アグナータの命運

あーす。

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夢の中の逃避行

183 6 シーリーン側

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 その朝。

シーリーンは寒さで横に眠るファオンを抱き寄せ…腕の中の感触に、心がほんわかした。
が。

ファオンの腰に巻き付く、ゴツい腕…。
見ると、アリオンの腕。

途端、シーリーンは尾根を降りる、振りをしてファオンをそのまま頂き、甘い逃避行に走ろう。
と数日前からふわふわ足元が軽く、置き去りにしたアリオンの悔し顔を思い浮かべ、ついくすくすと笑っていた日々を思い返す。

…なのに…。

ファオンの髪の向こうを見やると…。
相変わらず整った綺麗顔だが、肩幅といい風格といい…。
男らしさを滲ませたアリオンを、忌々しげに見つめる。

“…同じ考えだったなんて……”

けどその時、アリオンの頭が動く。
咄嗟、目を閉じ寝たふりをする。

すると…アリオンがごそ…と起き出す。

何をするのかと見たら、かなりデカい水桶を持ち上げ、マントを片手で肩に引っかける。
「(…………ハッキリ言って、高山の寒い朝に水汲みに自ら出向く。
のは、偉い…)」

つい、起き出すと暖炉の消えかかる火の前に立ち、火を掻き起こす。
そんなつもりは無かったが…アリオンが凍えて帰って来た時、部屋が暖まっているように…。
無意識に薪をくべていて、手をはっ!と止める。

「(…ダブル長してた時の、作業を分担する癖が出て、つい…。
マズい…。
アリオンの皮肉道理、ヤツと愛が芽生える、前に何とかファオンをさらってアリオンから逃げたい……)」

シーリーンは俯きつつ、火を掻き起こす。
すると…ファオンがもぞ…と頭を動かし、身を起こす。

シーリーンは振り向き…ファオンが寝台から出よう。
と裸に薄衣を肩に引っかけるのを見、つい…飛んだ。

どさっ!
「シーリーン!」

間近にファオンの、湖水の青い大きな瞳を見た途端…。
プチン。と理性が飛ぶ。

「あっ…あ…ん…シー…リーン」

腕の中に抱きしめ、ピンクの可愛らしいファオンの唇に、顔を傾け口付ける。
もう…甘酸っぱい気持ちで満ちて、腕の中で一人占め出来る幸福にくらくらする。

いつも…多数の《勇敢なる者》レグウルナスの隙間を縫って…やっと二人きり。
と喜ぶと大抵邪魔が入る。

だから…つい二人きり。の時間が惜しく…甘い唇に口づけながら、そっと腰を推し進め…ファオンの股の間に進む。

押し開いて、そっ…と腰を抱いて引く。
口づけながら。

ファオンは…シーリーンに顔を傾けられて口付けられると、もう…ぽーっとなっていたから…。
蕾にシーリーンの先端が当たり、ゆっくり分け入って来ると、シーリーンにしがみつく。

ぐっ!

シーリーンは押し込むと、ファオンは腕の中で甘やかに仰け反る。

つい…唇を頬に、首筋に伝わせてそのまま奥まで刺し貫くと、ファオンは腕の中でくねるから…。
シーリーンは興奮しきって、ファオンをもっと自分だけのもにするため、ファオンの中を刺し貫く。

相変わらずまったりと包まれて、一瞬脳天が痺れたけど…ファオンもどうやらそんな様子で、蕩けきった顔で首を振る。

「あっ…あ……っ!」

掠れた声で喘がれると…もう激しく腰を進めてしまう。

ファオンは変声期過ぎても…あまり低い声じゃない………。

「あんっ…!
あ…いい…」

ファオンにしがみつかれ、シーリーンはもう感極まって奥まで刺し貫いた。

「ああっ!」

ファオンが放ち…自分も放つ。
流石に息が切れて、ファオンを寝台の上に押し倒したまま、上から顔を下げて吐息吐く。

ファオンの閉じた睫が上がる。
うっとりと見つめられ、湖水の青い瞳が潤み、瞬いて、シーリーンは再びファオンの甘い唇に口付けた。

「…アリオン…って…」

シーリーンは溜息を吐く。
「直ぐ、戻って来るな…」

言って、ファオンの唇に軽く口付けて、ファオンの上からどいた。

「(…何とか…ファオンを連れて逃げ出したいが…チャンス、あるのかな…。
ってか、またアイツも同じ事考えてたりして………)」

その直ぐ後、扉が開いて、アリオンが水桶を暖炉の前に居る、自分の横に、置いた。

今顔を上げると、多分ファオンを抱いたのが一発でバレる。

シーリーンはアリオンが自主的に気づく迄、ばっくれよう。
と心に決めて、素知らぬ顔して朝食を作り始めた。
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