アグナータの命運

あーす。

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夢の中の逃避行

202  夢の続き 杖付き襲撃

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ぎゃっ!

一匹が斬られたのを合図に、細い道からわらわらと、《化け物》キーナンが沸いて来る。

ジェンスは嬉々として突っ込んで行き、剣を振り回すジェンスに続くのは、エイモスだった。
二人は赤黒い洞窟内で黒く蠢く不気味な《化け物》キーナンを物ともせず、剣を車輪のように振り回し続け様に叩き斬る。

ぎゃっ!
うぎゃぁっ!

が、ぼやぼやしてはいられない。
直ぐキリアンとファーレーンも、自分に向かって飛びかかる《化け物》キーナンに剣を構え、レオとキースも剣を抜く。

アリオンとシーリーンも腰を落とし剣を構えていた。
が、二人の間にいたファオンが叫ぶ。
「いた!」
声と共にもうそのまま、ファオンは駆け始めた。

アリオンとシーリーンがぎょっ!として、飛び出すファオンの背に続き…キリアンがファーレーンに尋ねる。

「俺らは?!」
「引きつける!
そう言うと、ファーレーンはアリオンやシーリーンらの背後に付くと、襲い来るキーナン《化け物》を華麗に剣を振り切り、斬り殺し始めた。

ぎゃっ!

「!」

ファーレーンとキリアンが突っ走るファオン、アリオン、シーリーンを庇い、左右に飛び出して突っ走りながら、襲いかかる《化け物》キーナンを斬って捨てる。
レオとキースも同時に走り出す。

ジェンスは単独でどんどん《化け物》キーナンが湧いて出て来る細い道へと近づきながら、次々に《化け物》キーナンを斬り殺し進む。
エイモスが少し遅れてその後ろから。
飛びかかる《化け物》キーナンを腕で掴み飛ばし、岩壁に叩きつけながら襲い来る一匹を剣で斬り殺す。

リチャードは左側へどんどん遠ざかって行くジェンスとエイモス。
右方向から湧いて出る細い道へと、《化け物》キーナンを切り裂き進むみんなを見
「(…やっぱりお外で、待ってれば良かった…)」
と内心呟いた。

が、突っ立ってると《化け物》キーナンが目前に飛び込んで来るから、慌てて思い切り、剣を振り切った。

ざしっ!
ぎゃっ!

その時、この洞窟に入って来た細い岩道からファルコンが姿を現し、リチャードは思わず駆け寄って、ファルコンの背後に素早く隠れる。
が、ファルコンは斜め横のロレンツが、剣を持って突っ立つのを見る。

《化け物》キーナンらはこちらに来かけ…けれど突っ込んで行く男らに、方向を変えて襲いかかってた。

「…来ないな」
ファルコンが言うと、ロレンツも肩竦める。
「みんな突っ込んで行ったから。
あっち襲うのに忙しいらしい」

そして、ファルコンを見る。
「こっちから突っ込まないと、襲ってくれそうに無いみたいだぜ?」

ファルコンは肩竦める。
「…別に運動しなくても、ここは暖かいしな」

ロレンツも頷くと、ファルコンの横に立つ。
「来たら、剣振る?」
ロレンツに聞かれ、ファルコンは頷く。
「一応、剣は抜いとこう」
ロレンツも頷き返し、ファルコンは背後にリチャードを貼り付けたまま、待機した。



ファオンが身軽に、突き出た岩の上に駆け上ってそのまま、飛ぶ。

アリオンとシーリーンも同様岩の上から飛ぶが、ファオンが着地した途端、左右から二匹の《化け物》キーナンがファオンに飛びかかるのを目にして、飛び込み様二人共剣を振り下ろす。

ざしっ!
ざっっ!

ファオンは《化け物》キーナンが届く前にもう既に前の岩に足をかけて飛んでいて、アリオンとシーリーンは飛びかかった《化け物》キーナンを空中で斬って、着地した。
足を付き様、アリオンは左から。
シーリーンは右から襲いかかる《化け物》キーナンを同時に横に剣を振り切って吹っ飛ばし、ファオンの背を追う。

ファオンは洞窟の壁へと飛んで、蹴って方向を変え、そのまま…細い道から押し寄せる《化け物》キーナンの群れの中に…空中から飛び込んで行くように見えて、全員が目を見開く。

が、アリオンとシーリーンはファオンがかなり上の突き出た岩の上に降り立ち、下を見下ろすのに気づく。
細い道の出口辺りに群れる《化け物》キーナンらの、ちょっと横。
小さな杖付く、萎びた《化け物》キーナンを見つける。

ファオンが狙い澄まして杖付きの上へ、飛び降りようとする。
アリオンとシーリーンは《化け物》キーナンの目を逸らせようと、派手に斬り込んで群れの注意を引く。

直ぐ、ファーレーンとキリアンもがそれに習い、細い道から湧いて来る《化け物》キーナンに向かって行く。
直ぐ背後からレオとキースも突っ込んで来て助っ人し、二人同時に激しく剣を振り切り、《化け物》キーナンらを切り裂く。

左側から進んで来たジェンスとエイモスもが近くに来ていて、派手に剣を振って《化け物》キーナンを次々に吹っ飛ばす。

ファオンが岩を蹴って宙に舞う。
アリオンとシーリーンは目前の《化け物》キーナンを叩っ斬って、ファオンが着地しようとする場へと遮二無二走った。

その時、杖付きが宙から飛び込むファオンを目にし、杖を振る。
杖付きの背後の細い道から姿を現す《化け物》キーナンは、直ぐ杖付きの目前に雪崩れ込んで、杖付きを守った。

が、ファオンは杖付きが杖を振った瞬間、宙で体勢を変えて横の岩を蹴る。
着地場所は、杖付きの真上!

アリオンとシーリーンは歯を食い縛り、杖付きの周囲を守る《化け物》キーナンへと突っ込む。
守っていた《化け物》キーナンらは、ぎょっ!としてアリオンとシーリーンに標的を変え、襲いかかる。

ジェンスに続き、エイモスが横から雪崩れ込んで豪快に剣を振り始め、杖付きの元へと走る《化け物》キーナンらは、向きを変えて一斉に二人に襲いかかった。

その時。
ファオンが宙から剣を頭上に振り被って思い切り振り下ろし、着地する。

ざっっっっっ!

突然、全員がその異常な状態に凍り付く。

《化け物》キーナンが全て、氷の彫像のように棒立ち。

ざっっ!
ざしっっっ!

ジェンスとエイモスだけが、突っ立つ《化け物》キーナンを構わず斬り殺していた。

レオとキースは首振って、周囲の突っ立つ《化け物》キーナンを見回す。
ファーレーンもが。

キリアンだけが、着地して杖付きを殺し、荒い息で肩を上下させ、倒れる杖付きを屈んで見下ろしてるファオンの横へと、駆け込む。

アリオンとシーリーンも慌ててキリアンの背に駆け込む。

突然。

《化け物》キーナンらは我に帰ったみたいに…遮二無二逃げ始め、細い道へと一斉に押し寄せる。

キリアンが、ファオンを抱き込んで道筋から横の岩の窪みへと連れ込む。
アリオンとシーリーンは直ぐ、二人の前に付くと、細い道へと逃げ込む《化け物》キーナンの群れの盾となった。

二人は襲いかかるのではなく、ぶつかり突き飛ばす《化け物》キーナンらを、その体格で肩や腕で突き飛ばし蹴り返し、ファオンとキリアンを守る。

レオとキースが無言で、ファーレーンの後に続く。
ファーレーンは目を見開きながら、《化け物》キーナンらが自分達を襲わず逃げ出す、その後を歩く。

群れが細い道の向こうの巣に、すっかり消えた後…。
その広い洞窟には、皆が斬った《化け物》キーナンの死体が転々と転がり…。
そして…ファーレーンは倒れる小さな杖を持つ《化け物》キーナンの遺骸に寄ると、見下ろす。

横からやって来たレオとキースも、群れを扇動していた小さな《化け物》キーナンの息絶えた姿を、ファーレーンの横から見下ろした。

ジェンスだけが剣をぶん回し
「なんで逃げる!」
と怒鳴ってた。
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