68 / 286
キーナンの来襲
68 初めての見回り
しおりを挟む
ファオンが淡い水色の薄衣と腰布を付け、青の上着代わりの被り布を付け、腰のベルトに剣を差した姿でテントを出ると、皆一斉に振り向く。
ファオンは皆にじろじろと見つめられ、《皆を繋ぐ者》の衣服より余程恥ずかしくないのに、なぜか頬が赤らんで俯いた。
レオが剣を下げ、前に進む。
が、ファルコンが遮る。
「怪我したばかりだろう?!」
アランが俯いて溜息を吐く。
「…だってあんたがレオに代わって見回りに出かけると、キリアンと喧嘩にならないか?」
レオが低い声で言い返す。
「セルティスが適任だが、デュランを庇い消耗してるから、休ませたい」
ファオンの後ろから、キリアンが口を挟む。
「キースの怪我は聞いてるが…。
シーリーンはどうした?
アリオンとシーリーンの二人揃がえば、あんたらクラスの働きをする」
レオはシーリーンに視線を振る。
「…足を挫いてる」
キリアンは目を見開くが、素っ気無く言う。
「案外、間抜けだな」
シーリーンが目を剥いて怒鳴る。
「俺のせいじゃない!
東の新人、デュケスが間抜けで俺は被害者だ!」
キリアンはシーリーンを見る。
「まさかあいつの側に迂闊に近寄って、叩(はた)かれて飛んで転んだとか?」
シーリーンが返事をせず睨みつけるので、キリアンは顔を下げて、ぷっ。と吹き出した。
シーリーンがむっ!として怒鳴る。
「俺で無く、デュケスを笑え!」
ファルコンがぼそり、とシーリーンに言った。
「…俺の気持ちが、解るだろう?」
シーリーンは不本意に頷いた。
「………………凄く」
レオはアランに振り向く。
アランは面倒な一行に首を振りながらも、レオに頷いた。
「俺が面倒見る」
がその時、アリオンが口を開く。
「リチャードはどうした?
一番遊んでるだろう?」
シーリーンが俯く。
その背後にいたキースが、視線をレオに向ける。
「アランは休ませて、アリオンとリチャードに行かせろ」
レオがキースに振り向く。
「…大丈夫か?
このところリチャードは不安定だろう?」
そう言って、ファオンに視線を振り、キースに戻す。
「…だからだ。
《皆を繋ぐ者》としてのファオンで無く、レグウルナス(勇敢なる者)としてのファオンを見れば、嫉妬で腑抜けたリチャードも気を引き締める」
キリアンが頷いた。
「一理あるな。
但し俺とリチャードがつかみ合いの喧嘩始めたら、アリオン。
あんたが止めてくれ」
アリオンはぐっ。
と詰まって俯き、顔を上げてキリアンをきつい青の瞳で見る。
「行くのは見回りの為で、喧嘩する為じゃないと肝に銘じても駄目なのか?」
キリアンは肩を竦める。
「目の前に最悪に気に入らない男を見て、我慢出来るほど老けてない」
アリオンは横の、兄キリアンを良く知るファオンを見る。
ファオンはアリオンの視線を受けて、小声で囁く。
「…キリアンは言いだしたら聞かないし、手も足も早い。
気づいたらもう…殴るか蹴るかしてる」
「…悪いなアラン」
レオの言葉に、諦めたようにアランが頷いた。
さっとリチャードのテントへ進み、入り口の布を払って中へ怒鳴る。
「出かけるぞ!
