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二人きりの時間
29 二人だけの時 ファルコン 2
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ファルコンはファオンの横に、どさっ!と身を下ろす。
ごろん。と横になって呟く。
「…今日は疲れた」
「…………」
ファオンは背を向けるファルコンに顔を向けて横になる。
白い筋肉の盛り上がったその背には幾つもの古傷。
全て《化け物》の付けた爪の跡…。
「たくさん…殺した?」
「…だが、キリが無い…。
奴らは冬眠る前…卵をどこかに大量に産み付ける。
かつて《勇敢なる者》だった者らが見回り、見つければ潰す。
それでも…春になるとキチガイのような数が生まれ出て、腹を空かして押し寄せる…」
ファルコンは振り向く。
真っ直ぐなとても綺麗な鼻筋をしていて、彼の顔立ちがとても美男だと、こんなに間近で見ると思い知る。
グレーの瞳がきらり…と光る。
けれどファオンを見つめながら、ファルコンは真顔で囁く。
「雪解けと共に生まれ落ちて。
なのに一気に大人に成長する。
産まれたばかりの子供は、大人の《化け物》ですら近寄るのを避ける。
喰われるからだそうだ。
奴らに人間の死体を放り投げ、人間の味を覚えた頃に大人の《化け物》達は“狩れ”と命じ、群れは崖を登り来る。
幾度も。
幾度も」
ファオンはかつて《勇敢なる者》だった師の言葉を思い出す。
「…でも大人も産まれたばかりの《化け物》をも、操る者がいると聞いた」
ファルコンはごろり。と身を返す。
「…伝説だな。
誰も見た事が無い」
「多くの群れに一人ずつ。
その操る者が死ねば、その群れは全滅すると」
ファルコンは振り向く。
「…杖を付いた…長老のような《化け物》を殺った時、一群が全て撤退したことはあった」
ファオンは必死にファルコンに訴える。
「…操る者は《化け物》の力の源だから、そいつさえ殺れば…。
全ての群れの操る者を全部殺せば、《化け物》は滅ぼせると」
ファルコンはその綺麗な顔をファオンに向け、じっ…と見つめた。
「…一つの群れの数を知ってるか?
少なくても60。
それが100にも200にも増える。
卵から子供は産まれ続けるから」
ファオンはファルコンを見つめた。
が、ファルコンは変わらぬ表情で言う。
「…そんな中からどうやってたった一人のボロを纏った杖付く“操る者”を見つける?
来たらただ殺すしかない。
どれだけ数がいようと」
ファオンは囁いた。
「…狩れと命ずるのは大人でも、群れを扇動するのは操る者だ…。
そいつが群れに力を与えてる…」
ファルコンはジロリ…とファオンを見つめ、けれどぶっきらぼうに言う。
「そいつをもし見かけたら、出来るだけ殺すよう努力しよう」
ファオンは背を向けるファルコンに、そっと呟く。
「《勇敢なる者》でも…喰われた者はいる?」
ファルコンは背を向けたまま言った。
「《勇敢なる者》は喰われるぎりぎりまで戦い、喰われると解った時自決する。
自決出来ず生きたまま喰われる《勇敢なる者》は《勇敢なる者》じゃない」
ファオンは吐息を吐いた。
シュティッセンはきっと…自分が《皆を繋ぐ者》の代では決して、一人の《勇敢なる者》をも死なせないと…護ってきたんだろうな…。
ファルコンの背にそっと、顔を寄せる。
ファルコンはじっとして…やがてファオンはその温もりに浸りながら目を閉じ、眠りについた。
ごろん。と横になって呟く。
「…今日は疲れた」
「…………」
ファオンは背を向けるファルコンに顔を向けて横になる。
白い筋肉の盛り上がったその背には幾つもの古傷。
全て《化け物》の付けた爪の跡…。
「たくさん…殺した?」
「…だが、キリが無い…。
奴らは冬眠る前…卵をどこかに大量に産み付ける。
かつて《勇敢なる者》だった者らが見回り、見つければ潰す。
それでも…春になるとキチガイのような数が生まれ出て、腹を空かして押し寄せる…」
ファルコンは振り向く。
真っ直ぐなとても綺麗な鼻筋をしていて、彼の顔立ちがとても美男だと、こんなに間近で見ると思い知る。
グレーの瞳がきらり…と光る。
けれどファオンを見つめながら、ファルコンは真顔で囁く。
「雪解けと共に生まれ落ちて。
なのに一気に大人に成長する。
産まれたばかりの子供は、大人の《化け物》ですら近寄るのを避ける。
喰われるからだそうだ。
奴らに人間の死体を放り投げ、人間の味を覚えた頃に大人の《化け物》達は“狩れ”と命じ、群れは崖を登り来る。
幾度も。
幾度も」
ファオンはかつて《勇敢なる者》だった師の言葉を思い出す。
「…でも大人も産まれたばかりの《化け物》をも、操る者がいると聞いた」
ファルコンはごろり。と身を返す。
「…伝説だな。
誰も見た事が無い」
「多くの群れに一人ずつ。
その操る者が死ねば、その群れは全滅すると」
ファルコンは振り向く。
「…杖を付いた…長老のような《化け物》を殺った時、一群が全て撤退したことはあった」
ファオンは必死にファルコンに訴える。
「…操る者は《化け物》の力の源だから、そいつさえ殺れば…。
全ての群れの操る者を全部殺せば、《化け物》は滅ぼせると」
ファルコンはその綺麗な顔をファオンに向け、じっ…と見つめた。
「…一つの群れの数を知ってるか?
少なくても60。
それが100にも200にも増える。
卵から子供は産まれ続けるから」
ファオンはファルコンを見つめた。
が、ファルコンは変わらぬ表情で言う。
「…そんな中からどうやってたった一人のボロを纏った杖付く“操る者”を見つける?
来たらただ殺すしかない。
どれだけ数がいようと」
ファオンは囁いた。
「…狩れと命ずるのは大人でも、群れを扇動するのは操る者だ…。
そいつが群れに力を与えてる…」
ファルコンはジロリ…とファオンを見つめ、けれどぶっきらぼうに言う。
「そいつをもし見かけたら、出来るだけ殺すよう努力しよう」
ファオンは背を向けるファルコンに、そっと呟く。
「《勇敢なる者》でも…喰われた者はいる?」
ファルコンは背を向けたまま言った。
「《勇敢なる者》は喰われるぎりぎりまで戦い、喰われると解った時自決する。
自決出来ず生きたまま喰われる《勇敢なる者》は《勇敢なる者》じゃない」
ファオンは吐息を吐いた。
シュティッセンはきっと…自分が《皆を繋ぐ者》の代では決して、一人の《勇敢なる者》をも死なせないと…護ってきたんだろうな…。
ファルコンの背にそっと、顔を寄せる。
ファルコンはじっとして…やがてファオンはその温もりに浸りながら目を閉じ、眠りについた。
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