アースルーリンドの騎士 幼い頃

あーす。

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第ニ章『テテュス編』

11 明るい世界

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 朝、テテュスはもう笑わなかった。
表情無く、彼の方が人形みたいで、ファントレイユはそれを目にする度に瞳を潤ませた。
アイリスは彼を伺い、彼の側に寄り添い続け、だが朝食後に皆に頷き、テテュスを促した。

 領地の外の森で、テテュスの姿を見つけて彼の仲間が駆け寄って来た。
「テテュス!」
ザックが呼ぶ。
デングとデニーと、ヨハンセは笑顔で駆け寄り、サルダンは腕組みして笑い、でもその後ろに続く一行に、組んだ腕を、外した。

ロッテンがアイリスを見て顔を上げ、後ろの二人の立派な騎士に
「わぁ…!」
と感嘆の、声を上げた。
サルダンは可憐なレイファスに見つめられ、つい頬を、染めて俯いた。

「親戚が来てるから、しばらく遊べないって?もういいの?」
デニーに腕を引かれて聞かれ、テテュスは彼を見つめた。
「…ええと…あの………」
ファントレイユとレイファスに振り向くと、三人は目を丸くした。
「女の子だ!二人も!」
デングが叫び、途端にファントレイユが眉をしかめて怒鳴った。
「男の子!」

ローフィスとディングレーは、元気の無かったファントレイユが一発で元気を取り戻すのを見て、ファントレイユをどう扱えばいいのか解って、肩をすくめた。
だがデニーが叫んだ。
「嘘だい!そんな男の子なんて、居ないよ!
男の子ってどういう風か、解って無いんだろ!」
チビの彼にそう言われて、ファントレイユはもの凄くむっとした。
「…来いよ!見せてやる!」

レイファスはそんなチビ相手にムキになるファントレイユに、呆れた。
二人は皆に背を向け、ファントレイユはズボンの腰を緩めてデニーを上から、覗かせた。
「ちゃんと、付いてる!」
デニーのその声に、ファントレイユはそうだろう。と言う顔をし、皆がくすくす笑い出した。

テテュスはほうっ、と、暖かい空気に包まれた思いが、した。
ザックが言った。
「テテュス!約束していたチーズだ!
アメンネ叔母さんの痛めた腕がやっと直って、作ってくれた!」
ディングレーが思わずローフィスを、見た。
「果実酒をちゃんと持ってきたか?」
ローフィスは肩をすくめた。
「お前の持ってるバスケットから覗いてる瓶は、何だと思ったんだ?」
ディングレーは腕にかけた籠に視線を送り、確かにそこにあるのを確認した。

アイリスは微笑んだ。
「こっちは焼きたてのパンとハムがある」
レイファスが続ける。
「焼きたての、ハニービスキーとりんごのパイも!」
皆がわっ!と叫んだ。

ディングレーはまん中に広げた食べ物があるのに、チビ達が落ち着きなくしょっちゅう周囲を走り回り、思わず眉間を寄せた。
さっき、デングとヨハンセが走ったと思うと。
今度はロッテンとデニーだ。

「お前ら、食ってる間くらいは静かにできんのか!」
怖いディングレーに怒鳴られ、デニーもロッテンもデングもヨハンセも動きを止めて固まり、顔を引きつらせた。
それを見てテテュスはようやく、くすくす笑って言った。
「大丈夫。ディングレーは怒鳴るけど、凄く、優しいから」
固まっていた彼らはまた、カン高い声を上げてはしゃいで走り回り、ディングレーは思わずテテュスを睨んでテテュスをより一層笑顔にし、隣で寄り添うアイリスを、うんとほっとさせた。

ローフィスが腰を上げる。
アイリスも立ち上がろうとし、ローフィスは彼にささやいた。
「俺一人で見回る。お前はテテュスと、居ろ」
アイリスは、軽そうな遊び人に見えるけど実はとても面倒見のいいローフィスを、そっ、と見上げた。
ディングレーも、気づいて立ち上がる。そしてローフィスの横に付いた。
ローフィスは彼を、見た。
「俺一人で、大丈夫だ」
ディングレーは唸った。
「『神聖神殿隊』付き連隊で無くたって、二人一組で行動するのは軍の基本だろう」
アイリスが、微笑った。
「…その通りだ」
ローフィスは肩を、すくめた。
ディングレーはローフィスの一級下。
子供の頃、悪餓鬼共に囲まれ、殴られていたディングレーをローフィスが助けて以来、ディングレーから見たらローフィスは、敵を見事に捌ける癪に障る相手で一目置く相手で…。
そして、頼れて見習うべき相手だった。
決して面と向かって、認めたりはしないけど。

ディングレーは王族で面倒見がいいのとは掛け離れていたけど、心の中では秘かにローフィスを目標にしていたから、彼を見習うようにそのぶっきら棒で乱暴な態度の中に相手への配慮を、滲ませるようになった。
だがローフィスはアイリスに背を向けて遠ざかりながら、隣のディングレーにささやく。
「…餓鬼のお守りが、嫌なんだろう?」
ディングレーは彼を見ないで、つぶやいた。
「当たり前だ。お前の方が何倍マシだと思うんだ?」
ローフィスは彼を見つめて肩をすくめた。
「餓鬼よりマシと言われて、光栄だな」
ディングレーは見つめ返し、素っ気なく言った。
「お前もそう、思ってる癖に…」
ローフィスはそっ、とレイファスとテテュスを、見た。
二人はやっぱり、ローフィスに高く掲げて放り上げて貰いたそうな顔をして、その背を見送っていた。

ローフィスは彼らにそっと背を向け、頷き、認めた。
「障気より餓鬼のお守りの方が、確かに何倍も大変だ」
ディングレーが直ぐに言い返した。
「…せいぜい、アイリス一人で頑張るさ」
二人は途端に顔を見合わせると、笑った。

直に子供達はにぎやかな食事を終えると、サルダンを中心に浅い小川に下っていった。
「…何するの?」
ファントレイユが靴を脱いで川に足をつける子供達に訊ねる。
ザックが振り返って微笑んだ。
「魚を、釣るんだ!」
「釣れるのかい?」
アイリスが訊ねる。
大層立派だし、大貴族様だと両親から聞かされているし、ザックは彼にそう聞かれて頬を染めて俯いてもじったが、チビのデニーもヨハンセもロッテンも『大貴族』が、解って無かった。
「…サルダンは一番上手だ!」
両脇から遠慮無く、アイリスにまとわりついてその腕を引く。
レイファスが、少し高い縁から川に降りようとするので、サルダンが気づいて手を、貸した。
レイファスはその手を借りて川に飛び降り、微笑んで感謝した。
「ありがとう」
サルダンは見た事の無い品の良さと綺麗で可愛い顔立ちのレイファスに、ぼっ、と成り、デングに思い切りこづかれ、叩き返した。

ロッテンがテテュスの横に来ると、言った。
「この間、バターで焼いたんだ。
凄く、美味しかった。
今日もバターがあるよ!
テテュスはラッキーだ!」
ロッテンがそう、心から微笑む。
それはテテュスの、固く寒々とした心を、溶かした。
「そんなに、美味しかったの?」
テテュスが微笑むと、ロッテンは、うん!と微笑み返す。

ザックはファントレイユに棹を作り、釣り方を教えた。
何度も、何度も彼の綺麗な顔を直視出来なくて、でもまた見つめながら。
でもザックの落ち着きの無い様子にとうとうファントレイユが、聞いた。
「僕、そんなに珍しいの?」
皆がつい、彼に一斉に振り返り、次いでレイファスを見た。
見つめられてレイファスは、びっくり顔をした。
誰が言う?と皆が顔を見回し、ヨハンセが口を開いた。
「だって女の子だってこんな綺麗な子はいないのに」
デングもつい、本音を洩らした。
「見た事無い」
ファントレイユはぶっきら棒に、言った。
「だから?」
皆が押し黙った。
サルダンが、つぶやいた。
「テテュスはちゃんと、育ちが良さそうだけど人間に見えた」
レイファスが、笑った。
「でも僕、本当は凄くやんちゃなんだ!
暴れるとでも、魚が逃げるんでしょう?」
言われて、ザックが小声で返答する。
「そうだけど……。
でもどうせ、デニーはいつも、じっとして居ない」
サルダンもぼやいた。
「ヨハンセもだ」
途端、レイファスはテテュスの腕を引く。
「ヨハンセが、鬼だ!」
叫ぶと一斉にデニーもデングも、ロッテンもが、ヨハンセから逃げ出した。
ヨハンセは、一瞬躊躇するファントレイユを標的にし、ファントレイユは慌てて駆け出す。
テテュスはレイファスに手を引かれて駆け出す。
「ヨハンセ一人じゃ、相手の数が多すぎるよ!」
テテュスがぼやくと、レイファスはもっと笑った。
「じゃ、ファントレイユも鬼だ!」
いきなり鬼にされたファントレイユはレイファスを標的に、ムキになって追いかけ始めた。

アイリスは釣りをするザックとサルダンの横に、来た。
サルダンがぼやいた。
「あいつら、はしゃぎ回った後、僕らの釣った魚を凄く美味そうに喰うんだ」
ザックがそれを聞いて笑った。
アイリスは微笑んで申し出た。
「…手伝うよ」
ファントレイユの放り出した棹を川から拾い、アイリスも彼らに並んで釣り糸を、垂れた。

「今、誰が鬼?!」
デングが、デニーがその気満々で近づくのを見、叫んだ。
ファントレイユが怒鳴った。
「レイファスと、デニーだ!」
「わぁぁぁぁぁ!」
デングが叫び、デニーに触られ、デニーは逃げ出すと叫んだ。
「デングが鬼だ!」


 一回りするが、あまりに森は広く、ローフィスは匙を投げた。
「『西の聖地』の連中に使者を出そう。
もっと上手いやり方を、奴らなら知ってる筈だ」
ディングレーも、それがいいと頷き、小声で問う。
「…奴ら、疲れ切ってると思うか?」
ローフィスが思い切り、顔を下げた。

戻るなり、茂みからいきなりヨハンセが現れ、ローフィスに触れて叫んだ。
「金髪の騎士が鬼!」
ディングレーが、ローフィスを見た。
ローフィスが、かかって来そうで。
突き出された腕を、慌てて避ける。
「おい………!」
「聞いたろう?俺が鬼だそうだ」
ディングレーが一目算に駆け出し、皆に叫んだ。
「鬼が来るぞ!」
皆は一斉に、逃げ出した。

レイファスはテテュスが、笑うのを見たし、その後ファントレイユが笑うのも見た。
ファントレイユは初め女の子と間違われてきっぱりした態度を取ったせいか、直ぐ彼らと馴染み、テテュスの笑顔を盗み見ては、ほっとしていた。
レイファス迄も安堵し、思い切り大人の騎士が混じった鬼ごっこを、楽しんだ。

デングはアイリスに、触れた。
「大貴族が、鬼!」
年長のザックとサルダンは、何て大それた事を…。と目を丸くしたが、アイリスは笑う。
「じゃ君は、魚釣りだ」
デングは笑って、棹を受け取った。

ローフィスは餓鬼達のまん中に居て、一歩踏み出す度に彼らはきゃあきゃあ言って、逃げまどう。
そしてアイリスが姿を見せると、レイファスの
「鬼だ!」
の言葉に皆が一斉に、蜘蛛の子を散らすように逃げ出しては、茂みや川の縁に身を、隠した。
「…鬼か?」
ローフィスに言われ、アイリスはぼやいた。
「君でも捕まらないのか?」
「すばしっこくて叶わん」
アイリスはやれやれと、頭を掻き、でも直ぐに走り出した。
「おい………!アイリス卑怯だ!」
子供が散った後に残されたディングレーをアイリスは狙い、彼は怒鳴った。
「標的が大きい方が狙いやすいに決まってる!」
ディングレーは走り出し、近くに居るロッテンを捕まえて盾にしようと逃げられ、次にテテュスの手首を掴む。
テテュスは盾にされ、アイリスが捕まえようとした途端、身を翻した。
アイリスはディングレーに触れて叫んだ。
「黒髪の、騎士が鬼!」
笑うテテュスと一緒に、駆け出す。
「…この野郎……!親子でハメやがったな!」
だが怖そうなディングレーが鬼はハマり役過ぎて、皆がきゃあきゃあ、本気で逃げ出し、ちっとも捕まらなかった。

ローフィスは、レイファスとデニーが二人で周囲をからかうようにちょこまか走り回るのに手を焼くが、とうとうデニーを捕まえ、高く掲げて放り投げてやると、デニーはきゃっきゃっと叫んだ。
デニーを降ろすと、レイファスがデニーの手をタッチし
「僕鬼でいい!」
と叫んでローフィスに抱きついた。
「これでもう、ローフィスが鬼!」
「こら………!」
ローフィスは叫ぶが、レイファスは逃げたりはせず、抱きついたまま彼を見上げて笑っているのでローフィスも笑うと、レイファスを抱え上げて、放り上げた。
レイファスはきゃっきゃっと、笑う。
ファントレイユもヨハンセも、それを見て叫んだ。
「僕らも、鬼でいい!」
そう叫ぶと、ディングレーにかかっていく。
ディングレーはうって変わって逃げ出さない二人が、ローフィスみたいにうんと高くに、抱き上げてくれ。
と言わんばかりに、瞳をきらきらさせるので。
心の中でローフィスを、呪った。
「糞………!お前ら、結構デカいだろう…!
ああいうのはせいぜい、三歳迄だ!」
ぶつ草言いながら抱え上げてやると、二人は交互に、嬉しそうな声を上げた。

テテュスがアイリスを見ると、アイリスは笑って、テテュスを抱え上げた。
その手に彼の小ささと温もりを感じ、アイリスはまた、涙が滲む気がしたが、構わなかった。
抱き上げられて、うんと高く掲げられたテテュスが、笑い声を立てる。
アイリスはずっと心の中でテテュスにつぶやき続けた。
『愛してる。とてもとても愛してるんだ』
テテュスはまるでそれに応えるかのように声を上げて笑い、アイリスを喜ばせた。

アイリスは最後にテテュスを右肩に、乗せて立ち上がる。
テテュスは自分より下にあるアイリスの顔を見つめた。
「…うんと、心配かけたからここに連れて来たの?」
「君に元気になって欲しいからさ!」
テテュスはふいに、思い出した。
アリルサーシャに、もっとアイリスに側に居て欲しいって言おうよ。と勧めた事。
でもアリルサーシャは笑った。
『だって、テテュス。アイリスは人の為に頑張ってるの。
たくさんの人の安全の為に。
私一人の物に、出来やしないわ』

テテュスには、解らなかったし、もし自分ならたくさんの人より一番大切な人を、大事にしたい。
…でももしかして、アイリスもそう思ってて、でもアリルサーシャに軽蔑されたくなくて、寂しくてもうんと、頑張っていたのかな。と思った。
テテュスは横のアイリスの頭を両手で抱きしめると、言った。
「アイリス。とても大好きだ」
アイリスはまた、瞳が潤んだ。でも、言った。
「アリルサーシャは長生き出来ないと、知っていた。
だから、君を残したかったんだ」
テテュスはそうつぶやく、アイリスを見た。
「…自分でも何か出来ると、思いたかった…。
私と会う前彼女は、何もかも禁止された籠の鳥で…。
寿命を伸ばす為、ファントレイユやレイファスみたいに、何をしても駄目駄目だらけだったんだ」
テテュスはつい、涙が滴った。
そんなに自由が無くて、そして結局は、寝たきりで苦しんだ。
…とても、辛い毎日ばかりだ。
でも一度も、アリルサーシャはそんな事言ったりしなかった。
ただ病で辛いけど、テテュスといられてとても幸せだと、いつも………。

三歳の時だった。
乳母やが止めたけど、テテュスはそこに飛び込んだ。
窓から光さす寝台で彼女は横たわり、テテュスの姿を見つけて、どれ程……嬉しそうに微笑んだろう……?
だから……。
出来るだけずっと、彼女の側に居たいと、思ったんだ………。
「…君を産んだら、命の保証が出来ないと言われても、彼女は頑張った。
私は…その時ばかりは彼女の前に、立ちはだかったよ。
自分の命を大切にしてくれって」
テテュスは、頷いた。
アイリスは自分がこの世に産まれて来なくても、アリルサーシャの為なら構わない。と思ってる幼い彼の愛に脱帽した。
「…でもアリルサーシャは言った。
『私は何も出来ないのは、嫌』って。
君が生きてそこに居るだけで、彼女はとても、幸せそうだった………」

テテュスは、顔を揺らした。
「…自分の分迄、君に生きて欲しかったんだ。
自分の出来なかった事を全部、君に託した」
テテュスはその時、声を上げずに、泣いた。
心の中で、声にならないありったけの声を上げて。

アイリスは彼の、その心の叫び声が聞こえる気がして身が、震った。
アリルサーシャの『死』を悼む、心の慟哭そのままの寂寥感あるその耳に聞こえぬ声は、狼の遠吠えのように心に響き渡り、こんなに悲しい心の叫びをもし耳にしたら、誰もが思わず立ち止まって心を傾けずにはいられない、とても悲しげな無言の咆哮だった。

アイリスはこんな泣き方を、初めて知った。
あんまり一途で真っ直ぐで、その為にテテュスは誰よりも強く、その為にとても脆い。
アイリスは、テテュスの重みを労るように、大切に、大切に、抱き止めて歩き続けた。

鬼ごっこはいつの間にか終了し、もう勘弁と叫ぶローフィスと、くたびれ切るディングレーの手を引いて、子供達は釣りをするザックの元へと戻ろうとした。
が、アイリスの肩の上にテテュスが座っているのを見て、皆が一斉に、ディングレーとローフィスを見上げた。

ローフィスはレイファスとデニーを左右の肩に乗せ、ディングレーはヨハンセとファントレイユを、残ったロッテンがアイリスに寄ると、アイリスは笑って屈み、テテュスと反対の方の肩に彼を、座らせて立ち上がった。

「凄く、高い!」
ロッテンが叫ぶと、子供達は次々に叫んだ。
「気持ちいい!」
「見渡せるぞ!」
ディングレーはいい気なもんだと苦虫を噛みつぶし、木の枝に触れていくヨハンセにぼやいた。
「動くな!落ちるぞ!」
ファントレイユが途端、笑った。
「ディングレーが凄く素早く捕まえるから、大丈夫だ!」
「二人同時に何とか出来るか!ファントレイユ。お前はいい子にしてろ!」
「…僕もう、いい子飽きた!」
と言って、ヨハンセと同じ、高い枝を触れて回る。
二人が枝に触れようと左右両端へと同時に身を乗り出し、ディングレーが怒鳴った。
「おい………!」
必死でバランスを、ディングレーは取り、ファントレイユはヨハンセに
「大丈夫だろ?」
と笑い、ヨハンセは笑顔で返した。
だがディングレーに
「俺は大丈夫じゃ、ないぞ!」
と怒鳴られ、二人は思い切り、声を立てて笑った。

テテュスはアイリスの肩の上で、風を、感じた。
世界はとても、暖かくて明るかった。
アイリスは笑っていて、ファントレイユもレイファスも、それぞれローフィスとディングレーの肩の上で、笑っていた。
風の中にアリルサーシャの気配を、感じた。

…もう、少しも苦しくないの…。
たからテテュス、気に病まないで……。

アリルサーシャの優しい気配に、テテュスはまた、涙が溢れた。
ザックが、アイリスの肩から降りるテテュスの瞳が潤んでるのを見つけ、デングが気づいて叫んだ。
「テテュス!僕が釣った魚、いっぱい食べて、いいから!」
サルダンが途端に叫んだ。
「俺が釣った魚だろう!お前全部、逃がしちまったじゃないか!」
皆が一斉に、どっと笑った。

デングとヨハンセが中心で、薪を拾って火を起こし始める。
ディングレーが薪拾いを手伝い、ローフィスがヨハンセのたどたどしい手つきで火打ち石を鳴らすのを見ると、その手から取り上げて、火を付けた。

魚を焼き始める。
人数が多いから。と頑張るサルダンとザックにアイリスが加わり、ローフィスも釣りに参加し、彼らにコツを教わり、二人も釣り糸を垂れた。

ディングレーの監視の元、魚が焼かれ始めた。
「…こっちは塩焼きにする。で、こっちは…」
デングがフライパンを出す。
「バターで、焼く!」
ディングレー迄が一緒になって、感心してそれを見つめた。
テテュスは火の番をし、デングとヨハンセが焼きの見張りをし、ファントレイユとレイファスとロッテンとデニーは薪拾いを始めた。
「野いちご!」
デニーが叫び、レイファスも一緒になって、二人は夢中で野いちごを拾い始めた。
ファントレイユがロッテンを見つめて言った。
「僕らはちゃんと、薪を拾おう」
ロッテンは、頷いた。
運動神経が今一の、愚図のロッテンが木の根につまづいて転び駆けると、ファントレイユが腕を引いて助けた。
ロッテンが、彼を見上げてつぶやいた。
「…ちゃんと、男の子に見える」
ファントレイユはつい、ムキになった。
「…だから…。
初めから、男の子だって言ってるじゃないか!」

デングが魚を、裏返す。
ヨハンセは串刺しにした魚を返し、つぶやいた。
「ちゃんと中迄焼けるよう、気をつけるんだ」
デングが、神妙に頷いた。
テテュスに薪を手渡しながら、ディングレーが感心しきりにつぶやく。
「…上手いもんだな」
二人は黒髪の騎士に振り向くと、二人同時に声を揃える。
「叔父さん、魚焼いた事、無いの?」
ディングレーが途端に、唸った。
「お兄さん!」
テテュスに声を上げて、笑われた。

ローフィスが狙い澄ましたが、アイリスに先に釣り上げられ、悔しそうな表情を見せた。
アイリスが肩をすくめる。
「ここでは君よりほんの少し、キャリアが長い」
ローフィスは唸った。
「たったの数分じゃないか!」
ザックとサルダンに、笑われた。

皆が、わくわくしていた。
ヨハンセは薪に芋も、放り込んでいた。
ほくほくの芋にバターが乗せられ、焼けた魚が手渡され、デングとデニーが持ってきた、煮て味付けした山羊のミルクが配られ、レイファスとデニーの摘んだ野いちごが置かれ、皆がそれを食べた。

「美味い………!」
ローフィスが思わず声を上げた。
ディングレーも頷く。
「お前らいつも、こんな美味いもん食ってるのか?」
皆が意外そうに彼らを、見た。
アイリスが、皆の様子に気づいて口を開く。
「ディングレー。君の家では毎晩凄いご馳走だろう?」
皆が羨ましそうに、気品あるディングレーを見つめた。
が、ディングレーはアイリスを睨んだ。
「お前もじゃないか…。アイリス。だが……」
「だが?」
ザックが、思わずそう尋ねる。
「こっちの方が、ご馳走だ」
立派な騎士で貴族のディングレーにそう言われ、農家の子達は一斉に、胸を張った。

魚の身はほろほろほぐれて旨味があり、芋は手作りのバターでほくほくして格別で、野いちごは熟れて甘酸っぱく、山羊のミルクは臭みが無くて、酷と風味と甘みが満点だった。
皆、はしゃぎ回ったので大いに食べた。
ローフィスはつい、言った。
「俺も散々野宿したが、この料理人はなかなかだ!」
デングとヨハンセが、得意になった。

皆が食べた後ごろんと、横になった。
ファントレイユが、つぶやいた。
「草の、香りがする…」
レイファスがくすくす笑った。
「草の上で横に成ってるとセフィリアが知ったら。
きっと、大騒ぎだ」
ファントレイユもつい、くすくす笑った。
皆が二人を、見た。
「草の上だと、まずいの?」
ヨハンセが尋ねると、ファントレイユとレイファスは思わず顔を見交わし、もっとくすくす笑った。

綺麗な二人が楽しそうで、でも全然気取って無くて、皆もつられてくすくす笑った。

暗くなりかけた道を、皆が歩く。
子供達の後ろに騎士達を見つけ、大人達は大騒ぎに成った。
「まあまあ…一緒に、遊んで頂いたんで?!」
子供の報告を聞いた農家の女将さんに、こんな立派な大人の騎士が…!と呆れるように見つめられ、ローフィスとディングレーはバツが悪そうに俯いた。
「とても、楽しかったので」
アイリスに、優しげに微笑んでそう言われ、女将さんは感激するように彼を見上げた。
「…これを…持っていって下さいな」
手作りのビスクを、山程差し出される。
「うちも……!薫製の豚です…!」
「これも……取れたばかりの桃ですよ。甘いから召し上がって…」
「これも、持っていって下さい!」
農家の大人達は次々に品物を、騎士達の腕に押しつけた。
彼ら三人共が両手一杯の荷物を抱えて皆に別れを、告げた。

いつも一人で戻る道を。
テテュスはその時、賑やかに帰れて嬉しかった。
レイファスが三人の両手いっぱいの食べ物に、目を丸くした。
「凄いね!」
ローフィスとディングレーに見つめられ、アイリスが口を開く。
「村の医者や学校の教師の、給料を払ったり…色々寄付をしてる」
そしてテテュスを見つめた。
「…だから、農家の人達は私に失礼が無いように気遣うんだ」
ディングレーがぼやく。
「さぞかし立派な人物だと、思われてるな」
ファントレイユが又、ムキに成った。
「だってアイリスはとても、立派だ。
セフィリアだって、貧しくて薬が買えず病が治らない人を平気で放って置けるのは、人間の皮を被った獣だって。
ちゃんと立派な貴族は、そういう人を放って置いたりはしないって」
ローフィスは頷いた。
「だが草の上で寝ころんだだけで病気の心配はするな、って事は、きっちり教えてやらないと」
レイファスが、ぷっ!と吹き出し、テテュスもが笑い、ディングレーもくすくす笑った。

が、アイリスとファントレイユだけは。
顔を、見合わせた。
「教えるのはいいけど…」
ファントレイユが言うと、アイリスも言った。
「ローフィス。君が彼女にそう、言ってくれると、凄く嬉しい」
アイリスの心からの本心に、でもローフィスは“俺はごめんだ”と言う表情を浮かべ、二人をそれは、がっかりさせた。

テテュスの横にファントレイユが並ぶ。
そして、テテュスの手を握った。
レイファスも反対側に付くと、テテュスの手を、握る。
テテュスは両脇の彼らを交互に見つめる。
ファントレイユも、レイファスもが彼の手の温もりに、心から安堵していた。
テテュスはまるで
『アリルサーシャの代わりにはなれないけど…、それでも…』
と言う二人の気持ちが手の温もりから伝わり、こっそり、泣いた。
でも二人はテテュスが泣くので逆にうんと、ほっとしてるみたいで、涙で潤んだテテュスを見つめてそれはにっこり、微笑んだ。

テテュスもつい、泣きながらそんな嬉しそうな二人を、見つめた。
レイファスがファントレイユに
『テテュスに振り向いて貰えて、良かったね』
と瞳で告げ、ファントレイユはそれは嬉しそうに、頷いてテテュスを見つめた。


 テテュスがノックの音に扉を開けると、ファントレイユとレイファスが寝間着姿で枕を、抱えていた。
二人はテテュスを、伺うように見つめるから。
テテュスは笑って、扉を開けた。
テテュスの部屋の寝台も大人用で、二人は枕を置いてその大きな寝台に飛び込むと、寝転がった。
テテュスも笑うと寝台に乗る。
レイファスが場所を開け、テテュスがまん中で三人で転がった。
ファントレイユがくすくす笑い
「今日は、楽しかったね!」
と言うのでテテュスもレイファスも一緒にくすくす笑った。
レイファスが言った。
「ファントレイユ。随分ムキに、なってた!あんなチビ相手に!」
テテュスも頷いて彼を、見た。
ファントレイユは、テテュスの向こうに居るレイファスを見る。
「…チビに言われたりしたら、余計腹が立たない?だって」
レイファスは肩をすくめてテテュスに言った。
「ファントレイユは女の子とチビは、保護する相手だと思ってるんだ。
そういう相手には、男の子してる」
ファントレイユはムキになった。
「僕はいつも男の子してる!」
「どう思う。テテュス。
絶対僕が居なくても。
彼一人でも女の子に、見えるよね?」
テテュスはファントレイユを見たけど。
彼が少し怒ってる風なので、言葉を控えた。
ファントレイユは途端、それに気づいてテテュスを見つめる。
「…テテュスはちゃんと、人の心が解って優しい」
レイファスがむくれた。
「…僕が、解って無いみたいじゃないか!」
ファントレイユは素っ気なくつぶやく。
「レイファスは容赦ない」
それを聞くなり、テテュスがくすくす笑った。
「…レイファスは、人の心が解ってるけど、言うべき事をちゃんと、言える」
ファントレイユはむくれたまま枕に顔を埋めると、呻く。
「僕が人形に似てるって、認めさせるんだ」
レイファスが反論した。
「でもテテュスもそう、思ってる。
すごく綺麗で人形みたいって。
君が言われたくなさそうだから、言わないだけで」
でもテテュスはレイファスに言った。
「言われたくなさそうでも君は、言うね?」
レイファスは頷く。
「家庭教師がいつも言ってる。
事実を正確に認識していないと、判断間違いをして。
時に現場でそれが、命取りになるって。
安全だと思い込んでて、でも敵が隠れてる場合もあるから、敵が隠れられる場所が本当に無いか、しっかり確認しないと安全だと思っちゃいけないって」
ファントレイユがつぶやいた。
「僕が綺麗を認識しないと、どうして駄目なの?」
テテュスもレイファスも、呆れてそう問うファントレイユを見た。
「…だってフレディみたいに、女の子と間違えて襲う奴だって居るじゃないか」
ファントレイユは思い出したのか、もの凄く、むすっとした。
「僕、綺麗を認識するんじゃなくて。
もっと、男の子らしくなる」
レイファスが素っ気なく言った。
「じゃ、そうなる前迄は認識しとかないと」
テテュスに迄頷かれ、ファントレイユは凄く気分を害したみたいに眉間を寄せていた。

レイファスも、だが思い出すようにつぶやく。
「…でも、ああいうのは僕も知らなかった。
テテュスの側には、時々居たの?夕べの………」
テテュスは一瞬、顔を揺らした。
ファントレイユが彼を労るように告げる。
「アイリスとローフィスの剣、凄かったね。光るんだもの」
レイファスが、頷く。
「護符と、神聖呪文だね」
テテュスも、思い出しながらささやく。
「あれは……『影の民』の障気だったのかな…。
アリルサーシャが苦しみ出すと、寄って来るんだ」
レイファスは、眉間を寄せる。
「アリルサーシャには近寄れなかったから、君を狙ったんだ。きっと」
ファントレイユも言った。
「…ああいうのは、人の苦しみが大好物だから、苦しんでて弱ってる人を見つけると寄って来るんだ」

そしてファントレイユが、テテュスが逝ってしまわなくて本当に良かった。って思ってるのが、テテュスに解った。
でもテテュスは言った。
「でも僕、戦う場所が欲しかった。
アリルサーシャが居なくなって、していた事全部が…取り上げられて、何かしていたかったんだ…」
レイファスが彼を辛そうに、見つめた。
「…実際アイリスは手がかからないしね。
でも、アイリスは世話はして欲しくないけど、甘えて欲しいと思ってる」
ファントレイユも思い切り、頷いた。
「僕なら、いっぱい我が儘言うよ!」
テテュスが顔を上げた。
ファントレイユは見つめられて、つい言った。
「ゼイブンはすぐセフィリアの顔を伺うし、セフィリアとべったりしたいみたいだから。
ゼイブンに我が儘は、あんまり言えないけど」
レイファスも頷く。
「そうだよ!
僕らは父親が居ないも同然だ。
君みたいに凄く深刻じゃないけど。
でも君の父親のアイリスは、凄く、優しい」
ファントレイユも思い切り、頷いた。
「…あんな父さんで、凄く羨ましい」

テテュスはあんまり、解らないみたいだった。
「でもどうやって甘えていいのか、解らない」
レイファスが聞いた。
「甘えた事無いの?」
テテュスは思い返した。
「…帰って、アリルサーシャの側に居て…。
僕の事も構いたいみたいだったけど、でもいつも…出来るだけアリルサーシャの側に居てあげてって。
僕がアイリスにそう言った」
レイファスも、ファントレイユも途端に俯いた。
「…………うん」
ファントレイユが言うと、レイファスも言った。
「…アリルサーシャの方がアイリスが必要だって…君は思ったんだ。
でもそのお陰でアイリスは君に近寄れなくて、うんと悲しんでる」
テテュスは俯いた。
「そうみたいだ」
テテュスがどうしていいか解らず落ち込んでるみたいで、ファントレイユはレイファスを、見た。
レイファスは頷きながら、テテュスにささやいた。
「アイリスが居る時は、世界にアイリス一人しか居ないと思ったら?
アイリスはそう思ってる。
他に誰か居てもちゃんと気を配るけど、君だけは特別に思ってるもの」
テテュスはようやく、解った。
「僕はアイリスを特別だと思ってない…。
みんなと同じくらいに思ってるから、アイリスが泣くんだ」
レイファスは、頷いた。
ファントレイユが、そっと言った。
「君と同じくらい、アリルサーシャが好きだったから、同じくらい悲しいんだ。
なのに仲間の君が、解ってくれないから落ち込むんだ」
テテュスは顔を、揺らした。
「………うん。アイリスは僕がもうとっくに仲間だって言ったけど……。
そういう事だったんだ…………。
僕、アイリスに謝らないと」
ファントレイユもレイファスも、肩をすくめた。
「謝るより、抱きついて大好き!って言ったら、きっと喜ぶよ」
テテュスが見ると、二人はくすくす笑っていて、テテュスも思わず笑って言った。
「そうだね」
二人はそうに決まってる、とまた笑うから、テテュスも一緒に笑った。


 アイリスは、ファントレイユとレイファスに先を超された。
二人がテテュスの寝室に入っていくのを見、呆然としているのを、ディングレーに気の毒そうに見つめられた。
部屋に戻るとローフィスが、アイリスとディングレーの様子に首を傾げる。
「テテュスの寝室には先客が居た」
ディングレーが言うと、ローフィスはしょげたアイリスの様子を見、タメ息を付いた。
「俺は君の添い寝をすると、夢に君の妹達が、“やっぱり!”と睨んで出そうで、出来そうに無い」
先手を打つローフィスに、ディングレーも怒鳴った。
「俺だってだ!」
アイリスがぼやく。
「私だってごつくて可愛くない君達より、テテュスがいい………」
ディングレーが彼の背を思い切りこずき、ローフィスは床に座ると、酒瓶をどん!と置いた。
「これしか無い。これなら幾らでも、付き合ってやる」
ディングレーも頷いた。

アイリスは心から嫌そうに、ため息を付いてローフィスの横に座り、ローフィスの置いた瓶を取り上げるとグラスに注がず、瓶の口からそのまま煽った。
ローフィスはこっそりディングレーにささやく。
「全然足りない。調達してくれ」
ディングレーは頷き、酒を探しに、部屋を出て行った。

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