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終焉の儀式
141 選抜委員長の困惑
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ファーレーンとキリアンらも帰って行った後。
皆が、とりあえず毎年の《化け物》繁殖期よりもうんと楽な状態にほっとして、傷付いた体を休めようとテントに戻りかけた時、その人物は訪れた。
頑健な体付でプラチナの髭を蓄えた、威厳溢れる男。
レオもシュティッセンも振り返る。
皆がその威厳在る人物に振り返って見ると、彼は言った。
「全員が、揃ってるようだな」
皆が再び石の椅子にかけて、その人物を見つめる。
キースがレオに代わって、皆に紹介した。
「《皆を繋ぐ者》、そして《勇敢なる者》の選抜委員長だ。
先日ファオンの《皆を繋ぐ者》の廃止と《勇敢なる者》に移行する決定を出した人物」
皆がぎくり…。
とその、威厳の塊の男を見る。
『まさか…決定を覆す気か?!』
皆、彼が厳しい顔で俯いているので、不安げに見つめる。
がやっと、選抜委員長は顔を上げた。
「…ファオンを《皆を繋ぐ者》から廃す。
と決定したが…」
皆がきつい目で顔を上げる。
「代わりの者を選抜するのに…かなり時間を要すとの事で…。
急がせてはいる。
皆も傷を負ってもいる。
代理を全てシュティッセンに任せたいところだが、シュティッセンも報告を受けたところその…桃の奇跡…?
…とかで怪我人を治している為、かなり消耗していると聞いた」
シュティッセンは…けれどファオンの為に言った。
「…でも私は代理が出来ます」
選抜委員長は俯く。
「今見たが…顔色がとても青い」
シュティッセンは俯く。
「…それで…。
キルファースからの苦情、覚悟で提案する。
廃した者には適応されないが…。
シュティッセンのように、任期を終えて《皆を繋ぐ者》を降りた者に対しては、終焉の儀式を行うだろう?
…その儀式をファオンで行ってくれれば、その期間中には、次の《皆を繋ぐ者》を見つけ出すと約束する」
皆が呆けて、選抜委員長を見る。
「…勿論、レオ、そしてキース。
規則通りでは無く、君らの裁量で構わない。
ファオンは尾根を降りず今後、《勇敢なる者》としてここに残るんだし。
シュティッセンも代理として次の《皆を繋ぐ者》が尾根に上がるまでは居てくれて構わない。
何せ…今回は異例だらけなので…。
歴史在る厳格な制度も多少は融通を利かせる。
…それに、《化け物》討伐のやり方も検討し直す必要があると。
シリルローレルからの提案もある。
彼もずっと杖付きを殺る事で“巣”を壊滅させられるのではないか。
と思っていたらしいが…この繁殖期に置いても通用するかどうかは…。
弟子であるファオンを送り込んで初めて、確かめられたそうだ。
だが…」
選抜委員長は皆を見る。
「繁殖期に“巣”の討伐に出かけるには…君らのように高いリスクを伴う。
…本当に、全員生還おめでとう。
ファオンを《皆を繋ぐ者》より《勇敢なる者》にしたのは…その祝いでもある。
シリルローレルが教え込んだ杖付き襲撃者の筆頭であるファオンが仲間としていれば、今後も力強いだろう?
…だが……………。
そうなると次の《皆を繋ぐ者》が…なかなか見つからなくて」
皆、一斉に溜息を吐いた。
そして皆が一斉に、食指が動きそうな美少年の名を挙げ始める。
ファルコンが提案する。
「シャネアンナはどうだ?」
レオがこそっ。と呟く。
「キリアン並みに気が強いぞ?」
セルティスがそっと告げる。
「デュルケウスは?」
アリオンが囁く。
「…絶対、逃げ出す。
凄い恐がりだから《化け物》が死ぬほど怖くて、まず尾根には上がりたがらない。
その上、利己的だ」
リチャードが尋ねる。
「ラッツェンは?」
皆がその名で、ほっ。と顔を上げる。
シーリーンが暗い声で囁く。
「本人も喜んで上がって来るだろうが…。
…あいつ、不感症だ…。
まず、それを克服しないと」
皆が一斉に、顔を下げた。
選抜委員長が、ぼそり。と言った。
「我々の苦労が、解ってくれるか?」
皆、黙して頷いた。
アランが囁く。
「俺の遠縁に一人居るが…。
昔、ここに住んでいて今は遠い地にいる。
顔も綺麗で性格も丸い。
…性的にも、砕けてる」
アリオンが顔を上げる。
「何て名だ?」
「ナウルース。
確かファオンと入れ代わりにここの地を離れた。
後から来たシーリーンやリチャードは知らないだろうが…。
アリオン、お前なら知ってるだろう?」
アリオンが、頷く。
「…ブロンドの、華やかな美少年だな。
愛想もいいし…性格も可愛い」
選抜委員長はアランに振り向く。
「わざわざこの地に、《皆を繋ぐ者》に成りに戻ってくれそうか?」
「…俺が知ってるのは1年前だが…。
欲求不満の森番に一度、強姦されてるから…。
《皆を繋ぐ者》が羨ましいとは、言っていたな。
どうせ犯されるんなら、《勇敢なる者》くらいのいい男揃いなら良かったと言ってた」
選抜委員長がアランに囁く。
「連絡を取ってくれるか?
他にもう、候補がいなくて…選抜委員全員がこの地に住む者では無く、遠縁を片っ端から当たろうとしていたところだ」
アランは頷く。
が、念押した。
「但し今、奴がどう変わってるかは責任取れない」
選抜委員長が尾根を降りていくと、全員アリオンに詰め寄った。
ファルコンが真っ先に聞く。
「…ファオンと比べて、どうだ?」
アリオンは取り囲まれ、躊躇ったが、言った。
「…アランの遠縁だから…。
解るだろう?
性格は明るくて社交的。
顔立ちも綺麗だが…。
ファオンのように、群を抜いて綺麗。
って感じじゃ無い」
キースが笑う。
「ファオンとその兄弟の美貌は突出してるもんな」
レオも頷く。
「そこまで綺麗はこの際、求めない」
ファオンは選抜の内情が解って、その時初めて俯いた。
『《皆を繋ぐ者》を選ぶ。
って………大変だったんだ……………』
そして、チラ…。
と白百合のようなシュティッセンを見た。
姿も美しく、性格も良く…。
そして男達に抱かれても動じない…。
『シュティッセンは《勇敢なる者》を、“滅多にいない宝石のように貴重な人達”
って言ったけど…《皆を繋ぐ者》もそうなんだ………』
シュティッセンはファオンと目が合うと、にっこり…。
と微笑んだ。
皆が、とりあえず毎年の《化け物》繁殖期よりもうんと楽な状態にほっとして、傷付いた体を休めようとテントに戻りかけた時、その人物は訪れた。
頑健な体付でプラチナの髭を蓄えた、威厳溢れる男。
レオもシュティッセンも振り返る。
皆がその威厳在る人物に振り返って見ると、彼は言った。
「全員が、揃ってるようだな」
皆が再び石の椅子にかけて、その人物を見つめる。
キースがレオに代わって、皆に紹介した。
「《皆を繋ぐ者》、そして《勇敢なる者》の選抜委員長だ。
先日ファオンの《皆を繋ぐ者》の廃止と《勇敢なる者》に移行する決定を出した人物」
皆がぎくり…。
とその、威厳の塊の男を見る。
『まさか…決定を覆す気か?!』
皆、彼が厳しい顔で俯いているので、不安げに見つめる。
がやっと、選抜委員長は顔を上げた。
「…ファオンを《皆を繋ぐ者》から廃す。
と決定したが…」
皆がきつい目で顔を上げる。
「代わりの者を選抜するのに…かなり時間を要すとの事で…。
急がせてはいる。
皆も傷を負ってもいる。
代理を全てシュティッセンに任せたいところだが、シュティッセンも報告を受けたところその…桃の奇跡…?
…とかで怪我人を治している為、かなり消耗していると聞いた」
シュティッセンは…けれどファオンの為に言った。
「…でも私は代理が出来ます」
選抜委員長は俯く。
「今見たが…顔色がとても青い」
シュティッセンは俯く。
「…それで…。
キルファースからの苦情、覚悟で提案する。
廃した者には適応されないが…。
シュティッセンのように、任期を終えて《皆を繋ぐ者》を降りた者に対しては、終焉の儀式を行うだろう?
…その儀式をファオンで行ってくれれば、その期間中には、次の《皆を繋ぐ者》を見つけ出すと約束する」
皆が呆けて、選抜委員長を見る。
「…勿論、レオ、そしてキース。
規則通りでは無く、君らの裁量で構わない。
ファオンは尾根を降りず今後、《勇敢なる者》としてここに残るんだし。
シュティッセンも代理として次の《皆を繋ぐ者》が尾根に上がるまでは居てくれて構わない。
何せ…今回は異例だらけなので…。
歴史在る厳格な制度も多少は融通を利かせる。
…それに、《化け物》討伐のやり方も検討し直す必要があると。
シリルローレルからの提案もある。
彼もずっと杖付きを殺る事で“巣”を壊滅させられるのではないか。
と思っていたらしいが…この繁殖期に置いても通用するかどうかは…。
弟子であるファオンを送り込んで初めて、確かめられたそうだ。
だが…」
選抜委員長は皆を見る。
「繁殖期に“巣”の討伐に出かけるには…君らのように高いリスクを伴う。
…本当に、全員生還おめでとう。
ファオンを《皆を繋ぐ者》より《勇敢なる者》にしたのは…その祝いでもある。
シリルローレルが教え込んだ杖付き襲撃者の筆頭であるファオンが仲間としていれば、今後も力強いだろう?
…だが……………。
そうなると次の《皆を繋ぐ者》が…なかなか見つからなくて」
皆、一斉に溜息を吐いた。
そして皆が一斉に、食指が動きそうな美少年の名を挙げ始める。
ファルコンが提案する。
「シャネアンナはどうだ?」
レオがこそっ。と呟く。
「キリアン並みに気が強いぞ?」
セルティスがそっと告げる。
「デュルケウスは?」
アリオンが囁く。
「…絶対、逃げ出す。
凄い恐がりだから《化け物》が死ぬほど怖くて、まず尾根には上がりたがらない。
その上、利己的だ」
リチャードが尋ねる。
「ラッツェンは?」
皆がその名で、ほっ。と顔を上げる。
シーリーンが暗い声で囁く。
「本人も喜んで上がって来るだろうが…。
…あいつ、不感症だ…。
まず、それを克服しないと」
皆が一斉に、顔を下げた。
選抜委員長が、ぼそり。と言った。
「我々の苦労が、解ってくれるか?」
皆、黙して頷いた。
アランが囁く。
「俺の遠縁に一人居るが…。
昔、ここに住んでいて今は遠い地にいる。
顔も綺麗で性格も丸い。
…性的にも、砕けてる」
アリオンが顔を上げる。
「何て名だ?」
「ナウルース。
確かファオンと入れ代わりにここの地を離れた。
後から来たシーリーンやリチャードは知らないだろうが…。
アリオン、お前なら知ってるだろう?」
アリオンが、頷く。
「…ブロンドの、華やかな美少年だな。
愛想もいいし…性格も可愛い」
選抜委員長はアランに振り向く。
「わざわざこの地に、《皆を繋ぐ者》に成りに戻ってくれそうか?」
「…俺が知ってるのは1年前だが…。
欲求不満の森番に一度、強姦されてるから…。
《皆を繋ぐ者》が羨ましいとは、言っていたな。
どうせ犯されるんなら、《勇敢なる者》くらいのいい男揃いなら良かったと言ってた」
選抜委員長がアランに囁く。
「連絡を取ってくれるか?
他にもう、候補がいなくて…選抜委員全員がこの地に住む者では無く、遠縁を片っ端から当たろうとしていたところだ」
アランは頷く。
が、念押した。
「但し今、奴がどう変わってるかは責任取れない」
選抜委員長が尾根を降りていくと、全員アリオンに詰め寄った。
ファルコンが真っ先に聞く。
「…ファオンと比べて、どうだ?」
アリオンは取り囲まれ、躊躇ったが、言った。
「…アランの遠縁だから…。
解るだろう?
性格は明るくて社交的。
顔立ちも綺麗だが…。
ファオンのように、群を抜いて綺麗。
って感じじゃ無い」
キースが笑う。
「ファオンとその兄弟の美貌は突出してるもんな」
レオも頷く。
「そこまで綺麗はこの際、求めない」
ファオンは選抜の内情が解って、その時初めて俯いた。
『《皆を繋ぐ者》を選ぶ。
って………大変だったんだ……………』
そして、チラ…。
と白百合のようなシュティッセンを見た。
姿も美しく、性格も良く…。
そして男達に抱かれても動じない…。
『シュティッセンは《勇敢なる者》を、“滅多にいない宝石のように貴重な人達”
って言ったけど…《皆を繋ぐ者》もそうなんだ………』
シュティッセンはファオンと目が合うと、にっこり…。
と微笑んだ。
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