42 / 286
二人きりの時間
42 夕食の時
しおりを挟む
夕飯の席。
皆が野外の風に吹かれながら、たき火を囲み石の椅子に座り、こちらにやって来るファオンとセルティスを見た。
セルティスは大切な者のようにファオンの背に腕を回し、ファオンもセルティスを、目に見えない…“気”で護るように包んでいた。
ファルコンがレオに振り向く。
レオは二人を見て微笑んでた。
シーリーンとアリオンは吐息と共に、同時に顔を下げ、気づき互いを見た。
リチャードは泣きそうな表情をした。
嬉しいとも悲しいともとれる表情。
キースはそっと視線を向けて頷き、デュランは呆けてファオンを見続ける。
アランだけは複雑な表情で顔を、俯けた。
その夕食は皆が口を聞いていた。
それぞれが互いに軽い話題で情報を交換しあってた。
ファオンは皆を、見回す。
そしてセルティスに振り向く。
「いつも…喋らなかったのに…?」
セルティスはファオンに振り向く。
「…お前が…悲壮だったから」
ファオンは顔を下げる。
ちゃんと…彼らは自分を見ていた。
“僕は僕しか見えてなかったのに…”
ファオンは顔を上げてキースを見つめる。
炎に照らされた横顔は…でもやっぱり青く見えた。
リチャードが二度、キースに視線を送り、俯く。
キースが好きで…嫌い。
そんな表情だった。
レオとファルコンはキースの両側に座り、彼を護ってるように見えた。
“失いたく無い大事な戦士”
そんな風に。
アランが顔を上げて、チラとファオンを見、ファオンは気づいてアランを見る。
アランの横顔はデュランの見せた顔に似ていた。
“出来れば抱きたくない。
だが仕方無い”
ファオンは顔を上げる。
アランはちゃんと気遣ってくれる。
だから…平気で抱けないんだ。
心が温かくなった。
父様に認められたくて《勇敢なる者》になりたかった。
愛してくれない、振り向いてくれない父様…。
だから自分には…長兄ファーレーンほど価値は無いのだと…思い込んでいた。
でも…。
ファオンは顔を上げる。
ここの皆には気持ちがある。
自分を見つめてくれる…。
ファオンは横のセルティスを見る。
セルティスはその向こうのデュランと話していた。
まだ尾根に上がったばかりのデュラン…。
セルティスは親しい人のことをデュランの口から聞いていた。
デュランも…出て来たばかりの領地の、馴染みの人々らの話が出来て、嬉しそうだった…。
和む…僅かな時間。
明日、命を落とすかも知れない戦士達の、大切な大切な時間。
ファオンは初めて食事を噛みしめた。
それは…少し苦く、けれどとても温かい…味がした。
皆が野外の風に吹かれながら、たき火を囲み石の椅子に座り、こちらにやって来るファオンとセルティスを見た。
セルティスは大切な者のようにファオンの背に腕を回し、ファオンもセルティスを、目に見えない…“気”で護るように包んでいた。
ファルコンがレオに振り向く。
レオは二人を見て微笑んでた。
シーリーンとアリオンは吐息と共に、同時に顔を下げ、気づき互いを見た。
リチャードは泣きそうな表情をした。
嬉しいとも悲しいともとれる表情。
キースはそっと視線を向けて頷き、デュランは呆けてファオンを見続ける。
アランだけは複雑な表情で顔を、俯けた。
その夕食は皆が口を聞いていた。
それぞれが互いに軽い話題で情報を交換しあってた。
ファオンは皆を、見回す。
そしてセルティスに振り向く。
「いつも…喋らなかったのに…?」
セルティスはファオンに振り向く。
「…お前が…悲壮だったから」
ファオンは顔を下げる。
ちゃんと…彼らは自分を見ていた。
“僕は僕しか見えてなかったのに…”
ファオンは顔を上げてキースを見つめる。
炎に照らされた横顔は…でもやっぱり青く見えた。
リチャードが二度、キースに視線を送り、俯く。
キースが好きで…嫌い。
そんな表情だった。
レオとファルコンはキースの両側に座り、彼を護ってるように見えた。
“失いたく無い大事な戦士”
そんな風に。
アランが顔を上げて、チラとファオンを見、ファオンは気づいてアランを見る。
アランの横顔はデュランの見せた顔に似ていた。
“出来れば抱きたくない。
だが仕方無い”
ファオンは顔を上げる。
アランはちゃんと気遣ってくれる。
だから…平気で抱けないんだ。
心が温かくなった。
父様に認められたくて《勇敢なる者》になりたかった。
愛してくれない、振り向いてくれない父様…。
だから自分には…長兄ファーレーンほど価値は無いのだと…思い込んでいた。
でも…。
ファオンは顔を上げる。
ここの皆には気持ちがある。
自分を見つめてくれる…。
ファオンは横のセルティスを見る。
セルティスはその向こうのデュランと話していた。
まだ尾根に上がったばかりのデュラン…。
セルティスは親しい人のことをデュランの口から聞いていた。
デュランも…出て来たばかりの領地の、馴染みの人々らの話が出来て、嬉しそうだった…。
和む…僅かな時間。
明日、命を落とすかも知れない戦士達の、大切な大切な時間。
ファオンは初めて食事を噛みしめた。
それは…少し苦く、けれどとても温かい…味がした。
0
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!
彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。
何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!?
俺どうなっちゃうの~~ッ?!
イケメンヤンキー×平凡
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
23時に明かりを消して
秋臣
BL
俺と晃は幼馴染。
家が近所で親同士も仲がいい、一緒にいるのが当たり前だったし、なんの疑問もなかった。
ある日兄貴のアパートに誘われた俺と晃に
兄貴はニヤリと笑ってこう言った。
「23時になったら明かりとテレビを消せ」
それが俺たちの関係を大きく変えることになるなんて思いもせずに…
学園生活は意外と大変
白鳩 唯斗
BL
毎年恒例の親族達の日帰り旅行で、事故が起きた。家族を全員失った魁星は、葬式に参加する。
そこで、唯一生き残った親族、はとこの雪人の存在を知ることになる。
権利争いが起きないようにと、魁星が雪人を養子に迎えることになり、父親になってしまう。
15歳の魁星は高校に通いながら、6歳のはことの面倒を見ることになる。
面倒見の良い優しい主人公です。
シリアスは少なめかもしれません。
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる