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二人きりの時間
49 東の尾根のアントラン
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ファオンがシーリーンと抱き合い、微睡(まどろ)んでいると、外がざわつく。
ファオンはシーリーンの表情を確かめる。
シーリーンが頷くのを見て、ファオンは衣服の布を被り、テントの入り口の布を払って外を伺う。
剣を携え、東の尾根の《勇敢なる者》が中央の広い場所に入って来ていた。
グレーがかった栗色。
瞳はこの辺りでは珍しい、翡翠色。
目はアーモンド型で鼻は小さく真っ直ぐの鼻筋。
唇も小さめ。
どちらかと言えば女性的な顔立ちだった。
が、迎える皆…一番長身のファルコンですら、表情を引き締める。
長身揃いの《勇敢なる者》の中、それ程背が高い訳でも無かったが、ファオンよりは明らかに高い…。
アントランは遅れてキースのテントから出て来た長のレオではなく、斜め横のテントから見つめるファオンに顔を向けて笑った。
「兄貴にそっくりだな。
但し、顔立ちだけだが」
アランがアントランの方へと歩き出し、憮然と怒鳴る。
「デュケスは反省したのか?」
アントランは見知った顔を見て、気安くアランに近寄る。
「誰が調教してると思ってる?
あのファーレーンだぞ?
顔はそりゃ、美麗だが、きついの何のって…」
アランは同い年で何度か剣を交えた事のあるアントランを呆れて見た。
「…お前がきついというなら、相当だな…」
アントランは頷く。
「…末っ子の砂糖菓子くらい甘けりゃ、俺も『綺麗だな』と安心して見惚れることもできるんだが」
そう言って、呆けて見ているファオンに、アラン共々振り返る。
レオが厳しく言う。
「お前にここの《皆を繋ぐ者》は抱かせないぞ!」
アントランは、肩をすくめる。
「頼まれてもごめんだ。
似た顔でも氷のトゲが無いと、喜んで抱いて東尾根に戻った際、デレついてファーレーンを見つめたりしたら…。
後がどれ程恐ろしいか」
広場の端にいたファルコンも寄って来ると、ぶすっ。として言う。
「お前でも怖いのか」
アントランは長身のファルコンを見上げて言う。
「俺でも怖い」
アランが素っ気無く言った。
「だがファーレーンはファルコンに頭を下げたぞ」
アントランの瞳が見開かれる。
「…そんなことが起こりえるのか?」
ファルコンが吐息を吐き出す。
「ずっと東尾根で一緒のお前でも、ファーレーンが頭を下げるとこ見た事無いのか?」
アントランは即座に言った。
「ありえない」
そしてまた、ファオンを見つめる。
「その弟を、跪かせ男の男根なんぞを咥えさせ、尻に咥え込ませて腰振らせたりしたら…。
俺だったら、頼まれても指一本触れたくない。
あんたら、本当にファーレーンの報復が怖く無いんだな?」
レオがむすっとして言う。
「ファオンを《皆を繋ぐ者》に選出したのは俺達じゃない。
直ぐファルコンと下ってくれ。
リチャード!デュランの面倒が見られるか?!」
セルティスが直ぐ進み出る。
「リチャードはアリオンに付かせろ。
デュランの面倒は俺が見る」
レオが頷く。
そしてアランに振り向く。
「ここを頼む」
アランが頷く。
ファオンはずっとそこにいた。
東の尾根の者なのに、アントランは直ぐ皆と肩を並べ、剣を携え岩を下って行く。
アランは羨ましげにアントランを見つめるファオンに、顎をしゃくる。
「…シーリーンを見ててやれ」
ファオンは俯き…そして頷いて、テントの布を下げ、中へ戻って行った。
ファオンはシーリーンの表情を確かめる。
シーリーンが頷くのを見て、ファオンは衣服の布を被り、テントの入り口の布を払って外を伺う。
剣を携え、東の尾根の《勇敢なる者》が中央の広い場所に入って来ていた。
グレーがかった栗色。
瞳はこの辺りでは珍しい、翡翠色。
目はアーモンド型で鼻は小さく真っ直ぐの鼻筋。
唇も小さめ。
どちらかと言えば女性的な顔立ちだった。
が、迎える皆…一番長身のファルコンですら、表情を引き締める。
長身揃いの《勇敢なる者》の中、それ程背が高い訳でも無かったが、ファオンよりは明らかに高い…。
アントランは遅れてキースのテントから出て来た長のレオではなく、斜め横のテントから見つめるファオンに顔を向けて笑った。
「兄貴にそっくりだな。
但し、顔立ちだけだが」
アランがアントランの方へと歩き出し、憮然と怒鳴る。
「デュケスは反省したのか?」
アントランは見知った顔を見て、気安くアランに近寄る。
「誰が調教してると思ってる?
あのファーレーンだぞ?
顔はそりゃ、美麗だが、きついの何のって…」
アランは同い年で何度か剣を交えた事のあるアントランを呆れて見た。
「…お前がきついというなら、相当だな…」
アントランは頷く。
「…末っ子の砂糖菓子くらい甘けりゃ、俺も『綺麗だな』と安心して見惚れることもできるんだが」
そう言って、呆けて見ているファオンに、アラン共々振り返る。
レオが厳しく言う。
「お前にここの《皆を繋ぐ者》は抱かせないぞ!」
アントランは、肩をすくめる。
「頼まれてもごめんだ。
似た顔でも氷のトゲが無いと、喜んで抱いて東尾根に戻った際、デレついてファーレーンを見つめたりしたら…。
後がどれ程恐ろしいか」
広場の端にいたファルコンも寄って来ると、ぶすっ。として言う。
「お前でも怖いのか」
アントランは長身のファルコンを見上げて言う。
「俺でも怖い」
アランが素っ気無く言った。
「だがファーレーンはファルコンに頭を下げたぞ」
アントランの瞳が見開かれる。
「…そんなことが起こりえるのか?」
ファルコンが吐息を吐き出す。
「ずっと東尾根で一緒のお前でも、ファーレーンが頭を下げるとこ見た事無いのか?」
アントランは即座に言った。
「ありえない」
そしてまた、ファオンを見つめる。
「その弟を、跪かせ男の男根なんぞを咥えさせ、尻に咥え込ませて腰振らせたりしたら…。
俺だったら、頼まれても指一本触れたくない。
あんたら、本当にファーレーンの報復が怖く無いんだな?」
レオがむすっとして言う。
「ファオンを《皆を繋ぐ者》に選出したのは俺達じゃない。
直ぐファルコンと下ってくれ。
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「リチャードはアリオンに付かせろ。
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レオが頷く。
そしてアランに振り向く。
「ここを頼む」
アランが頷く。
ファオンはずっとそこにいた。
東の尾根の者なのに、アントランは直ぐ皆と肩を並べ、剣を携え岩を下って行く。
アランは羨ましげにアントランを見つめるファオンに、顎をしゃくる。
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