20 / 389
第ニ章『テテュス編』
9 心の距離
しおりを挟む
テテュスは、レイファスが頬を紅潮させ、ローフィスに短剣の使い方や腕の振り方、色々な格闘の型を習っているのを見つめ、タメ息を付いた。
…そうだ。夢見心地ですっかり、忘れていた。
男の子、だったんだ…。
こちらの一方的な思い入れで、レイファスはすっかり迷惑していたに違いないのに…。
なのに、自分を気遣ってくれた…。
テテュスはそっ、とレイファスに心の中で謝罪し、そして彼の力になろうと、決めた。
だが…。
ファントレイユに目を移したとき、彼は夢中で、アイリスの繰り出す剣を、刃先を潰した子供用の剣で跳ね返していた。
アイリスはいろいろな場所に剣を繰り出し、ファントレイユは教えられた型でそれを、返す。
たどたどしい剣先が少しずつ、的確になる。
アイリスが本気を誘うよう、剣を繰り出し続け、ファントレイユは必死で跳ね返す。
だんだんと、力を込めて、それは真剣な表情で。
ファントレイユもレイファスも、騎士達とは馴染みが無いと言った。
けど…。
テテュスですら、アイリスにまともに相手を、して貰った事なんて無かった。
ファントレイユの頬が紅潮し、ブルー・グレーの瞳がきらきらし、とても生き生きして見えた。
凄く、楽しいんだ。
…でも、アイリスが彼の相手をするのを見守る間、テテュスにまたあの、寒々とした感覚が蘇ってきた。
妬いているならいいのに。
でもアイリスが誰かと過ごすのを見守るのが、彼のいつもの位置、だった。
アイリスの、居ない屋敷。
弱々しいアリルサーシャとたった二人きりで、自分が彼女の支えになる為、アイリスの存在を補おうと一生懸命だった、あの、時間。
…なんて、頼りなかったんだろう。
アイリスが帰ると途端、彼を出迎えて受ける感覚。
アイリスを目の前にすると自分がどれだけ小さいかを感じ、でも彼の大きさが心から、嬉しかった。
そしていつも決まって彼の手を引き、アリルサーシャの元へと導いた。
その間だけ、アイリスが彼女を引き受けてくれてテテュスは解放された。
死の恐怖と不安との、戦いから。
どれ程の、安堵だったろう?
アイリスが居る間彼は、自分で居られた。
たった、その短い時間の間だけ。
アリルサーシャをアイリスに預け、自分は震える体を解放出来た。
戦いで疲労した心を見つめる事も。
でも………。
レイファスは、気づいたし、ディングレーも彼を見つめていた。
テテュスは思い出に帰り、そんな時テテュスは、たった一人に、なる。
周囲にこれだけ人が居ても、彼は一人なのだった。
ディングレーがまるで引き戻すように、テテュスの肩を乱暴に、引いた。
その手がとても暖かくて、テテュスは振り向いた。
ディングレーの、深い青の瞳が心配げで、テテュスはどうしたの?と彼を見つめた。
ふいに、ディングレーが彼を抱きしめた。
まるで、そこに居るのを確かめるようで、テテュスははっと、した。
ああ………。
「ごめん。僕、ちょっとぼっと、してたよね?」
微笑むテテュスに、ディングレーはぶっきら棒につぶやいた。
「謝らなくていい」
その言葉は凄く乱暴だったけど、泣き出しそうで、ディングレーがそうなのか、自分がそうなのかをテテュスは考えた。
『泣いた方がいい…!』
以前そう叫んだファントレイユが、剣を下げてじっとこちらを見つめていた。
テテュスは慌ててつぶやいた。
「ごめん。邪魔した?」
ファントレイユはアイリスを見た。
が、アイリスはもうテテュスを抱くディングレーの横に付いて、彼を伺った。
「テテュス………」
テテュスは覗き込むアイリスの濃紺の瞳に真っ直ぐ見つめられ、見つめ返す。
そう…。いつも…。
アイリスはアリルサーシャのもので、自分はその時だけ解放され、それだけで…良かった筈だった。
だから………。
でも今はどうして…こんなに遠く感じるんだろう?
ディングレーが彼を放すなり、アイリスが抱き込んだ。
ふいにとても大きなアイリスの温もりに包まれて、テテュスはほっとした。
いつも…アリルサーシャを優先してた。
彼女はずっと、アイリスを待っていた。
だから…気づかなかった。
自分がこれ程…アイリスの温もりで癒されるだなんて。
でも………。
アイリスがどれだけきつくテテュスを抱いても、テテュスに届かない気がして。
涙を滴らせたのは、アイリスの方だった。
テテュスは彼が泣いているのに戸惑って、くぐもった声で、でもやはりとても優しい声音で告げた。
「…………アイリス。とっても好きだ。
けど……」
アイリスは解ってるとばかり、もっときつく、抱き寄せたけど…。
アイリスはやっぱり今でもアリルサーシャのもので有り続けた。
もしくは別の、誰かの。
なぜだかは解らないけれど、テテュスはそれでいいと思った。
アイリスは遠く、でもそれでも、いいんだと。
テテュスが頑なに、今までの自分の居場所を護ろうとしているのが感じられ、アイリスの頬に涙が伝った。
どれだけきつく抱きしめても、心の距離は、埋まらなかった………。
テテュスはローフィスを見つめた。
「…アイリスを、泣かせた」
ローフィスは眉を、寄せた。とても、悲しげに。
まるで誰も、アリルサーシャの代わりには成れないと、知っているように。
皆の瞳にそれが、映った。
寝台に横たわる、アリルサーシャの横に、付き従う騎士のように傅(かしず)く幼いテテュスを。
アイリスの声は掠れていた。
「たい…役を……果たした後だから…君は……」
テテュスはアイリスの髪に顔を埋めた。
「労ってくれるの?みんな?」
テテュスの微笑みに、ローフィスがやりきれない表情をし、レイファスもファントレイユも言葉を無くした。
アイリスのテテュスを抱く腕は震え、彼は微かに、頷いた。
ファントレイユはアイリスの気持ちが痛い程解った。
テテュスは泣かないから…。
とても悲しい筈なのに泣かないから…。
まるで彼の代わりのように、彼を大切に想う者がその心の悼みを感じて、涙するんだ。
テテュスの中にぽっかり大きな空洞があって、テテュス自身もどうやってそれを埋めようか、思案してるみたいだった。彼は、笑ってさえみせた。
『困ってるんだ』
そんな風に。
…決して、笑える事なんかじゃ、ないのに。
でもテテュスは、皆の楽しそうな時間を、自分が止めているのを気遣う様子を、見せた。
「ごめん。アイリス僕は大丈夫だから。
ファントレイユの相手をしてあげて?」
途端、ファントレイユが顔を揺らし、下げて涙が頬を滴る。
テテュス自身がもう、どうしていいのか解らないようで、そんなアイリスとファントレイユを、沈黙して交互に見つめた。
「本当に、大丈夫だから…」
言う、テテュスの肩を抱くアイリスの手が一瞬、否定するように、震えた。
ローフィスが、アイリスの肩に手を、置く。
「テテュスがそう、言っている」
アイリスは肩をびくん!と震わせたけど、ゆっくり顔を上げて幼い騎士を、見つめた。
アイリスの綺麗な夜闇のような濃紺の瞳が濡れていて、テテュスがそれを、まるで夜空の星を見るように遠い瞳で見つめ返したりしたから、アイリスの瞳がまた、潤んだ。
「…私はここに、居るのに!」
低い、でも叫びで。
テテュスはその声がどこから響くのか解らず、一瞬混乱した。
「…アイリス!」
ローフィスが、苦虫噛んだような顔でアイリスの肩の衣服を握り、強引に引く。
だがアイリスは止める気なく、体を振ってローフィスの手を激しく振り払い、今度はテテュスの肩を掴んで、怒鳴った。
「テテュス!ずっと、居る!例え君が、気づかなくてもだ!
ここに!私は!!!」
テテュスは瞬間、足元が無くなった気がして、混乱した。
だって…でも誰も、居ない。ここには。
アリルサーシャがずっと居た筈だけど…。
テテュスは辺りを見回そうとして、途端に思い出した。
テテュスの顔が歪み、ローフィスは叫んだ。
「…解らないのか!テテュスはやっと、バランスをかろうじて保ってる!!
それを、無理に、思い出させるな!!!」
それを………?
ああ、そうだ。もう、アリルサーシャが居ない、事だ………。
どうして居ないんだろう?
何が、いけなかったんだろう?
僕はありったけで、頑張ったのに………。
でもそのまま考え続けると、テテュスは足元の消えた底無しの空間に落ちていきそうで、アイリスとそして、泣くファントレイユを見つめた。
…ああ、そうか……。
僕はずっとアリルサーシャと二人きりで、アリルサーシャが消えて今は本当は、たった、一人だったんだ。
だから、ファントレイユはそっと寄り添ってくれて、アイリスは抱きしめている。
テテュスはやっぱり、可笑しかった。
自分では気づかないのに、アイリスやファントレイユはそれを、知っていたんだ。
「…アリルサーシャが居なく…なったから……」
テテュスは言いかけて、自分が遠くに、いきなり誰も届かない遠くに居る気がして、困惑した。
それで、いいと思ったのは自分なのに。急にその事がとても不安に、成って。
ローフィスが、アイリスの肩を掴んで怒鳴った。
「いいから!思い出させるな!!」
ディングレーも俯いて、つぶやいた。
「…ちゃんと戻ってくると、信じてやれ。アイリス。自分を押しつけず。
出来るだろう?…テテュスの、為なら」
アイリスは顔を揺らし、俯き、涙を頬に、滴らせ、震えた。
そしてきつく握る手の力を、抜いた。
その途端、ようやくテテュスはアイリスが見えて、ささやいた。
「…泣かせて、ごめんなさい」
アイリスが、顔を上げた。
自分が元の場所に戻った途端、テテュスは心の平衝を取り戻す。
でも…とても、遠かった。
そんな場所からしか、自分は彼と接する事は出来ないとアイリスは思い知って、痛手を受けたのは彼の、方だった。
アリルサーシャがまん中に居て、自分とテテュスは両脇に居た。
アリルサーシャが消えた今、彼との距離はどうしてこんなに、離れているのだろう?
アイリスが参っているので、ローフィスが椅子に掛ける彼の横に、付いた。
ファントレイユの涙が止まらず、レイファスは気遣うようにファントレイユを覗き込んでいた。
テテュスは、ディングレーを見上げた。
ディングレーが見つめ返した。くっきりとした青い瞳で。
テテュスが自分のせいで大事な楽しい時間を台無しにしたと、気落ちしているのを見て、つぶやいた。
「…お前のせいじゃない。大概、自分一人で抱え込むな。
餓鬼だって事、いつも忘れてるだろう?
アイリスを泣かせる餓鬼なんて、他に居ないぞ?」
テテュスは笑った。
「アイリスは、いつも泣かない?」
「見た事が、無い」
テテュスが解ってなくて、ディングレーは彼をじっと、見つめた。
「お前は餓鬼の癖に大人みたいに振る舞うから、アイリスもファントレイユも、泣くんだ」
テテュスは困惑した。
「…でもどうすればいいのか、本当に解らないんだ」
ディングレーは言おうとして、口を閉じた。
テテュスは諦め切れない。相手は『死』なのに。
誰にもどうする事も出来ないもの相手に、どうして勝てなかったのかを、考え続けている。
亡くした者がどれ程大切か、身に滲みて知っているからこそ、その場に立ちすくんで、立ち去ろうと、しない。
勝敗の、付いた今でも。
幼く真っ直ぐだから、余計に。
ディングレーはぶっきら棒に告げた。
「アイリスはお前を取り戻したいんだ。
アリルサーシャが居なくなってもうお前しか、居ないから」
テテュスは顔を上げた。
「でも、アイリスにはたくさん仲間が、居る」
ディングレーはテテュスを見つめた。
「お前は、それとは別だ」
「…アイリスは、寂しいの?」
ディングレーは、寂しいのはお前だろう。と言おうとして、止めた。
寂しいどころの喪失感じゃないと、解ったからだ。
あまりにもそれが大きすぎて、テテュスは迂闊に泣く事すら、出来ないくらいだ。
じっと、固まって、その大きさにため息を付いている。
前だけを見ようと決めている。そうしなければきっと…この先そんな大きな空洞を抱えて、どうやって生きていけばいいのかすら、解らなくなってしまうだろう。
大人ですら、酒に溺れて忘れたいくらいの、途方も無い位の、喪失感だった。
彼が真っ直ぐ過ぎて、自分を少しも労ったり逃げ道を作ったりせず、ありったけの全力で『死』に立ち向かったりしたから、余計に。
ファントレイユが、レイファスの心配を振り払って、テテュスの横に付く。
そっ、と気遣うように肩が触れる位置に、俯いて、立つ。
彼を見ないように、肩だけが、触れていた。
ディングレーはその距離の気遣いに、子供のカンだな。と、顔を揺らした。
ディングレーがその場を離れようとし、テテュスがつぶやいた。
「とても、楽しそうだったのに。みんな」
その残念そうな声に、ディングレーは少し、笑うとテテュスの頭にその大きな手を置いて、くしゃっとした。
それが、返事だった。
気に、するな…。
レイファスには解ってた。そんなものは無いと思いたいんだ。テテュスは。
喪失感も、空洞も。
だから…。普通に、笑っていたいんだ。自分は大丈夫と、言い聞かせたいんだ。
そうして無いと………。
レイファスは思い描いてぞっとして、震える腕を握りしめ、震えを止めた。
「解ってやれ…。今はそっとして置け!」
ローフィスはそれでも労るように、俯くアイリスに、ささやき続けた。
夕食の席は静かで、テテュスはファントレイユを見、ファントレイユが先につぶやいた。
「ごめんね」
テテュスは顔を、揺らした。
レイファスは、俯いた。
でも…。
それは初めから、無かったんだ。
君が、取り上げたりはしてない。
『僕は全然気にして無いから』
テテュスは言おうとし、アイリスがまた悲しむと思って、止めた。
俯くテテュスに、レイファスが言った。
「でもきっと僕思うんだけど…」
皆が一斉に、ふいをつかれたようにその声に顔を、上げた。
「ファントレイユはきっと大人になったら、ゼイブンみたいになると思うな」
ファントレイユが条件反射で尋ねた。
「…どうして?」
「…だって、ゼイブンは自分が美男だと思ってるし、モテるのを知ってるし」
ファントレイユの眉が、思い切り寄った。
「…でもセフィリアと結婚してるのに」
「じゃあ、君は結婚したら、その人だけになると思う?」
ファントレイユがムキになって怒鳴った。
「そんな先の事なんて、解るもんか!」
テテュスが思わずくすくす笑い、ファントレイユは少し頬を、染めた。
「だってその前に教練があるし…。
ゼイブンは僕が彼よりセフィリアに似てると思ってるし…。
セフィリアが教練に入ったら、どうなると思う?」
途端、ローフィスが肩をすくめた。
「並み居る男を、従わせてるだろう」
ファントレイユがびっくりして顔を、上げた。
「どうして?」
ディングレーも、唸った。
「…余程の野蛮人で無い限り、彼女に口をきかれたら大抵の男は戦意喪失するからな」
「殴れなくなるの?」
テテュスに聞かれ、そう。とディングレーは瞳で答えた。
「どうして?」
ファントレイユが聞いたが、レイファスはつぶやいた。
「…そのテがあるか…」
皆がレイファスを、ぎょっと見た。
レイファスは可憐な面を、上げた。
「だって、拳を振るう気を無くさせるのが、一番強いでしょう?」
レイファスの問いに、ディングレーは顔を下げた。
「確かに」
ローフィスは肩をすくめた。
「そいつを磨く気か?」
「だっていくら豪腕でも、振るえなきゃただの腕だもの」
皆が、納得しようとして出来ない自分を、思った。
ディングレーが、ぼそりと告げる。
「…凄く、イレギュラーな戦法だ」
ローフィスはレイファスがやりそうで、彼をチラと見つめた。
ファントレイユがまた、尋ねた。
「イレギュラーって?」
レイファスが言った。
「正統じゃないって意味」
ファントレイユはレイファスを見つめた。
「じゃ、卑怯?」
ローフィスが唸った。
「それに近い」
ファントレイユもそうだったが、テテュスもレイファスを、見つめた。
レイファスは二人の視線を感じたけれど、それでも言った。
「だって僕はうんとハンデがある。
ファントレイユがいつも泣くのは、テテュス。君が凄く、恵まれているからだ」
テテュスはレイファスを見た。
「…恵まれてる?」
「だって体格がいいし。ちゃんと男の子に、見える」
テテュスは顔を、下げた。
「…それって、普通だって事じゃないの?」
恐る恐る聞くが、レイファスは顔を上げた。
「でも同年代の子に混じれば、君くらい立派な子は居ない。
姿が良くて性格が良くて、育ちも良くて、頼りがいがあるし」
テテュスはレイファスを、びっくりして見た。
「僕とファントレイユは、凄く君が羨ましい。代わってもらいたい位だ」
ディングレーとローフィスは彼の言わんとする事が解った。
テテュスは口を開こうとしたが、レイファスが先に、言った。
「君はアイリスにそっくりだし、アイリスは誰が見ても立派な騎士だから君もきっと、誰よりも目立つ素晴らしい騎士になるだろうな」
そう言うレイファスを、ファントレイユが見た。
ファントレイユの視線を受けてレイファスは、ぼやくようにつぶやいた。
「僕やファントレイユが似てるのは、アリシャ秘蔵の、お人形だし」
ファントレイユは俯いた。
「レイファスの所の銀髪の人形は、僕が同じドレスを着るとそっくりだって」
ぶっ!
ディングレーが思わず吹き出し、アイリスに睨まれた。
「…でも本当に、綺麗だもの。ファントレイユは」
テテュスが微笑んでそう言うと、ファントレイユは切なげに顔を上げた。
「女の子ならそう言われたら、きっと嬉しい」
その後に言いたい事を察し、テテュスは俯いた。
ファントレイユは俯くテテュスにささやいた。
「僕は君が小さくても立派な騎士でとても羨ましいと思うけど、でもとっても好きだから、もっと仲良しになりたい」
ファントレイユに素直にそう言われて、テテュスは俯いた。
ローフィスも、いいぞ。と思った。
「僕もだって、言わなきゃ駄目?
でも男の子の僕じゃあんまり、好きになって貰えないかもだけど」
レイファスが落胆するように頬杖付くので、テテュスは慌てて口を開く。
「ちゃんと、男の子でも好きだよ?」
レイファスは顔を上げて、にっこりと笑った。
彼の笑顔はその場を、明るく和ませた。
…そうだ。夢見心地ですっかり、忘れていた。
男の子、だったんだ…。
こちらの一方的な思い入れで、レイファスはすっかり迷惑していたに違いないのに…。
なのに、自分を気遣ってくれた…。
テテュスはそっ、とレイファスに心の中で謝罪し、そして彼の力になろうと、決めた。
だが…。
ファントレイユに目を移したとき、彼は夢中で、アイリスの繰り出す剣を、刃先を潰した子供用の剣で跳ね返していた。
アイリスはいろいろな場所に剣を繰り出し、ファントレイユは教えられた型でそれを、返す。
たどたどしい剣先が少しずつ、的確になる。
アイリスが本気を誘うよう、剣を繰り出し続け、ファントレイユは必死で跳ね返す。
だんだんと、力を込めて、それは真剣な表情で。
ファントレイユもレイファスも、騎士達とは馴染みが無いと言った。
けど…。
テテュスですら、アイリスにまともに相手を、して貰った事なんて無かった。
ファントレイユの頬が紅潮し、ブルー・グレーの瞳がきらきらし、とても生き生きして見えた。
凄く、楽しいんだ。
…でも、アイリスが彼の相手をするのを見守る間、テテュスにまたあの、寒々とした感覚が蘇ってきた。
妬いているならいいのに。
でもアイリスが誰かと過ごすのを見守るのが、彼のいつもの位置、だった。
アイリスの、居ない屋敷。
弱々しいアリルサーシャとたった二人きりで、自分が彼女の支えになる為、アイリスの存在を補おうと一生懸命だった、あの、時間。
…なんて、頼りなかったんだろう。
アイリスが帰ると途端、彼を出迎えて受ける感覚。
アイリスを目の前にすると自分がどれだけ小さいかを感じ、でも彼の大きさが心から、嬉しかった。
そしていつも決まって彼の手を引き、アリルサーシャの元へと導いた。
その間だけ、アイリスが彼女を引き受けてくれてテテュスは解放された。
死の恐怖と不安との、戦いから。
どれ程の、安堵だったろう?
アイリスが居る間彼は、自分で居られた。
たった、その短い時間の間だけ。
アリルサーシャをアイリスに預け、自分は震える体を解放出来た。
戦いで疲労した心を見つめる事も。
でも………。
レイファスは、気づいたし、ディングレーも彼を見つめていた。
テテュスは思い出に帰り、そんな時テテュスは、たった一人に、なる。
周囲にこれだけ人が居ても、彼は一人なのだった。
ディングレーがまるで引き戻すように、テテュスの肩を乱暴に、引いた。
その手がとても暖かくて、テテュスは振り向いた。
ディングレーの、深い青の瞳が心配げで、テテュスはどうしたの?と彼を見つめた。
ふいに、ディングレーが彼を抱きしめた。
まるで、そこに居るのを確かめるようで、テテュスははっと、した。
ああ………。
「ごめん。僕、ちょっとぼっと、してたよね?」
微笑むテテュスに、ディングレーはぶっきら棒につぶやいた。
「謝らなくていい」
その言葉は凄く乱暴だったけど、泣き出しそうで、ディングレーがそうなのか、自分がそうなのかをテテュスは考えた。
『泣いた方がいい…!』
以前そう叫んだファントレイユが、剣を下げてじっとこちらを見つめていた。
テテュスは慌ててつぶやいた。
「ごめん。邪魔した?」
ファントレイユはアイリスを見た。
が、アイリスはもうテテュスを抱くディングレーの横に付いて、彼を伺った。
「テテュス………」
テテュスは覗き込むアイリスの濃紺の瞳に真っ直ぐ見つめられ、見つめ返す。
そう…。いつも…。
アイリスはアリルサーシャのもので、自分はその時だけ解放され、それだけで…良かった筈だった。
だから………。
でも今はどうして…こんなに遠く感じるんだろう?
ディングレーが彼を放すなり、アイリスが抱き込んだ。
ふいにとても大きなアイリスの温もりに包まれて、テテュスはほっとした。
いつも…アリルサーシャを優先してた。
彼女はずっと、アイリスを待っていた。
だから…気づかなかった。
自分がこれ程…アイリスの温もりで癒されるだなんて。
でも………。
アイリスがどれだけきつくテテュスを抱いても、テテュスに届かない気がして。
涙を滴らせたのは、アイリスの方だった。
テテュスは彼が泣いているのに戸惑って、くぐもった声で、でもやはりとても優しい声音で告げた。
「…………アイリス。とっても好きだ。
けど……」
アイリスは解ってるとばかり、もっときつく、抱き寄せたけど…。
アイリスはやっぱり今でもアリルサーシャのもので有り続けた。
もしくは別の、誰かの。
なぜだかは解らないけれど、テテュスはそれでいいと思った。
アイリスは遠く、でもそれでも、いいんだと。
テテュスが頑なに、今までの自分の居場所を護ろうとしているのが感じられ、アイリスの頬に涙が伝った。
どれだけきつく抱きしめても、心の距離は、埋まらなかった………。
テテュスはローフィスを見つめた。
「…アイリスを、泣かせた」
ローフィスは眉を、寄せた。とても、悲しげに。
まるで誰も、アリルサーシャの代わりには成れないと、知っているように。
皆の瞳にそれが、映った。
寝台に横たわる、アリルサーシャの横に、付き従う騎士のように傅(かしず)く幼いテテュスを。
アイリスの声は掠れていた。
「たい…役を……果たした後だから…君は……」
テテュスはアイリスの髪に顔を埋めた。
「労ってくれるの?みんな?」
テテュスの微笑みに、ローフィスがやりきれない表情をし、レイファスもファントレイユも言葉を無くした。
アイリスのテテュスを抱く腕は震え、彼は微かに、頷いた。
ファントレイユはアイリスの気持ちが痛い程解った。
テテュスは泣かないから…。
とても悲しい筈なのに泣かないから…。
まるで彼の代わりのように、彼を大切に想う者がその心の悼みを感じて、涙するんだ。
テテュスの中にぽっかり大きな空洞があって、テテュス自身もどうやってそれを埋めようか、思案してるみたいだった。彼は、笑ってさえみせた。
『困ってるんだ』
そんな風に。
…決して、笑える事なんかじゃ、ないのに。
でもテテュスは、皆の楽しそうな時間を、自分が止めているのを気遣う様子を、見せた。
「ごめん。アイリス僕は大丈夫だから。
ファントレイユの相手をしてあげて?」
途端、ファントレイユが顔を揺らし、下げて涙が頬を滴る。
テテュス自身がもう、どうしていいのか解らないようで、そんなアイリスとファントレイユを、沈黙して交互に見つめた。
「本当に、大丈夫だから…」
言う、テテュスの肩を抱くアイリスの手が一瞬、否定するように、震えた。
ローフィスが、アイリスの肩に手を、置く。
「テテュスがそう、言っている」
アイリスは肩をびくん!と震わせたけど、ゆっくり顔を上げて幼い騎士を、見つめた。
アイリスの綺麗な夜闇のような濃紺の瞳が濡れていて、テテュスがそれを、まるで夜空の星を見るように遠い瞳で見つめ返したりしたから、アイリスの瞳がまた、潤んだ。
「…私はここに、居るのに!」
低い、でも叫びで。
テテュスはその声がどこから響くのか解らず、一瞬混乱した。
「…アイリス!」
ローフィスが、苦虫噛んだような顔でアイリスの肩の衣服を握り、強引に引く。
だがアイリスは止める気なく、体を振ってローフィスの手を激しく振り払い、今度はテテュスの肩を掴んで、怒鳴った。
「テテュス!ずっと、居る!例え君が、気づかなくてもだ!
ここに!私は!!!」
テテュスは瞬間、足元が無くなった気がして、混乱した。
だって…でも誰も、居ない。ここには。
アリルサーシャがずっと居た筈だけど…。
テテュスは辺りを見回そうとして、途端に思い出した。
テテュスの顔が歪み、ローフィスは叫んだ。
「…解らないのか!テテュスはやっと、バランスをかろうじて保ってる!!
それを、無理に、思い出させるな!!!」
それを………?
ああ、そうだ。もう、アリルサーシャが居ない、事だ………。
どうして居ないんだろう?
何が、いけなかったんだろう?
僕はありったけで、頑張ったのに………。
でもそのまま考え続けると、テテュスは足元の消えた底無しの空間に落ちていきそうで、アイリスとそして、泣くファントレイユを見つめた。
…ああ、そうか……。
僕はずっとアリルサーシャと二人きりで、アリルサーシャが消えて今は本当は、たった、一人だったんだ。
だから、ファントレイユはそっと寄り添ってくれて、アイリスは抱きしめている。
テテュスはやっぱり、可笑しかった。
自分では気づかないのに、アイリスやファントレイユはそれを、知っていたんだ。
「…アリルサーシャが居なく…なったから……」
テテュスは言いかけて、自分が遠くに、いきなり誰も届かない遠くに居る気がして、困惑した。
それで、いいと思ったのは自分なのに。急にその事がとても不安に、成って。
ローフィスが、アイリスの肩を掴んで怒鳴った。
「いいから!思い出させるな!!」
ディングレーも俯いて、つぶやいた。
「…ちゃんと戻ってくると、信じてやれ。アイリス。自分を押しつけず。
出来るだろう?…テテュスの、為なら」
アイリスは顔を揺らし、俯き、涙を頬に、滴らせ、震えた。
そしてきつく握る手の力を、抜いた。
その途端、ようやくテテュスはアイリスが見えて、ささやいた。
「…泣かせて、ごめんなさい」
アイリスが、顔を上げた。
自分が元の場所に戻った途端、テテュスは心の平衝を取り戻す。
でも…とても、遠かった。
そんな場所からしか、自分は彼と接する事は出来ないとアイリスは思い知って、痛手を受けたのは彼の、方だった。
アリルサーシャがまん中に居て、自分とテテュスは両脇に居た。
アリルサーシャが消えた今、彼との距離はどうしてこんなに、離れているのだろう?
アイリスが参っているので、ローフィスが椅子に掛ける彼の横に、付いた。
ファントレイユの涙が止まらず、レイファスは気遣うようにファントレイユを覗き込んでいた。
テテュスは、ディングレーを見上げた。
ディングレーが見つめ返した。くっきりとした青い瞳で。
テテュスが自分のせいで大事な楽しい時間を台無しにしたと、気落ちしているのを見て、つぶやいた。
「…お前のせいじゃない。大概、自分一人で抱え込むな。
餓鬼だって事、いつも忘れてるだろう?
アイリスを泣かせる餓鬼なんて、他に居ないぞ?」
テテュスは笑った。
「アイリスは、いつも泣かない?」
「見た事が、無い」
テテュスが解ってなくて、ディングレーは彼をじっと、見つめた。
「お前は餓鬼の癖に大人みたいに振る舞うから、アイリスもファントレイユも、泣くんだ」
テテュスは困惑した。
「…でもどうすればいいのか、本当に解らないんだ」
ディングレーは言おうとして、口を閉じた。
テテュスは諦め切れない。相手は『死』なのに。
誰にもどうする事も出来ないもの相手に、どうして勝てなかったのかを、考え続けている。
亡くした者がどれ程大切か、身に滲みて知っているからこそ、その場に立ちすくんで、立ち去ろうと、しない。
勝敗の、付いた今でも。
幼く真っ直ぐだから、余計に。
ディングレーはぶっきら棒に告げた。
「アイリスはお前を取り戻したいんだ。
アリルサーシャが居なくなってもうお前しか、居ないから」
テテュスは顔を上げた。
「でも、アイリスにはたくさん仲間が、居る」
ディングレーはテテュスを見つめた。
「お前は、それとは別だ」
「…アイリスは、寂しいの?」
ディングレーは、寂しいのはお前だろう。と言おうとして、止めた。
寂しいどころの喪失感じゃないと、解ったからだ。
あまりにもそれが大きすぎて、テテュスは迂闊に泣く事すら、出来ないくらいだ。
じっと、固まって、その大きさにため息を付いている。
前だけを見ようと決めている。そうしなければきっと…この先そんな大きな空洞を抱えて、どうやって生きていけばいいのかすら、解らなくなってしまうだろう。
大人ですら、酒に溺れて忘れたいくらいの、途方も無い位の、喪失感だった。
彼が真っ直ぐ過ぎて、自分を少しも労ったり逃げ道を作ったりせず、ありったけの全力で『死』に立ち向かったりしたから、余計に。
ファントレイユが、レイファスの心配を振り払って、テテュスの横に付く。
そっ、と気遣うように肩が触れる位置に、俯いて、立つ。
彼を見ないように、肩だけが、触れていた。
ディングレーはその距離の気遣いに、子供のカンだな。と、顔を揺らした。
ディングレーがその場を離れようとし、テテュスがつぶやいた。
「とても、楽しそうだったのに。みんな」
その残念そうな声に、ディングレーは少し、笑うとテテュスの頭にその大きな手を置いて、くしゃっとした。
それが、返事だった。
気に、するな…。
レイファスには解ってた。そんなものは無いと思いたいんだ。テテュスは。
喪失感も、空洞も。
だから…。普通に、笑っていたいんだ。自分は大丈夫と、言い聞かせたいんだ。
そうして無いと………。
レイファスは思い描いてぞっとして、震える腕を握りしめ、震えを止めた。
「解ってやれ…。今はそっとして置け!」
ローフィスはそれでも労るように、俯くアイリスに、ささやき続けた。
夕食の席は静かで、テテュスはファントレイユを見、ファントレイユが先につぶやいた。
「ごめんね」
テテュスは顔を、揺らした。
レイファスは、俯いた。
でも…。
それは初めから、無かったんだ。
君が、取り上げたりはしてない。
『僕は全然気にして無いから』
テテュスは言おうとし、アイリスがまた悲しむと思って、止めた。
俯くテテュスに、レイファスが言った。
「でもきっと僕思うんだけど…」
皆が一斉に、ふいをつかれたようにその声に顔を、上げた。
「ファントレイユはきっと大人になったら、ゼイブンみたいになると思うな」
ファントレイユが条件反射で尋ねた。
「…どうして?」
「…だって、ゼイブンは自分が美男だと思ってるし、モテるのを知ってるし」
ファントレイユの眉が、思い切り寄った。
「…でもセフィリアと結婚してるのに」
「じゃあ、君は結婚したら、その人だけになると思う?」
ファントレイユがムキになって怒鳴った。
「そんな先の事なんて、解るもんか!」
テテュスが思わずくすくす笑い、ファントレイユは少し頬を、染めた。
「だってその前に教練があるし…。
ゼイブンは僕が彼よりセフィリアに似てると思ってるし…。
セフィリアが教練に入ったら、どうなると思う?」
途端、ローフィスが肩をすくめた。
「並み居る男を、従わせてるだろう」
ファントレイユがびっくりして顔を、上げた。
「どうして?」
ディングレーも、唸った。
「…余程の野蛮人で無い限り、彼女に口をきかれたら大抵の男は戦意喪失するからな」
「殴れなくなるの?」
テテュスに聞かれ、そう。とディングレーは瞳で答えた。
「どうして?」
ファントレイユが聞いたが、レイファスはつぶやいた。
「…そのテがあるか…」
皆がレイファスを、ぎょっと見た。
レイファスは可憐な面を、上げた。
