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リセット 6 アドラフレン
リセット 6 アドラフレン 10
しおりを挟むアドラフレンに背を押されて、寝室へ戻る。
アドラフレンはガウンのまま、部屋を出て行き…。
俺、暫く惚けて、ガウンのまま寝台に腰掛けてると。
召使いさんが来て。
手に質素な服を持って。
そして言う。
「こちらにお着替え下さい」
その衣服…って。
縛られてた時、俺が着ていた服に似てた。
白い地味なシャツと黒いズボン。黒の飾りのまるで無いブーツ。
「(…やっぱ、潜入するってこと…?)」
着替えた後。
アドラフレンが入って来る。
もうガウンじゃなくって…。
あまり豪華じゃないけど、それでも金の刺繍入りの緑色の上着を、貴公子然と着こなしてて…。
俺の肩を抱いて言う。
「これから馬車に乗って、王宮に出向くから」
俺それ聞いて。
なんか一気に、緊張した。
けどさ。
馬車に乗ると。
えっちの後に、お風呂に入り。
更に馬車の中で、バスケットに入った果実酒と…サンドイッチ?
みたいに、ハムとか野菜挟んだ…凄く美味しいパンを幾つか頂いたら。
その後、意識が無い。
肩を揺すられて、目を開ける。
俺。
アドラフレンの肩にもたれかかって…寝ちゃってた。
「着いたよ」
降りて…その庭園があんまり…綺麗で、惚けた。
薔薇の白いアーチの彫刻とかも美しいし。
あちこちに、小さな噴水の出てる彫刻が並び。
花は綺麗に咲き揃って…。
きちんと手入れされてる感じ。
暫く庭園を歩くと、数段ある階段を上がったその先に、飾り彫り入りの焦げ茶の大きな扉。
アドラフレンが、金の洒落た飾り付きのノッカーを掴み、コンコン。と打ち付ける。
扉が開いて、中は…色調が、水色だとか薄いピンクとかの、優しい感じの配色の階段と廊下。
けど窓枠や階段の手すりは銀で、ゴージャスな飾りが掘られてる…。
廊下の先の、美術館みたいな室内に、紫仮面…を外した美女がいて、俺を調教してた若くてむさい男二人も一緒だった。
「…ニーシャ」
アドラフレンが美女に言う。
美女は胸元の開いた、素晴らしい深紅のドレスを着ていた。
彼女は名を呼ばれて、アドラフレンに視線を送った後、俺をチラ…と見る。
「…協力してくれるの?」
その問いに、アドラフレン、顔を傾けて微笑む。
「ああ」
美女…ニーシャさんは、アドラフレンをじろっ。と見て、言う。
「…まさか…寝室でいいコトして、手なずけたの?
少年を?あなたが?」
アドラフレン、悪びれなく言う。
「君だってそっちの二人を、私同様寝室で、手なずけたんだろう?
二人共が地下室で会った時より、うんと顔の艶がいい」
ニーシャさん、じろっ。とアドラフレンを見て、言う。
「…あなたもよ」
けどアドラフレン、言い返す。
「当然、君もだ。
…が、言ってるとキリが無い」
そう言った後、アドラフレン、俺に屈んで話しかける。
「この二人は君を依頼者に引き渡す役目。
君の役目は…」
アドラフレンが言葉を句切ると、すかさずニーシャさんが口挟む。
「…待ってれば、迎えに行くわ」
「え…と。
あなたが?」
俺、ニーシャさんに聞く。
ニーシャさん、俺の事見る。
紫がかった紺色の瞳…。
明るい…金髪に近い、ウェーブのかかった栗毛。
顔立ちも華やかだけど、雰囲気も…華やか…。
「…私は大公子女だけど。
権限は無いの。
当然、迎えに行くのはアドラフレン。
彼、宮廷警備の責任者だから」
俺、びっくりしてアドラフレンを見る。
「…とっても…偉い?」
アドラフレンが笑顔で口を開くけど。
ニーシャさんが言う。
「そう。とってもね」
「…でも影で、紅仮面してるの?」
アドラフレン、笑う。
「警護の為の情報を得るのに、色々便利だから」
「…じゃ…ニーシャさんはなんで?」
聞くと、ニーシャさん、俺の事見る。
「…今回はあなたで、少年だったけど。
良く私の友達がさらわれて、ここの腐れ貴族の慰み物として囚われちゃったりしてるの」
俺、それ聞いて、真っ青になっちゃった。
ニーシャさん、表情も変えず言葉を続ける。
「…でも私、身分が高いから。
メンが割れるとマズいので、仮面つけて奪還する為に忍び込んだりしてたら。
なぜかアドラフレンと、かち合うのよ。毎回」
アドラフレン、笑う。
「だって私は警備の責任者で、紫仮面の無法者に忍び込み放題されてたら。
面子(めんつ)が潰れる」
ニーシャさん、ツン。として言う。
「そうでしょうね。
まだ二人。
行方知れずの貴族の子女が囚われて、どこかに幽閉されてるの。
…でも今回、依頼した男は…男の子でもいいみたい」
って、俺の事見る。
ジロジロっ。て俺の事値踏みしつつ。
「…女装すれば、女の子でもイケるかも…」
俺、それ聞いて、思い切り俯く。
けどその時。
ニーシャさんが連れてきた、栗毛の鼻髭が言った。
「…そろそろ、指定された時間です」
ニーシャさん、頷いて…。
ニーシャさんの背後に控えてた、栗毛の鼻髭と金髪の鼻髭の兄弟?が、俺に寄って来て背を軽く押す。
俺、押されて歩き出し…アドラフレンに振り向く。
アドラフレンが笑うから…ちょっと安心して俺、二人に連れられて、歩き出した。
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