アグナータの命運

あーす。

文字の大きさ
上 下
17 / 286
聖なる名の下の性奴

17 熱情の時間 アリオン

しおりを挟む
 アリオンの唇。

ファオンはアリオンの腕に抱きすくめられ、時が一気に遡(さかのぼ)るのを感じた。

あの何も知らなかった幼い日に。

雷の轟音が響く。

庇うように背を外に向けて立つアリオン。
肩と背は外からの激しい雨粒で塗れていた。

いつの間にか抱きしめられ、顔が寄り唇を塞がれた時ですら、想像もしなかった。

その後の事を。

アリオンの唇が押しつけられ、次第に手が下へと這い、衣服を下げられ腿を担がれ…。

びっくりした。
最初に指。
ほぐすようにゆっくりと動かされて次第に体が火照り、熱に浮かされたようになる。

指のもたらす刺激なのか、憧れのアリオンに抱きすくめられ、密着した為なのか。

蕾に彼の男根が触れた時。
もうすっかりぼうっとなっていた。

けれど抱きすくめられ、雷の大音響と共に貫かれる。

痛みと羞恥は消え去っていた。
かき抱(いだ)くアリオンの腕の熱さ。

雷の恐怖。
抉られた刺激。
火照る身の熱さ。

世界で唯一、頼れる者のように必死にアリオンにしがみついた。

美しく男らしい顔が覗き込む。
普段感情を表さない青い瞳に熱がこもる。
情熱的に見つめられて、頭がくらくらした。

切なげな吐息。
雷の大音響は周囲に轟き響く。

ばりばりばりっ!

直ぐ近くで木の裂ける音。
やがて、ずしん!

大木が周囲を揺らし、倒れる。

怖かった。
いつこの木に落ちるのかと。

生きている事を確かめるような…熱く切ない行為。

この世にただ二人。
運命を共にした二人。

雷がこの木を裂けば、二人共が果てる。
その恐怖を忘れる為、必死でアリオンにしがみついた。

やがて突き刺すような激しい雨音だけになり。それも止み…。

雲の間から陽射す中、焦げた大木の横をアリオンと手を繋ぎ帰った。

二人の間は確実にその時から、変わってた。


ファオンの唇に押しつけられたアリオンの唇に熱が籠もる。

舌が差し入れられる。

ファオンは情熱的にくねり、誘うアリオンの舌についていけず、うわずる。

彼に触れられるだけで、あの時が蘇る。

行為は親密な時間に変わる。

誰との距離より近い。
遠く離れた二人を結びつける時間に。

アリオンの熱を帯びた手が、ファオンの腿に触れる。
ゆっくり上に這い、やがて、ファオンの股の間に触れ、男根を握り込む。

ファオンは喉を鳴らす。
アリオンの手でもたらされる快感を予感して。

アリオンの唇が離れ、首筋に顔を埋め、ファオンの感じる場所に吸い付く。

アリオンの手はファオンの男根を愛しさを込めてしごき上げ、ファオンはアリオンの熱に包まれ、アリオンの腕に身を任せきる。

アリオンの唇が降りて行く。
胸を這い、乳首にそっと唇で愛しげに触れ、次に舌で舐め上げ、唇に含み吸い上げる。

「あ…っ…んっ」

アリオンに吸われると甘い疼きとなって男根へと伝い、たまらなくなる。

もう…アリオンがどこに到達するか、知っている。

けれど思い返す。
アリオンを含め8人の男に犯された蕾のことを。

アリオンは怯えるファオンの心を知っているみたいに顔を上げる。

切なげに寄った眉。
いつも冷静な青い瞳に、哀惜と同情を溢れさせて。

自分はそんな風に傷付けはしない。

青い瞳はそんな感情をたたえ見つめる。

「…っ!」

抱きついてしまう。
アリオンの言葉が蘇る。

“俺は変わってない。
お前のものだ"

涙が滴る。

置き去りにしたのに。
忘れ去ろうと、そう思ったのに。

アリオンの手が腿を掴む。

向けた顔に微笑をたたえ。
見つめながら。

アリオンは腿を持ち上げ、腰を上げ、男根の先端で蕾にそっと触れる。

まるで合図のように。

ファオンの身が竦む。
アリオンはファオンの輝く湖水のような、青の瞳を見つめたまま。

ゆっくりと身を進める。

抱く腕は包み込むように優しい。
肌を滑り行く、アリオンの髪ですら。

“どうしてだろう…?"

ファオンは思う。

アリオンが挿入(はい)って来る。
その事は愛の証のように感じる。

“行為は同じなのに。
なのにどうして…?"

シーリーンは全身で愛を告げていた。

アリオンは語らない。
抱きしめる腕で。
挿入の動きで。

そして男根を握り、愛撫するその手で。
告げている。

“繋がりたい。
愛し合いたい。
欲しい。
愛しい。
自分だけのものにしたい。

…自分、だけのものに"

どうしてそれがこんなに幸福に感じるのか、ファオンには解らなかった。

夢中で縋り付いた。

あの落雷の中、初めてアリオンと繋がった時のように。

世界で唯一人、縋りつき抱き止めてくれる人のように。



「…あ………っ!」

アリオンは腕に抱くファオンの甘い、喘ぎを聞く。

昔…あの落雷の時、押さえていた熱情を行動で表してから…。

もう自分を偽れなかった。

ファオンを見かけ…機会がある毎に腕に抱き寄せ…気づくと裸のファオンに唇付け…甘やかな乳首を舌で愛撫し…そして柔らかな双丘のその奥。

唯一ファオンを自分のものにしておける場所を貫いて、一人占めした。

愛されると震えながら応えてくる、愛おしい幼気(いたいけ)さ。

真っ赤に染まる唇に口付けると…甘く…そして切なく…。
もうファオンを自分の物にせずにはいられず…。

一度抱くと直ぐ次…。
どんどん欲しくなり…たまらなくなって…。

機会があれば抱いていた。

どれだけ貪っても…足りないほど飢えていた。

腕に抱き挿入すると…ファオンは必死で小さな手で…縋り付く。

それがあんまり幸福で…。

縋り付かれ、貫く度、ファオンが自分の物に、なるような錯覚に囚われた。

やがてシーリーンに知られ…。

領地を数日、開けていた時、シーリーンに奪われた。

それからは…シーリーンも機会があればファオンを抱き…。

ムキになって自分に引き戻すようにファオンを抱き………。

抱く度に甘い気分に浸り、放せなくなる…。

どうして…こんなに愛おしいのか…。

自分の気持ちも理解出来ないまま…情熱の赴くまま求め…。
腕に抱き続けた。

…今、ファオンは幼い子供から確実に…引き締まった肉体の、少年へと成長し…。

以前のあどけなさは美しさに代わり、もし《皆を繋ぐ者》アグナータでなければ…。
簡単に、触れられないほどの美貌を纏っていた。

…その彼が、《勇敢なる者》レグウルナスらに代わる代わる引き裂かれる姿を見るのは…辛かった。

掻き抱くと、昔のように…縋り付いてくる。

下から貫くと…。

ファオンの熱く、甘い吐息が頬にかかる…。

六年は長い…。

なのに…。
どうして腕に抱くと…気持ちは、あの時のまま。

狂おしいほど愛おしくて…。
求めてしまうのだろう…。

「あ…あっ!」

その甘い喘ぎもあの時のままだ…。

アリオンはまた、ファオンを掻き抱くと、腰を下から突き上げる。

「ああっ…んっ!」

そう…解ってる…。
ここがいいんだろう?

そう…擦り上げてやると、ファオンの喉が鳴る。

気持ちよさげに顎を上げて感じ、震える。

「んん…んっ………」

そして引き抜くぎりぎりで、一気に突き上げると、ファオンの身がかっ!と熱を発し悶える。

「ああんっ…!」

縋り付く指が喰い込む。

アリオンはたまらなくてファオンを掻き抱いたまま、頬を寄せて更に、突き上げる。

もう…ファオンの青い綺麗な瞳は潤む。

“…好きだ…”

「ああっ!」

“…愛してる”

「あ…ぅんっ!」

どの言葉も、陳腐だ…。

どうしたら…この思いを伝えられる?

これ…だけだ…。

「ああっ…ん………っ」

そう…ファオンの甘い喘ぎ…。

腕に抱かれ、貫かれて幸福だと、告げる証。

「…ファオン…」

名を呼ぶと、ファオンはもっとしがみつく。

「あっ…あ…あんっ………」

長い経験で知ってる、いい場所を連続して擦り上げる。
そうすると…もうファオンの男根に刺激を与えなくても…ファオンはたまらなく感じてる。

もう…愛しくてたまらなくて、つい下から思い切り抉り、突き刺してしまう。

「あ…………んっ!」

切なげな吐息…。
もう…寸前だろう…。


ファオンはアリオンのその突き刺しがもう直、逝く時の合図だと、知っていた。

連続して激しく突き入れられると…いつも頭が熱で霞む…。

「んんっ…アリ…オン……………」

そして…気づくと、解き放ってる…。

蕾の奥に…熱い滴りを感じ…腿を伝い始めると…それが、アリオンが自分に解き放つ、愛の証のように…いつも感じていた。

アリオンの、顔が傾く。

ファオンはその懐かしい…整いきって、男らしく美しい顔が倒れ込んで唇に、そっと唇が触れるのを、体中が幸福で満たされたように、受け止めた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

興味本位で幼なじみ二人としたら開発されたんだけど

BL / 完結 24h.ポイント:411pt お気に入り:96

悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

BL / 連載中 24h.ポイント:2,534pt お気に入り:10,415

灰かぶりの王子様

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:41

個人授業は放課後に

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:222

平穏なβ人生の終わりの始まりについて(完結)

BL / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:1,330

貴方は俺を愛せない

BL / 連載中 24h.ポイント:319pt お気に入り:234

騎士調教~淫獄に堕ちた無垢の成れ果て~

BL / 完結 24h.ポイント:291pt お気に入り:1,793

人間アルコールサーバー ~barエマへようこそ~

BL / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:49

メイストーム

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:13

処理中です...