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夢の中の逃避行
212 夢の中の冒険 馬車の中
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馬車の中は、揺れに揺れていた。
「…………………………」
誰もが、ヘタに口開くと舌噛みそうで、無言。
がたたっ!
シーリーンが真横に吹っ飛び、倒れ込んで来るファオンの背を抱き止める。
ほっ。とファオンの身体の温もりを腕の中に感じ、改めてファオンが投獄されず、良かった。
と胸撫で下ろしたその時。
アリオンがファオンの正面から突っ込む。
結果、斜めになった馬車の中、シーリーンが一番下でファオンはシーリーンに背を押しつけ、アリオンはファオンに正面から抱き付き…シーリーンに二人分の重さがかかって…。
一瞬シーリーンは思い切り顔しかめる。
しかも間にファオンを挟み、アリオンと顔がくっつきそうな程の距離で、向かい合ってる。
アリオンは何とか身を起こそうと、横に捕まりもがく。
が、遠心力と重力がかかって、起き上がろうとするものの、またファオンにくっつく。
アリオンが焦っているのは分かる。
が。
とうとうシーリーンは怒鳴った。
「ヘタに動くな!
余計に重い!」
アリオンは必死に、間に挟むファオンを潰すまい。
と腕を突っ張る。
その手は座席に背を倒す、シーリーンの顔の両横。
シーリーンは内心
『頼むから、ずっと顔下げててくれ』
と祈った。
アリオンは間にいるファオンの顔を覗い、顔下げていたから。
が、ふと上げる。
真正面にシーリーンの顔。
「………………………………………」
二人が、沈黙して固まった時。
がたがたんっ!
『止せ!』
シーリーンは内心叫んだ。
が、アリオンの顔が、馬車が倒れ傾むいた勢いで、押されて自分の顔に突っ込んで来る!
シーリーンは咄嗟、顔を背けようとした。
が、遅かった。
アリオンの唇がぎりぎり、頬と唇の境目に、倒れかかるみたいに押しつけられる。
「う゛………」
「む…………」
二人は呻く。
アリオンは必死に腕を突っ張る。
が今度は、正反対に馬車が思い切り、傾く。
がたがたがたたっ!
今度、アリオンが一番下で、ファオンはアリオンの胴に抱きつく格好。
シーリーンはファオンの背に倒れ込み、一瞬アリオンはむぎゅっ!と二人の重みで押し潰され、眉をしかめる。
シーリーンが今度、手探りで捕まる物を探し、必死になって起き上がろうと試みた。
が、馬車の傾きが突然戻り、シーリーンの体は後ろに振られ、アリオンは二人分の重みから解放され、ファオンはそのままアリオンの胴に腕を回し抱きつく。
そして…突然、一瞬三人の体が、宙に浮く。
『…嘘…』
『…有り得ない』
ファオンはきょとん。とした。
どさっ!
いきなり三人は、座席の上へ沈み込む。
そして…跳ねる跳ねる跳ねる。
アリオンが上下に跳ねながら怒鳴る。
「ど…こ走ったらこうなる!」
「行きこんなんだったか?!」
シーリーンの問いに、ファオンは首を横に振る。
けれど突然また、シーリーンの側へ馬車は凄まじい勢いで傾く。
「くっ!」
アリオンは歯を食い縛ると咄嗟、抱きつくファオンと自分の体を、くるりと回って入れ替えた。
どさっ!
結果、シーリーンはアリオンの背に押し潰された。
アリオンの逞しい背中が押しつけられて、シーリーンが怒鳴る。
「俺は!
ファオンだから耐えられたんだぞ?!」
「…こうしないと、俺の重みでファオンが潰れるじゃないか!」
「……………………………」
シーリーンは不満だったが、耐えた。
後叫ぶ。
「今度、反対側に揺れたらファオンが二人の下敷きだぞ?!」
その時、馬車はシーリーンの言う通り、反対側へと傾き始める。
アリオンはまた、歯を食い縛り、くるりと回ってファオンの体を自分の横に押し出す。
どさっ!
…結果、シーリーンに正面向いたアリオンは、倒れてくるシーリーンを抱き止める羽目に。
抱き合いながら、アリオンとシーリーンはファオンを見る。
ファオンは、アリオンの真横でアリオンの肩に掴まっていた。
『…重い…』(アリオン)
『…なんでコイツとこんなかたく抱きあってんだ…』(シーリーン)
どさっ!
突然馬車が正しい位置に戻り、二人は離れてほっ。と吐息付いた。
そして…今度は突然、止まる。
三人は今いる席から前へと放り投げられて…。
アリオンとシーリーンは同時にファオンの体を、シーリーンは右腕。
アリオンは左腕で抱き込み、目を閉じる。
がっつん!
「…大丈夫か…」
シーリーンの声に、アリオンが呻く。
「肩を強打した」
「頭より、マシだろう?」
「頭、打ったのか?!」
「…いや、俺も肩」
ファオンは二人が間に挟んで守ってくれて、感謝の視線を上げた、その時。
馬車の扉が開く。
「管理塔で、キリアンとファーレーンがやったぞ!
もうお尋ね者じゃない!」
ロレンツが開け様叫んでる。
アリオンとシーリーンは痛む肩を堪えながら、喜々とした表情のロレンツを、言葉が出ずたた、睨み付けた。
「…………………………」
誰もが、ヘタに口開くと舌噛みそうで、無言。
がたたっ!
シーリーンが真横に吹っ飛び、倒れ込んで来るファオンの背を抱き止める。
ほっ。とファオンの身体の温もりを腕の中に感じ、改めてファオンが投獄されず、良かった。
と胸撫で下ろしたその時。
アリオンがファオンの正面から突っ込む。
結果、斜めになった馬車の中、シーリーンが一番下でファオンはシーリーンに背を押しつけ、アリオンはファオンに正面から抱き付き…シーリーンに二人分の重さがかかって…。
一瞬シーリーンは思い切り顔しかめる。
しかも間にファオンを挟み、アリオンと顔がくっつきそうな程の距離で、向かい合ってる。
アリオンは何とか身を起こそうと、横に捕まりもがく。
が、遠心力と重力がかかって、起き上がろうとするものの、またファオンにくっつく。
アリオンが焦っているのは分かる。
が。
とうとうシーリーンは怒鳴った。
「ヘタに動くな!
余計に重い!」
アリオンは必死に、間に挟むファオンを潰すまい。
と腕を突っ張る。
その手は座席に背を倒す、シーリーンの顔の両横。
シーリーンは内心
『頼むから、ずっと顔下げててくれ』
と祈った。
アリオンは間にいるファオンの顔を覗い、顔下げていたから。
が、ふと上げる。
真正面にシーリーンの顔。
「………………………………………」
二人が、沈黙して固まった時。
がたがたんっ!
『止せ!』
シーリーンは内心叫んだ。
が、アリオンの顔が、馬車が倒れ傾むいた勢いで、押されて自分の顔に突っ込んで来る!
シーリーンは咄嗟、顔を背けようとした。
が、遅かった。
アリオンの唇がぎりぎり、頬と唇の境目に、倒れかかるみたいに押しつけられる。
「う゛………」
「む…………」
二人は呻く。
アリオンは必死に腕を突っ張る。
が今度は、正反対に馬車が思い切り、傾く。
がたがたがたたっ!
今度、アリオンが一番下で、ファオンはアリオンの胴に抱きつく格好。
シーリーンはファオンの背に倒れ込み、一瞬アリオンはむぎゅっ!と二人の重みで押し潰され、眉をしかめる。
シーリーンが今度、手探りで捕まる物を探し、必死になって起き上がろうと試みた。
が、馬車の傾きが突然戻り、シーリーンの体は後ろに振られ、アリオンは二人分の重みから解放され、ファオンはそのままアリオンの胴に腕を回し抱きつく。
そして…突然、一瞬三人の体が、宙に浮く。
『…嘘…』
『…有り得ない』
ファオンはきょとん。とした。
どさっ!
いきなり三人は、座席の上へ沈み込む。
そして…跳ねる跳ねる跳ねる。
アリオンが上下に跳ねながら怒鳴る。
「ど…こ走ったらこうなる!」
「行きこんなんだったか?!」
シーリーンの問いに、ファオンは首を横に振る。
けれど突然また、シーリーンの側へ馬車は凄まじい勢いで傾く。
「くっ!」
アリオンは歯を食い縛ると咄嗟、抱きつくファオンと自分の体を、くるりと回って入れ替えた。
どさっ!
結果、シーリーンはアリオンの背に押し潰された。
アリオンの逞しい背中が押しつけられて、シーリーンが怒鳴る。
「俺は!
ファオンだから耐えられたんだぞ?!」
「…こうしないと、俺の重みでファオンが潰れるじゃないか!」
「……………………………」
シーリーンは不満だったが、耐えた。
後叫ぶ。
「今度、反対側に揺れたらファオンが二人の下敷きだぞ?!」
その時、馬車はシーリーンの言う通り、反対側へと傾き始める。
アリオンはまた、歯を食い縛り、くるりと回ってファオンの体を自分の横に押し出す。
どさっ!
…結果、シーリーンに正面向いたアリオンは、倒れてくるシーリーンを抱き止める羽目に。
抱き合いながら、アリオンとシーリーンはファオンを見る。
ファオンは、アリオンの真横でアリオンの肩に掴まっていた。
『…重い…』(アリオン)
『…なんでコイツとこんなかたく抱きあってんだ…』(シーリーン)
どさっ!
突然馬車が正しい位置に戻り、二人は離れてほっ。と吐息付いた。
そして…今度は突然、止まる。
三人は今いる席から前へと放り投げられて…。
アリオンとシーリーンは同時にファオンの体を、シーリーンは右腕。
アリオンは左腕で抱き込み、目を閉じる。
がっつん!
「…大丈夫か…」
シーリーンの声に、アリオンが呻く。
「肩を強打した」
「頭より、マシだろう?」
「頭、打ったのか?!」
「…いや、俺も肩」
ファオンは二人が間に挟んで守ってくれて、感謝の視線を上げた、その時。
馬車の扉が開く。
「管理塔で、キリアンとファーレーンがやったぞ!
もうお尋ね者じゃない!」
ロレンツが開け様叫んでる。
アリオンとシーリーンは痛む肩を堪えながら、喜々とした表情のロレンツを、言葉が出ずたた、睨み付けた。
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