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終焉の儀式
156 一人ずつのその後 過去の思い出
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ファオンは暫くぼうっとしていた。
やがてアリオンの腕に抱き上げられ、シーリーンも横に姿が見える。
《勇敢なる者》らの湯殿に連れて行かれ、小さな滝のある岩の上に下ろされる。
横からシーリーンが前髪を手で上げて、顔を覗き込む。
「…大丈夫か?」
ファオンは何か、言いかけた。
けれど言葉が見つからない。
シーリーンに腕を引かれ、横に体を傾けられ…反対側からアリオンが、蕾にそっと触れて、汚れたその場所を拭いてくれていた。
もう恥ずかしさとか全然感じなくて、されるがまま…。
次第に滝の水しぶきがかかり、意識が戻り始める頃…。
蕾に触れていたアリオンの指は引き抜かれ、今度はシーリーンに抱き上げられて…。
湯殿の横にある平らな岩の上の、洗い場の上に下ろされた。
「…僕…なんか、変だった?」
シーリーンに尋ねると、シーリーンはくすっ。と笑う。
前からシーリーンが。
背後からアリオンが。
交互に薬草を体に擦りつけて汚れを落としてくれていた。
「…意識が飛んでたろう?」
シーリーンに言われて、ぼんやり頷く。
「…だって………。
レオ達の時、僕最近の僕なんだけど…。
アランは良く知ってる…。
シーリーンはもっと…。
アリオンも…。
そうしたら…昔の僕が、出て来た」
「まだ、ちょっと飛んでるな」
アリオンに背後から言われて、ファオンは振り向く。
「…リチャードにされた事…リチャードにどんな感じが言って…。
そしたら、アリオンの事とかシーリーンの事とか…。
僕本当はあの時何にも解ってなかったけど。
アリオンがどうしてあんな事したのかすごくびっくりだった。
…凄く熱くて…けど雷が怖くて…。
雷が鳴り響いた時、アリオン挿入(はい)ったよね…。
きつく内壁(なか)を擦られた。
…アリオンも、『もう死ぬ』って、怖かったから?
それとも…僕が怖がってたから、そうしたの?」
『雷?』
シーリーンはそれを聞いて、アリオンを見る。
アリオンは俯きながら、ファオンの背を薬草で擦ってた。
「…どうだったかな…。
夢中だった。
言ってなかったな。
俺は最初お前が子供の集まりに初めて来て…世話役のローラン婦人に
『この子の面倒をみて上げてね』と紹介されてお前を見た時、一目惚れで。
“絶対将来、この子をお嫁さんにする”と決めた」
シーリーンが、それを聞いて顔を揺らす。
「…けどお前、男の子で。
ほんの小一時間で、大失恋。
俺は餓鬼の頃から“大抵のことは何とかなるし、何とか出来る”
で来てたから…どうにも出来なくて凄いショックを受けた」
「…………………」
ファオンは振り向く。
「お前の顔、見る度にそれ思い出して。
お前は悪くないのに…男の子して俺を他の奴みたいに…憧れの瞳で見る。
…正直…餓鬼で男のお前に“好きだ”と言ったって解って貰えない。
それでとりあえず、かなりの期間お前を避けてた。
…どう接すればいいのか、まるで解らなくて。
そしたら…その後、こいつが来て。
俺がお前の事凄く好きだって事も気づいた、上で言った。
“男の子だろうが、俺がファオンを貰う”」
ファオンは今度、シーリーンを見る。
「…そんな…事、アリオンに言ったの?」
シーリーンは頷く。
「お前…いっつもぽつん。と一人でいて、その時も、皆に取り囲まれてるアリオンばっか、見てたもんな。
まずはアリオンに言って…。
お前の視線をアリオンから俺に向けさせようとした」
ファオンは俯く。
「…リチャードとか…他の子が虐めると…言ってくれたね…。
『止めろ』って…。
あれ…凄く嬉しかった。
…アリオンも言ってくれたけど…虐める子はいっつも、アリオンがいない所で虐めてきたから」
アリオンが背後で溜息吐く。
「…俺に見つかると睨まれるからな」
ファオンがアリオンに振り向く。
アリオンの…青いくっきりとした瞳。
大好きな、青。
前を見ると、シーリーンの綺麗なブルー・グレーの瞳が見つめてる。
「意地悪言うのに…他の子みたいな虐めはしなかった…」
シーリーンが微笑う。
「俺が意地悪言うのは、お前の気が引きたかったからで…虐めたい訳じゃなかったからな」
ファオンは俯いて、頷いた。
「…けど最初、シーリーンは凄く格好良くて綺麗で…。
直ぐ女の子の取り巻きが出来て…人気者で…。
僕、近寄り難かった。
でもそれでも…話してくれる。
本当は他の男の子達…凄く意地悪なんじゃ無くて…好きな女の子の為にしてて…。
時々『ごめんな。お前が嫌いな訳じゃないんだ、でもグレイスが、して…って言うから…。
断れなくてさ』
って言い訳してくれたりした。
…でも僕、分かんなかった。
グレイスは綺麗で…アリオンにいつもべったりで。
なんで僕を虐めたいのか…理解出来なかった」
アリオンが背後で溜息吐く。
「…美人を競ってる子達の中じゃ、自分が一番綺麗。
と思ってたのに、お前が来るとお前の方が、綺麗だったからだろう?」
ファオンが顔を上げる。
「…でも僕、男の子なのに!」
「………だから余計、プライドが傷付いたんじゃ無いのか?」
シーリーンに言われて、ファオンはシーリーンに振り向いた。
「…そうなの?」
背後で、アリオンも頷く。
「…多分な」
ファオンは下を向く。
「…じゃ…女の子達は…僕が、女の子達より綺麗だから…虐めたの?」
アリオンが背後で溜息を吐く。
「…俺がいつもお前をそう見てたし…シーリーンなんかは俺にはっきり言う位だから。
お前の事が誰より一番好き。
って女共は知ってて。
それで虐めたんだろう?
シーリーンの取り巻きの一番綺麗で気の強かった…」
シーリーンが言葉を繋ぐ。
「レアンナ?」
アリオンが頷く。
「…特に酷くファオンを虐めたな。
勿論、お前の前ではしない。
自分の気を引こうとしてる男の子らに、影でこっそり命じて」
シーリーンが俯く。
「お前の取り巻きのオンナ共もそうだったろう?」
アリオンも背後で溜息吐く。
「…俺は一応、ファオンが男の子で諦め、取り巻く女の子の中から嫁に出来そうな子を選ぶ気は合ったから、取り巻くのを引かせなかったが…。
お前、ファオンの事好きだ。って自覚合ったのにそれでも取り巻かれてただろう?」
シーリーンはファオンの背後の、アリオンを見る。
「…どこでも取り巻かれてるのが普通だったし。
わざわざ引かせようとは思ってなかった。
『取り巻くな』って言ったって聞きやしないし」
アリオンはシーリーンを見る。
だがシーリーンはファオンを見た。
「レアンナにはちゃんと言った。
『ファオンを虐めてる事は解ってる。
二度とするな』と」
アリオンが吐息吐く。
「…でもそれで、俺の取り巻きのグレイスと結託して…花祭りのコンテストに、ファオンを女の子として出させたんだって。
お前、知ってた?」
ファオンがシーリーンを見ると、シーリーンは顔を揺らした。
やがてアリオンの腕に抱き上げられ、シーリーンも横に姿が見える。
《勇敢なる者》らの湯殿に連れて行かれ、小さな滝のある岩の上に下ろされる。
横からシーリーンが前髪を手で上げて、顔を覗き込む。
「…大丈夫か?」
ファオンは何か、言いかけた。
けれど言葉が見つからない。
シーリーンに腕を引かれ、横に体を傾けられ…反対側からアリオンが、蕾にそっと触れて、汚れたその場所を拭いてくれていた。
もう恥ずかしさとか全然感じなくて、されるがまま…。
次第に滝の水しぶきがかかり、意識が戻り始める頃…。
蕾に触れていたアリオンの指は引き抜かれ、今度はシーリーンに抱き上げられて…。
湯殿の横にある平らな岩の上の、洗い場の上に下ろされた。
「…僕…なんか、変だった?」
シーリーンに尋ねると、シーリーンはくすっ。と笑う。
前からシーリーンが。
背後からアリオンが。
交互に薬草を体に擦りつけて汚れを落としてくれていた。
「…意識が飛んでたろう?」
シーリーンに言われて、ぼんやり頷く。
「…だって………。
レオ達の時、僕最近の僕なんだけど…。
アランは良く知ってる…。
シーリーンはもっと…。
アリオンも…。
そうしたら…昔の僕が、出て来た」
「まだ、ちょっと飛んでるな」
アリオンに背後から言われて、ファオンは振り向く。
「…リチャードにされた事…リチャードにどんな感じが言って…。
そしたら、アリオンの事とかシーリーンの事とか…。
僕本当はあの時何にも解ってなかったけど。
アリオンがどうしてあんな事したのかすごくびっくりだった。
…凄く熱くて…けど雷が怖くて…。
雷が鳴り響いた時、アリオン挿入(はい)ったよね…。
きつく内壁(なか)を擦られた。
…アリオンも、『もう死ぬ』って、怖かったから?
それとも…僕が怖がってたから、そうしたの?」
『雷?』
シーリーンはそれを聞いて、アリオンを見る。
アリオンは俯きながら、ファオンの背を薬草で擦ってた。
「…どうだったかな…。
夢中だった。
言ってなかったな。
俺は最初お前が子供の集まりに初めて来て…世話役のローラン婦人に
『この子の面倒をみて上げてね』と紹介されてお前を見た時、一目惚れで。
“絶対将来、この子をお嫁さんにする”と決めた」
シーリーンが、それを聞いて顔を揺らす。
「…けどお前、男の子で。
ほんの小一時間で、大失恋。
俺は餓鬼の頃から“大抵のことは何とかなるし、何とか出来る”
で来てたから…どうにも出来なくて凄いショックを受けた」
「…………………」
ファオンは振り向く。
「お前の顔、見る度にそれ思い出して。
お前は悪くないのに…男の子して俺を他の奴みたいに…憧れの瞳で見る。
…正直…餓鬼で男のお前に“好きだ”と言ったって解って貰えない。
それでとりあえず、かなりの期間お前を避けてた。
…どう接すればいいのか、まるで解らなくて。
そしたら…その後、こいつが来て。
俺がお前の事凄く好きだって事も気づいた、上で言った。
“男の子だろうが、俺がファオンを貰う”」
ファオンは今度、シーリーンを見る。
「…そんな…事、アリオンに言ったの?」
シーリーンは頷く。
「お前…いっつもぽつん。と一人でいて、その時も、皆に取り囲まれてるアリオンばっか、見てたもんな。
まずはアリオンに言って…。
お前の視線をアリオンから俺に向けさせようとした」
ファオンは俯く。
「…リチャードとか…他の子が虐めると…言ってくれたね…。
『止めろ』って…。
あれ…凄く嬉しかった。
…アリオンも言ってくれたけど…虐める子はいっつも、アリオンがいない所で虐めてきたから」
アリオンが背後で溜息吐く。
「…俺に見つかると睨まれるからな」
ファオンがアリオンに振り向く。
アリオンの…青いくっきりとした瞳。
大好きな、青。
前を見ると、シーリーンの綺麗なブルー・グレーの瞳が見つめてる。
「意地悪言うのに…他の子みたいな虐めはしなかった…」
シーリーンが微笑う。
「俺が意地悪言うのは、お前の気が引きたかったからで…虐めたい訳じゃなかったからな」
ファオンは俯いて、頷いた。
「…けど最初、シーリーンは凄く格好良くて綺麗で…。
直ぐ女の子の取り巻きが出来て…人気者で…。
僕、近寄り難かった。
でもそれでも…話してくれる。
本当は他の男の子達…凄く意地悪なんじゃ無くて…好きな女の子の為にしてて…。
時々『ごめんな。お前が嫌いな訳じゃないんだ、でもグレイスが、して…って言うから…。
断れなくてさ』
って言い訳してくれたりした。
…でも僕、分かんなかった。
グレイスは綺麗で…アリオンにいつもべったりで。
なんで僕を虐めたいのか…理解出来なかった」
アリオンが背後で溜息吐く。
「…美人を競ってる子達の中じゃ、自分が一番綺麗。
と思ってたのに、お前が来るとお前の方が、綺麗だったからだろう?」
ファオンが顔を上げる。
「…でも僕、男の子なのに!」
「………だから余計、プライドが傷付いたんじゃ無いのか?」
シーリーンに言われて、ファオンはシーリーンに振り向いた。
「…そうなの?」
背後で、アリオンも頷く。
「…多分な」
ファオンは下を向く。
「…じゃ…女の子達は…僕が、女の子達より綺麗だから…虐めたの?」
アリオンが背後で溜息を吐く。
「…俺がいつもお前をそう見てたし…シーリーンなんかは俺にはっきり言う位だから。
お前の事が誰より一番好き。
って女共は知ってて。
それで虐めたんだろう?
シーリーンの取り巻きの一番綺麗で気の強かった…」
シーリーンが言葉を繋ぐ。
「レアンナ?」
アリオンが頷く。
「…特に酷くファオンを虐めたな。
勿論、お前の前ではしない。
自分の気を引こうとしてる男の子らに、影でこっそり命じて」
シーリーンが俯く。
「お前の取り巻きのオンナ共もそうだったろう?」
アリオンも背後で溜息吐く。
「…俺は一応、ファオンが男の子で諦め、取り巻く女の子の中から嫁に出来そうな子を選ぶ気は合ったから、取り巻くのを引かせなかったが…。
お前、ファオンの事好きだ。って自覚合ったのにそれでも取り巻かれてただろう?」
シーリーンはファオンの背後の、アリオンを見る。
「…どこでも取り巻かれてるのが普通だったし。
わざわざ引かせようとは思ってなかった。
『取り巻くな』って言ったって聞きやしないし」
アリオンはシーリーンを見る。
だがシーリーンはファオンを見た。
「レアンナにはちゃんと言った。
『ファオンを虐めてる事は解ってる。
二度とするな』と」
アリオンが吐息吐く。
「…でもそれで、俺の取り巻きのグレイスと結託して…花祭りのコンテストに、ファオンを女の子として出させたんだって。
お前、知ってた?」
ファオンがシーリーンを見ると、シーリーンは顔を揺らした。
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