アグナータの命運

あーす。

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キーナンの森

111 森の中の襲撃 3

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 レドナンドらが、群れが通る予定の広い道の手前で待機していた。

が、暫く後
「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

《化け物》キーナンらの声が響き渡り、そして…。

がささささっ!

ばっ!と木陰から飛び出す《化け物》キーナン

ドロイドが濃い栗毛を散らし、一気に剣を振り下ろして斬り殺す。

ざっっっ!
どんっ!

「糞!」
アンドレアが一声怒鳴って剣を抜く。
背を向けるドロイドの背に、飛びかかろうとする《化け物》キーナン

ざっっっ!

アンドレアがドロイドの背に飛び込み、一気に横に剣を振り切る。

「ぎぇっ!」

次に森から来る黒い影に、皆が腰を低く剣を構えた。

が、飛び出す《化け物》キーナンは、アンドレアが斬った《化け物》キーナンへと飛びかかる。

「ぐぇっ!ぎぇっ!」

傷を負った瀕死の《化け物》キーナンは、《化け物》キーナンに囓り付かれて叫ぶ。


レドナンドも横から飛び出す《化け物》キーナンを斬り殺す。

ざっっっ!

がやはり、次に出て来た《化け物》キーナンは、レドナンドが斬った《化け物》キーナンに、喰らい付いて行く。

レドナンドはレオらが消えた、木々の向こうを見上げた。

「…杖付きを、殺ったんだな!」



レオは木から飛び降りる。

横に、気配。

てっきりアランだと思い振り向くが、黒い影。

「(《化け物》キーナンか…!)」

レオが一瞬、歩を止める。

横の木陰から、《化け物》キーナンが飛びかかって来る。

ざんっ!

レオが剣を振り切る。

が、背後にも気配。

振り向きながら屈むと、《化け物》キーナンはレオを飛び越え、レオが斬った《化け物》キーナンにむしゃぶりつく。

「ぎぇっ!ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

傷付いた《化け物》キーナンは、齧り付かれて悲鳴を上げる。

ずさささっ!

レオが赤い髪を振って振り向く。

暗い木立の木々の間。
光る赤い眼。

ざざざざざっ!

斜め後ろにも!

「レオ!」

真上から、アランの叫び。

枝を持ち下げてレオの頭上に下ろす。

レオは一気に飛び上がり枝を掴む。

ずん!
枝はレオの重みで、一瞬沈む。

アランは歯を食い縛り、片腕を木に巻き付け、じりじりと引き上げる。

二体の《化け物》キーナンは飛び上がるレオのいた場所へと着地した途端、横に飛び来た相手を見、一気に相手にかぎ爪振り回す。

二匹は互いに相手に、襲いかかり喰らい付く。


アランは歯を、食い縛る。

「…これ以上、引き上げられない!」
「登る!」
「…たの…む!」

アランは片腕を深く木に巻き付けながら、枝を少しでも引き上げようと、枝を握り込んで踏ん張る。

が、レオは枝の上を掴み、片手離しその手で更に枝の上。
ついには枝を掴むアランの腕を掴んで、登って来る。

レオがアランの肩に掴まり、足をアランが乗る枝の上にかけ、腰を引き上げて手で枝を掴んで登り切った時。

アランは枝を手放し、はぁはぁ…。と荒い息吐いて肩を下げ、枝握る手を開く。

どさっ!

枝は二匹が互いを喰い合う《化け物》キーナンの横に落ちる。
《化け物》キーナンは一瞬振り向き、が直ぐ互いを喰う為、相手に襲いかかり始める。


「…助かった…」

レオの声を聞いたものの、アランは息切れで枝の上にへたり込んで、頷く。

レオは下を通り過ぎる《化け物》キーナンが、自分の斬った《化け物》キーナンを喰っている真っ最中の《化け物》キーナンに、襲いかかるのを見る。

「…登って来ないな」

そう言うと、アランはまだ息を切らし、頷く。

「…あ…んただっ…て腹ペコだっ…たら、木に…なんか登らないで、手近な所の喰いモン探すだろ?」

レオはとうとう、アランの背後から屈み、伺う。

「大丈夫か?」
「あんたは?」
「?俺は無傷だ」

アランは背後のレオを、見上げる。

「ファーレーン、それに俺。
ファオンまで捕まってたのに、あんた一人で支えてた」

レオは吐息吐く。
「さっきの事か。
肩は外れてない。大丈夫だ」

「…だからあんた一人くらいなら俺でも。
…と思ったけど、すんごく。
…すんごく、重かった」

「枝も結構重い」

アランが気づいて、顔上げる。

「…枝の重さ、忘れてた」

レオが、肩を竦めた。

膝を上げ、木々の3m程向こう。

開けた場所にいる筈の、仲間に向かって叫ぶ。

「木に登れ!
奴ら登って来ない!
木を伝って森を出ろ!」


「!」

レドナンドがレオの叫ぶ声を聞き、皆に怒鳴る。

「聞こえたな!
木に登れ!」

リチャード、セルティス、デュランが、近くの木に一気に登って行く。

レドナンド、東尾根の三人、雑兵アルナらも。
《化け物》キーナンが現れない側に並ぶ、木に登る。

キースは森から飛び出し、背後に振り向く。
「(…先行った筈のレオの叫びが、なんで背後からする?!)」

が、皆が登る木に、駆け寄ってよじ登った。


「ファルコン!」

セルティスが怒鳴る。

突っ立つファルコンが振り向く。

セルティスが手を伸ばし、また怒鳴る。

「登れ!」

デュランが横から手を差し出し、怒鳴る。

「早く!」

リチャードが見かねて叫ぶ。

「一人、喰われる気か?!」

とうとうファルコンは仕方なさげに構えた剣を鞘に終うと、セルティスとデュランの差し出す手に、飛び上がって左右の手で同時に握り込む。

セルティスとデュランは手を掴むファルコンの重みに一瞬耐え、次に目を見交わし合い、一気にファルコンを、枝の上へと引き上げた。

ファルコンは両足で膝を曲げて着地し、不安定な枝の上で少し揺れ、バランス取った後、しっかりした枝に片足乗せて、屈み込み肩で息するセルティスとデュランに言った。

「…どうだ。重いだろう」

リチャードがそっぽ向いて、言った。

「…自慢かよ」


ファーレーンが、枝を伝い走り、一気に駆け始める。

アリオンがファオンに振り向く。
ファオンは頷き、シーリーンと共に先を走るアリオンに続く。

密集した木々の、交錯した枝の上を飛び、走って行くと、アランとレオの姿も見えた。

斜め横の枝を飛び走るファーレーンの姿を見、レオがアランに一声叫んで駆け出す。

「先に行く!」

アランは頷き、腰を上げ、続き来るアリオン。
そして少し後をやって来る、シーリーンとファオンを見つめる。

一気に腰を上げると、ファオンの横に並ぶ。

「“巣”の近くだと奴らキーナン、腹ペコで無い奴も喰い始めるな…」

ファオンは頷く。

「尾根の近くは、嫌いみたいだ。
ここだと安心するみたい…」

「…白の魔法使いの、散らばる見えない“力”が、怖いのかもな!」

ファオンは気づいて、周囲を見る。

木々は茶色。葉は緑。
森はちゃんと陽を受けて輝くのに…どこか…薄ら暗い、どす黒い…。

嫌な感じが、たまに襲う…。

…これが…黒の魔法使いの…“力”。
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