬視界から消えた途端、銀の閃光が自分の右脇目がけて二つ、突っ走るのを目にし、ローランデはゼイブンの長剣が頭上から離れた一瞬で、左右の剣を持ち替え、襲い来る短剣を右手に持つ脇差しを振り、クロスして叩き落とした。

が、次の瞬間再び長剣が、左胴を凪払う激しさで振り込んで来、ローランデはその剣を、左に握る長剣を立てて瞬時に止め、次いでやはり腹を狙う短剣も、右の剣で振って叩き落とす。

ゼイブンが長剣を後ろに引いたと思うと、いきなり脇に銀の輝きが見え、腹目がけて突き入れる剣とほぼ同時。
右肩を狙う短剣が、ローランデに向かい走る。

ローランデは左足を、一歩後ろに引き様左肩を後ろに捻り、腹を突く剣を避けると同時、右肩に襲い来る短剣を、脇差しで弾いた。

が途端、今度は重心をかけた右腿めがけ、短剣が飛ぶ。
ローランデは咄嗟に飛んで背後に下がると、脇差しを下へと振って短剣を弾き、次に一気に間を詰めて左肩を凪払う長剣を、左手に握る長剣で、がっちり、音を立て止めた。

息付く間無く再び短剣が腹を襲い、ローランデは右手の剣を、横に凪払って弾く。

ギュンターが唸った。
「…あいつ(ゼイブン)と喧嘩すると、ヤバい事に成るな」
オーガスタスが、頷く。
「死ななくても、大怪我だ」
ディングレーはつい、眉をしかめた。
「アイリスもそうだが、在学中はあんなんじゃなかったぞ」
ローフィスが、彼らを見た。
「…そりゃ、神聖神殿隊付き連隊に入ってから磨いたんだろう?
死にたくない一心で」

「…ローランデが…」
テテュスが言うので、アイリスが頷く。
「いつもと、逆だね?」
テテュスは、頷いた。
攻められてるのはローランデで、仕掛け続け、手を休めないのはゼイブンの方だった。

ファントレイユはゼイブンが本領発揮する様子を、固唾を飲んで見守った。
ローランデの、一瞬の隙も見逃さない。

ローフィスがぼやいた。
「…きっちりキレてるな。あいつ。
安心しろ。キレてなきゃあんなに手強く無い」

皆がローフィスを、見た。
その止まる事の無い、長短の次々繰り出される速攻を、ローランデはそれでも怯まず受け止め続け、ゼイブンに挑む瞳を向けるのを止めない。
が…。
ゼイブンに少しも、焦りは無かった。
これだけ続けても、ローランデは全部、避けるか叩き落とすのに。
まるで…相手が動作を止める迄、攻撃の手を抜かない。
と言うかのように、とても冷静に、ローランデの動きに併せて出来た隙に間髪入れずに短剣を叩き込む。

レイファスはゼイブンがベルトに仕込んだ、とても細く小さな短剣を、その指先で軽く掴み、柔らかく手首を使って一瞬で投げるのを、見続けていた。
軽く肩を下げたと思ったら、短剣はもう飛んでいる。
どの動作も手首を軽く曲げただけで、およそ目にも止まらない。
小さな短剣が一瞬手の中できらりと光り、次の瞬間消え、銀の閃光がローランデに向かって矢のように突っ走る。

シェイルが唸った。
「酒場であれを使われたら、誰に殺られたのか気づかぬ内に死ぬぞ」
レイファスは、シェイルを見た。
シェイルはそのぞっとする使い手を、これ迄無い程真剣にじっと見続けている。

ファントレイユもテテュスもが、見えない早さで狙う短剣と隙を付いて襲いかかる長剣をローランデが、一時も休まず止め続けるのに、生きた心地がしなかった。

けど…。どれも、ローランデを仕留める事は出来ない。
また…!そしてまた!
ローランデは全部を止め、そして叩き落とし、いつもみたいに攻撃に転じる事が出来なくても、決して諦めたり怯んだりしない。

テテュスは幾度も、アイリスを見た。
幾度も。
でもアイリスは『止めろ』とローランデが視線を送る迄、口を出す資格は無いと言うように、その真剣勝負を静かに、見守っていた。

ローランデはゼイブンが冷気に包まれたまま、溶けないのを見続けた。
その間は容赦ない剣が、飛ぶのだと覚悟していたがその通りで、間を詰めたまま長剣の届く範囲から、一歩も引く様子無く長短の剣を繰り出し続け、どれだけ止めても崩れる様子が、まるで無い。

