アグナータの命運

あーす。

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夢の中の逃避行

207 夢の中の夢 シーリーン

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 シーリーンはファオンに振り向く。
ファオンが剣を振り切っていた。

ぎゃっ!

《化け物》キーナンが叫ぶ。
が、傷付いても尚かぎ爪を振り回すから、シーリーンはファオンの腕を引いて抱き寄せ、剣を思い切り振りきる。

ぎゃあっ!

咄嗟シーリーンはファオンに叫ぶ。

「抜けるぞ!」
ファオンが頷く。

ファオンと同時に、シーリーンは右。
ファオンは左から来る《化け物》キーナンを切り裂きながら、突き抜ける。

やっと…岩場を抜けた頃、背後から来る《化け物》キーナンは消え…。
《化け物》キーナンの返り血を浴びたまま、ファオンと走り続ける。

鮮やかな、若草色の草原。
陽は明るく射し込み、シーリーンは横に同時に駆ける、ファオンを見つめる。

きっ!とした大きな青い瞳。
しなやかな少年の肢体。

やっと…湖のほとりに辿り着く。
青空の下、どこまでも青い水。

ファオンが両腕上げてゆっくりと上着を脱ぎ、頭から外すと、背後に脱ぎ捨てる。

薄衣と腰布だけで、水へと入って行く。

シーリーンは眩しげに、水の反射で黄金色に光を零す湖面と、水の中で振り向く、ファオンを見つめる。

澄んだ…湖水と同じ青い瞳。
ふわりと覆う、白っぽい金髪。
小さな…ピンクの柔らかな唇が、誘うよう…。

シーリーンは全てを脱ぎ捨てる。
全裸で水へと入ると、ファオンが恥ずかしげに顔を背けて俯く。

頬がピンクに染まり…シーリーンはゆっくりと横に来ると…ファオンの頬に手を触れさせる。

ファオンが顔を上げる。

まるで…光の美神のような美麗なシーリーンのその顔と…そして白く逞しい胸板を見つめ…。
また恥ずかしげに、顔を伏せるから…シーリーンはゆっくりと…ファオンの顎に指を触れて顔を上げさせる。

ファオンの頬はピンクに染まったまま。
シーリーンは誘うようなピンクの唇に、そっ…と口付ける。

ファオンの両手が腰に抱き付き…そして、背に回る。
シーリーンはファオンを胸に抱止め…。

再び、柔らかな唇へと倒れ込む。


そこで…景色が霞んでいき、シーリーンは不満げに囁く。

「まだ、この先が凄いのに…」

アリオンとファオンが目を見開いて、囁くシーリーンをびっくりして見る。

「す…凄いって、何が?」
ファオンが聞くと、アリオンが呟く。
「お前が。だろう?」
アリオンに聞かれ、シーリーンは腕組んでフテる。

「いや、最初は俺だが、しまいにファオンは俺の上に乗って、自分で腰を使って絶頂に達する」

「………………………………………」

ファオンが目を見開く。
「どうしてこの後の事が…分かるの?」

アリオンが、恐る恐る聞いた。
「お前、いっつも同じ夢見てるの?」

シーリーンは恐れる二人に、そっと言った。

「この展開は三度目で、回数増す度凄くなるから」

「………………………………………」

アリオンとファオンは絶句したまま、沈黙して美麗なシーリーンの横顔を見つめ続けた。
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