剣持って付いて来い!」
ファオンの横にアリオンが並ぶのを見て、キリアンが尋ねる。
「…リチャードの他に、アランも来るのか?」
ファオンは二人に挟まれてアリオンを見上げる。
アリオンはとうとう歯を剥いてキリアンに怒鳴った。
「俺が喧嘩を止めてる間、周囲を見張りファオンを護る男が必要だからな!」
キリアンは頷く。
「ファオンは自分で自分くらい護れるし、ちゃんと目も見えてるから周囲ぐらい見張れるぞ?」
けれどアリオンが無言であんまり睨むので、キリアンは肩を竦めて言った。
「…まあ…ファオンの他にアランも周囲を見張れば、より危険も少ない」
アリオンがやっと大きく頷き、ファオンは俯いて、溜息を吐き出した。
ファオンは皆にじろじろと見つめられ、《皆を繋ぐ者》の衣服より余程恥ずかしくないのに、なぜか頬が赤らんで俯いた。
レオが剣を下げ、前に進む。
が、ファルコンが遮る。
「怪我したばかりだろう?!」
アランが俯いて溜息を吐く。
「…だってあんたがレオに代わって見回りに出かけると、キリアンと喧嘩にならないか?」
レオが低い声で言い返す。
「セルティスが適任だが、デュランを庇い消耗してるから、休ませたい」
ファオンの後ろから、キリアンが口を挟む。
「キースの怪我は聞いてるが…。
シーリーンはどうした?
アリオンとシーリーンの二人揃がえば、あんたらクラスの働きをする」
レオはシーリーンに視線を振る。
「…足を挫いてる」
キリアンは目を見開くが、素っ気無く言う。
「案外、間抜けだな」
シーリーンが目を剥いて怒鳴る。
「俺のせいじゃない!
東の新人、デュケスが間抜けで俺は被害者だ!」
キリアンはシーリーンを見る。
「まさかあいつの側に迂闊に近寄って、叩(はた)かれて飛んで転んだとか?」
シーリーンが返事をせず睨みつけるので、キリアンは顔を下げて、ぷっ。と吹き出した。
シーリーンがむっ!として怒鳴る。
「俺で無く、デュケスを笑え!」
ファルコンがぼそり、とシーリーンに言った。
「…俺の気持ちが、解るだろう?」
シーリーンは不本意に頷いた。
「………………凄く」
レオはアランに振り向く。
アランは面倒な一行に首を振りながらも、レオに頷いた。
「俺が面倒見る」
がその時、アリオンが口を開く。
「リチャードはどうした?
一番遊んでるだろう?」
シーリーンが俯く。
その背後にいたキースが、視線をレオに向ける。
「アランは休ませて、アリオンとリチャードに行かせろ」
レオがキースに振り向く。
「…大丈夫か?
このところリチャードは不安定だろう?」
そう言って、ファオンに視線を振り、キースに戻す。
「…だからだ。
《皆を繋ぐ者》としてのファオンで無く、レグウルナス(勇敢なる者)としてのファオンを見れば、嫉妬で腑抜けたリチャードも気を引き締める」
キリアンが頷いた。
「一理あるな。
但し俺とリチャードがつかみ合いの喧嘩始めたら、アリオン。
あんたが止めてくれ」
アリオンはぐっ。
と詰まって俯き、顔を上げてキリアンをきつい青の瞳で見る。
「行くのは見回りの為で、喧嘩する為じゃないと肝に銘じても駄目なのか?」
キリアンは肩を竦める。
「目の前に最悪に気に入らない男を見て、我慢出来るほど老けてない」
アリオンは横の、兄キリアンを良く知るファオンを見る。
ファオンはアリオンの視線を受けて、小声で囁く。
「…キリアンは言いだしたら聞かないし、手も足も早い。
気づいたらもう…殴るか蹴るかしてる」
「…悪いなアラン」
レオの言葉に、諦めたようにアランが頷いた。
さっとリチャードのテントへ進み、入り口の布を払って中へ怒鳴る。
「出かけるぞ!
剣持って付いて来い!」
ファオンの横にアリオンが並ぶのを見て、キリアンが尋ねる。
「…リチャードの他に、アランも来るのか?」
ファオンは二人に挟まれてアリオンを見上げる。
アリオンはとうとう歯を剥いてキリアンに怒鳴った。
「俺が喧嘩を止めてる間、周囲を見張りファオンを護る男が必要だからな!」
キリアンは頷く。
「ファオンは自分で自分くらい護れるし、ちゃんと目も見えてるから周囲ぐらい見張れるぞ?」
けれどアリオンが無言であんまり睨むので、キリアンは肩を竦めて言った。
「…まあ…ファオンの他にアランも周囲を見張れば、より危険も少ない」
アリオンがやっと大きく頷き、ファオンは俯いて、溜息を吐き出した。
0
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる