アグナータの命運

あーす。

文字の大きさ
上 下
132 / 286
一掃

132 アリオンとシーリーン

しおりを挟む
 アリオンはファオンを探しに、岩を登った時足を滑らせ、胸元の傷を強打した事を思い返す。

息が一瞬止まり、脂汗が出て、まずいと思った…。

案の定、そこそこ深かった傷がもっと開き…血が溢れるように流れ出し…完全にまずいと思った。

けれど…斜め下に一緒に登って来る、セルティスですら酷い怪我を負い、動く度に出血してる…。
泣き言は、言えなかった。

…だから…岩の上に登り来るファオンを見つけた時…。
どれ程、ほっとした事か。

引き上げ、一緒に歩く。
けど…ファオンの温もりがその時、自分の怪我よりもただ、ただ嬉しかったから…。
自然と覚悟した。

この血が流れ続けても…ファオンを無事尾根に戻そう…。

そんな…風に。

暫く岩の上を歩く。
セルティスも多数の傷から血を流し…ファオンは背から血を流し続けて、時折気絶しそうになり…。

尾根までの距離は、途方も無く遠く感じた。

その時。
シーリーンが姿を見せた時…。

真っ暗闇に灯った、灯りのように感じた…。

その灯りを…愛しくも…憎くも、感じた…。

やっぱりこいつに…託すのか。

溜息が洩れた。

シーリーンがファオンを抱き上げ…リチャードがセルティスを支える。

歩きながら…胸から流れ続ける血がそのまま…命が失われていく感覚に感じ…顔が下がる。

“間に、合うか…?”

やがて雑兵アルナに腕を支えられ…途切れず襲う激痛が、少し和らぎ希望が見えかけた時…。

再び《化け物》キーナンの襲撃。

もう…完全に覚悟を決めた。
《勇敢なる者》レグウルナスとして最後の…誇りに思える戦い様をしてこの世を去るだけだ。


「…何をしてる」

アリオンは自分の上に乗って抱きつく、シーリーンに呻く。
シーリーンはアリオンを抱きしめ…アリオンの右肩に、顔を埋めてた。


ファオンは今度、シーリーンとアリオンのいるテントを、またこっそり覗いたけど、シーリーンが上からアリオンに抱きついていて、ぎょっ!とした。

「(え…えっ?!…二人…って、そうなの?!)」

けれどシーリーンはアリオンに抱き付き、じっ…としていて…ファオンはもう、その先が怖くて見られなくて、テントの布を下げて、アランのテントへと向かった。


シーリーンはアリオンの肩に顔を埋めたまま抱き付き、囁く。

「…死んでないか、確かめてる」
「…他の確かめ方は、無いのか?
第一俺の致命傷は右胸だ。
乗られると、まだ痛む」

「…聞いた。
肋骨が折れてたそうだな?」

「…そうか…折れた骨が傷を抉ったから…歩く度息が止まりそうなほど痛く…やたら出血したんだな…。
って、退けよ」

「…考えてた。
お前を殴ろうかと」
「…で、どうして抱きついてる」
「…どうしてかな…。
生きてる。
と思って、ふと見たら…なんか、息してない気がして。
最初顔をじっ。と見てたけど…。

抱きついて体温確かめた方が早いか。
と気づいて」
「気づくな。
治ったら殴らせてやるから、退け」

シーリーンが、やっと肩に埋めた顔を上げる。

アリオンは気づいて、眉寄せて尋ねる。
「……………なんで、殴る?」

「…………………………ええと……………」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ペット彼氏のエチエチ調教劇場🖤

天災
BL
 とにかくエロいです。

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

ドSな義兄ちゃんは、ドMな僕を調教する

天災
BL
 ドSな義兄ちゃんは僕を調教する。

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

鬼騎士団長のお仕置き

天災
BL
 鬼騎士団長のえっちなお仕置きの話です。

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

処理中です...