アグナータの命運

夢の中の逃避行

210 夢の中の冒険 委員長の弾劾と乱闘

「…お前らの母親は私の!!婚約者だった！
なのにお前らの父親は割り込み、誘惑し、そして連れ去った！
汚いやり口だ！
姿を見せた時はファーレーン！
お前を身ごもったと！
だから無理矢理結婚だ！
お前らの親父がどれだけ汚いか、分かるか?!
ミファリアルは泣く泣くファーレーン！
お前を産んで、更にキリアンまで孕ませられ…。
とうとう…あいつ(ファオン)の時、命を奪われた！」

ファオンはびっくりした。
「…母様と…愛し合ってたのに父様が引き裂いたんですか？」

キリアンが歯を剥く。
「違う！
おふくろは婚約者のあいつが、えっちがヘタで嫌いで！
えっちも上手くて顔も体も凄くいい、親父に乗り換えたのをあいつは恨んでる！」

場の緊迫感は一気に崩れ、皆一斉に委員長から顔を下げる中、委員長は焦って叫ぶ。

「お前達、信じるな！」

ファオンは見ると、横の兵士達迄もが揃って顔を下げていた。

キリアンは尚も歯を剥く。
「あんたが代表する委員会メンバーは皆、親父が《勇敢なる者》レグウルナスだった時一緒だったんだろう！
委員会全員が親父を憎んでるのは…当時の《皆を繋ぐ者》アグナータが親父ばっか贔屓して、親父にベタ惚れだったってのも、知ってるぞ!!
モテない男のやっかみ集団が！
親父に太刀打ちできないからって、俺や兄貴はともかく！
一番弱いファオンに当たるのか！
汚いぞ！」

「黙れ黙れ黙れ！
罪人を拉致し拘束し、塔の最上階にブチ込め!!」

がたん！
ファルコンが真っ先に立ち上がる。
直ぐ、レオとキースもが、背後の兵士へと詰め寄る。

アリオンとシーリーンはもうとっくに、ファオンを連れ去ろうとする両側の兵士と掴み合っていた。

キリアンは剣を抜き、テーブルの上に駆け上り委員長めがけて走る。

喉元に剣を突き付け、駆け寄る兵士らに怒鳴る。
「動くと、斬る！」

兵士らは慌てて歩を止める。


デュランがまだ呆然と突っ立つリチャードに、そっと言った。
「…やっぱり、なりましたね。
乱闘」
リチャードはごくり。
と唾呑み込んで、頷く。
「うん」