アグナータの命運

夢の中の逃避行

208 夢の中の夢 ファオン

「止めて！アリオン！シーリーン！」

ファオンは必死で叫んでた。
だってアリオンとシーリーンが、拳を握り、真剣に相手に振り込んでいたから。

ファオンがアリオンの腕を掴み、止める。
けれどアリオンはファオンが腕を掴む手首を掴み、引き下げて喧嘩してる間から引かせ、庇う。
その時、横からシーリーンが腕を掴み…。

今度、二人は両方から腕を引っ張り、相手が放さないと知ると、睨み合う。

「(…二人共、唸り出しそう…)」

ファオンは叫ぶ。
「どうして喧嘩するの？
僕、どっちかのものじゃなきゃ、駄目なの?!」

叫ぶと、背後からキースが胸に抱き寄せて言う。

「喧嘩、してろよ。
その間に俺が頂く」
そう言って、アリオンのファオンを掴んでる手首を力任せに握って外す。

横からレオが、やっぱりシーリーンの、ファオンを掴む手首を握り込む。
レオの怪力に、シーリーンは顔を歪めてファオンの手首を手放す。

「じゃ。
好きなだけ殴り合え」
そう言ってキースはファオンの肩を抱いて、背を向ける。

「気が済むまで殴り合って、いいからな！」
レオも言うと、ファオンの背後に立って、シーリーンとアリオンが追いかけて来る間を遮る。

アリオンとシーリーンが、レオとキースに飛びかかろうとした時。

ファルコンがアリオンの目前に割り込み、セルティスがシーリーンの目前に。

「…アリオン…シーリーン………」

ファオンはキースとレオに連れられながら、振り向いて囁く。

が。
もうファルコンはアリオンに拳を入れ、アリオンは屈み避けていた。

シーリーンはセルティスの胸ぐらを掴み、退けようとするが、セルティスに掴む手首を握られ、押し合う。

ファルコンが拳を再度振り、怒鳴る。

「相手はシーリーンだろう?!
シーリーンに向かって行けば、俺は拳を引っ込める！」

アリオンはまた、身を屈めてファルコンの重量級の拳を避けた。

「…アリオンに向かって行け！」
セルティスに怒鳴られても、シーリーンは怒鳴り返す。
「そこを、どけ！
ファオンを返せ!!!」


夢を見ているシーリーンとアリオンは、ファオンの夢に絶句。

「…これ…レオ達に俺ら、お前連れ去られちゃうの…？」

シーリーンに聞かれ、ファオンは俯く。

「…多分…」

「俺はファルコンとキース。
シーリーンはレオとセルティスを沈めないと…お前奪回できないの？」

アリオンに聞かれ、ファオンはもっと、顔下げる。

「……きっと………」


二人は顔を上げないファオンに溜息を吐く。

シーリーンが、腕組みして言う。
「他の夢は？」

アリオンも言う。
「例えば俺と、二人っきりの夢とか」

ファオンは顔を下げて、真っ赤。

「…あのね。現実で叶ってると、夢って見ないものなんだ。
………僕の場合」

アリオンとシーリーンは同時に溜息吐く。

「つまりもっと、現実でお前抱けと？」
シーリーンが言い、アリオンも言った。
「別に現実で抱いてたら、夢なんて関係無いか」

ファオンは思い切り、顔下げて呟く。

「…つまり二人共もっと………僕に迫る？」

アリオンとシーリーンは、同時に思い切り、頷いた。