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戦うレグウルナス
91 桃の宴
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「夕食の仕度が出来ました」
下働きの男にそう声かけられ、シーリーン、ファオン、そしてアリオンが振り向く。
シーリーンがファオンに、そっと囁く。
「…少しは、落ち着いたか?」
ファオンはシーリーンの問いに、頬染めて頷いた。
アリオンも横から尋ねる。
「…変な感覚は収まった?」
…それはまだ、二人のものが入ってるような感覚の事だと思い出して、ファオンはまた、赤く成って俯く。
「…もう…大丈夫」
その時、レオがリチャードに『男の魅力で堂々と勝負して振り向かせる事を放棄した』
と言う言葉が蘇る。
そして頭一つ半、自分より高い、シーリーンの綺麗な横顔を見上げ、次にアリオンの肩や胸元の逞しさに気づくと、黒髪を背に流した綺麗な顔がこちらに向けられて、どきっ!とする。
「(あれ…?つまり…シーリーンとアリオンは…男の魅力…で…勝負してる…???)」
まだ、二人を強く意識すると、途端…密着した二人の肌と熱さ…。
そして息使いを感じ、途端落ち着かない気分になって、狼狽える。
その時、下に降りてたアランとデュランが肩に大きな麻袋を担ぎ、戻って来る。
レオのテントから、ファルコンとセルティス。
キースとリチャードが出て来て…一番最後にレオが、肩迄ある赤い髪を振って、迫力ある姿を見せる。
レオは寄って来る伝令に顔を傾け、頷いていた。
キースの横にいるリチャードは、泣き腫らしたような瞳。
ファルコンがレオに尋ねてる。
「…で、来るって?」
レオが頷く。
そしてファルコンに素早く囁いた。
「…桃を食ったらお前達は早々出かけろ」
その時、東側の出入り口の岩から、東尾根の一団が姿を見せた。
「(ファーレーン兄様…!)」
レドナンドの背後から姿を見せる、美麗にして威圧ある立派な長兄の姿を見つけ、ファオンは兄をじっと見る。
レオが直ぐやって来て、東尾根の《勇敢なる者》らを出迎える。
けどファオンはアランが荷を下ろし、テントに向かう姿を見つけ、慌てて後を追う。
テントの中へ入ると、ランプの灯りが揺らめき、アランが振り向く。
「よぅ…」
「…少し…話していい?」
見つめるファオンの瞳が、昔北領地にいた時、たまに低年齢の集いに顔を出すと、一人ぽつん。と不安そうに佇んでいたファオンが、自分を見た途端嬉しそうに寄って来て…。
…その時を彷彿とさせ、アランは微笑む。
「ああ」
「さっきの…」
アランは気づき、吐息吐いて俯く。
「ああ…」
けれど外がどんどん賑やかになり、アランは立ってるファオンに言う。
「座れ。
直 南尾根の奴らも来る。
桃を取りに。時間があればここで食べていく。
がそれぞれ事情が違うからな」
「…桃?」
「お前とアントランが摘んだろう?
験を担ぎ、皆欲しがる。
だが東尾根は全員来てるから、ここで食べていくだろうな」
ファオンはアランに首振って見つめられ、慌てて毛皮の上に来て、アランの向かいに座る。
「…リチャードは、尾根に上がってきた頃から強気で。
だが《化け物》と戦う内、必死で強気を貫こうとする姿が悲壮で。
それでも決して弱音を吐かない姿勢を、レオは認めていた。
ただそういう奴は…自分の強気を貫こうと…必死になるあまり、無謀に突っ込んで行って…命を落とす者が多い。
レオは皆に、リチャードに気を配るよう言い渡したんだ。
リチャードは皆の手を振り払い、高慢でいた。
振り払い振り払い…けれど幾度も背を皆に助けられてから、態度が変わった」
ファオンはアランを見る。
「…助けられた者の背を、今度はリチャードが必死になって、護るようになる。
傷だらけでな」
アランはくすり。と笑う。
「皆に『無茶するな』だとか声をかけられるようになって…。
あいつは仲間として動く事をどんどん、受け入れていった。
だからお前が来る前、頼りに出来る《勇敢なる者》の一人として、皆が認める程になっていた。
けれどお前が来てからあいつ…ボロボロだ。
ファルコンもキースも、また変に思い詰めて一人で抱え込んでる。
と解ってたし、レオも。
だから…皆の前で、お前に対して思ってる事を言って決着を付けろと、レオが脅した」
アランがファオンを優しい瞳で見る。
「…本当なら、少しは好意を示し…お前の気持ちに近づき、そして察する。
もしくはどこかで、思い切る。
が、聞いてみると、焼け糞で本心から、かけ離れた事ばかりしてるから…。
思い切れないんだろうな。
嫌われようとして、けどいざお前に嫌われると…こたえてる。
辛いんだ。
本心は、好きになって欲しいから」
そう言って、肩を竦めてファオンを見る。
「そりゃ、苦しくて辛くて、当たり前だよな?
けど、自分からはプライドが高すぎて言えない。
真正面からぶつからないからこじれきって…自分でも収拾付けられなくてどうしようも無くなって。
それで…」
「…僕…本心言うのが…親切だったの?」
「ああ。
はっきり言ってやらないと。
あいつのものにはならないのに。
お前が《皆を繋ぐ者》だから…勘違いしてる。
体は役割で好きに出来ても、心はそうはいかないと」
「…リチャードは僕の、身体が欲しいんじゃ無くて?」
アランはくすり。と笑った。
「体だけとか言いながら、心が欲しいに決まってるのに、自分でもそれを認めないから余計に辛い」
「あの…僕が聞きたかったのは…アリオンとシーリーンなんだけど」
「ああ」
「二人はつまり…男の魅力で…勝負した?」
「そう」
「…勝負ってつまり…二人は…僕の事が、好き…って事?男として?」
「当然。
あの強烈な二人がお前に本気で、お前もあの二人だと特別に態度が違うだろう?
奴らがお前に本気じゃなけりゃ、リチャードもあれ程焼け糞にならない」
ファオンは顔を下げた。
「…ええと………。
昔は…僕の事が好きで…あんな事してたんだと何となく解ってきたけど…今…も?」
アランは大きな溜息を吐いた。
「そりゃ、告(こく)ったりしてお前が動揺したらマズいと、奴ら控えてるが、端からどう頑張って見てもあいつら、お前に本気で惚れてる」
ファオンが、アランを見る。
アランもじっと、ファオンを見た。
「……………ありがとう」
アランは反射的に、頷いた。
ファオンは立ち上がる。
その様子に、アランが尋ねる。
「…で?お前は大丈夫?」
「………ううん。
…つまり…どっちも僕が…好き?」
アランは頷く。
「………もしかしてもしかしたら…僕、どっちか選ばなくちゃいけなくなる?」
アランは呆けた。
「先の事なんて俺に解るか?
好き合ってる二人だって周囲の事情で巧く行かなくなることだって有るし。
ともかくそれは尾根を降りた時の事だ。
今は《化け物》叩き斬って、生き残る事が先決だ」
そう言われた時、ファオンは嬉しそうに、心から笑った。
「うん!」
軽やかにテントから出て行くファオンを見、アランは思った。
「(みんな御姫様扱いしてるけど…あいつも、男なんだよな…。
そりゃ、気分は複雑か。
《皆を繋ぐ者》に選出されても嬉しそうじゃ無いし。
…アントランなら、喜んだろうけど)」
溜息を吐き、アランはテントの布を払った。
ファオンはもう、長兄ファーレーンの元で、嬉しそうに話しかけていた。
周囲の…特に東尾根の奴らは、初めて見る“氷の男”の、弟を包み込むような優しげな表情をチラ見し、ほぼ全員が固まっていた。
「よぅ」
アントランが、寄って来る。
アランは東尾根の全員が夕食に混じる姿を、首振って見つめる。
「…東ってみんな、デカい男ばっかだよな」
アントランは仲間を見回す。
「まあ中には体デカいだけの頭空っぽの男もいるが…。
体は、イイよな」
「お前その言い方、なんか女目線でやらしいぞ?」
「けど実際、そうだろ?」
アランは皆逞しく、男の体としては筋肉で引き締まりきって、いい男揃いの東尾根の《勇敢なる者》らを見つめる。
「…ファーレーンだってかなり体格いい感じなのに…東の奴らの中にいると、華奢に見えかねない」
「…だから余計態度が“氷”なのかな」
「お前は平気なのにな」
「時々《皆を繋ぐ者》が羨ましくなる。
俺の従姉妹なんて、《皆を繋ぐ者》が男なんておかしい。
って俺が尾根降りる度に文句を俺に言う」
「………確かに《皆を繋ぐ者》が女だったら、喜ぶだろうな」
「だろ?」
二人は揃って、逞しくていい男だらけの、東尾根の《勇敢なる者》らを見た。
アランは溜息と共に顔を下げる。
「早く 南尾根の奴ら、来ないかな」
「安心するよな。
特に長のシェナン」
アランも頷いた。
その時、 南尾根の全員が出入り口の岩に揃って、姿を見せた。
アントランが呟いた。
「東はレドナンドを始め、正統派の《勇敢なる者》だと自称してるけど、南見ると確かに、そうかもな」
「南ってなんか、軽くてそれぞれが個性的で、全員癖者って感じだよな」
背の高さは皆、バラバラ。
寡黙な者がいれば、ひょうきん者もいる。
「北はなんか、気が剛胆な奴が多いよな。
キースなんか、一見軽そうで糞野郎に見えるのに。
いざとなると滅茶苦茶肝座ってて、その上気配り出来て優しい」
「…それでお前、キースに惚れたのか?」
アントランが頷く。
「シーリーンもスカしてる癖に、あれで肝座りまくってて優しいとこあるから、ぐっと来る」
「アリオンは?」
「あいつ…一度迫って以来、隙を見せない」
ぶっ………。
アランは吹き出す。
「…アリオンは学習する奴だから」
「二度と俺に迫られまいと?」
アランが頷く。
「で。
何て言って迫ったんだ?」
「“たまには《皆を繋ぐ者》じゃなく、俺を相手に変えてやらないか?”」
「あいつの返事は?」
「じっ。と見て。じっ。と見て。
じっ。と見て。
無言で背を向けてそのまま、消えた」
アランがとうとう、肩を揺らして笑い転げた。
その場に、キリアンがやって来る。
アントランが、迎え撃つように南尾根の自分より少し背の低い、白っぽい金髪と碧緑色のくっきりとした瞳の、美麗なツラのじゃじゃ馬を見返した。
下働きの男にそう声かけられ、シーリーン、ファオン、そしてアリオンが振り向く。
シーリーンがファオンに、そっと囁く。
「…少しは、落ち着いたか?」
ファオンはシーリーンの問いに、頬染めて頷いた。
アリオンも横から尋ねる。
「…変な感覚は収まった?」
…それはまだ、二人のものが入ってるような感覚の事だと思い出して、ファオンはまた、赤く成って俯く。
「…もう…大丈夫」
その時、レオがリチャードに『男の魅力で堂々と勝負して振り向かせる事を放棄した』
と言う言葉が蘇る。
そして頭一つ半、自分より高い、シーリーンの綺麗な横顔を見上げ、次にアリオンの肩や胸元の逞しさに気づくと、黒髪を背に流した綺麗な顔がこちらに向けられて、どきっ!とする。
「(あれ…?つまり…シーリーンとアリオンは…男の魅力…で…勝負してる…???)」
まだ、二人を強く意識すると、途端…密着した二人の肌と熱さ…。
そして息使いを感じ、途端落ち着かない気分になって、狼狽える。
その時、下に降りてたアランとデュランが肩に大きな麻袋を担ぎ、戻って来る。
レオのテントから、ファルコンとセルティス。
キースとリチャードが出て来て…一番最後にレオが、肩迄ある赤い髪を振って、迫力ある姿を見せる。
レオは寄って来る伝令に顔を傾け、頷いていた。
キースの横にいるリチャードは、泣き腫らしたような瞳。
ファルコンがレオに尋ねてる。
「…で、来るって?」
レオが頷く。
そしてファルコンに素早く囁いた。
「…桃を食ったらお前達は早々出かけろ」
その時、東側の出入り口の岩から、東尾根の一団が姿を見せた。
「(ファーレーン兄様…!)」
レドナンドの背後から姿を見せる、美麗にして威圧ある立派な長兄の姿を見つけ、ファオンは兄をじっと見る。
レオが直ぐやって来て、東尾根の《勇敢なる者》らを出迎える。
けどファオンはアランが荷を下ろし、テントに向かう姿を見つけ、慌てて後を追う。
テントの中へ入ると、ランプの灯りが揺らめき、アランが振り向く。
「よぅ…」
「…少し…話していい?」
見つめるファオンの瞳が、昔北領地にいた時、たまに低年齢の集いに顔を出すと、一人ぽつん。と不安そうに佇んでいたファオンが、自分を見た途端嬉しそうに寄って来て…。
…その時を彷彿とさせ、アランは微笑む。
「ああ」
「さっきの…」
アランは気づき、吐息吐いて俯く。
「ああ…」
けれど外がどんどん賑やかになり、アランは立ってるファオンに言う。
「座れ。
直 南尾根の奴らも来る。
桃を取りに。時間があればここで食べていく。
がそれぞれ事情が違うからな」
「…桃?」
「お前とアントランが摘んだろう?
験を担ぎ、皆欲しがる。
だが東尾根は全員来てるから、ここで食べていくだろうな」
ファオンはアランに首振って見つめられ、慌てて毛皮の上に来て、アランの向かいに座る。
「…リチャードは、尾根に上がってきた頃から強気で。
だが《化け物》と戦う内、必死で強気を貫こうとする姿が悲壮で。
それでも決して弱音を吐かない姿勢を、レオは認めていた。
ただそういう奴は…自分の強気を貫こうと…必死になるあまり、無謀に突っ込んで行って…命を落とす者が多い。
レオは皆に、リチャードに気を配るよう言い渡したんだ。
リチャードは皆の手を振り払い、高慢でいた。
振り払い振り払い…けれど幾度も背を皆に助けられてから、態度が変わった」
ファオンはアランを見る。
「…助けられた者の背を、今度はリチャードが必死になって、護るようになる。
傷だらけでな」
アランはくすり。と笑う。
「皆に『無茶するな』だとか声をかけられるようになって…。
あいつは仲間として動く事をどんどん、受け入れていった。
だからお前が来る前、頼りに出来る《勇敢なる者》の一人として、皆が認める程になっていた。
けれどお前が来てからあいつ…ボロボロだ。
ファルコンもキースも、また変に思い詰めて一人で抱え込んでる。
と解ってたし、レオも。
だから…皆の前で、お前に対して思ってる事を言って決着を付けろと、レオが脅した」
アランがファオンを優しい瞳で見る。
「…本当なら、少しは好意を示し…お前の気持ちに近づき、そして察する。
もしくはどこかで、思い切る。
が、聞いてみると、焼け糞で本心から、かけ離れた事ばかりしてるから…。
思い切れないんだろうな。
嫌われようとして、けどいざお前に嫌われると…こたえてる。
辛いんだ。
本心は、好きになって欲しいから」
そう言って、肩を竦めてファオンを見る。
「そりゃ、苦しくて辛くて、当たり前だよな?
けど、自分からはプライドが高すぎて言えない。
真正面からぶつからないからこじれきって…自分でも収拾付けられなくてどうしようも無くなって。
それで…」
「…僕…本心言うのが…親切だったの?」
「ああ。
はっきり言ってやらないと。
あいつのものにはならないのに。
お前が《皆を繋ぐ者》だから…勘違いしてる。
体は役割で好きに出来ても、心はそうはいかないと」
「…リチャードは僕の、身体が欲しいんじゃ無くて?」
アランはくすり。と笑った。
「体だけとか言いながら、心が欲しいに決まってるのに、自分でもそれを認めないから余計に辛い」
「あの…僕が聞きたかったのは…アリオンとシーリーンなんだけど」
「ああ」
「二人はつまり…男の魅力で…勝負した?」
「そう」
「…勝負ってつまり…二人は…僕の事が、好き…って事?男として?」
「当然。
あの強烈な二人がお前に本気で、お前もあの二人だと特別に態度が違うだろう?
奴らがお前に本気じゃなけりゃ、リチャードもあれ程焼け糞にならない」
ファオンは顔を下げた。
「…ええと………。
昔は…僕の事が好きで…あんな事してたんだと何となく解ってきたけど…今…も?」
アランは大きな溜息を吐いた。
「そりゃ、告(こく)ったりしてお前が動揺したらマズいと、奴ら控えてるが、端からどう頑張って見てもあいつら、お前に本気で惚れてる」
ファオンが、アランを見る。
アランもじっと、ファオンを見た。
「……………ありがとう」
アランは反射的に、頷いた。
ファオンは立ち上がる。
その様子に、アランが尋ねる。
「…で?お前は大丈夫?」
「………ううん。
…つまり…どっちも僕が…好き?」
アランは頷く。
「………もしかしてもしかしたら…僕、どっちか選ばなくちゃいけなくなる?」
アランは呆けた。
「先の事なんて俺に解るか?
好き合ってる二人だって周囲の事情で巧く行かなくなることだって有るし。
ともかくそれは尾根を降りた時の事だ。
今は《化け物》叩き斬って、生き残る事が先決だ」
そう言われた時、ファオンは嬉しそうに、心から笑った。
「うん!」
軽やかにテントから出て行くファオンを見、アランは思った。
「(みんな御姫様扱いしてるけど…あいつも、男なんだよな…。
そりゃ、気分は複雑か。
《皆を繋ぐ者》に選出されても嬉しそうじゃ無いし。
…アントランなら、喜んだろうけど)」
溜息を吐き、アランはテントの布を払った。
ファオンはもう、長兄ファーレーンの元で、嬉しそうに話しかけていた。
周囲の…特に東尾根の奴らは、初めて見る“氷の男”の、弟を包み込むような優しげな表情をチラ見し、ほぼ全員が固まっていた。
「よぅ」
アントランが、寄って来る。
アランは東尾根の全員が夕食に混じる姿を、首振って見つめる。
「…東ってみんな、デカい男ばっかだよな」
アントランは仲間を見回す。
「まあ中には体デカいだけの頭空っぽの男もいるが…。
体は、イイよな」
「お前その言い方、なんか女目線でやらしいぞ?」
「けど実際、そうだろ?」
アランは皆逞しく、男の体としては筋肉で引き締まりきって、いい男揃いの東尾根の《勇敢なる者》らを見つめる。
「…ファーレーンだってかなり体格いい感じなのに…東の奴らの中にいると、華奢に見えかねない」
「…だから余計態度が“氷”なのかな」
「お前は平気なのにな」
「時々《皆を繋ぐ者》が羨ましくなる。
俺の従姉妹なんて、《皆を繋ぐ者》が男なんておかしい。
って俺が尾根降りる度に文句を俺に言う」
「………確かに《皆を繋ぐ者》が女だったら、喜ぶだろうな」
「だろ?」
二人は揃って、逞しくていい男だらけの、東尾根の《勇敢なる者》らを見た。
アランは溜息と共に顔を下げる。
「早く 南尾根の奴ら、来ないかな」
「安心するよな。
特に長のシェナン」
アランも頷いた。
その時、 南尾根の全員が出入り口の岩に揃って、姿を見せた。
アントランが呟いた。
「東はレドナンドを始め、正統派の《勇敢なる者》だと自称してるけど、南見ると確かに、そうかもな」
「南ってなんか、軽くてそれぞれが個性的で、全員癖者って感じだよな」
背の高さは皆、バラバラ。
寡黙な者がいれば、ひょうきん者もいる。
「北はなんか、気が剛胆な奴が多いよな。
キースなんか、一見軽そうで糞野郎に見えるのに。
いざとなると滅茶苦茶肝座ってて、その上気配り出来て優しい」
「…それでお前、キースに惚れたのか?」
アントランが頷く。
「シーリーンもスカしてる癖に、あれで肝座りまくってて優しいとこあるから、ぐっと来る」
「アリオンは?」
「あいつ…一度迫って以来、隙を見せない」
ぶっ………。
アランは吹き出す。
「…アリオンは学習する奴だから」
「二度と俺に迫られまいと?」
アランが頷く。
「で。
何て言って迫ったんだ?」
「“たまには《皆を繋ぐ者》じゃなく、俺を相手に変えてやらないか?”」
「あいつの返事は?」
「じっ。と見て。じっ。と見て。
じっ。と見て。
無言で背を向けてそのまま、消えた」
アランがとうとう、肩を揺らして笑い転げた。
その場に、キリアンがやって来る。
アントランが、迎え撃つように南尾根の自分より少し背の低い、白っぽい金髪と碧緑色のくっきりとした瞳の、美麗なツラのじゃじゃ馬を見返した。
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