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夢の中の逃避行
199 夢の続き 雪の中なのに危険なお出かけ 遭遇
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エイモスはファーレーンと並ぶキースの横に来る。
鮮やかなくっきりとしたキースの金髪巻き毛を見ると、眉間寄せる。
「俺、お前とキャラ被りそうで嫌だ!」
が、横のレオは髪の色はともかく…顔立ちは、どう見てもキースの方が爽やかで癖の無い、整った格好いい美男で、エイモスはどっちかと言うと、額が広く鼻も鷲鼻気味で顎もしっかりしていて癖のある顔立ちで、なのに笑うと凄く甘ったるい甘えん坊顔になる違いをどうして無視出来るのか。
と、首を捻った。
キースが
「…顔立ちは…どっちかってーとパーツはレオに似てないか?あんた。
レオは絶対あんたみたいに、でれっとした表情しないけど」
と言い返し、レオも、同感だ。と頷く。
エイモスはレオの鮮やかな赤毛を見る。
「…ナンか、赤毛。
ってだけで、偉そうだよな」
レオは顔下げる。
「…いや別に、偉そうには…」
キースがすかさず言う。
「あんたがいつも、デレっとだらしない顔、してるだけだろ?」
ファーレーンは真ん中でわなわなと震う。
「…どうして…真剣味、足りないかな!」
ロレンツとキリアンが肩竦める。
「元、南尾根の長だぜ?」
ロレンツが言うと、キリアンも頷く。
「こんだけいい加減でも、南尾根だと長が務まる」
ファーレーンはとうとう、怒りで拳を握り込む。
「…レドナンドとか…見つけて同行させるべきだったと思う」
シーリーンの言葉に、アリオンもファオンも、頷いた。
「南尾根と東尾根って、両極端だもんね」
一同は降りしきる雪道を、靴底に金具の付いた雪用ブーツを履きながら進む。
正直10センチくらい降っていたから、足を上げる毎に雪が搔き上げられて舞い散る。
エイモスが呻く。
「…この雪用装具で《化け物》と戦う。
って、正直しんどいぜ…」
皆、毛皮のフードにマントでそれなりに着込んでるので、重い。
が、先頭のジェンスだけは無言でざしざし進む。
「…行こうか…」
立ち止まる一行にレオが言い、ロレンツもキリアンも無言で頷いて、ジェンスの後をぞろぞろ続いた。
南尾根に上がると、雑兵らは皆、見張り用の簡易休憩所で暖を取ってるらしく、誰も見当たらない。
いつもは岩でごつごつした風景が、今や雪で白一色。
吹雪く風に雪が舞い散りながら、顔に降り込む。
「…逃亡者に雪。
って、天の恵みだな」
そうキリアンが小声で呟く。
が、キースがぼそり。
と言い返す。
「《化け物》討伐隊には厳しいぜ」
レオが無言で頷く。
ファオンは両横のアリオンとシーリーン。
それにジェンスの後を歩くファーレーンもが、“気”を張り詰めてるのを見回す。
『…頑張って一刻も早く、杖付きを殺らなきゃ…!』
が、南尾根の岩の間を潜り始めた頃…岩陰に動く陰。
皆、《化け物》か。
と咄嗟剣の柄に手を添え、身構える。
すると…。
「何者だ!」
と叫ぶ声に、レオが眉間寄せる。
「…もしかして…ファルコンか?」
「…レオ?」
拍子抜けした声は、アラン。
アラン、ファルコン、セルティスの三人が、岩陰から姿を見せる。
ファルコンが一番前に進み出て問う。
「…こんなとこで、何してる?」
背後でアランが、吹雪く中一行を見回し、叫ぶ。
「ファオン!お前…」
セルティスが俯く。
「アリオンとシーリーンも一緒か…。やっぱり」
キースが聞く。
「逃亡犯探せ。って命じられたのか?」
ファルコンが背後のアランに振り向く。
アランが肩竦める。
「ここの見回りを命じられて、ついでに見かけたら拉致しろ。
…とは言われた」
ジェンスがずい!とファルコンの目前に出る。
「捕まえられるんなら、捕まえてみろ!」
「…………………………」
ファルコンは、南尾根の長してた時から苦手だった、言葉の通じないジェンスの偉そうに迫り出す姿を見て、無表情で困惑し、俯いた。
アランが背後で援護する。
「捕まえろと命じられたのはファオンとアリオンとシーリーンで、あんたじゃない」
ファルコンは、そうだった。と思い直して、ジェンスを見る。
「あんたは捕まえない」
だがジェンスはもっと偉そうに、胸を張る。
「こいつらは俺の同行者だ。
捕まえると言うんなら、俺が相手になる」
凄く偉そうに剣の柄に手をかけて言われ…ファルコンは自分と同じくらい長身で体格良く暴れん坊の、かつての南尾根の長をまた、無表情で困惑して見る。
レオが怒鳴る。
「ファルコンとアランとセルティスは、こっちに付く!」
ジェンスがレオに振り向く。
「…味方か?」
キースが頷く。
「味方だ」
ジェンスが剣の柄から手を放し、ファルコンは心の底からほっとした。
アランが俯きながら、心底ほっとして、呟く。
「二大怪獣の決闘になるかと思ったぜ…」
シーリーンもアランの気持ちが解った。
「…誰も止めたくないし、止められないな…」
アランが頷く。
セルティスだけが理性的に尋ねる。
「こっちに付く。って…三人逃がすなら、方向逆だろう?」
アリオンとシーリーン。
キースとレオが顔を見合わす。
ジェンスが振り向いて、ファーレーンを見る。
ファーレーンは肩の力が抜けて、呟く。
「この一行の代表みたいな顔して進み出て、面倒な説明はこっち任せか?」
ジェンスはファーレーンをまだ見て、口開く。
「俺は南尾根中央の巣の《化け物》を叩っ斬りに来た。
しか、分かってない。
…お尋ね者三人は、ナンで来たんだっけ?」
アランがキリアンとロレンツの前に来る。
「…アリオンとシーリーンだけで無く…お前らもお尋ね者に名を連ねてたぜ?」
キリアンがそう言われて
「やっぱり?」
と聞いた。
ファルコンも聞く。
「キリアンとロレンツが手引きしてファオンを逃がし、アリオンとシーリーンに引き渡す時に…アリオンとシーリーンがモメたのか?
どっちが引き取るかで」
セルティスがファーレーンの横にやって来る。
ファーレーンは俯く。
「尾根を降りようとしたキリアンとロレンツと、逃亡してたアリオン、シーリーン、ファオンがかち合って、皆ロレンツの別荘に一時避難してた。
…らしい。
ファオンを正当に逃がす為、今からファオンが言う、《化け物》の群れを引かせられる杖付きって《化け物》を斬りに行く。
そいつを斬って、委員会にファオンを《皆を繋ぐ者》から下ろすよう、取引する」
ファルコンとセルティス、それにアランは顔を見合わせる。
「…わざわざこの雪の中を…《化け物》を斬りに行くのか?」
ファルコンに問われて、一同は頷く。
アランがため息混じりにつぶやく。
「で、そのすんごく馬鹿げた同行を、俺らにもしろって?」
一同はまた、揃って頷く。
セルティスが、二人にぼそっ。と囁く。
「…見なかったことにして、ばっくれたい」
アランが頷き、ファルコンも思い切り、顔を倒しきって頷いた。
鮮やかなくっきりとしたキースの金髪巻き毛を見ると、眉間寄せる。
「俺、お前とキャラ被りそうで嫌だ!」
が、横のレオは髪の色はともかく…顔立ちは、どう見てもキースの方が爽やかで癖の無い、整った格好いい美男で、エイモスはどっちかと言うと、額が広く鼻も鷲鼻気味で顎もしっかりしていて癖のある顔立ちで、なのに笑うと凄く甘ったるい甘えん坊顔になる違いをどうして無視出来るのか。
と、首を捻った。
キースが
「…顔立ちは…どっちかってーとパーツはレオに似てないか?あんた。
レオは絶対あんたみたいに、でれっとした表情しないけど」
と言い返し、レオも、同感だ。と頷く。
エイモスはレオの鮮やかな赤毛を見る。
「…ナンか、赤毛。
ってだけで、偉そうだよな」
レオは顔下げる。
「…いや別に、偉そうには…」
キースがすかさず言う。
「あんたがいつも、デレっとだらしない顔、してるだけだろ?」
ファーレーンは真ん中でわなわなと震う。
「…どうして…真剣味、足りないかな!」
ロレンツとキリアンが肩竦める。
「元、南尾根の長だぜ?」
ロレンツが言うと、キリアンも頷く。
「こんだけいい加減でも、南尾根だと長が務まる」
ファーレーンはとうとう、怒りで拳を握り込む。
「…レドナンドとか…見つけて同行させるべきだったと思う」
シーリーンの言葉に、アリオンもファオンも、頷いた。
「南尾根と東尾根って、両極端だもんね」
一同は降りしきる雪道を、靴底に金具の付いた雪用ブーツを履きながら進む。
正直10センチくらい降っていたから、足を上げる毎に雪が搔き上げられて舞い散る。
エイモスが呻く。
「…この雪用装具で《化け物》と戦う。
って、正直しんどいぜ…」
皆、毛皮のフードにマントでそれなりに着込んでるので、重い。
が、先頭のジェンスだけは無言でざしざし進む。
「…行こうか…」
立ち止まる一行にレオが言い、ロレンツもキリアンも無言で頷いて、ジェンスの後をぞろぞろ続いた。
南尾根に上がると、雑兵らは皆、見張り用の簡易休憩所で暖を取ってるらしく、誰も見当たらない。
いつもは岩でごつごつした風景が、今や雪で白一色。
吹雪く風に雪が舞い散りながら、顔に降り込む。
「…逃亡者に雪。
って、天の恵みだな」
そうキリアンが小声で呟く。
が、キースがぼそり。
と言い返す。
「《化け物》討伐隊には厳しいぜ」
レオが無言で頷く。
ファオンは両横のアリオンとシーリーン。
それにジェンスの後を歩くファーレーンもが、“気”を張り詰めてるのを見回す。
『…頑張って一刻も早く、杖付きを殺らなきゃ…!』
が、南尾根の岩の間を潜り始めた頃…岩陰に動く陰。
皆、《化け物》か。
と咄嗟剣の柄に手を添え、身構える。
すると…。
「何者だ!」
と叫ぶ声に、レオが眉間寄せる。
「…もしかして…ファルコンか?」
「…レオ?」
拍子抜けした声は、アラン。
アラン、ファルコン、セルティスの三人が、岩陰から姿を見せる。
ファルコンが一番前に進み出て問う。
「…こんなとこで、何してる?」
背後でアランが、吹雪く中一行を見回し、叫ぶ。
「ファオン!お前…」
セルティスが俯く。
「アリオンとシーリーンも一緒か…。やっぱり」
キースが聞く。
「逃亡犯探せ。って命じられたのか?」
ファルコンが背後のアランに振り向く。
アランが肩竦める。
「ここの見回りを命じられて、ついでに見かけたら拉致しろ。
…とは言われた」
ジェンスがずい!とファルコンの目前に出る。
「捕まえられるんなら、捕まえてみろ!」
「…………………………」
ファルコンは、南尾根の長してた時から苦手だった、言葉の通じないジェンスの偉そうに迫り出す姿を見て、無表情で困惑し、俯いた。
アランが背後で援護する。
「捕まえろと命じられたのはファオンとアリオンとシーリーンで、あんたじゃない」
ファルコンは、そうだった。と思い直して、ジェンスを見る。
「あんたは捕まえない」
だがジェンスはもっと偉そうに、胸を張る。
「こいつらは俺の同行者だ。
捕まえると言うんなら、俺が相手になる」
凄く偉そうに剣の柄に手をかけて言われ…ファルコンは自分と同じくらい長身で体格良く暴れん坊の、かつての南尾根の長をまた、無表情で困惑して見る。
レオが怒鳴る。
「ファルコンとアランとセルティスは、こっちに付く!」
ジェンスがレオに振り向く。
「…味方か?」
キースが頷く。
「味方だ」
ジェンスが剣の柄から手を放し、ファルコンは心の底からほっとした。
アランが俯きながら、心底ほっとして、呟く。
「二大怪獣の決闘になるかと思ったぜ…」
シーリーンもアランの気持ちが解った。
「…誰も止めたくないし、止められないな…」
アランが頷く。
セルティスだけが理性的に尋ねる。
「こっちに付く。って…三人逃がすなら、方向逆だろう?」
アリオンとシーリーン。
キースとレオが顔を見合わす。
ジェンスが振り向いて、ファーレーンを見る。
ファーレーンは肩の力が抜けて、呟く。
「この一行の代表みたいな顔して進み出て、面倒な説明はこっち任せか?」
ジェンスはファーレーンをまだ見て、口開く。
「俺は南尾根中央の巣の《化け物》を叩っ斬りに来た。
しか、分かってない。
…お尋ね者三人は、ナンで来たんだっけ?」
アランがキリアンとロレンツの前に来る。
「…アリオンとシーリーンだけで無く…お前らもお尋ね者に名を連ねてたぜ?」
キリアンがそう言われて
「やっぱり?」
と聞いた。
ファルコンも聞く。
「キリアンとロレンツが手引きしてファオンを逃がし、アリオンとシーリーンに引き渡す時に…アリオンとシーリーンがモメたのか?
どっちが引き取るかで」
セルティスがファーレーンの横にやって来る。
ファーレーンは俯く。
「尾根を降りようとしたキリアンとロレンツと、逃亡してたアリオン、シーリーン、ファオンがかち合って、皆ロレンツの別荘に一時避難してた。
…らしい。
ファオンを正当に逃がす為、今からファオンが言う、《化け物》の群れを引かせられる杖付きって《化け物》を斬りに行く。
そいつを斬って、委員会にファオンを《皆を繋ぐ者》から下ろすよう、取引する」
ファルコンとセルティス、それにアランは顔を見合わせる。
「…わざわざこの雪の中を…《化け物》を斬りに行くのか?」
ファルコンに問われて、一同は頷く。
アランがため息混じりにつぶやく。
「で、そのすんごく馬鹿げた同行を、俺らにもしろって?」
一同はまた、揃って頷く。
セルティスが、二人にぼそっ。と囁く。
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