アグナータの命運

あーす。

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夢の中の逃避行

215  夢の中の冒険 について

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 ファオンは夢の中のお話を見て、ほっとした。

「キリアンとファーレーンって、凄いねぇ…」

アリオンとシーリーンは腕組んで無言。

シーリーンがおもむろに口を開く。

「ナンだな…。
俺の姿をした俺じゃないヤツがしてるのを見てると…」

アリオンがチラ。とシーリーンを見る。

「…凄い欲求不満?」

シーリーンは頷く。

ファオンだけはにこにこ笑う。

「僕なんか成長してるから、僕じゃなくてお兄さん見てるみたいな気持ちになった」

アリオンとシーリーンが同時に言う。

「…キリアン?」

「…じゃなくて、存在してない僕にそっくりなお兄さん」

「そう」

シーリーンは言って、溜息吐く。

ファオンは二人に気づく。

「この後はもう…見たくないの?」

「だってどうせ…」

アリオンが言って、シーリーンも頷く。

「…結局三人でこの後も暮らすんだよな。
多分」

アリオンが溜息吐いて呟いた。
「この次尾根降りたら、婚約破棄する」

シーリーンが顔上げる。
「…夢の教訓か?
だが今ファオンはもう、《勇敢なる者》レグウルナスだぞ?」

「…だとしても…」

チラ。
とアリオンはシーリーンを見る。

「後、ダブル長指名されたら、お前に譲る」

シーリーンが溜息吐く。

「…夢の中のお前。
って何度も俺と『愛が産まれそう』って呟いてたもんな」

アリオンが頷く。

シーリーンがぼやく。

「…馬車の中は、酷かったな」

アリオンも頷く。

「目を覆いたかったぜ………」

ファオンは二人の言葉を聞いて目を見開く。

「僕、すっごく面白かった」

アリオンが気のない様子で言った。
「良かったな」
シーリーンも投げやりに言った。
「見た甲斐あったな」


二人は肩を思い切り揺さぶられ、目を覚ます。
そこにキースとレオを見つけ、夢から覚めて心からほっとした。

キースがシーリーンを覗き込んで言う。
「美味い酒の差し入れ貰ったぞ。
早く飲まないと、他のヤツに全部飲まれる」

アリオンを揺り起こしたレオも聞く。
「どうする?俺のテントに来るか?
それともここで飲むか?」

ファオンが目を擦りながら起き上がる。
「僕も飲める?」

キースが笑う。
「今ならお前の分もある」

レオが立ち上がり、テントの入り口の布を払い、手で招く。

間もなくセルティスが、酒瓶と軽いつまみをトレーに乗せて来た。

「ファルコンもアランも狙ってる。
さっさと飲まないと」

セルティスがグラスを取ると、皆に注ぐ。

アリオンとシーリーンが、香りを嗅いで目を見開く。

「滅多に飲めない…ザルディスの酒か?」

セルティスは笑いながら注いで、グラスを手渡す。

「味わって飲め」

レオも、キースもグラスに口を付ける。

ファオンも渡され、香りを嗅ぐ。

飲んでみると…凄く芳醇な香りと、まったりとしたまろやかな味。
けれど二口でもう、顔も体も、かっ!と熱くなった。

レオが真っ赤な顔のファオンを見て笑う。
「どんなヤツでも三口で眠る。
と言われてる程の眠り酒だ」

ファオンは頷く。
体がかっかして来て、けど凄く美味しかったからつい、三口目を飲むと…。

どさっ!

アリオンとシーリーンが腕を出したのに、キースが背後で抱き止めた。

「賭けようぜ。
ファルコンもアランも四口目でも起きてたから、もっとくれ。
と五月蠅い」

レオの言葉に、アリオンもシーリーンも無言でグラスを見た。
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