アグナータの命運

あーす。

文字の大きさ
上 下
143 / 286
終焉の儀式

143 “終焉の儀式” 2

しおりを挟む
「まだ皆怪我を負ってる。
シリルローレルが治療士らに、桃の奇跡のやり方を伝授していったから、今夜は皆、ゆっくり休み、明日から儀式を行う」

レオの言葉で、《勇敢なる者》レグウルナスらは皆、頷く。

ファオンは暫く…言われた事を俯いて…飲み込もうとして…。
けど、全員に抱かれる事を考えただけで、あちこちが疼き出して、真っ赤になった。

アリオンが憮然して囁く。
「背の傷は、どうだ?」

「もう…殆ど瘡蓋に成ってる」

シーリーンも横に来ると、ファオンの背の薄衣をぴら。とめくり、見る。
「…確かに…」

そして、溜息を吐く。

二人は顔を見合わせた後に、シーリーンが囁く。
「お前…レオとかキースとかに抱かれて…後で忘れられるか?」

ファオンは言われて…凄く恥ずかしくなった。

レオは縋り付きたくなるほど頼もしくて男らしいし…。
キースは安心感はあるし、年上の男の余裕で、どきどきもさせてくれるし…甘ったるい気分にさせてくれる。

セルティスは若々しく逞しくて…あの顔で切なげに眉を寄せ、唇を寄せられたりすると、すっかり囚われてしまう………。

ファオンがずっと俯いているので、頭上でシーリーンとアリオンが、ほぼ同時に溜息を吐いた。



けれど夕飯はまだ皆がテントで取り、ファオンはキースとリチャードと、焚き火の石の椅子で取る。

「…東は《化け物》キーナンの森をやったから少し余裕そうだが…。
南は大変そうだ」

ファオンはキースの言葉に、顔を上げる。
そんな…大変な時期なのに…キリアンは自分の為に、度々足を運んで、見に来てくれていた。

「…こっちは儀式を始めると告げたら、雑兵アルナらは
“明日は余程の襲撃が来ない限りは、護り切ります”
と言ってくれた」

リチャードは頷く。

その間、まるでファオンを見ない。

キースはその様子を見て、ファオンに囁いた。

「…今夜、リチャードはレオ、ファルコン、セルティスのいるテントで、シュティッセンが付きっきりで実技の特訓する」

「?」

「…マトモに抱けるように。
いや…優しく、感じさせるように“抱く”特訓だっけ?
相手がシュティッセンだから…嬉しいだろう?」

けどリチャードは顔を下げる。

「…でもそういう問題じゃ無い…。
ファオンは俺に…触られただけで過去の忌まわしい記憶が蘇って…嫌なんだろう?
…俺だって…昔、豆喰って酷い腹痛起こして以来、豆見ただけで気分が悪くなった」

キースが尋ねる。
「今でも、喰えないのか?」

リチャードは俯いたまま、言う。
「…ここに来て…残したらレオに怒られた。
調理した料理人を侮辱する気か?って………。
以来、無理して食べる。
最近ようやく…美味しいと…思う時もある」

キースはファオンに向かって笑う。
「…最後だ。
リチャードに触られて…どうしても気持ち悪けりゃ、泣き叫んでもいい。
それでリチャードが殊勝に落ち込めば、他の男が慰めるから」

ファオンは頷きかけて…深く俯くリチャードを見る。

…凄く、緊張し、同時に落ち込んでいた。

キースがすかさず言う。

「同情しなくていい」

ファオンは頷き、リチャードは少し、睨んだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界へ行って帰って来た

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:169

血と束縛と

BL / 連載中 24h.ポイント:866pt お気に入り:1,267

親が決めた婚約者ですから

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:440pt お気に入り:1,311

ゴーストスロッター

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:9

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

処理中です...