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短編集
東尾根でのキース
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東尾根に伝言を伝えに、キースはその役を買って出た。
いつもはアルナに頼むのに。
レオは吐息を吐く。
が、キースがファーレーンに会いたいのは明白。
ヘタに口を挟むと、恋に狂った男を敵に回す羽目になる。
レオは黙して、キースの背を見送った。
キースは正直、三馬鹿大将らがあの後、ファーレーンにどんな態度を取っているのか、気になって仕方無かったから、東尾根に進む足は早まる。
つい、岩を飛び越え草原を駆け抜け…東尾根に到達した。
突き出た岩を登り始めると…やがて東尾根の居住テントのある大岩の入り口に辿り着く。
アントランが振り向く。
「…キース…!」
キースは満面笑顔のアントランが、両手広げ駆け寄り来るのに思わず、くるり。と背を向けた。
そして、背後に抱きつかれそうな気配を感じ、思った。
「(最初にアントランだなんて、鬼門だ…)」
ばっ!
アントランの両腕が抱きついた時、キースはかわして身を下げ、一気に向きを変えて駆け出す。
アントランは抱きついた筈のキースの身が掻き消えて、自分を抱きしめる羽目になって、無言。
振り向くと、キースは真っ直ぐファーレーンのテントへと向かう。
ファーレーンは丁度、テントの入り口の布を払い、姿を現し、駆け来るキースを見た。
キースは心が満たされ、自然と顔が緩み笑顔になるのを感じた。
綺麗な湖水の青の瞳。白っぽい金の髪の整いきった美麗なファーレーン。
つい…抱き寄せてあれもこれもした時の、ファーレーンの色っぽく乱れる姿が思い浮かんで、顔がにやける。
ファーレーンに突進し、抱きつこうとした時…。
ばきっ!
…目から火花が散った。
「…酷いな…」
頬に手を当て、そう言うと、ファーレーンは憮然。と言葉を返す。
「…お前がスケベな事考えてるって、丸わかりだぞ」
「…三馬鹿は、あれからまた変なちょっかいかけてないか?」
ファーレーンの眉が、ますます寄る。
「…まさか私が、あの三人に悪戯されてるとことか、想像してないな?」
「どうしてそんな想像する!
当然俺がお前に…あれやこれやしてる事しか想像してない!」
ばきっ!
キースは両頬手で押さえ、呻く。
「…どうして殴るかな…」
「どスケベな想像してるからに決まってる!」
「……………お前が応えてくれないから…。
ついファオンをお前だと思って、昨日思い切り抱いちまった」
「…なぜ?
ファオンはもうレグウルナスの筈だ!」
「…代わりのアグナータがなかなか見つからないから、それまで代理だ」
ファーレーンが拳を握り込む。
「…貴様、まさか…私に出来ない分、ファオンに思い切りスケベな事してるのか?!」
キースは思い出して、顔を緩める。
「…スケベな事、言ったりしたりするとファオンは恥ずかしがったり頬を赤らめたり…思い切り貫くと、しがみついてきて、可愛い」
しゅっ!
流石に、今度キースはファーレーンの真横に振られる拳から、身を沈めて自分を庇った。
「俺は想像してないが…まさかお前、本当に三馬鹿に悪戯されてないよな?!
俺が見た時、確か足開いて…蕾に指入れられてたじゃ無いか。
衝撃の場面だったぞ!
あれは俺が一番したかった事だ!」
しゅっ!
「なんで避ける!」
「両頬腫らして、まだ満足しないのか!」
「当然だ!」
「…殴らないで、返答してくれると嬉しいんだが」
しゅっ!
がっ!
今度、キースはファーレーンの、顔に向けて振られた拳を握り止める。
「…マジで。
心配してるんだが」
「あいつらはキリアンに犯されて以来、大人しい!
自分が女扱いされたショックで暫く、アグナータも抱けない程だ!
私をからかう心の余裕すら無いさ!」
キースは、ほっとした。
「…良かった…。
正直あの続きを、奴ら別の汚い手使ってお前をハメて、やってないか心配だったんだ」
「私の心配はどうなる!
