アグナータの命運

あーす。

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夢の中の逃避行

182 アリオン側

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 朝。

気づくとアリオンは間にファオンを挟み、その向こうにシーリーンの美貌の寝顔を見つける。
「……………………………」

ちょっとがっかりして顔を下げ、やっとそこに、可愛らしいファオンの寝顔を見つけ、ほっとした。

自分が起き出して間もなく。

シーリーンも起きて来る。

なぜか水汲みに出始めると、シーリーンは暖炉の火を掻き起こしていた。

外は寒かったが、透き通った空気が気持ちいい。

はしごが倒れ、昨夜を思い出させる。
《化け物》キーナンの血も草の上に落ちていた。
が流石に寒いので、臭く無い。

アリオンは少し横の、清水が湧き出る小さな川で木のバケツを浸す。

汲んで戻ると、シーリーンは沸かした湯で鍋を濯ぎ、汲んできた水を入れ、適当に瓶詰めの中の食べ物を放り込み、朝食を作り始める。

つい、寝台のファオンの方へ歩きかけ、振り向くとシーリーンも咄嗟に振り向く。

ファオンは起き出していて、寝台横の、昨夜脱ぎ捨てた《化け物》キーナンの血の腐臭のついた衣服を絞ってた。

「…良かったね。
もう臭く無い」

にっこり笑われて、アリオンは…。

「…………………」

つい頭の後ろに手を回し、顔を寄せて口付ける。

「んっ…」

しかし。

抱きしめると直ぐ、ファオンは感じ入ったように身を小刻みに震わせたりするから…。
アリオンは意識されて凄く嬉しくて、ついもっと…舌を入れた濃厚な、キスをする。

そして手を、そっとファオンの蕾に這わせると…濡れていた。

ばっ!とシーリーンに振り向く。

シーリーンは分かっているのに、暖炉の前で屈んだまま、振り向かない。

「俺の水汲みの間に?
もうファオンに挿入(い)れたのか?!」

「…だからお前が挿入(い)れても、文句は控える」

アリオンはムキになってファオンの片腿抱え上げ、直ぐ挿入すると、ファオンは真っ赤になって仰け反る。
あんまり可愛くて、つい思い切りファオンの良いところを突き上げてしまうと、ファオンはしがみついて来る。

「んんっ…駄目…アリオン…。
僕…おかしくなっちゃう…」

「…いいから…思い切り乱れろ」

「あんっ!」

つい、愛しくて思い切り突き上げつつ…シーリーンを見る。

が、シーリーンは平静。

「ああっ…あっ!
あ……んっ!」

ほっ。
と吐息吐き、逝ったファオンを抱き止め、再びしっとり…口づける。

ファオンは真っ赤な頬でとろん…とした瞳をして、文句を言う。

「もう…僕…シーリーンに甘く抱かれて…アリオンに男らしく抱かれちゃったら…今日一日、何も出来なくなっちゃう」

「…どうせ行く予定も無いし。
一日ずっと…して過ごすか?」

シーリーンに言われ、ファオンはぶんむくれる。

「萎びた杖付きを殺したら《化け物》キーナンの群れが引いて助かったのに!
その件は全くスルーなの?!」

アリオンがファオンの腰を抱いたまま、尋ねる。

「…これから冬でウロつく《化け物》キーナン少ないからと言って…まさか《化け物》キーナンの谷を、ウロつこう。
と言ってるんじゃ無いよな?」

「だって!
杖付きをいっぱい殺したら、春の繁殖期に押し寄せる《化け物》キーナンが減る!
《勇敢なる者》レグウルナスはうんと楽になるじゃない!
二人共、抜けたらもう、関係無いの?!」

アリオンは言われてる事は解っていた。
が、やっと手にできた、自分のものに出来るファオンを見、ついうっとりしてしまう。

ファオンはそれを見て、シーリーンに怒鳴る。
「シーリーンからも、言ってやって!」

シーリーンはさっ!とファオンから顔を背ける。

「…今の俺の敵は、《化け物》キーナンよりアリオンだしな」

そう、ぼそり。と言う。

その時、ファオンは心底困って言った。

「…でも僕…どっちか選ぶなんて、無理…。
シーリーンに抱き寄せられると胸がきゅんきゅんするし。
アリオンに抱き寄せられるとどきどきする。
きゅんきゅんと、どきどき、どっちが上?
…なんて、決められない……………」


夢を見てるアリオンとシーリーンが、やっぱり夢を見てるファオンに振り向く。
「あれ、今のお前でも意見、一緒?」

アリオンとシーリーンの声が揃い、ファオンは俯く。

「…僕…やっぱり年取って利口になってる。
“きゅんきゅんと、どきどき、どっちが上?
…なんて、決められない"
って、賢い説明だよね?」

「………………………………」
アリオンもシーリーンも
“何て幼稚な説明”
と思っていたので、思わず二人して沈黙した。
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