その冷たいブルー・グレーの目が自分を見据えながら隙を伺い、短剣を叩き落とした瞬間、体勢が崩れるのを見届け。
間髪入れず長剣で仕留めようと、襲いかかって来る。

間をもっと詰めようと進むと、途端ゼイブンは察して直ぐ下がり、それでも長剣で狙える距離で、続けて長剣で突き入れようとすると、直ぐ鋭い短剣が飛び来る。

避けて体勢を少しでも崩すと、速攻で長剣が頭上から横から襲いかかり、彼の命ごと凪払おうとする。

がっ!
…ローランデはだが、殺気を打ち破る為にどれだけでも鍛錬をし続けた男だったから、命を斬り捨てようとする剣を止め続けた。
ゼイブンがもう、頭で考えて戦ってるんじゃなく、ただ感覚だけで動いてるんだと解った。

ファントレイユには解らなかった。
だって…ゼイブンはもの凄く冷静に見える。
みんな、真剣に成るとその本来の姿が見えた。
激しかったり、優美だったり…。
戦う“気"を、ちゃんと見せつけた。
ローランデが強いから、偽る余裕も無くて。

なのに…ゼイブンは、そんな彼らよりもっと冷静で信じられない早さで攻撃を繰り出し続けていた。
氷のように少しも息も切らさず、汗をかく様子すら無く、途切れる事なく。

短剣を振る手は湖の波紋のように、とても静かに見えるのに、その右手はまるで鷹が獲物を襲う時のように、音も無く素早かった。
見ていて、皆がとても強かったから次の動作はいつでも驚かされたけど、ゼイブンは目で追える早さを超えていた。

ローランデは信じられない位流麗な動作で良く、その早さに付いて行き、ひっきりなしに襲い来る刃先を、全て叩き折っていた。

「…早いローランデの、上を行って攻撃仕掛けてるぞ?」
ディングレーが唸り、ギュンターがローフィスに尋ねる。
「あんなに立て続けに、急所だけを狙えるもんなのか?」
ローフィスは吐息を吐く。
「キレてるあいつは、人間超えてるからな」
皆がやれやれ。と、ため息を吐いた。

途中幾度もシェイルは、ローランデが避けた短剣が飛んで来るのを、剣で叩き落として子供達を護った。
ローフィスは慣れてるみたいで、ローランデが弾く短剣が飛び込んで来るのを、右手でお茶のカップを口に運んだまま、左に握る剣で叩き落としてた。

かん…!かん、かん!
10人を一気に…とローランデの事を驚いて見せながら、ゼイブンはそれを軽く上回るだけの数の短剣を、仕込み持っている。

だがローランデは一瞬でも気を抜けば深々と体に刺さる短剣と、命を叩き切る勢いで襲う長剣を、至近距離から受け続けても戦う瞳を止めず、ゼイブンはどれだけ攻撃が叩き落とされても、仕留める動作を止めなかった。

どちらも顔色も変えずに挑み続け、子供達はローランデが一瞬気を抜き、大怪我を負うんじゃないかと生きた心地がしない。
がゼイブンはさっきから、心に突き刺さって来るのをどうしても、振り払えずにいた。

それはローランデからの疑問。
霰(あられ)のように降る短剣を避け続けながら、ローランデはそのくっきりとした青い瞳で。
無言で尋ね続けてた。

“短剣でも十分仕留められる腕前。
今度こそ、心臓か喉に来る"
そう、幾度も。

機会はあった。
なのに…。

ゼイブンはローランデの挑む青い目が、どうしてそこに投げない?
と挑発するように突き付けられるのにとうとう見入られ、一瞬手が、震った。

がっ!
ローランデに真正面からまた振り下ろす長剣を封じられ、ローランデの怯まぬ青の瞳を真正面から見据えると、とうとうゼイブンはその剣を外し様、地面に叩き付けた。
カラン…!
「…糞!」
言うなりローランデに背を、向けて突っ立つ。
皆が驚愕に目を見開き、つい揃って顔を、上げる。

無防備に背をローランデに晒したゼイブンは、好きにしろ!と言うように投げやりで、ローランデはゆっくり、襲う剣を受け止め続けた体勢から、身体を起こす。

ファントレイユもが、どうして?と剣を投げ捨てるゼイブンを、喰い入るように、見る。
押していて、勝ちそうだったのはゼイブンなのに?

