アグナータの命運

あーす。

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戦闘

102 桃の欠片

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 アランが、リチャードと雑兵アルナらを連れて戻って来た時、皆は戦った場所より少し上の坂の岩場で、休んでいた。

アランがレオが座る岩の横に来て、告げる。
「共喰いしてたぜ」

「どこの“巣”だ?」

レオの質問に、アランは肩を竦める。

「北寄りの、岩場を抜けた最下部の洞窟。
今日襲う予定の“巣”の、北西寄りだ」

「…一つ潰したと思ったが…。
違ったか」

アランの背後からやって来たリチャードが、文句を言う。

「点在する“巣”の一番遠い場所だ!
行きも帰りも、他の“巣”の《化け物》キーナンに襲われないか、ひやひやだったぜ!」

レオの側に座っていたセルティスが、顔を上げる。
「布は、被らなかったのか?」

アランが答える。
「被らずに済んだ」

二人の受け答えに、少し離れた岩に座る、ファオンが問う。
「布?」

アランが振り向き、答える。
「シャクランの花の香りを染みこませた布だ。
なぜか奴ら、シャクランの花の香りだと、肉の匂いを嗅ぎ分けられない」

セルティスも微笑む。
「布をすっぽり被ると…奴らからは喰う“肉”に見えなくなるらしくて…襲われない。
偵察する者らは、常備してる」

ファオンは気づく。
「…シリルローレルは、夏《化け物》キーナンの谷を歩く時、シャクランの木が生えてたら覚えていて…多くの《化け物》キーナンに出会うと、木に登って隠れた」

セルティスの横に座ってた、ファルコンが俯く。
「…木が花を付けるのは、6月から…遅くて10月までだからな…」

リチャードが睨む。
「革袋から布を出したって、暫くすれば香りも消える!
そんな頃《化け物》キーナンに取り囲まれると、逃げ場が無くなるんだぞ!」

セルティスとファルコンの向かいに座ってたキースが、くすり…と笑う。
「お前、偵察にほぼ出ないからな」

ファオンの横に座るアリオンが俯く。
「流石に繁殖中期だと、一つの“巣”は100超えの数だな…」

アリオンとは反対側のファオンの横に座る、シーリーンも頷く。
「幸いなのは“巣”毎の繁殖期が微妙にずれて、それぞれある“巣”の群れが、一気に襲ってこないことだ」

レオが顔を上げる。
「…が、どの“巣”が次に襲撃に来るか予想できない限り…出来るだけこっちから出向いて、“巣”を潰していくのが正解だ」

アランがレオを見る。
「…いい知らせだ。
あんたらが潰した“巣”の《化け物》キーナン
共喰いから生き残った奴らが、別の“巣”の《化け物》キーナンを襲い、喰ってたらしい…。

最も数が減ってたから、襲った《化け物》キーナンは襲われた“巣”の《化け物》キーナンらに、全て喰われたそうだが」

皆が一斉に溜息を吐く。

レオが皆を見て言う。
「…つまりどんどん“巣”を潰せば…杖付きの群れの《化け物》キーナンを襲う《化け物》キーナンも、それだけ増えるな」

アランが頷く。
「これから襲って来る、杖付きのいる“巣”の《化け物》キーナンも、数がかなり減る」


その時、テスがやって来て、レオに皿を差し出す。
「…桃を、人数分に切った物です」

レオは桃の欠片を、一つ取る。
そして皿を受け取り、セルティスへと皿を回す。

そしてテスを見て
「ご苦労」
と言い、テスは頷いて居留地に戻って行った。

皆、一つ取ると皿を次に回す。

レオは口に放り込みながら、皆に言う。
「…少しだが…白の魔法使いの“力”を貰え」

キースが、皆から離れた場所に座ってるデュランに振り向き、笑いながら怒鳴る。

「“リッツィアが俺に靡きますように”なんて、願うなよ!」

デュランが項垂れ、皆一斉に笑った。
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