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聖なる名の下の性奴
12 新たなレグウルナス(勇敢なる者) デュラン
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来た途端入った湯に、再びファオンは浸かる。
そして…男達が入る場所。
双丘の奥を、テスは花で擦り上げる。
花の香りが立ち上る。
テスの触れる手は義務的。
恥辱は沸き上がって来ない。
ファオンはほっとした。
テスの手は無造作に、乳首にも花を擦りつけて
「もう上がっていい」
と言って背を向け、湯から上がっていく。
テスの差し出す衣服。
それはやっぱり…。
衣服とは呼べないもの。
白い布を前後に垂らしただけ。
横は開いたまま。
歩くと、風に揺れて割れた衣服から双丘が覗く。
赤くなるファオンに、テスは振り向く。
「そんな風に赤く成ると、よけい…欲情されるぜ…」
ファオンが顔を上げる。
湯の向こうの岩の影から、リチャードがじっと視線を送っていた。
ファオンは一瞬で青くなる。
この先彼に望まれたら拒めない。
そしてその間は…自分の身は彼のもの…。
かつて幼い頃、両腕を縛り上げられ、衣服と言えば、乳首を繋ぐ小さな鉄の輪と鎖。
リチャードは…虐める時いつもそれを、乱暴に引いた。
アリオンとシーリーン、二人に…甘やかされるように愛撫されたその場所を、リチャードは容赦無く虐める。
「女のようにこんな所で感じてやがる」
そう言われてまた、リチャードは鎖を引く。
鉄の輪で挟まれた乳首は痛み混じりに感じ…。
泣き続けた…。
思い返すと身が震い出す。
だが《勇敢なる者》らの群れるテント在る、岩場の入り口。
大きな岩の間の道に、若き戦士が姿を現す。
「(…デュラン!)」
ファオンはその姿を見、衝撃で打ちのめされる。
濃い栗色の巻き毛。
空色の瞳。
ずっと…《勇敢なる者》になる為、競ってきた相手………。
ファオンは涙が滴ってると、気づかなかった。
頬が濡れている事ですら。
幾度も幾度も…剣を交え、寸でで勝てた、手強い相手。
修行の旅を終えて、闘技場に姿を現すまでは、彼(デュラン)こそが、《勇敢なる者》に選出されると皆に期待されていた…。
だから、デュランよりも小柄なファオンが勝った時、デュランはファオンを敵視した…。
「ファオン」
デュランは涙を頬に滴らせ続ける、白い薄衣のファオンの姿を、呆然と見つめた。
ファオンは見つめ返すデュランを見、つい先日までいた闘技場を思い浮かべる。
デュランは誰よりも背が高く、時に傲慢。時に爽やかな笑顔を見せながら、軽々と剣を振っていた。
誰よりも軽やかに。
誰よりも激しく。
けれど勝てた。
だから信じられた。
僕こそが…《勇敢なる者》になれるのだと。
デュランは突然目の前に現れ、《勇敢なる者》への道を遮った、強く美しき剣士の、今の姿に、目を伏せた。
ファオンの心に、それは突き刺さる。
最早…ライバルですら無い。
デュランの様子はそう物語っていて、ファオンはいたたまれなくなり、その場から背を向け、駆け出す。
どんっっっ!
逞しい誰かにぶつかり、抱き止められて、ファオンはもがく。
レオは逞しい胸にファオンを抱き止めると、腕を掴み歩き出す。
ファオンは引きずられるようにレオに連れられ、デュランの目前に連れて来られた。
俯いていると、レオがデュランに言った。
「…抱け。
新入りへの特別な贈り物だ」
どんっ!
と突き飛ばされ、ファオンはデュランの胸に、つんのめってぶつかる。
デュランの腕は、ファオンを抱き止めはしない。
デュランの躊躇いに、レオは気づいて見つめる。
デュランは躊躇いながら掠れた声で戦士レオに呟く。
「…俺は…彼は抱けません」
「なぜだ?」
男らしいレオの声に、ファオンは顔を下げたまま。
「…役に立たない。
彼(ファオン)相手では」
「それで《皆を繋ぐ者》を抱かないと?
それは《勇敢なる者》じゃない」
動揺して身を揺らしたのはデュラン。
ファオンは顔を、上げる。
デュランは目を見開き…そしてゆっくりと俯く。
「…役に立たせるのも、《皆を繋ぐ者》の役目」
レオはゆっくり、背後に振り返る。
シーリーン、そしてリチャードが、少し離れた岩の前で、新入りの様子を見守っていた。
「新入りの贈り物として《皆を繋ぐ者》を仕込むのは誰だ?」
ファオンは振り向き、目を見開く。
リチャードが進み出る、その前に、シーリーンが進み出る。
デュランと比べると、線の細い感じの、整いきった美麗な顔立ち。
シーリーンの軽いプラチナの髪が、風に揺れる。
ブルーグレーの瞳は、何の感情も表さない。
美麗なその顔に、動揺も無い。
ファオンは知っていた。
彼(シーリーン)がどれ程…本当は、優しいのかを。
デュランはシーリーンの姿を見て、顔を引き締めた。
美麗な面(つら)で軟弱に見えた。
けれど初めて剣でかかっていった時、簡単にかわされ、背に息が止まるほどの一撃を、木刀で叩き込まれた。
今や一目置く、年上の剣士。
先を歩くシーリーンの後を、デュランもファオンも付いていく。
デュランはファオンから離れて歩く。
触れようともしない。
シーリーンが、一つのテントの入り口の布を払い、後ろに振り向く。
デュランが、頷いてその中へと入って行く。
ファオンは吐息を吐いた。
逃げ出したかった。
が、振り向くとレオがそこに威圧するように立っていた。
背後から身を屈め、ファオンの耳元で囁く。
「せいぜい色気を出して、男(デュラン)を誘え。
役に立たないと思われた《皆を繋ぐ者》など、今まで誰一人としていない」
ファオンはそれを聞いて、打ちのめされた。
かつて剣で打ち負かした相手を、女のように誘惑しろと…レオは告げていた。
そして…男達が入る場所。
双丘の奥を、テスは花で擦り上げる。
花の香りが立ち上る。
テスの触れる手は義務的。
恥辱は沸き上がって来ない。
ファオンはほっとした。
テスの手は無造作に、乳首にも花を擦りつけて
「もう上がっていい」
と言って背を向け、湯から上がっていく。
テスの差し出す衣服。
それはやっぱり…。
衣服とは呼べないもの。
白い布を前後に垂らしただけ。
横は開いたまま。
歩くと、風に揺れて割れた衣服から双丘が覗く。
赤くなるファオンに、テスは振り向く。
「そんな風に赤く成ると、よけい…欲情されるぜ…」
ファオンが顔を上げる。
湯の向こうの岩の影から、リチャードがじっと視線を送っていた。
ファオンは一瞬で青くなる。
この先彼に望まれたら拒めない。
そしてその間は…自分の身は彼のもの…。
かつて幼い頃、両腕を縛り上げられ、衣服と言えば、乳首を繋ぐ小さな鉄の輪と鎖。
リチャードは…虐める時いつもそれを、乱暴に引いた。
アリオンとシーリーン、二人に…甘やかされるように愛撫されたその場所を、リチャードは容赦無く虐める。
「女のようにこんな所で感じてやがる」
そう言われてまた、リチャードは鎖を引く。
鉄の輪で挟まれた乳首は痛み混じりに感じ…。
泣き続けた…。
思い返すと身が震い出す。
だが《勇敢なる者》らの群れるテント在る、岩場の入り口。
大きな岩の間の道に、若き戦士が姿を現す。
「(…デュラン!)」
ファオンはその姿を見、衝撃で打ちのめされる。
濃い栗色の巻き毛。
空色の瞳。
ずっと…《勇敢なる者》になる為、競ってきた相手………。
ファオンは涙が滴ってると、気づかなかった。
頬が濡れている事ですら。
幾度も幾度も…剣を交え、寸でで勝てた、手強い相手。
修行の旅を終えて、闘技場に姿を現すまでは、彼(デュラン)こそが、《勇敢なる者》に選出されると皆に期待されていた…。
だから、デュランよりも小柄なファオンが勝った時、デュランはファオンを敵視した…。
「ファオン」
デュランは涙を頬に滴らせ続ける、白い薄衣のファオンの姿を、呆然と見つめた。
ファオンは見つめ返すデュランを見、つい先日までいた闘技場を思い浮かべる。
デュランは誰よりも背が高く、時に傲慢。時に爽やかな笑顔を見せながら、軽々と剣を振っていた。
誰よりも軽やかに。
誰よりも激しく。
けれど勝てた。
だから信じられた。
僕こそが…《勇敢なる者》になれるのだと。
デュランは突然目の前に現れ、《勇敢なる者》への道を遮った、強く美しき剣士の、今の姿に、目を伏せた。
ファオンの心に、それは突き刺さる。
最早…ライバルですら無い。
デュランの様子はそう物語っていて、ファオンはいたたまれなくなり、その場から背を向け、駆け出す。
どんっっっ!
逞しい誰かにぶつかり、抱き止められて、ファオンはもがく。
レオは逞しい胸にファオンを抱き止めると、腕を掴み歩き出す。
ファオンは引きずられるようにレオに連れられ、デュランの目前に連れて来られた。
俯いていると、レオがデュランに言った。
「…抱け。
新入りへの特別な贈り物だ」
どんっ!
と突き飛ばされ、ファオンはデュランの胸に、つんのめってぶつかる。
デュランの腕は、ファオンを抱き止めはしない。
デュランの躊躇いに、レオは気づいて見つめる。
デュランは躊躇いながら掠れた声で戦士レオに呟く。
「…俺は…彼は抱けません」
「なぜだ?」
男らしいレオの声に、ファオンは顔を下げたまま。
「…役に立たない。
彼(ファオン)相手では」
「それで《皆を繋ぐ者》を抱かないと?
それは《勇敢なる者》じゃない」
動揺して身を揺らしたのはデュラン。
ファオンは顔を、上げる。
デュランは目を見開き…そしてゆっくりと俯く。
「…役に立たせるのも、《皆を繋ぐ者》の役目」
レオはゆっくり、背後に振り返る。
シーリーン、そしてリチャードが、少し離れた岩の前で、新入りの様子を見守っていた。
「新入りの贈り物として《皆を繋ぐ者》を仕込むのは誰だ?」
ファオンは振り向き、目を見開く。
リチャードが進み出る、その前に、シーリーンが進み出る。
デュランと比べると、線の細い感じの、整いきった美麗な顔立ち。
シーリーンの軽いプラチナの髪が、風に揺れる。
ブルーグレーの瞳は、何の感情も表さない。
美麗なその顔に、動揺も無い。
ファオンは知っていた。
彼(シーリーン)がどれ程…本当は、優しいのかを。
デュランはシーリーンの姿を見て、顔を引き締めた。
美麗な面(つら)で軟弱に見えた。
けれど初めて剣でかかっていった時、簡単にかわされ、背に息が止まるほどの一撃を、木刀で叩き込まれた。
今や一目置く、年上の剣士。
先を歩くシーリーンの後を、デュランもファオンも付いていく。
デュランはファオンから離れて歩く。
触れようともしない。
シーリーンが、一つのテントの入り口の布を払い、後ろに振り向く。
デュランが、頷いてその中へと入って行く。
ファオンは吐息を吐いた。
逃げ出したかった。
が、振り向くとレオがそこに威圧するように立っていた。
背後から身を屈め、ファオンの耳元で囁く。
「せいぜい色気を出して、男(デュラン)を誘え。
役に立たないと思われた《皆を繋ぐ者》など、今まで誰一人としていない」
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