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夢の中の逃避行
206 夢の中の夢 アリオン
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アリオンは次々現れる《化け物》を、剣を振り切り進む。
左手でしっかり握る、ファオンの手の感触を確かめながら。
前が開く。
アリオンは直ぐ背後に振り向く。
可憐で愛らしいファオンが不安げな顔を上げる。
アリオンはファオンの手を引き、先へと促す。
岩の突き出た足場を確かめながら。
ファオンが、ぐら…!と身を揺らす。
アリオンは咄嗟、倒れかけるファオンの腰を抱き止め、そして…抱き寄せる。
ほっ。と吐息吐くファオンが顔を上げる。
子供の頃…初めて見た時そのままの…愛らしく美しい姿…。
アリオンは大切に胸に抱き止め、けれど瞬時に身を起こし、頭上から剣を振り下ろす。
ぎゃっ!
突然襲い来る《化け物》を、アリオンは咄嗟斬って捨て…。
ファオンの身を抱き寄せ、返り血から庇う。
そして…ファオンを連れて、そのまま駆ける。
ファオンは必死に付いて来る。
アリオンの胸に甘酸っぱい想いが満ちる。
繋いだ手の温もりが、かけがえのないもの…。
そう告げている。
岩場を駆け下りる。
ファオンの無事を幾度も振り返り、確かめながら。
高い岩から下へと着地し、岩の上にいるファオンに両手を差し伸べる。
ファオンは抱き止めてくれるアリオンを見…。
ふわり…と白っぽい金髪を揺らして、アリオンの腕の中へ、飛ぶ。
「アリオン!」
岩の、遙か上。
プラチナの髪…。
シーリーン…。
が、アリオンは振り切って、ファオンを抱いたまま駆ける。
駆け続け、岩場を抜けて草原に来ると、大木の下に繋がれた茶色の馬にまたがる。
ファオンの手を引いて抱き上げ、前に座らせ手綱を持つ。
顎にファオンの頭頂が。
腕の中に、ファオンの身体が…。
ファオンを一人占め出来た喜びで、胸が熱くなる。
アリオンは一気に馬を駆って、走り続ける。
泉のほとりで馬から降りる。
馬上のファオンに手を差し伸べ…捕まるファオンを手助けする。
ファオンは白っぽい衣服をふわり。と揺らして飛び降りる。
…そして、アリオンは馬を泉に引いて水を飲ませる。
ファオンは澄んだ泉へ屈み込むと、両手で水を掬い、口を付ける。
こくん。と喉を鳴らし、可愛らしく水を飲む姿…。
横にアリオンが腰を落とすと、ファオンは両手で水を掬って、アリオンへと差し出すから…。
アリオンはファオンの両手から、水を飲む。
ファオンの指の間から水が零れ落ちる。
直ぐ手の平の水は無くなり、ファオンが慌ててまた水を掬おうとするから…アリオンはファオンの腕を握り止める。
ファオンが振り向く。
アリオンは微笑む。
そしてゆっくりと…顔を近づけた。
整いきった綺麗な鼻筋の黒髪の美男が、見つめながら睫を伏せるのをファオンは感じ入ったように見つめ返し…。
寄せて来る唇に、そっと顔を寄せ、唇を近づける。
軽く…互いが触れ合うだけの口づけ…。
けれど次第にアリオンはファオンの腰を抱き、引き寄せて…もっと深く唇を重ねる…。
「…………………………………………」
突然割り込むアリオンの夢を、ファオンもシーリーンも見る。
そして…。
「お前、割とロマンチストだったんだな…」
シーリーンに言われ、更に二人に見られて、アリオンは顔下げて無言。
「…僕…ってなんか…?
お姫様か乙女みたいだね?
あれ、現実の僕とどれだけ同じ?」
シーリーンがファオンをじっ。と見て、呟いた。
「………顔だけ…?」
「………………………………………やっぱり?」
アリオンはじっ。と見る二人から、思い切り顔を背けた。
左手でしっかり握る、ファオンの手の感触を確かめながら。
前が開く。
アリオンは直ぐ背後に振り向く。
可憐で愛らしいファオンが不安げな顔を上げる。
アリオンはファオンの手を引き、先へと促す。
岩の突き出た足場を確かめながら。
ファオンが、ぐら…!と身を揺らす。
アリオンは咄嗟、倒れかけるファオンの腰を抱き止め、そして…抱き寄せる。
ほっ。と吐息吐くファオンが顔を上げる。
子供の頃…初めて見た時そのままの…愛らしく美しい姿…。
アリオンは大切に胸に抱き止め、けれど瞬時に身を起こし、頭上から剣を振り下ろす。
ぎゃっ!
突然襲い来る《化け物》を、アリオンは咄嗟斬って捨て…。
ファオンの身を抱き寄せ、返り血から庇う。
そして…ファオンを連れて、そのまま駆ける。
ファオンは必死に付いて来る。
アリオンの胸に甘酸っぱい想いが満ちる。
繋いだ手の温もりが、かけがえのないもの…。
そう告げている。
岩場を駆け下りる。
ファオンの無事を幾度も振り返り、確かめながら。
高い岩から下へと着地し、岩の上にいるファオンに両手を差し伸べる。
ファオンは抱き止めてくれるアリオンを見…。
ふわり…と白っぽい金髪を揺らして、アリオンの腕の中へ、飛ぶ。
「アリオン!」
岩の、遙か上。
プラチナの髪…。
シーリーン…。
が、アリオンは振り切って、ファオンを抱いたまま駆ける。
駆け続け、岩場を抜けて草原に来ると、大木の下に繋がれた茶色の馬にまたがる。
ファオンの手を引いて抱き上げ、前に座らせ手綱を持つ。
顎にファオンの頭頂が。
腕の中に、ファオンの身体が…。
ファオンを一人占め出来た喜びで、胸が熱くなる。
アリオンは一気に馬を駆って、走り続ける。
泉のほとりで馬から降りる。
馬上のファオンに手を差し伸べ…捕まるファオンを手助けする。
ファオンは白っぽい衣服をふわり。と揺らして飛び降りる。
…そして、アリオンは馬を泉に引いて水を飲ませる。
ファオンは澄んだ泉へ屈み込むと、両手で水を掬い、口を付ける。
こくん。と喉を鳴らし、可愛らしく水を飲む姿…。
横にアリオンが腰を落とすと、ファオンは両手で水を掬って、アリオンへと差し出すから…。
アリオンはファオンの両手から、水を飲む。
ファオンの指の間から水が零れ落ちる。
直ぐ手の平の水は無くなり、ファオンが慌ててまた水を掬おうとするから…アリオンはファオンの腕を握り止める。
ファオンが振り向く。
アリオンは微笑む。
そしてゆっくりと…顔を近づけた。
整いきった綺麗な鼻筋の黒髪の美男が、見つめながら睫を伏せるのをファオンは感じ入ったように見つめ返し…。
寄せて来る唇に、そっと顔を寄せ、唇を近づける。
軽く…互いが触れ合うだけの口づけ…。
けれど次第にアリオンはファオンの腰を抱き、引き寄せて…もっと深く唇を重ねる…。
「…………………………………………」
突然割り込むアリオンの夢を、ファオンもシーリーンも見る。
そして…。
「お前、割とロマンチストだったんだな…」
シーリーンに言われ、更に二人に見られて、アリオンは顔下げて無言。
「…僕…ってなんか…?
お姫様か乙女みたいだね?
あれ、現実の僕とどれだけ同じ?」
シーリーンがファオンをじっ。と見て、呟いた。
「………顔だけ…?」
「………………………………………やっぱり?」
アリオンはじっ。と見る二人から、思い切り顔を背けた。
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