アグナータの命運

あーす。

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二人きりの時間

46 変えられた順番

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 アリオンとセルティスは俯きまだ震えてるファオンを、庇うように後ろに立って、伺う。

レオがシーリーンの肩を担ぎ、ファオンに怒鳴る。

「ファオン!
今夜はシーリーンのテントに泊まれ!」

ファオンは顔を上げて本当の次の相手、アランを見る。

アランは治療士に止血されながら、ほっとしたような表情を見せた。

シーリーンはレオに担がれながら振り向く。

ブルーグレーの瞳が熱を帯びてファオンを捕らえ、ファオンはそんなシーリーンと担ぐレオの背を追いかけて、テントの入り口を潜った。

シーリーンを毛皮の上に座らせ、レオが足に屈む。

「…ひどく捻ったのか?」

ファオンが振り向くと、背後から治療士が入って来ていた。

シーリーンはレオに足先を掴まれ捻られて、眉間を寄せる。

「…岩場で道が細く、ちょっと足を滑らせたら挫くような足場の悪い場所で…あの…馬鹿!」

シーリーンの吐き捨てる言葉を聞きながら、レオは顔を上げて治療士に頷く。
屈強な体格の治療士はシーリーンの足元に屈むと、薬草を当て、布を巻いて行く。

「腫れてる。
今日一日は歩かない方が良い」

立ち上がったレオはファオンの横を通り過ぎながら囁く。
「シーリーンを支えて歩けるか?」

ファオンは頷く。

レオは頷き返し、横を通り過ぎ、テントの入り口で振り向く。

「…ファーレーンに…使者を送りたいか?
…本当は?」

ファオンはシーリーンの元に行こうとしてレオに振り向く。

大きな青く潤んだファオンの瞳を見て、レオはもうその本心が解った。

けれどファオンは掠れた声で囁く。

「でも僕はここの皆が好きで、シュティッセンを裏切れない」

レオが尋ねる。

「シュティッセンは何と言った?」

ファオンは俯く。

「本当は自分が貴方たち全員を護りたいと」

レオが俯く。

その表情を見て、ファオンは知った。

シュティッセンを失い…レオこそが本当は、とても辛いのだと。

“彼は泣き言を言わない。
女性の恋人のように…抱きしめてあげて下さい…"

シュティッセンの言葉と共にその想いが心に広がり、胸が詰まる。

ファオンは俯いて囁く。

「僕…は未熟で不十分で…でも…。
出来るだけ………」

顔を上げて言うと、レオは顔を背けた。

「…それで十分だ」

まるで泣き顔を隠すように背を向け、レオは出て行った。

ファオンは暫く切ない気持ちで…重圧を一人で抱えるレオの孤独な背を、見送った。
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