「だって、拳を振るう気を無くさせるのが、一番強いでしょう?」
レイファスの問いに、ディングレーは顔を下げた。
「確かに」
ローフィスは肩をすくめた。
「そいつを磨く気か?」
「だっていくら豪腕でも、振るえなきゃただの腕だもの」
皆が、納得しようとして出来ない自分を、思った。
ディングレーが、ぼそりと告げる。
「…凄く、イレギュラーな戦法だ」
ローフィスはレイファスがやりそうで、彼をチラと見つめた。
ファントレイユがまた、尋ねた。
「イレギュラーって?」
レイファスが言った。
「正統じゃないって意味」
ファントレイユはレイファスを見つめた。
「じゃ、卑怯?」
ローフィスが唸った。
「それに近い」
ファントレイユもそうだったが、テテュスもレイファスを、見つめた。
レイファスは二人の視線を感じたけれど、それでも言った。
「だって僕はうんとハンデがある。
ファントレイユがいつも泣くのは、テテュス。君が凄く、恵まれているからだ」
テテュスはレイファスを見た。
「…恵まれてる?」
「だって体格がいいし。ちゃんと男の子に、見える」
テテュスは顔を、下げた。
「…それって、普通だって事じゃないの?」
恐る恐る聞くが、レイファスは顔を上げた。
「でも同年代の子に混じれば、君くらい立派な子は居ない。
姿が良くて性格が良くて、育ちも良くて、頼りがいがあるし」
テテュスはレイファスを、びっくりして見た。
「僕とファントレイユは、凄く君が羨ましい。代わってもらいたい位だ」
ディングレーとローフィスは彼の言わんとする事が解った。
テテュスは口を開こうとしたが、レイファスが先に、言った。
「君はアイリスにそっくりだし、アイリスは誰が見ても立派な騎士だから君もきっと、誰よりも目立つ素晴らしい騎士になるだろうな」
そう言うレイファスを、ファントレイユが見た。
ファントレイユの視線を受けてレイファスは、ぼやくようにつぶやいた。
「僕やファントレイユが似てるのは、アリシャ秘蔵の、お人形だし」
ファントレイユは俯いた。
「レイファスの所の銀髪の人形は、僕が同じドレスを着るとそっくりだって」
ぶっ!
ディングレーが思わず吹き出し、アイリスに睨まれた。
「…でも本当に、綺麗だもの。ファントレイユは」
テテュスが微笑んでそう言うと、ファントレイユは切なげに顔を上げた。
「女の子ならそう言われたら、きっと嬉しい」
その後に言いたい事を察し、テテュスは俯いた。
ファントレイユは俯くテテュスにささやいた。
「僕は君が小さくても立派な騎士でとても羨ましいと思うけど、でもとっても好きだから、もっと仲良しになりたい」
ファントレイユに素直にそう言われて、テテュスは俯いた。
ローフィスも、いいぞ。と思った。
「僕もだって、言わなきゃ駄目?
でも男の子の僕じゃあんまり、好きになって貰えないかもだけど」
レイファスが落胆するように頬杖付くので、テテュスは慌てて口を開く。
「ちゃんと、男の子でも好きだよ?」
レイファスは顔を上げて、にっこりと笑った。
彼の笑顔はその場を、明るく和ませた。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌
紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。
それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。
今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。
コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。
日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……?
◆◆◆
「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」
「紙でしょ? ペーパーって言うし」
「そうだね。正解!」
◆◆◆
神としての力は健在。
ちょっと天然でお人好し。
自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中!
◆気まぐれ投稿になります。
お暇潰しにどうぞ♪
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結済】ラーレの初恋
こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた!
死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし!
けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──?
転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。
他サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる