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キーナンの来襲
61 激しい戦闘
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アリオンが岩が点在する草原の坂道を、風のように駆けるアントランの背を追う。
突然アントランは視線を下に向け、坂を駆け下り始め、アリオンも気づいて視線を向ける。
黒い《化け物》の点在する中、戦うファーレーンの長く白っぽい金髪が見えた。
振り切る剣が銀の楕円を描き、幾度も幾度もきらりと光る。
その向こう、ファルコンの、激しく散る真っ直ぐな銀の髪。
黒い剛毛の襲い来る《化け物》相手に、剣を激しく振り下ろし、弾き飛ばしてた。
少し下。
デュケスの暴れまくる巨体。
飛び来る《化け物》を左手で掴み、横から来る《化け物》に右の剣を振り切り殺しながら、別の襲い来るキーナン《化け物》に、掴む左手の《化け物》をぶつけ吹っ飛ばす。
手前にアランの金髪。
坂の下へ、真っ直ぐ駆け降りて行く。
その遙か下に、セルティスの栗色の巻き毛。
そしてその背後に、周囲をびっしり《化け物》に取り囲まれながら、セルティスに庇われるように戦うデュランの姿。
レオは坂の一番下方で、《化け物》に囲まれながら鬼人のように凄まじい表情で、剣を振っていた。
「数が多い…!」
アントランが叫びながら、突っ込んで行く。
アリオンも直ぐ、踵を返し後に続く。
デュケスがその大きな体で次々《化け物》を叩き斬ってるが、追い付かない程多い。
アリオンがアントランの横に並ぶ。
アントランは《化け物》に埋め尽くされそうな戦う仲間を見、叫ぶ。
「どうして雑兵が一人もいない!」
アリオンは思い当たって呻いた。
「…殺られるから多分…レオが引かせた」
どっっっ!
走るアントランの横へ斬られた《化け物》が吹っ飛ぶ。
ファーレーンが髪を散らし、剣を振り切っていた。
氷のような冷静さ。
これだけの数の《化け物》を相手取り、恐怖の微塵も無い戦い振りは頼もしかった。
セルティスとデュランは背を合わせ、押し寄せる《化け物》に次々と剣を振る。
が、押されているのは明白。
アランが必死に前と背後に剣を振りながら、何とかセルティスを助けに入ろう前進する。
アントランは一気に目の前を塞ぐ《化け物》を二匹、剣を左右に振り斬って捨て、強引に道を開けてアランの元へ駆けつける。
アランが横に滑り込むアントランに叫ぶ。
「デュランが殺られる!
庇うセルティスも危ない!」
「!」
アリオンは群れの押し寄せる最前線でレオがたった一人、仲間に向かう《化け物》を押し止めようと、凄まじい形相で剣を振る姿を見、突っ走る。
《化け物》に取り囲まれ、今にも覆い尽くされて飲み込まれそうに見える。
“レオ!”
剣を構え、襲い来るキーナン《化け物》を斬って捨て、アリオンが必死で坂を駆け降りて行く。
ファルコンが《化け物》に剣を振り下ろし、凄まじい剣捌きで坂を下っていくアリオンに気づくと、目を見開きその目指す先。
《化け物》に周囲を囲まれ、今にもその中に姿を消しそうなレオに気づく。
「!」
ファルコンも目前の《化け物》を斬って捨て、アリオンの背を必死で追い駆ける。
“間に合うか…?!”
そう、心の中で叫んで。
けどその時、ファオンはリチャードの股の間に顔を埋め、再び口の中に咥えされられながら、それが確かに頭に響くのを聞いた。
“間に合うか…?!”
ファルコンの耳に聞こえぬ声がはっきりと。
押されまいと、気を奮い立たせ剣を振り続けるレオ。
助けようと目前の邪魔者を斬って捨てながら必死に駆けるアリオン。
その気持ちが、痛い程に解る…!
気を逸らすファオンの口の中から、リチャードが自(みずか)らの男根を引き抜き、ファオンを突き飛ばし、足を引き、開かせて上からのし掛かる。
ファオンはリチャードから顔を背け…そこに見えたのは…。
岩点在する草生える坂。
その向こう…!
杖を付いた年老いた《化け物》!
“アリオン!”
ファオンは必死で遠い、けれど気持ちの近い、アリオンに叫ぶ。
“左だ!右じゃ無い!左…!
その杖を付いた…《化け物》を!”
アリオンは頭の中にちかちかと響く警告に気づく。
だがレオは右。
今にも…取り囲まれた《化け物》の中へと沈みそうだ…!
アリオンの背後からファルコンも駆け込む。
が、ファルコンは突然気づいて左に目を向ける。
その視界にはっきりと、杖を付くしなびて老いた、《化け物》の姿が突き刺さる。
一瞬、レオを助けに駆け込む、アリオンの背に振り向く。
が、ファルコンは後を追わずレオをアリオンに託し、杖を付く《化け物》へと一直線に駆け寄った。
杖を付いた…しなびた《化け物》は勇猛な剣士ファルコンが剣を携え自分に向かい来るのに、ぎょっ!とする。
直ぐ横にいる若い《化け物》に杖を振る。
その《化け物》は突然、ファルコンと杖を付く《化け物》の間に飛び込む。
が、ファルコンは一瞬で剣を振り弾き飛ばし、一気にしなびた《化け物》に上背から剣を、振り切った。
ざっっっっっ!
「ぎゃあぅぅぅぅっ!」
血飛沫が飛び、しなびた《化け物》はファルコンの剣を喰らい吹っ飛んで、その激しい一撃で絶命した。
アリオンがレオ囲む《化け物》に突っ込んで行こうとした時、それが蠢くのが見えた。
突然。
黒の中にいたレオの姿が、いきなりはっきりと見える。
「…?!」
アリオンだけじゃない。
アランも。その横で戦うアントランも。
セルティスも。
そして背後、崩れかけたデュランが。
引いて行く《化け物》に、震える顔を向ける。
《化け物》らは必死に逃げ出し始めた。
戦う剣士らに背を向け、怯えたように、一目散に。
ファオンは痛む内壁をリチャードに再び抉られ、背を跳ね上げ仰け反りながら、ファルコンの声を聞いた。
やっぱり耳に聞こえぬ声が、頭に響き渡った。
“お前の言う通りだファオン…。
杖付く《化け物》を殺れば群れは引く!”
ファオンはリチャードに四度目に蕾を抉られながらそれを聞き、そして微笑(わら)いながら意識を、失った。
アリオンはレオに、そっと寄る。
頬に、肩に。
体のあちこちに《化け物》の腐臭漂う血飛沫を浴び、腕に背に、傷を作りながらもレオは、見つめるアリオンに、微かに頷いた。
突然アントランは視線を下に向け、坂を駆け下り始め、アリオンも気づいて視線を向ける。
黒い《化け物》の点在する中、戦うファーレーンの長く白っぽい金髪が見えた。
振り切る剣が銀の楕円を描き、幾度も幾度もきらりと光る。
その向こう、ファルコンの、激しく散る真っ直ぐな銀の髪。
黒い剛毛の襲い来る《化け物》相手に、剣を激しく振り下ろし、弾き飛ばしてた。
少し下。
デュケスの暴れまくる巨体。
飛び来る《化け物》を左手で掴み、横から来る《化け物》に右の剣を振り切り殺しながら、別の襲い来るキーナン《化け物》に、掴む左手の《化け物》をぶつけ吹っ飛ばす。
手前にアランの金髪。
坂の下へ、真っ直ぐ駆け降りて行く。
その遙か下に、セルティスの栗色の巻き毛。
そしてその背後に、周囲をびっしり《化け物》に取り囲まれながら、セルティスに庇われるように戦うデュランの姿。
レオは坂の一番下方で、《化け物》に囲まれながら鬼人のように凄まじい表情で、剣を振っていた。
「数が多い…!」
アントランが叫びながら、突っ込んで行く。
アリオンも直ぐ、踵を返し後に続く。
デュケスがその大きな体で次々《化け物》を叩き斬ってるが、追い付かない程多い。
アリオンがアントランの横に並ぶ。
アントランは《化け物》に埋め尽くされそうな戦う仲間を見、叫ぶ。
「どうして雑兵が一人もいない!」
アリオンは思い当たって呻いた。
「…殺られるから多分…レオが引かせた」
どっっっ!
走るアントランの横へ斬られた《化け物》が吹っ飛ぶ。
ファーレーンが髪を散らし、剣を振り切っていた。
氷のような冷静さ。
これだけの数の《化け物》を相手取り、恐怖の微塵も無い戦い振りは頼もしかった。
セルティスとデュランは背を合わせ、押し寄せる《化け物》に次々と剣を振る。
が、押されているのは明白。
アランが必死に前と背後に剣を振りながら、何とかセルティスを助けに入ろう前進する。
アントランは一気に目の前を塞ぐ《化け物》を二匹、剣を左右に振り斬って捨て、強引に道を開けてアランの元へ駆けつける。
アランが横に滑り込むアントランに叫ぶ。
「デュランが殺られる!
庇うセルティスも危ない!」
「!」
アリオンは群れの押し寄せる最前線でレオがたった一人、仲間に向かう《化け物》を押し止めようと、凄まじい形相で剣を振る姿を見、突っ走る。
《化け物》に取り囲まれ、今にも覆い尽くされて飲み込まれそうに見える。
“レオ!”
剣を構え、襲い来るキーナン《化け物》を斬って捨て、アリオンが必死で坂を駆け降りて行く。
ファルコンが《化け物》に剣を振り下ろし、凄まじい剣捌きで坂を下っていくアリオンに気づくと、目を見開きその目指す先。
《化け物》に周囲を囲まれ、今にもその中に姿を消しそうなレオに気づく。
「!」
ファルコンも目前の《化け物》を斬って捨て、アリオンの背を必死で追い駆ける。
“間に合うか…?!”
そう、心の中で叫んで。
けどその時、ファオンはリチャードの股の間に顔を埋め、再び口の中に咥えされられながら、それが確かに頭に響くのを聞いた。
“間に合うか…?!”
ファルコンの耳に聞こえぬ声がはっきりと。
押されまいと、気を奮い立たせ剣を振り続けるレオ。
助けようと目前の邪魔者を斬って捨てながら必死に駆けるアリオン。
その気持ちが、痛い程に解る…!
気を逸らすファオンの口の中から、リチャードが自(みずか)らの男根を引き抜き、ファオンを突き飛ばし、足を引き、開かせて上からのし掛かる。
ファオンはリチャードから顔を背け…そこに見えたのは…。
岩点在する草生える坂。
その向こう…!
杖を付いた年老いた《化け物》!
“アリオン!”
ファオンは必死で遠い、けれど気持ちの近い、アリオンに叫ぶ。
“左だ!右じゃ無い!左…!
その杖を付いた…《化け物》を!”
アリオンは頭の中にちかちかと響く警告に気づく。
だがレオは右。
今にも…取り囲まれた《化け物》の中へと沈みそうだ…!
アリオンの背後からファルコンも駆け込む。
が、ファルコンは突然気づいて左に目を向ける。
その視界にはっきりと、杖を付くしなびて老いた、《化け物》の姿が突き刺さる。
一瞬、レオを助けに駆け込む、アリオンの背に振り向く。
が、ファルコンは後を追わずレオをアリオンに託し、杖を付く《化け物》へと一直線に駆け寄った。
杖を付いた…しなびた《化け物》は勇猛な剣士ファルコンが剣を携え自分に向かい来るのに、ぎょっ!とする。
直ぐ横にいる若い《化け物》に杖を振る。
その《化け物》は突然、ファルコンと杖を付く《化け物》の間に飛び込む。
が、ファルコンは一瞬で剣を振り弾き飛ばし、一気にしなびた《化け物》に上背から剣を、振り切った。
ざっっっっっ!
「ぎゃあぅぅぅぅっ!」
血飛沫が飛び、しなびた《化け物》はファルコンの剣を喰らい吹っ飛んで、その激しい一撃で絶命した。
アリオンがレオ囲む《化け物》に突っ込んで行こうとした時、それが蠢くのが見えた。
突然。
黒の中にいたレオの姿が、いきなりはっきりと見える。
「…?!」
アリオンだけじゃない。
アランも。その横で戦うアントランも。
セルティスも。
そして背後、崩れかけたデュランが。
引いて行く《化け物》に、震える顔を向ける。
《化け物》らは必死に逃げ出し始めた。
戦う剣士らに背を向け、怯えたように、一目散に。
ファオンは痛む内壁をリチャードに再び抉られ、背を跳ね上げ仰け反りながら、ファルコンの声を聞いた。
やっぱり耳に聞こえぬ声が、頭に響き渡った。
“お前の言う通りだファオン…。
杖付く《化け物》を殺れば群れは引く!”
ファオンはリチャードに四度目に蕾を抉られながらそれを聞き、そして微笑(わら)いながら意識を、失った。
アリオンはレオに、そっと寄る。
頬に、肩に。
体のあちこちに《化け物》の腐臭漂う血飛沫を浴び、腕に背に、傷を作りながらもレオは、見つめるアリオンに、微かに頷いた。
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