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夢の中の逃避行
178 夢の中の冒険
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夢の中でアリオンは19。
直ぐに20を迎える。
もう《勇敢なる者》としては尾根を降りる時が来ていた。
シーリーンと歴代未聞のダブル長。
嫌が上でもシーリーンと足並み揃えなければならず…。
すっかり《皆を繋ぐ者》として色香増すファオンを尾根に残して…。
シーリーンと去らねばならない………。
領地の婚約者は無事生きて尾根を降りる事に嬉しそう。
両親は降りた途端、結婚式を挙げる。
と手くずね引いて待っている。
だが降りる少し前から…逃亡先を当たっていた。
降りる振りをし、ファオンを連れてそのまま別の地へと逃げる。
もう、それしか自分に選択権は無い…。
昔…ファオンとの関係を知られ、引き離された時出来なかった事を…今、する。
アリオンは夢の中の自分の状況に、眉間を寄せた。
“…ファオンが…まだ、《皆を繋ぐ者》…?!”
が、夢の中の自分は、荷物を肩に担ぎ、尾根を降りる為、広場に出る。
同様、自分のテントから出て来るシーリーンと目が合った。
やはり…荷物を革袋に詰め、肩に担いでる。
相変わらずの美麗な顔立ち。
だがすっかり青年としての逞しさを滲ませ。
シーリーンはテントから出るアリオンの姿を見た。
長い黒髪を背に流し…くっきりと目立つ、綺麗な深い青い瞳が印象的だ。
俯く横顔は鼻筋が通って綺麗に見える。
が、最年長の長として共に束ねてきた迫力が、ヤツの周囲を被っている。
“…共に…束ねてきた?!
…ああ…そうか。
その年になったら同位選出だから…どっちか一人。
で無く二人で長してたのか?!
…ってか、どうして時間が飛んでる…?”
シーリーンは夢の中の自分に自問する。
が、夢の中だ。
当然、自分なんだけど…自分じゃないらしく、無愛想にも返答も無い。
ファオンは切なくなった。
二人が荷を担ぎ、尾根を降りる為にテントから出て来る。
次の長に任命されたリチャードが、俯ききって重責を噛みしめ…。
すっかり陽気でやりたい放題していたデュランですら、自粛してる。
頼れる二人がいなくなる…。
それがこんなに…影を落としてる…。
シーリーンもアリオンも、すっかり…しっかりしてきたリチャードに頷く。
《皆を繋ぐ者》の衣服のまま…二人を見送る。
ファオンは例えようも無く、悲しくなった。
リチャードは以前とは違い、抱く時ですら恋人のように…熱烈に抱きしめてくれるようにはなった。
けれど…アリオンとシーリーンとはどうしたって違う…。
二人はいつも…必要な時必要な言葉をかけてくれ…気遣い…だからこそ、皆も《皆を繋ぐ者》の自分を大切に…扱ってくれた。
二人がいなくなったからと言って…皆の扱いが突然、悪くなる事は無いだろうけど…。
“…僕まだ…《皆を繋ぐ者》なの…?
挿入(い)れられなくて…挿入(い)れられるだけ?”
ファオンはぼんやり、夢の中の自分に問うた。
けれど…17になって少し背の伸びた夢の中の自分は、俯くだけ…。
“…ええと……………”
けれど…皆が別れを惜しみ、二人が
「頑張れよ」
と言葉を残し、その姿が消えた後…。
リチャードは暫く自分のテントにいていい。と言い…ファオンはリチャードのテントの中で、唇を噛みしめた。
が、テントの裾が上がる。
降りたはずのアリオン!
ファオンは思わず、駆け寄ろうとした。
が、少し離れた裾も上がり、シーリーンの姿が…。
「…アリオン…シーリーン…?!」
アリオンとシーリーンは潜み姿を見せる互いを見て、思い切り眉間を寄せた。
が、咄嗟ここで言い争う訳には行かない。
と気づいたように、同時に入ってくると、手首を掴む。
二人に手を引かれ、入り口で無く裾からテントを出、岩場へと導かれる。
雑兵の居ない岩場に隠れると、途端アリオンとシーリーンは互いを見て、言い争いを始めた…。
“…何、これ…”
ファオンは思った。
夢の中の自分を見て、アリオンは
「…………………」
シーリーンは
「やっぱり…」
と思った。
二人は以前、リチャードに拉致される前の時のように、激突する。
「俺は逃亡先まで見つけてる!」
アリオンが怒鳴ると、シーリーンも怒鳴り返す。
「なら俺も行く!
大体、俺が先に目を付けてたんだ!
割り込んだのはお前だ!」
「その件については今も、悪かった。
とは思ってる!
がそれとこれは別だ!
ファオンを残し、尾根を降りれば俺は結婚だ!
お前と違い、俺には選択権が無い!」
「俺だって!
親は結婚させたがってる!
だが絶対お前と二人きりにはさせないぞ!」
ファオンは二人の口喧嘩を見て、夢の中の自分を見る。
「…あの…声が…大きくない?」
二人は咄嗟、ファオンに振り向く。
すると岩の向こうから…雑兵が声に気づいて、こっちに来ていた。
選択権無く、アリオンはファオンの手を引き、シーリーンもムキになってもう片側の手を引く。
「離れないからな!」
怒鳴るシーリーンに、アリオンは怒鳴り返す。
「…勝手にしろ!」
“…僕結局…《皆を繋ぐ者》でアリオンとシーリーンと…逃げるの?”
ファオンは夢の中の出来事に、暫く呆然としたけれど…面白そうなのでそのまま夢を、見続けた。
直ぐに20を迎える。
もう《勇敢なる者》としては尾根を降りる時が来ていた。
シーリーンと歴代未聞のダブル長。
嫌が上でもシーリーンと足並み揃えなければならず…。
すっかり《皆を繋ぐ者》として色香増すファオンを尾根に残して…。
シーリーンと去らねばならない………。
領地の婚約者は無事生きて尾根を降りる事に嬉しそう。
両親は降りた途端、結婚式を挙げる。
と手くずね引いて待っている。
だが降りる少し前から…逃亡先を当たっていた。
降りる振りをし、ファオンを連れてそのまま別の地へと逃げる。
もう、それしか自分に選択権は無い…。
昔…ファオンとの関係を知られ、引き離された時出来なかった事を…今、する。
アリオンは夢の中の自分の状況に、眉間を寄せた。
“…ファオンが…まだ、《皆を繋ぐ者》…?!”
が、夢の中の自分は、荷物を肩に担ぎ、尾根を降りる為、広場に出る。
同様、自分のテントから出て来るシーリーンと目が合った。
やはり…荷物を革袋に詰め、肩に担いでる。
相変わらずの美麗な顔立ち。
だがすっかり青年としての逞しさを滲ませ。
シーリーンはテントから出るアリオンの姿を見た。
長い黒髪を背に流し…くっきりと目立つ、綺麗な深い青い瞳が印象的だ。
俯く横顔は鼻筋が通って綺麗に見える。
が、最年長の長として共に束ねてきた迫力が、ヤツの周囲を被っている。
“…共に…束ねてきた?!
…ああ…そうか。
その年になったら同位選出だから…どっちか一人。
で無く二人で長してたのか?!
…ってか、どうして時間が飛んでる…?”
シーリーンは夢の中の自分に自問する。
が、夢の中だ。
当然、自分なんだけど…自分じゃないらしく、無愛想にも返答も無い。
ファオンは切なくなった。
二人が荷を担ぎ、尾根を降りる為にテントから出て来る。
次の長に任命されたリチャードが、俯ききって重責を噛みしめ…。
すっかり陽気でやりたい放題していたデュランですら、自粛してる。
頼れる二人がいなくなる…。
それがこんなに…影を落としてる…。
シーリーンもアリオンも、すっかり…しっかりしてきたリチャードに頷く。
《皆を繋ぐ者》の衣服のまま…二人を見送る。
ファオンは例えようも無く、悲しくなった。
リチャードは以前とは違い、抱く時ですら恋人のように…熱烈に抱きしめてくれるようにはなった。
けれど…アリオンとシーリーンとはどうしたって違う…。
二人はいつも…必要な時必要な言葉をかけてくれ…気遣い…だからこそ、皆も《皆を繋ぐ者》の自分を大切に…扱ってくれた。
二人がいなくなったからと言って…皆の扱いが突然、悪くなる事は無いだろうけど…。
“…僕まだ…《皆を繋ぐ者》なの…?
挿入(い)れられなくて…挿入(い)れられるだけ?”
ファオンはぼんやり、夢の中の自分に問うた。
けれど…17になって少し背の伸びた夢の中の自分は、俯くだけ…。
“…ええと……………”
けれど…皆が別れを惜しみ、二人が
「頑張れよ」
と言葉を残し、その姿が消えた後…。
リチャードは暫く自分のテントにいていい。と言い…ファオンはリチャードのテントの中で、唇を噛みしめた。
が、テントの裾が上がる。
降りたはずのアリオン!
ファオンは思わず、駆け寄ろうとした。
が、少し離れた裾も上がり、シーリーンの姿が…。
「…アリオン…シーリーン…?!」
アリオンとシーリーンは潜み姿を見せる互いを見て、思い切り眉間を寄せた。
が、咄嗟ここで言い争う訳には行かない。
と気づいたように、同時に入ってくると、手首を掴む。
二人に手を引かれ、入り口で無く裾からテントを出、岩場へと導かれる。
雑兵の居ない岩場に隠れると、途端アリオンとシーリーンは互いを見て、言い争いを始めた…。
“…何、これ…”
ファオンは思った。
夢の中の自分を見て、アリオンは
「…………………」
シーリーンは
「やっぱり…」
と思った。
二人は以前、リチャードに拉致される前の時のように、激突する。
「俺は逃亡先まで見つけてる!」
アリオンが怒鳴ると、シーリーンも怒鳴り返す。
「なら俺も行く!
大体、俺が先に目を付けてたんだ!
割り込んだのはお前だ!」
「その件については今も、悪かった。
とは思ってる!
がそれとこれは別だ!
ファオンを残し、尾根を降りれば俺は結婚だ!
お前と違い、俺には選択権が無い!」
「俺だって!
親は結婚させたがってる!
だが絶対お前と二人きりにはさせないぞ!」
ファオンは二人の口喧嘩を見て、夢の中の自分を見る。
「…あの…声が…大きくない?」
二人は咄嗟、ファオンに振り向く。
すると岩の向こうから…雑兵が声に気づいて、こっちに来ていた。
選択権無く、アリオンはファオンの手を引き、シーリーンもムキになってもう片側の手を引く。
「離れないからな!」
怒鳴るシーリーンに、アリオンは怒鳴り返す。
「…勝手にしろ!」
“…僕結局…《皆を繋ぐ者》でアリオンとシーリーンと…逃げるの?”
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