貴様どれだけファオンを汚せば気が済む!」
「お前でずっと禁欲してたから。
ファオンで晴らしまくってるが、足りない。
俺が一人占め出来てしたい放題出来れば、一週間ほどで収まるんだろうが」
「一週間も、ファオンとしまくる気か?!」
「いや出来れば、お前としたい」
しゅっ!
キースは一瞬逃げ遅れ、ファーレーンの拳はキースの頭頂を掠った。
「貴様、キリアンの言った戯れ言、マジにしてるだろう?!」
「俺に、ぐらぐら心が揺れてるって?
体を許してもイイって?
はっきり言って、俺は上手い。
天国に連れてってやれるぜ?」
ファーレーンはそれを聞いて、口の端だけ上げて笑う。
「私もだ。
但し、拳で」
キースは真顔でファーレーンに言い返す。
「そういうのは天国って言わない。
どっちかってーと、地獄だな」
ファーレーンは怒って怒鳴る。
「私はお前を天国なんかに連れてく気が毛頭無いからな!」
キースはファーレーンを、こっそり見て囁く。
「…やっぱあの時…お前、寝たふりして起きてたんじゃ無いのか?」
ファーレーンはぴく。と片眉釣り上げる。
「…どうも某所が痛い。と思ってたらまさかお前…寝てる最中にまさか…」
「…やっぱ、寝てたのか」
「突っ込んだのか?!寝てる私に!」
「だから三馬鹿に聞かれたら
『初体験はキースと既にして、私はキースのものだ』
と言ってやれ」
「殺す!!」
レドナンドは、伝言に来たはずのキースがファーレーンに追いかけられて逃げ回る姿を見た。
「追いかけっこしに、ここに来たのか?あいつ」
アントランが横で不満そうに呟いた。
「俺なら、楽しい時間を過ごさせてやれるのに。
なんで殴られて、真剣振り回されて追いかけられたいかな」
逃げるキースに剣を振るファーレーンを見、レドナンドがぼそり。と呟く。
「…ああしてると、流石キリアンの兄だ。
そっくりだ」
近くにいた三馬鹿が、キリアンの名を聞いて、俯いて肩を落とし溜息を吐き出しながら、いつ迄も掴まらないキースをかっか来て剣振り回し追いかけるファーレーンから、揃って思い切り、顔を背けた。
いつもはアルナに頼むのに。
レオは吐息を吐く。
が、キースがファーレーンに会いたいのは明白。
ヘタに口を挟むと、恋に狂った男を敵に回す羽目になる。
レオは黙して、キースの背を見送った。
キースは正直、三馬鹿大将らがあの後、ファーレーンにどんな態度を取っているのか、気になって仕方無かったから、東尾根に進む足は早まる。
つい、岩を飛び越え草原を駆け抜け…東尾根に到達した。
突き出た岩を登り始めると…やがて東尾根の居住テントのある大岩の入り口に辿り着く。
アントランが振り向く。
「…キース…!」
キースは満面笑顔のアントランが、両手広げ駆け寄り来るのに思わず、くるり。と背を向けた。
そして、背後に抱きつかれそうな気配を感じ、思った。
「(最初にアントランだなんて、鬼門だ…)」
ばっ!
アントランの両腕が抱きついた時、キースはかわして身を下げ、一気に向きを変えて駆け出す。
アントランは抱きついた筈のキースの身が掻き消えて、自分を抱きしめる羽目になって、無言。
振り向くと、キースは真っ直ぐファーレーンのテントへと向かう。
ファーレーンは丁度、テントの入り口の布を払い、姿を現し、駆け来るキースを見た。
キースは心が満たされ、自然と顔が緩み笑顔になるのを感じた。
綺麗な湖水の青の瞳。白っぽい金の髪の整いきった美麗なファーレーン。
つい…抱き寄せてあれもこれもした時の、ファーレーンの色っぽく乱れる姿が思い浮かんで、顔がにやける。
ファーレーンに突進し、抱きつこうとした時…。
ばきっ!
…目から火花が散った。
「…酷いな…」
頬に手を当て、そう言うと、ファーレーンは憮然。と言葉を返す。
「…お前がスケベな事考えてるって、丸わかりだぞ」
「…三馬鹿は、あれからまた変なちょっかいかけてないか?」
ファーレーンの眉が、ますます寄る。
「…まさか私が、あの三人に悪戯されてるとことか、想像してないな?」
「どうしてそんな想像する!
当然俺がお前に…あれやこれやしてる事しか想像してない!」
ばきっ!
キースは両頬手で押さえ、呻く。
「…どうして殴るかな…」
「どスケベな想像してるからに決まってる!」
「……………お前が応えてくれないから…。
ついファオンをお前だと思って、昨日思い切り抱いちまった」
「…なぜ?
ファオンはもうレグウルナスの筈だ!」
「…代わりのアグナータがなかなか見つからないから、それまで代理だ」
ファーレーンが拳を握り込む。
「…貴様、まさか…私に出来ない分、ファオンに思い切りスケベな事してるのか?!」
キースは思い出して、顔を緩める。
「…スケベな事、言ったりしたりするとファオンは恥ずかしがったり頬を赤らめたり…思い切り貫くと、しがみついてきて、可愛い」
しゅっ!
流石に、今度キースはファーレーンの真横に振られる拳から、身を沈めて自分を庇った。
「俺は想像してないが…まさかお前、本当に三馬鹿に悪戯されてないよな?!
俺が見た時、確か足開いて…蕾に指入れられてたじゃ無いか。
衝撃の場面だったぞ!
あれは俺が一番したかった事だ!」
しゅっ!
「なんで避ける!」
「両頬腫らして、まだ満足しないのか!」
「当然だ!」
「…殴らないで、返答してくれると嬉しいんだが」
しゅっ!
がっ!
今度、キースはファーレーンの、顔に向けて振られた拳を握り止める。
「…マジで。
心配してるんだが」
「あいつらはキリアンに犯されて以来、大人しい!
自分が女扱いされたショックで暫く、アグナータも抱けない程だ!
私をからかう心の余裕すら無いさ!」
キースは、ほっとした。
「…良かった…。
正直あの続きを、奴ら別の汚い手使ってお前をハメて、やってないか心配だったんだ」
「私の心配はどうなる!
貴様どれだけファオンを汚せば気が済む!」
「お前でずっと禁欲してたから。
ファオンで晴らしまくってるが、足りない。
俺が一人占め出来てしたい放題出来れば、一週間ほどで収まるんだろうが」
「一週間も、ファオンとしまくる気か?!」
「いや出来れば、お前としたい」
しゅっ!
キースは一瞬逃げ遅れ、ファーレーンの拳はキースの頭頂を掠った。
「貴様、キリアンの言った戯れ言、マジにしてるだろう?!」
「俺に、ぐらぐら心が揺れてるって?
体を許してもイイって?
はっきり言って、俺は上手い。
天国に連れてってやれるぜ?」
ファーレーンはそれを聞いて、口の端だけ上げて笑う。
「私もだ。
但し、拳で」
キースは真顔でファーレーンに言い返す。
「そういうのは天国って言わない。
どっちかってーと、地獄だな」
ファーレーンは怒って怒鳴る。
「私はお前を天国なんかに連れてく気が毛頭無いからな!」
キースはファーレーンを、こっそり見て囁く。
「…やっぱあの時…お前、寝たふりして起きてたんじゃ無いのか?」
ファーレーンはぴく。と片眉釣り上げる。
「…どうも某所が痛い。と思ってたらまさかお前…寝てる最中にまさか…」
「…やっぱ、寝てたのか」
「突っ込んだのか?!寝てる私に!」
「だから三馬鹿に聞かれたら
『初体験はキースと既にして、私はキースのものだ』
と言ってやれ」
「殺す!!」
レドナンドは、伝言に来たはずのキースがファーレーンに追いかけられて逃げ回る姿を見た。
「追いかけっこしに、ここに来たのか?あいつ」
アントランが横で不満そうに呟いた。
「俺なら、楽しい時間を過ごさせてやれるのに。
なんで殴られて、真剣振り回されて追いかけられたいかな」
逃げるキースに剣を振るファーレーンを見、レドナンドがぼそり。と呟く。
「…ああしてると、流石キリアンの兄だ。
そっくりだ」
近くにいた三馬鹿が、キリアンの名を聞いて、俯いて肩を落とし溜息を吐き出しながら、いつ迄も掴まらないキースをかっか来て剣振り回し追いかけるファーレーンから、揃って思い切り、顔を背けた。
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