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キーナンの来襲
69 挑発
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リチャードが慌てて剣を携え、テントから飛び出して来る。
アリオンとファオン。そしてその横のキリアンを見ると、一瞬で動揺しきって歩を止める。
横に突っ立つファルコンに、リチャードが恐る恐る尋ねる。
「…あんたは行かないのか?」
ファルコンは尋ねるリチャードに気づくと、テントに戻ろうとするキースとレオに振り向き、尋ねる。
「どうして俺は行かないことになったんだっけ?!」
だが答えたのはアリオンだった。
「キリアンとリチャードのつかみ合いなら俺でも止められる。
だがあんたとキリアンの喧嘩は俺じゃ止められない」
アランも、アリオンらとリチャードの中間地点で頷く。
「他に屈強な男がもう二人、必要だな」
長身のファルコンが、リチャードに顔を傾け呟く。
「…だ、そうだ」
リチャードはそれを聞いて、やる気満々のキリアンに怖じる。
リチャードはまだ、ファルコンを見上げ尋ねる。
「…あんた、本当にファオンに良く似たあの美麗な顔のキリアン、殴れるのか?」
が、ファルコンは即答する。
「腹立てたら相手の面(つら)が綺麗なんて、忘れないか?普通」
リチャードが振り向くと、アランも、アリオンも首を縦に振っていた。
「…………………………………………」
背を向け歩き出す一行の、最後尾にリチャードは、顔を思い切り下げて付いて行った。
青空の下、聳え立つ岩の間を抜けた後、今度は左右を岩に挟まれた道を下る。
延々と岩の間の細い道を下っていくと、やがて岩点在する草原が広がる。
その手前の岩場に、雑兵ら10人程が、坂になってる草原の向こうを見張っていた。
先頭のアランが一人に尋ねる。
「どんな具合だ?」
雑兵達は、一行の中の艶やかで綺麗で愛らしいファオンを、ジロジロと見つめる。
ファオンは視線を感じた途端、頬を染めて俯いた。
が、良く似た顔のキリアンが雑兵の視線を受けた途端、きつい目で睨み返す。
アリオンは思わず、ファオンに屈んで言おうかと思った。
『キリアンを見習え』と。
雑兵らの隊長らしき男が、アランに答える。
「…さっきから…」
岩の一つを指し示す。
「あの岩の影に数匹。
ずっとこっちを見張ってます」
別の一人も言う。
「多分、昨日撃退した群れの残りだ。
半数に減らしたけど…まだ30はいる」
別の一人も言った。
「…新たに産まれた《化け物》が合流したら…もっと増える」
皆が見ていると、かなり離れた場所から、数匹ウロついてこちらをチラチラと見てる。
最後尾のリチャードが、吐き捨てるように怒鳴った。
「とっとと襲って来れば、もっと数を減らしてやるのに!」
それを聞いた途端、キリアンが腕を振り上げる。
しゅっ!
皆がキリアンを見る。
が、岩の横の《化け物》の一匹が、いきなりどさっ!と倒れる。
皆が目を見開いてキリアンを見るが、キリアンは再び手に短剣を握り、一瞬で投げた。
どさっ!
また一匹、《化け物》が倒れる。
ファオンはキリアンがいつも、川や池。
木や枝に、小石を投げて遊んでいたのを思い出す。
「…キリアン、凄い!」
キリアンはまだ、群れが来ない様子にまた、短剣を懐から取り出し、投げる。
どさっ!
「…いいかファオン。
投げる以上、急所を突いて殺さないと駄目だ。
傷付ける程度じゃ奴ら、怯まない。
殺せないなら投げ損だぞ」
アランもアリオンも、そう言いながらまた、短剣を投げるキリアンを、呆れて見る。
どさっ!
また、一体のウロついてた《化け物》が倒れる。
雑兵の一人が叫ぶ。
「あれ全部、殺したんですか?!」
キリアンは仲間が次々倒れ、逃げ出す《化け物》の背目がけて投げる。
「…死んでないなら傷付けられて、怒ってこちらに向かってくるはずだ」
どさっ!
とうとう残り二匹が駆け出し…岩の間に姿を消した…と思ったら、岩の影から一気に10匹ほどの《化け物》がこちら目がけて襲って来る。
キリアンは目前を塞ぐ岩に手を付き、一気に飛び越してリチャードに怒鳴る。
「望み道理の、襲撃だ!」
もうキリアンは剣を抜き、襲いかかってくる《化け物》の群れに突っ込んで行く。
「ちっ!」
アランもアリオンもが、ほぼ同時に岩に手を付き飛び越え、キリアンの背を追う。
ファオンは二人の向こうにいたリチャードに振り向く。
リチャードもファオンを見たが、剣を抜く。
ファオンも剣の柄を握る。
“サーシャ”!
右手で握り込んで、岩に左手を付き、一気に飛び上がる。
リチャードはほぼ同時にファオンと岩を飛び越し駆け始めたのに、風のように自分を追い抜いて先を走るファオンを見た。
「(…早い…!)」
ファオンはもう、アランとアリオンに追い付き、向かって来る《化け物》に剣を、振り切っていた。
アリオンとファオン。そしてその横のキリアンを見ると、一瞬で動揺しきって歩を止める。
横に突っ立つファルコンに、リチャードが恐る恐る尋ねる。
「…あんたは行かないのか?」
ファルコンは尋ねるリチャードに気づくと、テントに戻ろうとするキースとレオに振り向き、尋ねる。
「どうして俺は行かないことになったんだっけ?!」
だが答えたのはアリオンだった。
「キリアンとリチャードのつかみ合いなら俺でも止められる。
だがあんたとキリアンの喧嘩は俺じゃ止められない」
アランも、アリオンらとリチャードの中間地点で頷く。
「他に屈強な男がもう二人、必要だな」
長身のファルコンが、リチャードに顔を傾け呟く。
「…だ、そうだ」
リチャードはそれを聞いて、やる気満々のキリアンに怖じる。
リチャードはまだ、ファルコンを見上げ尋ねる。
「…あんた、本当にファオンに良く似たあの美麗な顔のキリアン、殴れるのか?」
が、ファルコンは即答する。
「腹立てたら相手の面(つら)が綺麗なんて、忘れないか?普通」
リチャードが振り向くと、アランも、アリオンも首を縦に振っていた。
「…………………………………………」
背を向け歩き出す一行の、最後尾にリチャードは、顔を思い切り下げて付いて行った。
青空の下、聳え立つ岩の間を抜けた後、今度は左右を岩に挟まれた道を下る。
延々と岩の間の細い道を下っていくと、やがて岩点在する草原が広がる。
その手前の岩場に、雑兵ら10人程が、坂になってる草原の向こうを見張っていた。
先頭のアランが一人に尋ねる。
「どんな具合だ?」
雑兵達は、一行の中の艶やかで綺麗で愛らしいファオンを、ジロジロと見つめる。
ファオンは視線を感じた途端、頬を染めて俯いた。
が、良く似た顔のキリアンが雑兵の視線を受けた途端、きつい目で睨み返す。
アリオンは思わず、ファオンに屈んで言おうかと思った。
『キリアンを見習え』と。
雑兵らの隊長らしき男が、アランに答える。
「…さっきから…」
岩の一つを指し示す。
「あの岩の影に数匹。
ずっとこっちを見張ってます」
別の一人も言う。
「多分、昨日撃退した群れの残りだ。
半数に減らしたけど…まだ30はいる」
別の一人も言った。
「…新たに産まれた《化け物》が合流したら…もっと増える」
皆が見ていると、かなり離れた場所から、数匹ウロついてこちらをチラチラと見てる。
最後尾のリチャードが、吐き捨てるように怒鳴った。
「とっとと襲って来れば、もっと数を減らしてやるのに!」
それを聞いた途端、キリアンが腕を振り上げる。
しゅっ!
皆がキリアンを見る。
が、岩の横の《化け物》の一匹が、いきなりどさっ!と倒れる。
皆が目を見開いてキリアンを見るが、キリアンは再び手に短剣を握り、一瞬で投げた。
どさっ!
また一匹、《化け物》が倒れる。
ファオンはキリアンがいつも、川や池。
木や枝に、小石を投げて遊んでいたのを思い出す。
「…キリアン、凄い!」
キリアンはまだ、群れが来ない様子にまた、短剣を懐から取り出し、投げる。
どさっ!
「…いいかファオン。
投げる以上、急所を突いて殺さないと駄目だ。
傷付ける程度じゃ奴ら、怯まない。
殺せないなら投げ損だぞ」
アランもアリオンも、そう言いながらまた、短剣を投げるキリアンを、呆れて見る。
どさっ!
また、一体のウロついてた《化け物》が倒れる。
雑兵の一人が叫ぶ。
「あれ全部、殺したんですか?!」
キリアンは仲間が次々倒れ、逃げ出す《化け物》の背目がけて投げる。
「…死んでないなら傷付けられて、怒ってこちらに向かってくるはずだ」
どさっ!
とうとう残り二匹が駆け出し…岩の間に姿を消した…と思ったら、岩の影から一気に10匹ほどの《化け物》がこちら目がけて襲って来る。
キリアンは目前を塞ぐ岩に手を付き、一気に飛び越してリチャードに怒鳴る。
「望み道理の、襲撃だ!」
もうキリアンは剣を抜き、襲いかかってくる《化け物》の群れに突っ込んで行く。
「ちっ!」
アランもアリオンもが、ほぼ同時に岩に手を付き飛び越え、キリアンの背を追う。
ファオンは二人の向こうにいたリチャードに振り向く。
リチャードもファオンを見たが、剣を抜く。
ファオンも剣の柄を握る。
“サーシャ”!
右手で握り込んで、岩に左手を付き、一気に飛び上がる。
リチャードはほぼ同時にファオンと岩を飛び越し駆け始めたのに、風のように自分を追い抜いて先を走るファオンを見た。
「(…早い…!)」
ファオンはもう、アランとアリオンに追い付き、向かって来る《化け物》に剣を、振り切っていた。
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