72 / 286
キーナンの来襲
72 引いて行く化け物の群れ
しおりを挟む
レオとセルティス、ファルコンが雑兵を連れ、駆け込んだ時、キリアンのみならずアランもリチャードもが、近くの岩の上で下から登り来る《化け物》を斬り捨てていた。
だが後から後から、《化け物》らは岩頂上にいる獲物を喰おうと登っていく。
三人は一斉に群れに剣抜き駆け込む。
すばっ!
ざっっっ!
背後から雑兵らも、果敢に群れに立ち向かう。
「ファオン!」
アリオンの叫びが遠くで聞こえ、レオは一瞬胸が痛んでそちらに振り向く。
点在する岩の遙か下方。
群れの後方近くの岩の上でアリオンが、どんどん先の岩へ飛ぶファオンの背を追っていた。
ファルコンが気づく。
セルティスも。
『杖付きを見つけたな!』
セルティスはファルコンに頷く。
二人は一体でも減らそうと、向かって来る《化け物》に激しく剣を振り切った。
ファオンは岩を飛ぶ。
これだけいる《化け物》の中。
脳裏には杖付く年老いた《化け物》しか無かった。
いた!
岩の下方にその姿を見つける。
アリオンは岩の上から、坂の上を目指し侵攻する黒く蠢く《化け物》の群れの中へ、止める間もなく真っ直ぐ飛び降りるファオンの姿を呆然と見た。
そのあまりにも無謀な行為に心が切り裂かれたような悲鳴を上げて、一瞬身をぶるっ。と震わせる。
が直ぐ、続き飛び込む。
ファオンは着地地点にいた《化け物》が見上げてるのと目が合う。
真っ赤に充血した見開かれた目。
もう剣を振り下ろし、崩れ落ちる《化け物》の背を蹴って、両腕振り回そうと胸を開く《化け物》の、その胸に剣を振り切ってた。
斬られ倒れる《化け物》の股の下を潜り、走る《化け物》を下から腹を斬りながら二体殺して群れを抜ける。
群れの最下方。
一匹遅れて杖を振る、しなびて年老いた《化け物》!
ファオンは駆け込んだ。
背後、すばっ!と剣を振り切る音。
チラと振り向くとアリオンが、背から襲いかかる《化け物》を斬り捨て、背を護ってくれていた。
アリオンの、男らしく激しい青の瞳。
感謝する間無くファオンは突っ込む。
足を止めたアリオンの周囲は、見る間に振り向き駆け寄る《化け物》で埋め尽くされる。
ファオンはその気配に走る足を止めず振り向く。
だが一瞬。
アリオンの剣が数度振り上げられ、群れを切り裂き姿を見せる。
ファオンは直ぐ背後に駆け来るアリオンを感激の眼で見つめる。
追いかけ《化け物》を切り裂き、背を護ってくれている。
ファオンは胸が熱くなった。
けど杖付きは必死で杖を振る。
五体の《化け物》が杖付きとの間に飛び込み、遮る。
ファオンは横の岩に駆け上り、蹴って五体の頭上を飛び越えた。
ひゅうん…。
風が頬に突き刺さる。
気持ちが良い…!
ずばっ!
剣を振り切り、着地する。
振り向くと背後。
杖を付いた《化け物》の、目を見開き血を吹き出し、倒れている死体…。
アリオンはその時、前の《化け物》に剣を振り切り、背後にかぎ爪を振り上げて今にも振り下ろそうとする《化け物》の気配を感じ、一瞬で振り向き剣を振り上げた。
が、《化け物》の姿は消えていた。
群れは一気に、最下方にいたアリオンとファオンの方へと押し寄せ始める。
襲う為で無く。
皆恐怖に駆られ、逃げ出し始めていた。
「ファオン!」
叫ぶアリオンの胸元に、ファオンが駆け込み飛び込む。
アリオンはファオンの肩を抱き、横の岩へと一緒に駆け上る。
《化け物》の群れは怒濤の如く引き始め、《化け物》の死体を夢中で貪る数体の《化け物》だけが残る。
キリアンは岩の上で、引き始める化け物の数がまだ、50体以上いるのに、溜息を吐いた。
向こうの岩の上から、アランが怒鳴る。
「思い切りリチャードに剣を振らせて、満足か?!」
怒ってるアランに、キリアンは肩を竦める。
リチャードは岩の上で、《化け物》の血で真っ赤に染まる剣を下げ、アランの怒鳴り声を聞く。
暫くしてキリアンの
「襲撃して欲しいってったのは、リチャードだ!
満足かはリチャードに聞け!」
と怒鳴り返す声を聞く。
暫くして岩の上のアラン。
そして岩の下に姿を見せる、レオとファルコン。
その背後から来るセルティスに、下からじっ…。と見つめられ、リチャードは慌てて叫んだ。
「俺は戯れ言を叫んだだけだ!」
温和なセルティスが珍しく、腹の底から怒鳴った。
「たかが戯れ言で、こんな事態になったのか?!」
岩の上のリチャードの項垂れきる姿から、目を逸らし顔を背け、皆無言でその場を引き始めた。
だが後から後から、《化け物》らは岩頂上にいる獲物を喰おうと登っていく。
三人は一斉に群れに剣抜き駆け込む。
すばっ!
ざっっっ!
背後から雑兵らも、果敢に群れに立ち向かう。
「ファオン!」
アリオンの叫びが遠くで聞こえ、レオは一瞬胸が痛んでそちらに振り向く。
点在する岩の遙か下方。
群れの後方近くの岩の上でアリオンが、どんどん先の岩へ飛ぶファオンの背を追っていた。
ファルコンが気づく。
セルティスも。
『杖付きを見つけたな!』
セルティスはファルコンに頷く。
二人は一体でも減らそうと、向かって来る《化け物》に激しく剣を振り切った。
ファオンは岩を飛ぶ。
これだけいる《化け物》の中。
脳裏には杖付く年老いた《化け物》しか無かった。
いた!
岩の下方にその姿を見つける。
アリオンは岩の上から、坂の上を目指し侵攻する黒く蠢く《化け物》の群れの中へ、止める間もなく真っ直ぐ飛び降りるファオンの姿を呆然と見た。
そのあまりにも無謀な行為に心が切り裂かれたような悲鳴を上げて、一瞬身をぶるっ。と震わせる。
が直ぐ、続き飛び込む。
ファオンは着地地点にいた《化け物》が見上げてるのと目が合う。
真っ赤に充血した見開かれた目。
もう剣を振り下ろし、崩れ落ちる《化け物》の背を蹴って、両腕振り回そうと胸を開く《化け物》の、その胸に剣を振り切ってた。
斬られ倒れる《化け物》の股の下を潜り、走る《化け物》を下から腹を斬りながら二体殺して群れを抜ける。
群れの最下方。
一匹遅れて杖を振る、しなびて年老いた《化け物》!
ファオンは駆け込んだ。
背後、すばっ!と剣を振り切る音。
チラと振り向くとアリオンが、背から襲いかかる《化け物》を斬り捨て、背を護ってくれていた。
アリオンの、男らしく激しい青の瞳。
感謝する間無くファオンは突っ込む。
足を止めたアリオンの周囲は、見る間に振り向き駆け寄る《化け物》で埋め尽くされる。
ファオンはその気配に走る足を止めず振り向く。
だが一瞬。
アリオンの剣が数度振り上げられ、群れを切り裂き姿を見せる。
ファオンは直ぐ背後に駆け来るアリオンを感激の眼で見つめる。
追いかけ《化け物》を切り裂き、背を護ってくれている。
ファオンは胸が熱くなった。
けど杖付きは必死で杖を振る。
五体の《化け物》が杖付きとの間に飛び込み、遮る。
ファオンは横の岩に駆け上り、蹴って五体の頭上を飛び越えた。
ひゅうん…。
風が頬に突き刺さる。
気持ちが良い…!
ずばっ!
剣を振り切り、着地する。
振り向くと背後。
杖を付いた《化け物》の、目を見開き血を吹き出し、倒れている死体…。
アリオンはその時、前の《化け物》に剣を振り切り、背後にかぎ爪を振り上げて今にも振り下ろそうとする《化け物》の気配を感じ、一瞬で振り向き剣を振り上げた。
が、《化け物》の姿は消えていた。
群れは一気に、最下方にいたアリオンとファオンの方へと押し寄せ始める。
襲う為で無く。
皆恐怖に駆られ、逃げ出し始めていた。
「ファオン!」
叫ぶアリオンの胸元に、ファオンが駆け込み飛び込む。
アリオンはファオンの肩を抱き、横の岩へと一緒に駆け上る。
《化け物》の群れは怒濤の如く引き始め、《化け物》の死体を夢中で貪る数体の《化け物》だけが残る。
キリアンは岩の上で、引き始める化け物の数がまだ、50体以上いるのに、溜息を吐いた。
向こうの岩の上から、アランが怒鳴る。
「思い切りリチャードに剣を振らせて、満足か?!」
怒ってるアランに、キリアンは肩を竦める。
リチャードは岩の上で、《化け物》の血で真っ赤に染まる剣を下げ、アランの怒鳴り声を聞く。
暫くしてキリアンの
「襲撃して欲しいってったのは、リチャードだ!
満足かはリチャードに聞け!」
と怒鳴り返す声を聞く。
暫くして岩の上のアラン。
そして岩の下に姿を見せる、レオとファルコン。
その背後から来るセルティスに、下からじっ…。と見つめられ、リチャードは慌てて叫んだ。
「俺は戯れ言を叫んだだけだ!」
温和なセルティスが珍しく、腹の底から怒鳴った。
「たかが戯れ言で、こんな事態になったのか?!」
岩の上のリチャードの項垂れきる姿から、目を逸らし顔を背け、皆無言でその場を引き始めた。
0
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる