アグナータの命運

あーす。

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二つを兼ねる者 セグナ・アグナータ

88 ファオンの反応とリチャードの告白

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 ファルコン、アラン、キースがレオを見る。

レオは三人の無言の圧力に、思わずセルティスに視線を向けた。

せっかく俯き、シカトしてたセルティスは、意見を求められるようにレオに真っ直ぐ見つめられ、一瞬慌て、そして問うた。

「…リチャードに告白させるのか?!」

ファルコンが呻く。
「…どうせ、やれと言ってもきかないだろうから…」

レオも仕方なしに頷く。
「折角使えるようになって期待してた矢先、ファオンが来てからリチャードは注意力散漫の上の空…」

アランも言った。
「…不安定すぎて皆に迷惑かけてるんだから、この場で監視付きで告白させないとな」

キースが頷き、レオも同意し、シーリーンもアリオンまでもが頷く。

デュランだけは怖くて、顔を上げなかったし、セルティスも途惑いまくる。

「…普通告白って、凄く個人的な事だよな?」

が、言ったセルティスが顔を上げると、皆が
『リチャードを庇う気か?!』と一斉に睨むので、とうとうセルティスは口を閉じた。

レオがアランに問う。
「…さっきテスに伝言したか?」

アランは頷く。
「…もう、湯から上がってるはずだ」

「休ませてやりたいが、連れてきてくれ」

ばんっ!

リチャードがファオンを連れて来ると察し、座した敷物から一気に腰を上げて立ち上がる。

「………本気………で?!」

セルティスだけが俯き、デュランはこれ以上、顔は女顔なのに性格が高飛車なリチャードの、恨みを買うまいと顔を深く下げて口を閉じる。

アランは頷くと、テントを出て行き、リチャードは立ったまま、睨み付ける《勇敢なる者》レグウルナスらに足止めされたみたいに、その場で固まった。



暫くしてアランが布を払って背後に振り向く。

ファオンは《皆を繋ぐ者》アグナータの衣服では無く、《勇敢なる者》レグウルナスの薄衣と腰布を付けて入って来る。

が、唇は真っ赤に染まり、あまりにも艶が増して色っぽく、たいそう可憐に見えた。

他の者は、見てはいけない者を見たように、顔を下げる。

ファオンは入って来て、入り口近くに並んで座る、シーリーンとアリオンを見た途端、真っ赤に頬を染める。

レオはその反応に眉間を寄せ、キースとセルティスは目を見開く。

ファルコンが憮然として、シーリーンとアリオンに言った。
「お前ら一体、どれだけすけべなことをした?!」

が、アランがファオンをテントの中に入れた後(のち)、入り口の布を落とそうとアリオンとシーリーンに振り向いた時、二人はファオンを見つめながら、目を見開いていた。

ファオンはアリオンを見、真っ赤になって俯き、次に顔を上げてシーリーンを見た時…やっぱり真っ赤になって俯く。

男達はファオンの頬が、あんまり紅くて、揃ってファオンを凝視した。

誰も言わないので仕方無く、レオが問う。

「…どうした?ファオン。
二人に何をされた?」

ファオンは真っ赤なまま俯くと、もぞ…と身を捩る。

その様子が、あんまり可憐で色っぽくて、男達までもが全員、もぞ…と身を捩るほど。

「…言えないような事か…?!」

レオの(あえて)厳しい声に、ファオンは蚊の泣くような声で呟く。

「…あの…さっき…二人と………して………。
顔を見るとまだ…………入ってる…みたいな気になって…………」

「普通に挿入して、あれだけ赤く成るのか?」

アランはアリオンとシーリーンの斜め前に座りながら、二人に問う。

シーリーンが、アリオンを見たが、アリオンもシーリーンを見た。

キースが囁く。
「回数が、多かったからか?」

ファオンは首を横に振る。

セルティスが呆れる。
「よっぽど男根で主張したのか?」

やっぱり、アリオンはシーリーンを見、シーリーンもアリオンを見た。

シーリーンが囁く。
「特に…特殊な突き方をしたとかは…」
アリオンも頷く。
「無いよな」

シーリーンがファオンを見上げる。
「大体同時に挿入して、どっちがどっちのとかって、区別つくのか?」

皆がぎょっ!として、シーリーンを見た。

ファルコンがぎろり…。とシーリーンを睨む。
「二本、同時に刺したのか?!」

アランまで尋ねる。
「…痛くない…?」

ファオンは真っ赤で俯ききっていたけれど、シーリーンに顔を向ける。

「どっちかとか、解るに決まってる!
口でちゃんと違いは言えないけど!
アリオンのとシーリーンのとは、違うから!」

キースが囁く。
「…普段意識してる二人に挿入(い)れられたから、余計に意識してるのか?」

ファオンは俯くと、小さな小さな声で呟く。
「まだ…挿入(はい)ってるみたいに感じる…」

「余程、強烈だったんだな?」
アランに問われ、ファオンはまた、真っ赤になって俯く。

レオが吐息混じりに言った。

「…つまり入れて無いのに、入ってるように感じるから、恥ずかしいのか?」
ファオンは俯いたまま、頷く。

「…いいから、座れ」

レオに言われ、ファオンはシーリーンとアリオンの後ろに座りかけ、振り向く二人を見て、また真っ赤に成って、慌ててアランの横に駆け込む。

アリオンとシーリーンのいる、反対側へと駆け込むと、アランの横でほっとする。

皆が次に、突っ立つリチャードの立場の無さに、同情を寄せる視線を送った。

シーリーンが俯いて怒鳴る。
「とっとと胸の内を全部、吐き出せ!
素直に言えないから、あんな方法使うんだろう?!」

キースが尋ねる。
「あんな方法?!」

アリオンが顔を下げたまま、無表情で言った。
「三日間拉致監禁し、その間服も着せず縛り上げて嬲った」

その場にいる全員が、絶句する。

デュランがついうっかり、口を滑らす。

「…それで好かれようって、どだい無理ですよね?」

リチャードに振り向かれ、デュランは慌てて顔を下げた。

ファルコンは眉間を寄せる。
「それだけ奴隷扱いした相手が《皆を繋ぐ者》アグナータで、どうしてあれだけ動揺する?
…した事、後悔してるのか?!」

リチャードは俯くと、唇を噛む。

「…自分でもあまり、覚えてない…。
ただ…アリオンとシーリーンに抱かれてあんまり…色っぽくて可愛くて、俺のものに絶対ならないのが悔しくて…」

レオが言った。

「拉致監禁して、好き放題したのか?」

リチャードが頷く。

「…で、して楽しかったか?!」

リチャードは俯いたまま言った。

「あのまま…俺のものに出来てたら、俺は満足だった。
…間違った事したとは解ってたけど。

ただ…そこまでしても…俺の物にしたかった」

シーリーンが唸るように言う。
「さっさとその、理由を言え!」

「好きだったから!
めちゃめちゃ綺麗で可愛くて!
閉じ込めて俺だけのものにして、俺だけを見るようにしたかった!」

「…一人占めしたかったって事か?」
セルティスに聞かれ、リチャードは頷く。

キースが項垂れる。
「…で、ファオンの喜ぶようなこといっぱいして、気を引いたりはしなかったのか?」

リチャードは俯く。
「…初対面であいつ…俺に綺麗だと言って…俺は侮辱されたと思ってその後暫く虐めたし…。
足かけて転ばせたり、あいつの弁当のサンドイッチ、川に流したり…。

でも虐めて泣かれると…やたら可愛くなってきて………。
あいつの事で頭がいっぱいになった」

ファルコンが言う。
「綺麗な花を摘んで、手渡したりは?」

キースが呆れて言った。
「それ、女の子にする好意の示し方だろう?」
「ああ…そうか」

アランが俯く。
「けど普通、虐めた相手に女の子ですら、敵意しか抱かない。
つまりどう頑張っても好かれないし、シーリーンとアリオンと…してるから、お前縛り上げて嬲ってもいいと思ったんだな?」

「…だってアリオンとシーリーンとどうせ…やらしい事いっぱいしたんだろう?!」

レオがとうとう、俯く。

「それ、お前らが幾つの時の話だ?!」

シーリーンがアリオンに振り向く。
アリオンが顔を下げたまま、聞く。
「リチャード、お前が気づいた時って幾つの時だ?」

「…9才」

アランが呆れて、シーリーンとアリオンを見た。
「じゃお前ら、10才でファオン抱いてたのか?」

シーリーンが俯く。
「…アリオンが最初に抱いたのは8才の時だぜ?」

場は一斉に、鎮まり返った。

ファルコンだけが、口を開く。
「まあ俺もそのくらいの時から、どさくさに紛れて女の胸、揉んでたな」

場の緊張が、変な風にほぐれた。

リチャードだけが、まん丸に目を見開く。
「…そ、そ、そ、そんな頃から…してたのか?」

アリオンが溜息付く。
「…最初の頃はバレない用、用心してた。
俺もシーリーンも」

シーリーンも頷く。
「日が経つにつれ、こいつと取り合いがエスカレートして、だんだん大胆にはなってたから…リチャードに見られたりしたんだろうな」

デュランがつい、口を開いてしまう。

「…それだけ長く二人に抱かれてたら…リチャードもよっぽど長く監禁しないと、振り向かせるのは無理ですよね…」


レオはファオンを見る。
「お前それで…二人にされ放題だったのか?」

ファオンが顔を上げる。
「幼かったから…悪い事だなんて…知らなかったし…。
アリオンもシーリーンも人気者で、僕…虐められてたから…。
二人に相手して貰えるのが、嬉しくて…それで………」

アランが溜息吐く。
「…その人気者の二人が、隠してたけどファオンに惚れてると取り巻きの女の子達はオンナノのカンで見抜いてたからこそ、お前虐められてたって、知ってた?」

ファオンは首を横に振る。
「男の子らしく無くて、弱っちいから虐められると思ってた」

セルティスがアランに問う。
「…つまり、女達に嫉妬されて、虐められてたのか?」

アランが頷く。

場の男達が再び、黙り込んで溜息を吐いた。

が、シーリーンが顔を上げて、問い正す。
「…それでお前、ファオンの事振り向かせたくても普段虐めてたから怖がられて、俺やアリオンが手出ししてたから、いいや。とか思って、監禁して嬲ったのか?!」

「だってもう、汚れてた!」
アリオンが怒鳴り返す。
「俺は汚してない!
大事に愛しただけだ!」
シーリーンも怒鳴る。
「アリオンに先越されたから刺激的に虐めはしたが。
酷い事はしてない!
愛しただけだ!」

「順当だな」
キースが言うと、レオも頷く。
「嫌ならあんなに(ファオンは)頬は染めない」

ファオンはレオに言われて、真っ赤になって俯く。

「要するにリチャード。
お前は男として正々堂々と男の魅力で勝負して、ファオンを振り向かせる事を放棄したんだ。
だが言うのは自由だ。
資格が無いとは言わない。
はっきり告白しろ」

レオに言われて、リチャードは叫ぶ。
「返事は、解りきってるのに?!」

ファルコンも厳しく言う。
「きっぱり本人の口から聞け!」

アランもじろりと見た。
「ちゃんと面と向かって言われて玉砕すれば、しばらくの間立ち直れなくても、思い切れる!」

レオがとうとう、切り札を出す。
「ちゃんとケリつけないと、今後お前には、見回りしかさせない。
いつまでもぐちぐち悩まれては、ちゃんとした戦闘には使えないからな!」

リチャードは歯噛みすると、ファオンに向く。

「お前の事が本当は大好きで、好きすぎておかしくなるほどで、そんな自分が嫌で、何としてもお前を嫌いになってやるとあの手この手使いお前には最悪に嫌われてると言うのに、まだお前の事が好きで苦しい!
正直、自分の気持ちから逃げる為には、お前のきっつい兄貴のキリアンにだって乗り換える!
それくらい…お前の事が好きで、忘れられない!」

ファオンはそうリチャードに怒鳴られて…みんなに返答を待つように見つめられ、凄く…困った。

「ええと………」

アランが怒鳴る。
「はっきり言ってやれ!
その方が親切だ!」

「し…親切…?
嫌いで…大嫌いで、夢で見るとうなされるくらい嫌いだ。
って言うのが…親切なの?!」

キースが囁く。
「…本当に、そんな程度しか嫌いじゃ無いのか?」

ファオンは俯く。

「顔を見たり…手が触れたりすると暫く、体が固まる程嫌で…優しいとほっとするけど…またいつ意地悪されるかと思うと怖くて…絶対二人きりに、成りたくない。
でも…僕だって旅の間、いっぱい修行してきたし…その間剣の稽古でシリルローレルに
『気合いが足りない!』
って言われた時は、いつもリチャードを思い浮かべて、思い切り剣で斬りつけると、師に
『良し!』
って褒められたから…。
…役には、立ってると思う…」

皆が顔を下げきる。

リチャードも下げたまま、掠れた声で囁く。
「…俺が…優しくしたら、好きになれそうか?」
ファオンはリチャードを見ていった。
「ううん、それは絶対無い。
大嫌い。が嫌い。になるくらい」

とうとう…アランが吹き出す。

リチャードは笑う、アランを睨む気力も無い。

「…本当に、本当に俺の事、大嫌いか?!」
「うん」

「すこっしも、好きは無いのか?!」
「これっぽっちも」

アランはとうとう笑いこけ、レオもセルティスもキースも、リチャードが気の毒過ぎて、顔を下げた。

「…身から出た、サビだしな」

キースが言うと、セルティスもレオも、ほっとしたように同意した。

レオがきっぱり、言い渡す。
「過去にそんな事してるなら…リチャード、お前もしファオンとしたくなっても、監視付きで他の男が居る場じゃないと手を出すな」

ファルコンが、腕組みながら言った。
「しても手か…良くて口だ」

リチャードが、俯く。
そしてファオンを再び見る。

絶対に、自分のものにはならない…。

そう痛感した時、頬から涙が伝った。
次から次々と。

ファオンはぎょっ!としたし、デュランもだった。
が、キースが言った。

「いいから好きなだけ、泣かせてやれ」

レオもファルコンも、セルティスもが頷いた。


レオがそっと告げる。
「アラン、当分ファオンを泊めてやれ。
ファオン。着替えはアランの所に置け」

ファルコンが怒鳴る。
「お前、ファオン見てムラムラしないのか?!」

アランは困った様に言った。
「戦闘後で他の男と一緒なら、雰囲気に流されてその気にもなるが…。
二人きりだと、いつも…子犬のような瞳で兄貴扱いされて寄って来てた事思い出すから、勃たない」

レオはファオンに振り向くと
「夜はアランのテントで、ゆっくり休め」
と微笑む。

ファオンはこっくりと、頷いた。

「アラン、デュランを連れて外へ出ろ。
シーリーン、アリオン、ファオンを連れて、《勇敢なる者》レグウルナスらのすべき事を色々教えてやれ」

名を呼ばれた皆が、レオのテントを出る。

中に残る男達は…酒とコップを持ち出し、泣いているリチャードに差し出し、そして…付き合った。

リチャードはますます泣いて…。
キースが横で背に手を当て、レオが酒の入ったコップを差し出し、ファルコンが
「女の口説き方を教えてやるから」
と慰め、セルティスがそれを聞いて
「あんた自分から口説いたこと、無いじゃ無いか」
と言って笑っていた。



テントから出ると、ファオンがそっと言った。
「みんな…リチャードに付き添うの?」

アランがデュランに、来い。
と顎を、しゃくって言った。

《勇敢なる者》レグウルナスの、仲間だからな」

ファオンはそう言ってデュランを伴い、食料を取りに下へ下るアランの背を見送った。

陽は、暮れかけていた。

「…リチャードが自分の感情にケリを付ければ…あいつも落ち着いて、お前ともわだかまりが無くなる」
アリオンにそう言われて、ファオンはアリオンを見上げる。

シーリーンが呟く。
「がその後、キリアンに迫る…って………。
傷口に塩だな」

シーリーンの言葉に、アリオンの眉が寄る。
「…唐辛子だろう…?」
「違いない」

くすっ。と笑うアリオンも、シーリーンも…。
一年間リチャードを、《勇敢なる者》レグウルナスの仲間と迎え、彼の事を、心のどこかで心配してる感じがして、ファオンは思った。

《勇敢なる者》レグウルナスで…仲間で…いいな…。
そんな風に。
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