アグナータの命運

あーす。

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夢の中の逃避行

211 夢の中の冒険 凄むキリアンとファーレーンと大乱闘

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 ジェンスとエイモスまでが兵士らに近寄り、拳握ってぽきぽき鳴らす。
一気に振り被ったかと思うと、兵士は思い切り頬を殴られふっ飛ぶ。

レオとキース、ファルコンは、胸ぐら掴んで押し合ってたのに、それを見て目を見開く。
ファルコンが真っ先に兵士を殴り、続いてレオとキースまでもが殴り飛ばす。

アリオンとシーリーンもが、それに習ってファオンの両側にいた兵士の胸ぐらを外し
がっ!がっ!
と二人同時に殴り倒す。

レオがまだ押し寄せる兵士らと掴み合いながら怒鳴る。
「アリオン、シーリーン!
ファオン連れて逃げろ!」

ロレンツは室内の一番後ろの窓開けて振り向く。

アリオンとシーリーンは真ん中のファオンの手を掴むと、二人一気に窓へと駆け寄った。
ロレンツが先に飛び降り、アリオンとシーリーンがファオンの手を掴んだまま、窓に飛び乗り、そして飛び降りる。

雪の中走る。
が、兵士は全て室内にいて、流石に雪の中に見張りはいない。

乗ってきた馬車を見つけて、ロレンツは空の御者席に乗り込む。
アリオンとシーリーンがファオンを先に入れ、後から続き…。
扉を閉めるか、閉めない…内に、馬車は雪を蹴立てて駆け出す。


室内では委員長が、剣を抜くキリアンを睨み付ける。
「…こんな事して…ただじゃ済まないぞ!」
キリアンは剣をぴたり。と喉元で止めて笑う。
「拉致監禁、後(のち)、裁判だな!
証言台でも、今と同じ事叫んでやる!
お前らモテない男集団の、汚いやり口が世間に公表されて赤っ恥だ!
すんごく、楽しみだぜ!」

ファーレーンが、委員長の横に立って言う。
「ファオンの罪人取り消しするんなら、キリアンに剣を引っ込めさせる」

委員長はまだ、剣突き付けるキリアンを睨む。
キリアンは剣を突き付けたまま、笑う。
「…とっとと返事しないと、俺、手が滑ってあんたの喉、斬っちまうかも」

キースが兵士を殴り飛ばして怒鳴る。
「あんたが動いて、キリアンの手が滑ったと証言してやる!」
レオもが、怒鳴る。
「俺もだ!」
ファルコンが自分並みにデカイ兵士と揉み合い、怒鳴り付ける。
「さっさと、殺れ!」

デカい兵士は両腕を車輪のようにぶん回し始め、ファルコンは胸を押さえて押し退けながら、眉しかめてた。
が、横からその兵士の頬に、エイモスががつん!と拳入れて伸す。

「…助かった」

ファルコンの言葉にエイモスは振り向きもせず、次の兵士を殴り付けていた。


最早、管理塔に詰めてる兵士が続々と室内に入って来る。
が、直ぐジェンスに殴り倒され、入り口で山になりつつある、兵士らの上に倒れ込む。

セルティスもレオとキースの助っ人に入る中…。
今だ突っ立つリチャードと、横に座るデュランが、一人椅子に座ってる、アランに顔を向ける。

「…俺達…どうすれば…」
アランは肩竦める。
「ヘタに近寄ると、巻き添え喰らって殴られるぜ?」

「…………………………」

リチャードとデュランは、黙して顔を下げた。

とうとう委員長が叫ぶ。
「分かった!
ファオンを逃亡者にはしない!」

ファーレーンが咄嗟、キリアンに怒鳴る。
「まだ、剣下げるな!」

キリアンは更に気合い入れて剣を突き付ける。
ファーレーンは委員長の前に、羽ペンと羊皮紙を置いて、囁く。
「念書にしてもらおうか…。
ついでに今後、この念書の内容を二度とひっくり返さない。
って誓いの言葉も、書いてもらう!」

委員長はキリアンに剣の刃先を突き付けられたまま…仕方無くペンを取ると、さらさらと書き記した。

ファーレーンが取り上げて読む。
最後のサインも確認して、頷く。

キースが、背後から兵士と掴み合いながら怒鳴る。
「ファオンを《皆を繋ぐ者》アグナータから下ろす、ってのも取らないと!」
セルティスも殴ってくる兵士の拳避けて、叫ぶ。
「兵士に引くよう、言うのが先では?
こっちも怪我するけど…このままだとジェンスが全滅させる!」

ファーレーンと委員長が部屋の最後尾を見ると、ジェンスが駆け込む兵士を殴っては気絶させ、入り口近くで倒れてる兵士は山になって転がってる。

今また一人の兵士が駆けつけ、室内に飛び込なり、横で待機していたジェンスが一気に顎を殴りつける。

兵士は気絶して、山の上に転がった。

背後で詰めてた兵士はもうほぼ、倒れたり呻いたりし…。

レオがまた、殴りかかる兵士の一人を思いきり殴って吹っ飛ばしていた。

ファーレーンが委員長を見る。
委員長はごくり。と唾呑み込んだ後、廊下にまで響き渡る大声で怒鳴る。

「引け!
止めろお前ら!」

かろうじて立ってる兵士は、セルティスに拳振るのを止めた後、くにゃり…と身をセルティスに倒し込む。
セルティスは抱き止め、兵士が腕の中で気絶するのを、呆けて見た。

キリアンが、凄む。
「さあ!
書いて貰おうか!」


皆、荒い息を吐きながら揃って拳を下げる中…。

ジェンスだけが扉の前で数度、廊下を覗いて呟く。
「…次が、来ないぞ?」
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