テテュスはアイリスを、見上げた。
腕組みして見つめるアイリスには、解っているようだった。
ローランデが珍しく息を切らし、ゼイブンを見る。
がその息切れを直ぐに収め、横を向いてる、初めて怒りの表情を顔に浮かべたゼイブンを、静かに見つめた。

ローランデは尋ねる。
「…どうして心臓に、投げない?」

ゼイブンはその静かな問いかけをするローランデに振り向き様、怒鳴った。
「ああ!あんたになら、投げたって避けるだろうさ!」

ローランデはすっと屈み、ゼイブンの投げた剣を拾う。
「もっと私に、隙を作れた」
「…そうかもな!」
「傷くらいは負っていた」

ゼイブンがとうとう振り向き、ローランデを見据える。
「傷に何の意味がある!
俺は仕留めるつもりでやってる!」

ローランデは青い瞳を真っ直ぐ、ゼイブンに向けて告げる。
「…だが君の腕で心臓を立て続けに狙えば、確実に私の動きを縛れた。
右で仕留める機会が、もっと出来た筈だ」

静かに返答を求めるその剣士に、誤魔化しはきかない。
とゼイブンはイラ立ちながら、兜を脱いだ。
「…心臓を狙わず、それで殺されたら俺の、寿命だ!
そう決めている!」

ローランデの眉が、思い切り寄った。
「…殺されても、心臓には投げない気か?」
ゼイブンはローランデを、見た。
ゼイブンのブルー・グレーの瞳には体温が、戻っていた。
「…俺はびびりで、根性無しだ。
いいか!
俺の腕で心臓を狙えば簡単に殺せる!
呆気なく!相手が死ぬんだ!
どれだけ怖いか、解るか?
最悪を通り越す!俺は絶対………!
そんな短剣は投げたく無い!」

その声は絶叫に近く、ローランデは参ってるのは彼の方だと解った。
そっ…と近づき、ローランデがゼイブンの肩に触れると、ゼイブンは肩をなぎ払った。
「…野郎はごめんだ!」

だがそれでもローランデが腕を掴むと、ゼイブンは俯いた。
彼が震えていると、皆がその時、解った。

ゼイブンが、ローランデを見ないまま怒鳴った。
「俺に…心臓を狙わせるな!
やれと言われれば…簡単に出来る!
簡単に人を殺せる事がどれ程恐ろしいか、お前に解るか?!」
そう、俯いたまま怒鳴るゼイブンの顔が苦しげに歪み、肩も腕もがぶるぶる震え、皆がつい、その様子に押し黙る。

ゼイブンはそれでもまだ自分に注がれる、静かな青い瞳にようやく顔を上げて見つめ返し、怒鳴った。
「俺は…自分を恐ろしい男だと思い知って生きていける程、強く無いんだ!」

悲鳴のようだ…とファントレイユは思った。
ゼイブンはローランデに腕を掴まれたまま怒鳴り続ける。
「それに…俺はアイリスやあんたみたいに冷静じゃ無い!
キレちまったら、殺す事しか念頭に、無い!意識が飛んで……。
相手が死んだ後に正気に戻ったって、遅いだろう?!」

ゼイブンは泣き顔で、ローランデは彼の掴んだ腕の震えが、止まらないのを感じた。
「俺は…嫌だ!最低の、命を屁とも思わない盗賊共と同じに成り下がるのは!
奴らは絶対地獄に落ちる…!
俺は死んだら別嬪の天使に迎えられて天国に行くと、決めてるんだ!
絶対にだ!」

笑えるセリフだったけれど…誰も、笑わなかった。
ゼイブンが、泣いていたから。
その頬に涙が伝って初めて、ローランデは彼の肩を抱き寄せるとゼイブンは崩れるように彼の右肩に顔を、埋めた。
「…何が、清廉潔白な剣士だ!
俺をいじめて、楽しみやがって………」
ローランデは大きな子供に言うように、そっとささやく。
「楽しんで、無いから…」
「それでもだ!意地悪しただろう?
どうして“気"を抜かない!
俺は殺気に反応するんだぞ!」
「……悪かった」

ローランデが彼の背にそっ、とその手を添えると、ゼイブンはすっと顔を起こした。
俯いたままだったが、ローランデに小声で告げた。
「…野郎とこれ以上、抱き合う気は無い。
ギュンターが、睨んでるしな」

言われてローランデがギュンターに振り向くと、無意識にゼイブンを睨んでいたギュンターは、はっと我に帰り、オーガスタスとディングレーとローフィスに、呆れて見つめられた。

ゼイブンはアイリスに振り向き様、怒鳴った。
「…息子の前で恥をかかせて、満足か!」

テテュスはアイリスを見上げたが、アイリスは大きく息を吸うと、俯いた。
「…だって君がまさか、ローランデ相手に上を行ってあそこ迄…追い詰めるだなんて、予想外だったし。
…泣く迄戦い切るだなんて、思わなかった。
ファントレイユに聞いて見ろよ。
凄く強くて、びっくりしたと言うだろう」

ゼイブンは彼の横にたたずむファントレイユを、見た。
ファントレイユの方が泣き出しそうで、ゼイブンは一瞬拳を握って顔をくしゃっと歪めると、息子に向かって両手を広げた。
ファントレイユが彼の胸に飛び込み、彼にしがみついて震える声で尋ねる。
「…殺しそうで、怖かったの?」
ゼイブンは顔を下げたまま、胸のファントレイユを引き剥がし、その顔を伺った。

ファントレイユの瞳に、自分と同じ…真っ直ぐ見つめて来る、ゼイブンの涙で濡れた輝くブルー・グレーの瞳が映る。
「…お前が何も感じずに人を殺せたら…それはそれで…怖いが…。
だが…ちゃんと人並みの感覚があるんなら、人殺しなんてただのロクデナシだと覚えとけ!」

ファントレイユはゼイブンの短剣を投げた左手がまだ、震えているのを、知った。
そしてそっ、と問うた。
「…ゼイブンは凄く…強いのに?」
だがゼイブンはファントレイユの肩を揺すった。
「…こんなのは…こういうのは、強く無い!
絶対に違う!」

皆はそう言い切るゼイブンに感心した。
「…本当に…強いのはどれ程怖くても…怯まぬ奴だ…。
剣を持たなくても…意思の折れない奴の事を、言う。
命を奪うのはただの“力"で…力が強ければ強いんだと、絶対カン違いするな!」
ファントレイユは良く…解らなかったが、こくんと頷いた。
それがどういう事か、はっきりは知らなかった。
けど、鳥肌が立つ程強かったゼイブンが、その手を震わせて自分に知らせたい事を、必死に心に留めた。

レイファスはファントレイユが…いつも、とても情を大切にしている様子に感心していたし、人形に見えるのにその心の底にはどこか相手への気遣いがあって…。
天然で、色々な事に無頓着で、気が付かない事がたくさんあっても…。
絶対、情を裏切らない彼の事が、大好きだった。

それは…ゼイブンがとても、大切にしている物だと、その時初めて気づいた。
ゼイブンはそれを…宝物のように大切に、心の中にしまってる。

「…死んだら、戻って来ない。
後悔しても、遅いんだ」
テテュスはゼイブンの言葉に、胸をどん!と、殴られた気が、した。
ゼイブンがテテュスの様子に気づいて、顔を、上げる。

レイファスは感心した。
ファントレイユもそうだ。
いつもはとても他人の感情に鈍いのに…こういう時はちゃんと、気づく。

「…悪かった…。亡くした、ばかりだったな…」
ゼイブンが顔を上げてアイリスにそっと告げると、アイリスはテテュスを、気遣わしげに見つめた。
テテュスは俯いていたが、顔を上げてゼイブンに問う。
「…死なれて…後悔した事が、ある?」

ゼイブンはその、まだ綺麗に見える顔を苦く歪め、俯いた。
「…それまで俺は自分は、そこそこ出来た男だと思ってた。
だがてんで…ロクでなしだと解った時、本当に自分にがっかりした…。
その程度ならいい。
…だけど…死ぬべきじゃない相手を、間違って殺しちまって…。
代わりに自分が死んだ方が、マシだと思うような相手をだ。
…どれだけやり直そうとしても無駄で、俺みたいなくだらない奴の方が生き残ったと解ったら…絶望的な気分に成った。
希望が全然無いのは………」

テテュスがそっと、俯いてつぶやく。
「底なし沼だね」
ゼイブンはそう言うテテュスを、顔を揺らし、労るように見つめた。
「そんな餓鬼でその気分を味わうのは、辛いだろう?」
だがテテュスは顔を上げ、ゼイブンを、見た。
「でもゼイブンは希望を、見つけたんでしょう?」
問われてゼイブンは、ためらように肩を、すくめた。
「…さあな。
そいつが死んで俺が生きてるから…。
そいつのしようとした事を、たまに代わってしてる。それに…」
「それに?」
ゼイブンは皆の見てる前で、肩を揺らした。
「…多分それを続けたら、俺にも別嬪の天使に迎えられて天国に逝く資格が、出来るってもんだ」

レイファスがそれを聞くなり、そっと言った。
「“別嬪"は外せないんだね?」

途端みんな、爆笑した。

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