108 / 220
リセット 6 アドラフレン
リセット 6 アドラフレン 19
しおりを挟む次に俺が気づいた時…。
てっきり、縛られてると思った。
けど違う。
腕を男に掴まれて…立たされてる…。
また軽い目眩がしてるし。
視界が定まらないから。
立たされてると、ぐらっ…。
て体が揺れるんだけど。
直ぐ、腕を引かれて…倒れられない。
なので結局、腕を掴む男に、もたれかかる格好で…。
けど一瞬、ちくっ!
ってして。
見ると喉元に、ナイフ当てられてる…!
「………………………(げ!)」
ヤバいじゃん…。
ぐらっ!
ってして、ナイフに倒れ込んだら!
首が、ざっくり切れる…!
必死でふらつく体を、しゃん!としようと試みる…。
けどやっと少し顔を上げて…見ると!
目前、かなり離れた暗い所に、アドラフレン!
「(…え?え?
どういう状況…?!)」
とにかく、周囲が暗い…。
けどその時。
俺支えてる男じゃ無い、別の男の声が!
「剣を、捨てて貰おう…!
警備総長!」
俺、ぎょっ!として…。
一気に覚醒する。
周囲は…人気の無い、がらんとした…倉庫?
使われてない、手入れもあんまりされて無い…広い部屋?
ランプも無いから、頭上の天窓からの月明かりくらいしか、灯りが入って来ない…。
けどアドラフレンが立ってる背の向こうは、廊下のランプの灯りがもれてるのか、明るい…。
目を凝らして良く見ると。
なんか…俺の立ってる足元には、ぶっとい、石の梁。
けど…アドラフレンの方に目をやると、真っ黒。
…床が…無い?
空洞?なんですけどっ!
つまり、□みたいな型で…真ん中の床が、すぽっ!と無い…。
つまりつまり…アドラフレンが俺のとこ…助けに駆けつけようとすると、壁伝いじゃないと、来られない…!
ぐっ!って腕を引かれ、姿勢を正され…。
改めてナイフを喉元に押しつけられ、俺、油汗…。
カラン…!
剣が床に転がる音。
見ると、真正面のアドラフレンが、剣を下に…落としてた。
アドラフレンの離れた両側に立ってた男二人が、剣を突き立て近寄る。
左右から、剣先を向ける男がにじり寄っても…。
アドラフレンの目は、俺を見据えたまま。
「っ!」
俺、叫ぼうとした。
けど喉のナイフの感触で…声が詰まる…。
俺を掴んでる男の、向こう側に居る男が叫ぶ。
「…悪いが、これ以上介入されては困る!
あんたには、死んで貰う!」
だがアドラフレンは、低い…底に迫力を秘めた声で怒鳴り返す。
「…残念だが、君らの悪事を知ってる者は他にも居る…!
私一人を処刑しても、隠しおおせないぞ!」
栗毛の真っ直ぐの長髪を、上品な緑の衣服に流し…。
もうこの連中からしたら、品の良い貴公子そのものの姿…。
けど顔色は蒼白…。
剣を両側から突き付けられてるのに…俺の事見つめたまま…。
決して、そらそうとしない。
「(凄く、心配してくれてるんだ…)」
俺、つい…床に転がった、アドラフレンの剣を見る。
左右の男の…アドラフレンに向けられた剣先が、ぎらり!と銀に光るのも見る…。
俺、つい首振って、俺を掴んでるデカい男の向こうにいる、この場の首謀者らしき男に、必死で視線を送る。
濃い栗色巻き毛の長髪。
目に黒い布を巻き付け、目玉の部分だけくり抜かれてて。
顔を隠してる。
身に付けてるシャツもズボンも黒。
…まるで、ゾロみたい。
けどゾロはいいヤツ。
こいつは明らかに、悪人!
そいつが叫んでる。
「大公子女、ニーシャか!
あそこはガードが固くて、なかなか手が出せない!
…だがじゃじゃ馬お姫様も直(じき)、隙も出来る…。
長くは無いさ!」
叫んだ後、黒マスクの奥から…空色の瞳をギラつかせて、アドラフレンを見据えてる。
「最後の祈りを唱える時間くらいは、与えてやる!
せいぜい…神にでも、祈るんだな!」
その声とほぼ同時。
アドラフレンの両側の男が、剣を垂直に振り上げ、アドラフレンに突き刺すばかりに突き付ける!
「(…………嘘っ!)
ダメっ!逃げてっ!
アドラフレン!」
叫んだ時。
また乱暴に腕を引かれて、喉にナイフを当てられる。
アドラフレンは俺を見て…初めて苦しげに、眉を寄せた。
真っ直ぐ俺を見つめる、ヘイゼルのアドラフレンの…愛おしい綺麗な瞳。
…だから俺は叫ぶ!
「…いいから屈んで!
剣を拾って!」
「五月蠅いっ!」
怒鳴られた拍子にナイフが滑って…浅い傷が付いて、首から血が滴る…。
けど構ってられないっ!
「ヤっ!
アドラフレン、死んじゃダメっ!」
「いい加減にしろ!」
怒鳴られて俺、腕を掴んでた男の顔を、その時初めて見た。
やっぱり布の黒マスクして…けど、ギラついた黒い目の、ずんぐりした体型の、はげ頭のでっかい男。
いかにも…こういう荒っぽい仕事を専門に引き受けそうな、ごろつきで品の無い感じ。
「…あいつを殺したら!
直ぐお前も殺(や)ってやる!!!」
殺気込めてそう怒鳴られて。
俺、一瞬ぞっとしたけど。
アドラフレンに突き付けられた左右の剣が、今にも…アドラフレンを突き刺しそうで…。
そっちのが怖くて!
つい怒鳴っちゃった。
「待って無くて、今直ぐ殺せば!
そしたら俺、アドラフレンが血を流して倒れる姿、見なくて済む!」
つい、首をナイフに向かって…押しつけようとしたら、男、目を見開いて。
大慌てでナイフ、俺から離してる…。
今、俺に死なれちゃ困るんだ!
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる