アグナータの命運

あーす。

文字の大きさ
上 下
154 / 286
終焉の儀式

154 “終焉の儀式” リチャード

しおりを挟む
 アリオンがまだ、ファオンを抱いた余韻で、小刻みに顔を震わせながら…席に戻り、座す。

皆、リチャードをそっと盗み見るが、リチャードは溜息を吐き、立ち上がる。


リチャードは毛皮の上にぐったり横たわるファオンを見、屈み腕をそっと引く。

ファオンが顔を上げる。

まだ、アリオンに囚われているように、遠い瞳で見つめられ、リチャードはぐっ。
と心に暗い影が覆い被さるのを感じた。

ああ…。

けれど昔。
餓鬼だった頃は無性に憤った。

…今なら解る。
ファオンの視界に自分を映し出す為に…。
なぜ自分があれほど過激な行為をしたのか…。

今、ファオンに何をしても…心はアリオンに囚われたまま。

体が条件反射で動くだけ…。

リチャードは溜息を吐いた。

もう…いい。
心はアリオンのものでも。

例え抱くのが抜け殻でも…。

それでも拒絶の言葉を吐かれなければ。

リチャードはそっ…と、ファオンの腕を引き、上体を起こす。

そしてそっと、背後から腰を抱き寄せる。

髪に触れたが…毛先の一本までもが…アリオンのもののように感じる。

今では…解る。

アリオンのもの。
そしてシーリーンに抱かれた後は、シーリーンのもの。

その二人の男の存在と、戦いながらファオンを自分に振り向かせる事の、困難さ。

けれど…多分直拒絶されてもう…永遠に触れられないかも知れない…。

そう、解ったときリチャードはファオンの髪に、背後から口付けていた。

胸に手を回す。
そして腰を引き寄せて…。

ファオンの愛らしい双丘が腿に当たると、甘酸っぱい思いが、胸を掻き乱す。

虐めるといつも…青い瞳を潤ませて見上げる。

赤い唇。
愛らしく綺麗な…可愛いファオン。

リチャードがそっ…と首筋に唇を触れさせる。

けれどやっぱり…がっかりする。

ファオンはまだ、アリオンに囚われていた。

本当は…振り向かせて自分の存在を示し…誇示したかった。

がそれをしたら途端、拒絶されると解っていたから…リチャードはそっ…。
とファオンの身体に触れる。

手でそっと肌の感触を確かめ…。
唇で頬に口づけ………。

そして、ファオンを伺う。

まだ、ファオンはアリオンに心を囚われたまま。


端で見ている年上の男達は、リチャードが気の毒過ぎて顔を下げていた。

デュランでさえも。


リチャードは…けれど拒絶もされないので少し、ほっとして、ファオンの男根を後ろから手を伸ばし、そっ…と触れる。

昔触れた小さなそれは、今は少し雄々しくなったとは言え…。
やはりまだ細くて頼りなく、リチャードはほっとしたように、手で握り込んでそっとしごきながら、愛撫を加える。

ぴくん。
とファオンが顔を揺らす。

「(…やっぱり…いいのか)」

リチャードは思いながら、そっとしごき上げると、ファオンの男根が半勃ちになり…。

リチャードはそっと…後ろからファオンの腰を抱いて持ち上げる。

シュティッセンとレオ、ファルコン、セルティスらに特訓(?)…された時…。
レオに言われた。

『アリオンとシーリーンが大事に可愛がりすぎて、ファオン自身では積極的に何もしない。
お前は相手に奉仕されるのが好きだから、その時点でまず、ファオンとは相性が合わない。
ファオンを調教しようとしたらその時点で、嫌われる。
それを強引に、やり用もロクに知らないのに拉致して行ったら、大嫌いになっても仕方無い』

と。

…つまりファオンとしたいなら…自分からファオンに奉仕し、可愛がらないと駄目。

そう解り、リチャードは必死に…手で少しずつファオンの男根に奉仕しつつ、固く育つのを待つ。

だが、ファオンを手で弄んでるさ中、もう…自分が限界なくらい張り詰めて辛くなったから…。

そっ…とファオンの双丘の蕾に、自身を当てる。

ファオンの蕾から…アリオンの放った液が垂れ…リチャードは昔の自分なら我慢出来ず、ファオンの口の中に自分を強引にねじ込んだが、その時は耐えた。

けれどそっ…と挿入して中に入れると…泣き出したくなる程な幸せ感が、襲って来る。

ファオンに開始一秒。
秒殺で拒絶される。
と覚悟していたから。

今、挿入してる事が、信じられなかった。

思ったよりずっと気持ちよくなってしまう。

それで…腰を少し、突き入れてみた。

内壁で擦り上げられると、たまらなく感じる。

リチャードはいつも、後ろから挿入(い)れるのが好きだった。

が、背後から抱くファオンは、匂い立つような色香溢れる麗人シュティッセンとは違い…どこか未熟で、けれどとても可愛くて特別な感じに思えた。

腰を突き入れると、下半身に痺れが走る。

もう、リチャードもかなりな数の経験があったから、ファオンが誰より特別な存在感があるのは、解っていた。

腕に抱くと、気恥ずかしいような甘い感じがする。

抱いていると、自分一人のものにして…一人占めしたくなる。

ファオンがまだ、拒絶を叫ばないので、リチャードはゆっくりと…腰を突き入れた。

深い快感が四肢を痺れさす。

ぎゅっ!と締め付けられるとたまらなくて、リチャードは性急にしたい心を抑え込み、また…腰をゆっくりそっと引き抜き、奥深くに挿入する。

「(…ヤバ…。
めちゃめちゃ、いい…)」

餓鬼の頃、ただ柔らかいだけだったそこは、修行に出て鍛えたせいなのか、その締め付けが半端無く、いい…。

「(…いやまだ…アリオンとしてる。
とファオンが思い込んでるせいか…?)」

アリオンと思われてるだけで、こんなに反応が良いのか…。

リチャードはまだ、アリオンの垂らし具合が半端無いと解って、項垂れる。

シュティッセンが言った。

『相手によって…こちらの反応も違って来ます』

…つまりアリオンは、腕に抱くだけで相手の具合までも良くする訳だ。

溜息を吐きかけたが、正直欲望はもう、辛い程張り詰めていたから、少しずつ…解き放つ快感に包まれる前に、ファオンに拒絶されないことを祈って、腰を突き入れ始めた。


ファオンは正直、まだアリオンに抱かれてる。
と思い込んでいた。

けれどどんどん奥の敏感な部分を擦られ、自身も高まって思わず

「………っ!」

と喘いだ時…目前のちょっと横に座るアリオンと目が合う。

「(………?あれ?)」

背後から抱く腕。

けれどまた貫かれた時、もう男根が辛くなってきて、そのまま突かれるに任せた。

数度、擦られると、我慢出来なくて逝く。

けれど同時に、背後の人物も…中で解き放ってた。

手がそっと髪に触れ…頬に口付けられた時…。

初めてファオンは振り返る。


リチャードは振り向き見つめるファオンが目を、驚きに大きく見開いていて…。

そそくさとファオンの腰から自分を引いて、蕾から引き抜く。

そしてそのまま、顔を伏せてファオンの背後に立ち上がり、顔を伏せたまま、その場を後にする。


ファオンに呆然と、見つめられてる気がしたが、リチャードは顔を、下げ続けた。

キースだけが

「叫ばれなくて、良かったな」

とリチャードを、慰めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...