どのみちヤられるならイケメン騎士がいい!

あーす。

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リセット 6 アドラフレン

リセット 6 アドラフレン 19

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 次に俺が気づいた時…。
てっきり、縛られてると思った。
けど違う。

腕を男に掴まれて…立たされてる…。
また軽い目眩がしてるし。
視界が定まらないから。
立たされてると、ぐらっ…。
て体が揺れるんだけど。

直ぐ、腕を引かれて…倒れられない。
なので結局、腕を掴む男に、もたれかかる格好で…。
けど一瞬、ちくっ!
ってして。
見ると喉元に、ナイフ当てられてる…!

「………………………(げ!)」
ヤバいじゃん…。
ぐらっ!
ってして、ナイフに倒れ込んだら!
首が、ざっくり切れる…!

必死でふらつく体を、しゃん!としようと試みる…。
けどやっと少し顔を上げて…見ると!
目前、かなり離れた暗い所に、アドラフレン!

「(…え?え?
どういう状況…?!)」
とにかく、周囲が暗い…。
けどその時。
俺支えてる男じゃ無い、別の男の声が!
「剣を、捨てて貰おう…!
警備総長!」
俺、ぎょっ!として…。
一気に覚醒する。

周囲は…人気の無い、がらんとした…倉庫?
使われてない、手入れもあんまりされて無い…広い部屋?
ランプも無いから、頭上の天窓からの月明かりくらいしか、灯りが入って来ない…。

けどアドラフレンが立ってる背の向こうは、廊下のランプの灯りがもれてるのか、明るい…。
目を凝らして良く見ると。
なんか…俺の立ってる足元には、ぶっとい、石の梁。
けど…アドラフレンの方に目をやると、真っ黒。
…床が…無い?
空洞?なんですけどっ!

つまり、□みたいな型で…真ん中の床が、すぽっ!と無い…。
つまりつまり…アドラフレンが俺のとこ…助けに駆けつけようとすると、壁伝いじゃないと、来られない…!

ぐっ!って腕を引かれ、姿勢を正され…。
改めてナイフを喉元に押しつけられ、俺、油汗…。

カラン…!
剣が床に転がる音。
見ると、真正面のアドラフレンが、剣を下に…落としてた。

アドラフレンの離れた両側に立ってた男二人が、剣を突き立て近寄る。
左右から、剣先を向ける男がにじり寄っても…。
アドラフレンの目は、俺を見据えたまま。

「っ!」
俺、叫ぼうとした。
けど喉のナイフの感触で…声が詰まる…。

俺を掴んでる男の、向こう側に居る男が叫ぶ。
「…悪いが、これ以上介入されては困る!
あんたには、死んで貰う!」
だがアドラフレンは、低い…底に迫力を秘めた声で怒鳴り返す。
「…残念だが、君らの悪事を知ってる者は他にも居る…!
私一人を処刑しても、隠しおおせないぞ!」

栗毛の真っ直ぐの長髪を、上品な緑の衣服に流し…。
もうこの連中からしたら、品の良い貴公子そのものの姿…。
けど顔色は蒼白…。
剣を両側から突き付けられてるのに…俺の事見つめたまま…。
決して、そらそうとしない。

「(凄く、心配してくれてるんだ…)」
俺、つい…床に転がった、アドラフレンの剣を見る。
左右の男の…アドラフレンに向けられた剣先が、ぎらり!と銀に光るのも見る…。

俺、つい首振って、俺を掴んでるデカい男の向こうにいる、この場の首謀者らしき男に、必死で視線を送る。
濃い栗色巻き毛の長髪。
目に黒い布を巻き付け、目玉の部分だけくり抜かれてて。
顔を隠してる。
身に付けてるシャツもズボンも黒。
…まるで、ゾロみたい。

けどゾロはいいヤツ。
こいつは明らかに、悪人!

そいつが叫んでる。
「大公子女、ニーシャか!
あそこはガードが固くて、なかなか手が出せない!
…だがじゃじゃ馬お姫様も直(じき)、隙も出来る…。
長くは無いさ!」
叫んだ後、黒マスクの奥から…空色の瞳をギラつかせて、アドラフレンを見据えてる。

「最後の祈りを唱える時間くらいは、与えてやる!
せいぜい…神にでも、祈るんだな!」
その声とほぼ同時。
アドラフレンの両側の男が、剣を垂直に振り上げ、アドラフレンに突き刺すばかりに突き付ける!

「(…………嘘っ!)
ダメっ!逃げてっ!
アドラフレン!」
叫んだ時。
また乱暴に腕を引かれて、喉にナイフを当てられる。
アドラフレンは俺を見て…初めて苦しげに、眉を寄せた。

真っ直ぐ俺を見つめる、ヘイゼルのアドラフレンの…愛おしい綺麗な瞳。
…だから俺は叫ぶ!
「…いいから屈んで!
剣を拾って!」
「五月蠅いっ!」
怒鳴られた拍子にナイフが滑って…浅い傷が付いて、首から血が滴る…。
けど構ってられないっ!
「ヤっ!
アドラフレン、死んじゃダメっ!」
「いい加減にしろ!」
怒鳴られて俺、腕を掴んでた男の顔を、その時初めて見た。
やっぱり布の黒マスクして…けど、ギラついた黒い目の、ずんぐりした体型の、はげ頭のでっかい男。
いかにも…こういう荒っぽい仕事を専門に引き受けそうな、ごろつきで品の無い感じ。

「…あいつを殺したら!
直ぐお前も殺(や)ってやる!!!」
殺気込めてそう怒鳴られて。
俺、一瞬ぞっとしたけど。
アドラフレンに突き付けられた左右の剣が、今にも…アドラフレンを突き刺しそうで…。
そっちのが怖くて!
つい怒鳴っちゃった。

「待って無くて、今直ぐ殺せば!
そしたら俺、アドラフレンが血を流して倒れる姿、見なくて済む!」
つい、首をナイフに向かって…押しつけようとしたら、男、目を見開いて。
大慌てでナイフ、俺から離してる…。

今、俺に死なれちゃ困るんだ!
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