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二つを兼ねる者 セグナ・アグナータ
77 再招集
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「揃ったのか?」
レオが現れ、皆が振り向く。
アリオンとセルティスが、湯で完全に《化け物》の血の臭いを落とした、リチャードを伴いその後に続く。
シェナンが即座に口開く。
「状況を聞こう」
レオはキリアンとアランを交互に見る。
キリアンはアランに発言を譲る。
アランは場の男らに一斉に見つめられ、困惑しながらも話し出す。
「…リチャードが『襲撃してくれれば全滅させてやる』といきまいたら、キリアンが短剣投げて《化け物》を挑発し、襲撃を受けた。
最初は10体程度。
次に20体。
それで終いかと思ったら、とうとう…100近くの群れが押し寄せて来て、手に負えず雑兵に援軍を頼んだ」
レオが目を見開く。
「…わざわざ、襲撃されるよう挑発したのか?!」
その呆れきる言葉に、アランが振り向く。
「…知ってたんじゃ無いのか?」
「戯れ言だと思ってた」
シェナンが冷静に言い返す。
「キリアンがいる時、良く起こる事態だ。
お陰でこっちは、いつ襲われるかハラハラせずに先手が打てる」
キリアンがおもむろに頷く。
ファルコンが不満げに呟く。
「そう言って奴を甘やかすから、いつまで経っても口を閉じないんだな」
ロレンツは顔を上げる。
「口だけで無く、手も足も出て直ぐ殴る蹴るをする。
南で最も要注意人物だ」
シーリーンがぼそり。
と呟く。
「人害って点では、東のデュケスと張るな」
途端、デュケスは眉下げて囁く。
「まだ…足が痛いのか?」
シーリーンはきっぱり言った。
「痛い!」
レオは皆に『抑えろ』と視線を送り、口を開く。
「…最後尾にいたのか?
ファオンが仕留めたと聞いた」
アランがレオの背後のアリオンに顎をしゃくる。
「奴に聞け」
アリオンは皆の視線を受け、俯く。
「俺は必死で後を追ったが…。
たった一人で岩の上を飛び、群れの最後尾近くまで来ると《化け物》ひしめく群れの中に飛び降りる。
一瞬…あんまり無茶で“殺られる”
と思って、心臓が止まりかけた」
ファオンが弾かれたように顔を上げて、アリオンを切なげに見た。
ロレンツだけが
「何だ。
やっぱりお前の弟なんだな」
とキリアンを見て、言った。
「だが結局、殺ったんだろう?」
キースがそう言い、足元の死体を目で指し示す。
皆に見つめられて、ファオンは俯く。
「…アリオンが必死に付いて来てくれて、背を護ってくれていたから…」
ファルコンは尋ねる。
「急襲したのか?
杖は振らず邪魔は入らなかったのか?」
ファオンは首を横に振る。
「目がけて走ったら、杖を振り、前へ進んでた《化け物》が五体くらい振り向いて、杖付きとの間に傾れ込んで来た」
キースが尋ねる。
「五体も、斬り捨てて杖付きを殺ったのか?」
ファオンは首を横に振る。
「杖付きを先に殺れば、五体も相手にする必要無いから。
横の岩に駆け上って、五体の頭上を飛び越え、杖付きを殺った」
皆、一斉に押し黙り、感心したようにファオンを見る。
シェナンだけが、笑って言った。
「なる程。
他は囮で群れと戦わせ、杖付きを一刻も早く見つけて殺れば…」
「怪我人はほぼ出ない」
ロレンツが最後の言葉をかっさらい、横のキリアンと頷き合う。
ファーレーンが囁く。
「…だが今まで誰もその事に気づかなくても無理は無い…。
こんなしなびた…到底敵で無い《化け物》など、誰も好んで斬らない」
皆が死体を見下ろし、頷く。
《化け物》らの大きさは、2mを越す奴から1m60そこそこの奴まで、まちまちだった。
がどの《化け物》も盛り上がる筋肉を持ち、肉付き良く体格も良い。
だがこの死体は、明らかにか細く、よぼよぼ。
更に杖を付いている《化け物》など、戦場にいても誰も斬らない。
シェナンは頷きながら、ファーレーンに囁く。
「そっちに全員見せたら、こっちに死体を貰って良いか?」
ファーレーンは頷く。
「雑兵に届けさせる」
シェナンは頷く。
ファーレーンが最後に、ぼそり、と言った。
「気づかれたら杖を振られ、群れは杖付きを護るから、気づかれないよう殺らねばならないんだな?」
キリアンがぼそっと言い返した。
「ファオンみたいに頭上を飛び越えられなくちゃ、邪魔をがんがん斬るしか無くなるな」
ロレンツが呟く。
「杖付きに次々に護衛を呼ばれ、戦ってる内に逃げられたら、最悪だな」
皆が一様に黙り込む。
ファーレーンが吐息混じりに囁く。
「レドナンドに伝えよう」
言うと背を向け、デュケスに顎をしゃくる。
デュケスは持っていたボロ布に、杖付きの死体を乗せてくるみ、肩に担いだ。
ファーレーンはふ。と気づき、振り向く。
「戦場から、どうやって運んだ?」
皆が一斉にリチャードに振り向く。
アリオンが返答した。
「斬られ血塗れの死体を肩に担ぎ、本人も《化け物》の血塗れで」
ファーレーンは背を向ける。
「…それはさぞかし、臭かったろうな」
セルティスがそっと言った。
「ああ…。周囲の者が」
リチャードが、軽くセルティスを睨んだ。
レオが現れ、皆が振り向く。
アリオンとセルティスが、湯で完全に《化け物》の血の臭いを落とした、リチャードを伴いその後に続く。
シェナンが即座に口開く。
「状況を聞こう」
レオはキリアンとアランを交互に見る。
キリアンはアランに発言を譲る。
アランは場の男らに一斉に見つめられ、困惑しながらも話し出す。
「…リチャードが『襲撃してくれれば全滅させてやる』といきまいたら、キリアンが短剣投げて《化け物》を挑発し、襲撃を受けた。
最初は10体程度。
次に20体。
それで終いかと思ったら、とうとう…100近くの群れが押し寄せて来て、手に負えず雑兵に援軍を頼んだ」
レオが目を見開く。
「…わざわざ、襲撃されるよう挑発したのか?!」
その呆れきる言葉に、アランが振り向く。
「…知ってたんじゃ無いのか?」
「戯れ言だと思ってた」
シェナンが冷静に言い返す。
「キリアンがいる時、良く起こる事態だ。
お陰でこっちは、いつ襲われるかハラハラせずに先手が打てる」
キリアンがおもむろに頷く。
ファルコンが不満げに呟く。
「そう言って奴を甘やかすから、いつまで経っても口を閉じないんだな」
ロレンツは顔を上げる。
「口だけで無く、手も足も出て直ぐ殴る蹴るをする。
南で最も要注意人物だ」
シーリーンがぼそり。
と呟く。
「人害って点では、東のデュケスと張るな」
途端、デュケスは眉下げて囁く。
「まだ…足が痛いのか?」
シーリーンはきっぱり言った。
「痛い!」
レオは皆に『抑えろ』と視線を送り、口を開く。
「…最後尾にいたのか?
ファオンが仕留めたと聞いた」
アランがレオの背後のアリオンに顎をしゃくる。
「奴に聞け」
アリオンは皆の視線を受け、俯く。
「俺は必死で後を追ったが…。
たった一人で岩の上を飛び、群れの最後尾近くまで来ると《化け物》ひしめく群れの中に飛び降りる。
一瞬…あんまり無茶で“殺られる”
と思って、心臓が止まりかけた」
ファオンが弾かれたように顔を上げて、アリオンを切なげに見た。
ロレンツだけが
「何だ。
やっぱりお前の弟なんだな」
とキリアンを見て、言った。
「だが結局、殺ったんだろう?」
キースがそう言い、足元の死体を目で指し示す。
皆に見つめられて、ファオンは俯く。
「…アリオンが必死に付いて来てくれて、背を護ってくれていたから…」
ファルコンは尋ねる。
「急襲したのか?
杖は振らず邪魔は入らなかったのか?」
ファオンは首を横に振る。
「目がけて走ったら、杖を振り、前へ進んでた《化け物》が五体くらい振り向いて、杖付きとの間に傾れ込んで来た」
キースが尋ねる。
「五体も、斬り捨てて杖付きを殺ったのか?」
ファオンは首を横に振る。
「杖付きを先に殺れば、五体も相手にする必要無いから。
横の岩に駆け上って、五体の頭上を飛び越え、杖付きを殺った」
皆、一斉に押し黙り、感心したようにファオンを見る。
シェナンだけが、笑って言った。
「なる程。
他は囮で群れと戦わせ、杖付きを一刻も早く見つけて殺れば…」
「怪我人はほぼ出ない」
ロレンツが最後の言葉をかっさらい、横のキリアンと頷き合う。
ファーレーンが囁く。
「…だが今まで誰もその事に気づかなくても無理は無い…。
こんなしなびた…到底敵で無い《化け物》など、誰も好んで斬らない」
皆が死体を見下ろし、頷く。
《化け物》らの大きさは、2mを越す奴から1m60そこそこの奴まで、まちまちだった。
がどの《化け物》も盛り上がる筋肉を持ち、肉付き良く体格も良い。
だがこの死体は、明らかにか細く、よぼよぼ。
更に杖を付いている《化け物》など、戦場にいても誰も斬らない。
シェナンは頷きながら、ファーレーンに囁く。
「そっちに全員見せたら、こっちに死体を貰って良いか?」
ファーレーンは頷く。
「雑兵に届けさせる」
シェナンは頷く。
ファーレーンが最後に、ぼそり、と言った。
「気づかれたら杖を振られ、群れは杖付きを護るから、気づかれないよう殺らねばならないんだな?」
キリアンがぼそっと言い返した。
「ファオンみたいに頭上を飛び越えられなくちゃ、邪魔をがんがん斬るしか無くなるな」
ロレンツが呟く。
「杖付きに次々に護衛を呼ばれ、戦ってる内に逃げられたら、最悪だな」
皆が一様に黙り込む。
ファーレーンが吐息混じりに囁く。
「レドナンドに伝えよう」
言うと背を向け、デュケスに顎をしゃくる。
デュケスは持っていたボロ布に、杖付きの死体を乗せてくるみ、肩に担いだ。
ファーレーンはふ。と気づき、振り向く。
「戦場から、どうやって運んだ?」
皆が一斉にリチャードに振り向く。
アリオンが返答した。
「斬られ血塗れの死体を肩に担ぎ、本人も《化け物》の血塗れで」
ファーレーンは背を向ける。
「…それはさぞかし、臭かったろうな」
セルティスがそっと言った。
「ああ…。周囲の者が」
リチャードが、軽くセルティスを睨んだ。
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