112 / 286
キーナンの森
112 負傷者
しおりを挟む
ファーレーンが木の上から道へ、ざっっ!と飛び降りる。
直ぐレオが背後に飛び来ると、剣を抜いて真横に並び、飛び出す《化け物》に身構える。
だが《化け物》は襲って来ず、道の真ん中でレドナンドらが斬った《化け物》を喰ってる、《化け物》らへと襲いかかって行く。
ファーレーンが走りながら振り向く。
「…あんたより大きい“肉”だからかな」
レオが頷こうとする。
が走る腕を後ろに引いた時。
背後に気配。
「斬れ!」
アリオンの声と、ほぼ同時。
レオは咄嗟、剣を後ろに振る。
背後から襲う《化け物》の牙が腕を掠るが、レオは背の間近に飛びかかる《化け物》を、剣で斬りつけ吹っ飛ばした。
背後、木立より素早い一体が飛び来て、レオに斬られ吹き飛んだ《化け物》に、宙を飛んで喰らい付く。
がぶっ!
「ぎぃえぇぇぇぇっ!」
セルティスが木の上からファーレーンに手を差し出し、ファルコンはレオに差し出す。
二人は同時に飛び上がり、がしっ!と音立てて差し出された腕を掴んだ。
デュランが、ファーレーンの腕を横から掴み、引き上げて木に登るのを手伝う。
ファーレーンが枝の上に足を付く。
屈む姿勢から、睫を上げて横のデュランに振り向き、礼を言う。
「ありがとう」
湖水の青の、長い睫けぶる瞳。
整いきった、色白の面(おもて)。
顔を縁取る、白っぽい金の髪が、はらりと頬へ落ちる。
デュランはその美麗なファーレーンの微笑に、一気に頬染めた。
リチャードも、横からレオの胸に腕を回し、脇に肩を入れて、上へと抱え上げる。
レオはリチャードに抱きつく格好で、足を枝に着き、伸び上がって掴まる。
が、リチャードが抱き寄せたレオの重みで後ろに倒れそうになるのを、ファルコンが腕を伸ばしリチャードの背を支え、木から落下するのを防いだ。
レオが足を枝の横にずらし、片腕ファルコンに掴まれリチャードから横にずれて行き、リチャードは落ちずに済んで、ほっ。と吐息吐く。
レオと一瞬、抱き合ったその時…。
リチャードは体に、レオの気合い満ちる“闘牙”が触れて残った気がして、身が震った。
「(凄い奴…って“気合い”がこんなにも違うのか…)」
振り向くが、レオはもう枝を伝って、レドナンドの元へと進み行く。
アランとアリオンが突っ込んで来る。
両横の広い道に《化け物》らは屈み込んで、斬られた《化け物》の肉を食いちぎって食べていた。
アランもアリオンも横目でチラと見ながら、セルティスの腕とファルコンの腕を、二人同時に飛び上がって掴む。
ファルコンはアリオンを引き上げ、セルティスはアランを引き上げる。
直ぐ、二人の背後からシーリーンとファオンが駆けて来る。
「ファオン!」
リチャードが緊迫感に満ちて叫ぶ。
ファオンは背後の気配に、振り向き様剣を抜こうとして鞘に手を掛ける。
が、シーリーンが横にすっ飛んで肩を思い切りぶつけ、ファオンの背に飛びかかる《化け物》を横へと吹っ飛ばす。
「行け!」
シーリーンに言われ、ファオンは頷き前を見る。
枝から身を乗り出し、低く手を差し出す、ファルコンの手に飛び込んで、掴む。
が登った筈の、アリオンが一気に木から飛び降りる。
デュランの、眉が寄る。
ファーレーンも枝の上で背後に振り向き、セルティスは枝を掴んだまま、悲しげな表情をした。
シーリーンが、振り向く。
背後、《化け物》振り下ろすかぎ爪が、背に届く。
アリオンがかぎ爪を振り回した《化け物》の真横に飛び込み、一気に剣を突き刺す。
ざしっっっ!
シーリーンは咄嗟屈む。
が、かぎ爪は背を抉る。
アリオンが、突き刺した剣を引き抜き、背に傷を負って前に屈むシーリーンの、腕に腕を絡ませ強引に引いて、走り出す。
セルティスとファーレーンが、咄嗟、腕を差し出す。
デュランが叫ぶ。
「たった今後ろから来た《化け物》は、斬られた奴に齧り付いたぞ!」
アランが、言葉の終わり際に怒鳴る。
「背は大丈夫!」
アリオンは頷き、シーリーンの腕を引き上げる。
シーリーンは顔を上げ、上に振り向き、差し出すセルティスの腕を掴む。
ファーレーンは飛び上がり上に差し出すアリオンの腕を、宙で掴み、引き上げる。
デュランはアリオンが上に高く放る、たった今斬った《化け物》の血の付いた剣の柄を、必死で空中で握り込み、受け取った。
アリオンは剣を手放した手で枝を掴み、ファーレーンに腕を引かれて足を枝に着き、枝の上に登り着く。
直ぐ、横のシーリーンを見る。
シーリーンは片腕回してセルティスの肩に抱き付き、セルティスはシーリーンの腰に腕を回し、力尽くで引き上げていた。
ファオンはファルコンに軽々と引き上げられ、枝の上に着地して叫ぶ。
「シーリーン!」
セルティスが、木の幹に背を倒し、抱き上げたシーリーンの腰を掴んだまま胸に抱き寄せ、荒い吐息を吐く。
ファオンは幾ら太い枝とはいえ、たくさん乗ってるのにその間をすり抜け、傷ついた背を晒しセルティスにぐったりと屈み抱きつく、シーリーンの元へ走る。
シーリーンの、傷付いた背に、屈んで抱きつく。
「!」
皆がそれを見て、目を見開く。
「…お願い“力”を…!
“力”を…!」
ファオンは必死に願うが、力が抜けたように…白の魔法使いの“力”は満ちて来ない。
アランが、怒鳴る。
「ここでは無理だ!尾根じゃないと!」
ファオンが顔を、上げる。
涙が頬を、ぽろぽろと伝い、その場の男らは黙り込む。
が、シーリーンが微かに顔を上げて囁く。
「…掠った…だけだ。
深くない」
ファオンは身を離す。
胸の衣服に血が移る。
斜めに切り裂かれた傷は…抉られ血が伝い流れ、ファオンは俯いて、泣く。
「僕…僕の…せい………」
ファーレーンが背後から、ファオンの背に拳を押しつける。
ファオンが気づいて振り向くと、ファーレーンの手には、薬草を染みこませた布。
「…泣いてないで、止血してやれ」
ファオンは長兄を見上げ、頷く。
ファーレーンから受け取った布を、傷付いたシーリーンの背に当てる。
「!」
シーリーンは眉を寄せ、一瞬襲った痛みに耐えた。
ファオンは布を張り…そしてまたファーレーンから受け取った、布を巻く。
セルティスが端を受け取りシーリーンの胸に回し、端をファオンに返すと、ファオンは脇で布を縛った。
アリオンが後ろから、掠れた声をかける。
「…歩けるか?」
シーリーンは後ろに振り向く。
泣き濡れた青い瞳の、可愛らしく綺麗なファオンの、その向こう。
枝の上に立つ、黒髪、青い瞳のアリオン。
「…頼りになるな…。
お前がいなかったら…」
シーリーンは俯く。
「背骨まで、やられていた。
お陰で動ける」
皆がアリオンを見るが、アリオンは表情を変えず、頷いた。
直ぐレオが背後に飛び来ると、剣を抜いて真横に並び、飛び出す《化け物》に身構える。
だが《化け物》は襲って来ず、道の真ん中でレドナンドらが斬った《化け物》を喰ってる、《化け物》らへと襲いかかって行く。
ファーレーンが走りながら振り向く。
「…あんたより大きい“肉”だからかな」
レオが頷こうとする。
が走る腕を後ろに引いた時。
背後に気配。
「斬れ!」
アリオンの声と、ほぼ同時。
レオは咄嗟、剣を後ろに振る。
背後から襲う《化け物》の牙が腕を掠るが、レオは背の間近に飛びかかる《化け物》を、剣で斬りつけ吹っ飛ばした。
背後、木立より素早い一体が飛び来て、レオに斬られ吹き飛んだ《化け物》に、宙を飛んで喰らい付く。
がぶっ!
「ぎぃえぇぇぇぇっ!」
セルティスが木の上からファーレーンに手を差し出し、ファルコンはレオに差し出す。
二人は同時に飛び上がり、がしっ!と音立てて差し出された腕を掴んだ。
デュランが、ファーレーンの腕を横から掴み、引き上げて木に登るのを手伝う。
ファーレーンが枝の上に足を付く。
屈む姿勢から、睫を上げて横のデュランに振り向き、礼を言う。
「ありがとう」
湖水の青の、長い睫けぶる瞳。
整いきった、色白の面(おもて)。
顔を縁取る、白っぽい金の髪が、はらりと頬へ落ちる。
デュランはその美麗なファーレーンの微笑に、一気に頬染めた。
リチャードも、横からレオの胸に腕を回し、脇に肩を入れて、上へと抱え上げる。
レオはリチャードに抱きつく格好で、足を枝に着き、伸び上がって掴まる。
が、リチャードが抱き寄せたレオの重みで後ろに倒れそうになるのを、ファルコンが腕を伸ばしリチャードの背を支え、木から落下するのを防いだ。
レオが足を枝の横にずらし、片腕ファルコンに掴まれリチャードから横にずれて行き、リチャードは落ちずに済んで、ほっ。と吐息吐く。
レオと一瞬、抱き合ったその時…。
リチャードは体に、レオの気合い満ちる“闘牙”が触れて残った気がして、身が震った。
「(凄い奴…って“気合い”がこんなにも違うのか…)」
振り向くが、レオはもう枝を伝って、レドナンドの元へと進み行く。
アランとアリオンが突っ込んで来る。
両横の広い道に《化け物》らは屈み込んで、斬られた《化け物》の肉を食いちぎって食べていた。
アランもアリオンも横目でチラと見ながら、セルティスの腕とファルコンの腕を、二人同時に飛び上がって掴む。
ファルコンはアリオンを引き上げ、セルティスはアランを引き上げる。
直ぐ、二人の背後からシーリーンとファオンが駆けて来る。
「ファオン!」
リチャードが緊迫感に満ちて叫ぶ。
ファオンは背後の気配に、振り向き様剣を抜こうとして鞘に手を掛ける。
が、シーリーンが横にすっ飛んで肩を思い切りぶつけ、ファオンの背に飛びかかる《化け物》を横へと吹っ飛ばす。
「行け!」
シーリーンに言われ、ファオンは頷き前を見る。
枝から身を乗り出し、低く手を差し出す、ファルコンの手に飛び込んで、掴む。
が登った筈の、アリオンが一気に木から飛び降りる。
デュランの、眉が寄る。
ファーレーンも枝の上で背後に振り向き、セルティスは枝を掴んだまま、悲しげな表情をした。
シーリーンが、振り向く。
背後、《化け物》振り下ろすかぎ爪が、背に届く。
アリオンがかぎ爪を振り回した《化け物》の真横に飛び込み、一気に剣を突き刺す。
ざしっっっ!
シーリーンは咄嗟屈む。
が、かぎ爪は背を抉る。
アリオンが、突き刺した剣を引き抜き、背に傷を負って前に屈むシーリーンの、腕に腕を絡ませ強引に引いて、走り出す。
セルティスとファーレーンが、咄嗟、腕を差し出す。
デュランが叫ぶ。
「たった今後ろから来た《化け物》は、斬られた奴に齧り付いたぞ!」
アランが、言葉の終わり際に怒鳴る。
「背は大丈夫!」
アリオンは頷き、シーリーンの腕を引き上げる。
シーリーンは顔を上げ、上に振り向き、差し出すセルティスの腕を掴む。
ファーレーンは飛び上がり上に差し出すアリオンの腕を、宙で掴み、引き上げる。
デュランはアリオンが上に高く放る、たった今斬った《化け物》の血の付いた剣の柄を、必死で空中で握り込み、受け取った。
アリオンは剣を手放した手で枝を掴み、ファーレーンに腕を引かれて足を枝に着き、枝の上に登り着く。
直ぐ、横のシーリーンを見る。
シーリーンは片腕回してセルティスの肩に抱き付き、セルティスはシーリーンの腰に腕を回し、力尽くで引き上げていた。
ファオンはファルコンに軽々と引き上げられ、枝の上に着地して叫ぶ。
「シーリーン!」
セルティスが、木の幹に背を倒し、抱き上げたシーリーンの腰を掴んだまま胸に抱き寄せ、荒い吐息を吐く。
ファオンは幾ら太い枝とはいえ、たくさん乗ってるのにその間をすり抜け、傷ついた背を晒しセルティスにぐったりと屈み抱きつく、シーリーンの元へ走る。
シーリーンの、傷付いた背に、屈んで抱きつく。
「!」
皆がそれを見て、目を見開く。
「…お願い“力”を…!
“力”を…!」
ファオンは必死に願うが、力が抜けたように…白の魔法使いの“力”は満ちて来ない。
アランが、怒鳴る。
「ここでは無理だ!尾根じゃないと!」
ファオンが顔を、上げる。
涙が頬を、ぽろぽろと伝い、その場の男らは黙り込む。
が、シーリーンが微かに顔を上げて囁く。
「…掠った…だけだ。
深くない」
ファオンは身を離す。
胸の衣服に血が移る。
斜めに切り裂かれた傷は…抉られ血が伝い流れ、ファオンは俯いて、泣く。
「僕…僕の…せい………」
ファーレーンが背後から、ファオンの背に拳を押しつける。
ファオンが気づいて振り向くと、ファーレーンの手には、薬草を染みこませた布。
「…泣いてないで、止血してやれ」
ファオンは長兄を見上げ、頷く。
ファーレーンから受け取った布を、傷付いたシーリーンの背に当てる。
「!」
シーリーンは眉を寄せ、一瞬襲った痛みに耐えた。
ファオンは布を張り…そしてまたファーレーンから受け取った、布を巻く。
セルティスが端を受け取りシーリーンの胸に回し、端をファオンに返すと、ファオンは脇で布を縛った。
アリオンが後ろから、掠れた声をかける。
「…歩けるか?」
シーリーンは後ろに振り向く。
泣き濡れた青い瞳の、可愛らしく綺麗なファオンの、その向こう。
枝の上に立つ、黒髪、青い瞳のアリオン。
「…頼りになるな…。
お前がいなかったら…」
シーリーンは俯く。
「背骨まで、やられていた。
お陰で動ける」
皆がアリオンを見るが、アリオンは表情を変えず、頷いた。
0
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる