7 / 23
城下の食事
しおりを挟む
ソルジェニーが見事な栗毛の馬に跨って、ファントレイユの後を付いて行く。
ファントレイユはチラと振り返りつつ、王子の乗馬をこっそり観察していた。
が、王子の乗馬の、それは自然で乗り慣れた様子に一つ、頷くと。
突然、拍車をかける。
ファントレイユの、自分を置き去りにする早さに。
ソルジェニーも思わず必死に後を追う。
追いついて横に並ぶと、ファントレイユはそれは優雅に馬を操りながら、ソルジェニーに振り向いて微笑みを送り。
更に速度を上げてみせる。
ソルジェニーがそれでも追いついて横に並ぶと。
誉めるように微笑み返す。
ソルジェニーはファントレイユの視線を受け取った途端、心が弾む自分に気づいた。
彼に見つめられると、自分は何だか特別な人間になったようで、凄く、胸が熱くなった。
間もなく、ファントレイユは並ぶ家々の軒先から粗末な門を見つけ、潜って中に馬を進める。
少ない灯りの暗い馬場の奥へと進み、居並ぶ馬の列の横に、自身の馬を付けると。
ひらりと飛び降り、自分の馬を繋ぐ。
ソルジェニーが習って馬を降り、繋ぐ様子を見。
ファントレイユは笑った。
「…そんなに自分で何でも出来るんなら、城の中はさぞかし、もどかしいでしょう?」
ソルジェニーは城での生活を思い返すと、ため息交じりに告げた。
「…皆、私に何も、させてはくれません」
ファントレイユはそのソルジェニーのぼやきに、心からの笑顔を見せた。
あんまりその笑顔が屈託無く明るくて、ソルジェニーもつられて満面の笑みを見せる。
ファントレイユの手が背に回され、押されて促される。
その手の温もりに、ソルジェニーはどきん…!と胸が高鳴った。
そんな風に親しげに、自分に触れてくれる相手が。
城の中で誰一人、居なかったからだったけど…。
それを別にしてもファントレイユの、柔らかい癖にどこか強引な態度は、男らしい美貌も伴って、相手をどぎまぎさせる。
ファントレイユの肩に後頭部が触れ、振り返ったりすると彼の胸元が、それは近くって。
そんな風にエスコートされると何だかとても…どきどきしている自分に、ソルジェニーは戸惑った。
が、ファントレイユは何でも無いように、灯りの漏れた賑やかな戸を開けると、ソルジェニーを中へと促す。
質素な剥き出しの木が壁一面を覆い、広いカウンターも、幾つもあるテーブルや椅子も。
全て木材なのが一目で解る、その広い店は。
酒の入った男達で、ごった返していた。
ファントレイユが姿を現すと、奥のテーブルに掛けていた男が彼の姿を見つけ、杯を上げて合図を送る。
ファントレイユはその男に視線を送り、王子の肩を抱いて彼らのテーブルへと、酔っぱらい達を腕で掻き分け、進んだ。
幾人の、カウンター前で立って飲んでいた男達が、ファントレイユの姿を見つけて声をかける。
「…隊長!どうしたんです?
王子の護衛以来、こんな店とは無縁でしょう?」
「…身分の高い美人ばかり相手にして、ここはお見限りかと思いましたよ!」
が、連れているソルジェニーに目を止め、その隊員らしい酔っぱらい達は二人を取り囲んで目を丸くした。
「…貴方にしては、ずいぶん………」
「…こんなに幼い少女が好みだったとは…。
…そりゃ、美少女だとは思いますがね。
護衛を始めて、趣味が変わったんですか?」
「……いつもは必ず、どこから見つけてくるのかと思うような。
そりゃあ色気のある品良い美人を、とっ代えひっ替え連れ歩く癖に…!」
ファントレイユは五月蠅げに、その酔っぱらい達に眉を寄せると。
ソルジェニーに手を伸ばそうとする男達を、手で払い退けて言った。
「知り合いの親戚の子供だ!
いいから、絡むんじゃない!」
咄嗟、ファントレイユの胸に抱き寄せられる格好になって、ソルジェニーの心臓が跳ね上がった。
衣服をそれは優雅に付けていて解らなかったが、触れてみるとファントレイユは引き締まった、しなやかで逞しい体付きをしていて。
ソルジェニーの心臓が、どくん…!と鳴った。
『風の民』ではもっとたくさん逞しい男達がたくさんいて。
抱き上げられたり肩を抱かれたりしたのに、こんなにどきどきした事なんて、一度だって無かった。
ソルジェニーは
「(成熟した大人の男性って…こんな風なのか)」
と改めて思って、頬が熱くなった。
ファントレイユは彼らから護るようにソルジェニーを胸に抱いたまま、ようやく、杯を上げた友の元へと王子を連れて行き、彼らの向かいにソルジェニーを腰掛けさせ、自分も隣に座る。
杯を上げた男は明るい栗毛の癖っ毛を肩の上で揺らし、穏やかな茶の瞳の、いかにも平民のような田舎顔で、気さくで気のいい優しげな表情を、浮かべて笑った。
「…今夜はずいぶん、若い連れだな」
ファントレイユは途端、気を悪する。
「ヤンフェス。
…君まで、そんな事を言うのか?」
だが男は気にする様子無く、ソルジェニーに微笑みかける。
「食事かい?ここのじゃがいもは、美味いぞ」
ソルジェニーは彼の親しみやすい笑顔に、釣られて笑った。
「それを食べてみたい」
ソルジェニーのその様子に、ファントレイユも思わず笑みを漏らし、注文伺いに来た男にそれを告げる。
ヤンフェスの横には、金に近い真っ直ぐな栗毛を伸ばし。
理知的な青い瞳で小顔、少し青冷めた顔色の、利発そうだが弱々しげな体格をした、小柄な青年が座っていた。
彼は理性的な言葉遣いで、ソルジェニーの考えを読んだように告げる。
「…ファントレイユは特別だ。
彼に扱われる大抵の相手は、どきどきするらしい」
ファントレイユは気づいたように隣のソルジェニーに振り向き、尋ねる。
「どきどき?」
ソルジェニーは途端、心を読まれ、恥ずかげにファントレイユから顔を背け、俯いた。
ファントレイユは言った青年を見たが、彼はすまして杯を、口に運ぶ。
ファントレイユの、眉が寄る。
が、ヤンフェスと呼ばれた気さくな男が、肩をすくめてみせた。
「…君くらい性的魅力に溢れた男は珍しいと、マントレンは言いたかったんだろう?
第一私が君と同じ事をしても…。
彼女?…それとも、彼か?」
ファントレイユに尋ねるが、彼は首を振っただけで答えなかった。
ヤンフェスは何かを察したように、頷くと続ける。
「…ともかく、私が君と同じ扱いをしても。
きっと相手は、どきどき、したりはしない」
ファントレイユが、どうかな、と首を傾ける。
青年が、畳みかけるように言う。
「…そりゃ、そうだろ?」
が、ファントレイユはソルジェニーに向き直ると、二人を紹介した。
「…こっちはヤンフェス。
近衛一の、弓の達人だ」
人の良さそうな栗毛の男は、笑顔で頷いた。
「…そして、君にロクでも無い注釈をしたのは、マントレン。
参謀としては誰もが兜を脱ぐ、頭脳派だ」
マントレンは無表情で告げる。
「…ロクでも無い注釈をした割には、ご大層な紹介をしてくれて、感謝すべきか?
…それで…彼…だろう?
何て呼べばいいんだ?」
二人はどうやらファントレイユの連れが王子だと、気づいている様子だった。
が、それを口にする事は無かった。
「…どう呼ばれたい?」
そう、伺うように顔を傾けて尋ねる、ファントレイユのその美貌は。
粗末な酒場の中では更に輝きを増し、浮き立つように見えて。
ソルジェニーは途端どぎまぎしたが、そっと告げた。
「じゃあ…ソランと…。
『風の民』には、そう呼ばれていたので…」
ファントレイユは頷いた。
が、二人は王子のはにかむ様子に目を丸くし、お互い顔を、見交す。
「…何か凄く、免疫が無さそうだが大丈夫かい?」
ヤンフェスが心配げな表情で小声で言うと、マントレンも唸る。
「君を推したのはギデオンだろう?
そりゃ適材とは言え、君相手じゃソランは初過ぎる…」
二人の友の見解に、ファントレイユの眉がますます寄った。
「…君達は、何が言いたいんだ?」
ソルジェニーはそんな素のファントレイユの様子がすごく新鮮で、つい見入った。
ファントレイユは冷静な態度を崩さぬまま、憮然と彼らに告げる。
「…別に見合いをしている訳じゃないし、第一マントレンが言ったように“彼”だ」
二人は納得しかねるたようだったが、友のその態度に同意するように、素知らぬ顔を作ると話題を切り替えた。
「…で、食事に来たのか?」
ヤンフェスの問いに、ファントレイユは優雅に笑う。
「遅くなったのでね」
ヤンフェスは頷くと
「君が遅刻する原因を作ったその、問題の主達は。
反省する気も無く、ここに顔を出してるぞ」
と、カウンター近くの人混みへと、視線を送る。
マントレンも続ける。
「君に厄介事を押しつけて、いい気なものだ」
ファントレイユはとっさに、思い出して二人の友の顔をじっと見た。
「…押しつけたのは、君達もじゃないか…。
騒ぎを聞いて、そっと逃げたろう?」
ヤンフェスとマントレンは互いを見合った後、揃って肩をすくめた。
「色事は君の、専門分野だ」
ヤンフェスが素っ気なく言うと、マントレンもくぐもった声で告げる。
「正直…決闘騒ぎは、私じゃ手に負えない」
ファントレイユは友達甲斐のない二人に、呆れた。
ソルジェニーはその言葉を聞き、そっとファントレイユに問う。
「…女性の問題で、決闘騒ぎが、あったんですか?」
ファントレイユは美貌の面を向け、ささやいた。
「…問題を起こしたのは、私じゃないがね…。
マントレンの隊の者で
『妹を孕ませて捨てた!』
と、その兄が剣を抜き、まっ昼間、近衛の兵舎に怒鳴り込んで来たんだ」
ファントレイユはそのまま告げた。
が、やっぱりソルジェニーは目を見開いて、ぱちくりさせた。
途端、ファントレイユが額に手を当てる。
「…やっぱり、刺激が強いようだな…」
ファントレイユがぼそり。とつぶやくので、ソルジェニーは慌てて尋ねた。
「…それで、どうやって収めたんです?」
ファントレイユは額に手を当てたまま、俯いて説明する。
「私が責任者だと名乗り出て…。
ご存じの通り、マントレンは逃げたのでね」
言って自分の正面に座る、マントレンを。
顔を上げて真っ直ぐ見つめる。
マントレンはファントレイユに流し目で睨まれ、横を向き、バックレた。
ファントレイユは知らんぷりするマントレンを睨みながら、言葉を続ける。
「…事情を聞くからと、ともかく剣を鞘に納めさせた」
ヤンフェスが机の上で腕組み、身を乗り出して尋ねる。
「…それから?」
ファントレイユは彼を見、思い切り首を横に振った。
「…それからが、長くってねぇ…。
剣を抜いて来るくらいだから、もっと直情的な男かと思ったら、愚痴り初めて…」
マントレンが、すかさず口を挟む。
「だがどうせ君の事だ。
さっさと話を切り上げたんだろう?」
が、ファントレイユがそれは弱り切った表情を見せた。
「…そうしようとすると、泣き出す」
それを聞いて、二人共が下を向く。
マントレンは、タメ息混じりにささやいた。
「…それは…どうしようも無いな…」
ソルジェニーも、そう思った。
ヤンフェスが顔を上げる。
「…それで結局、どっちだったんだ?
スターグか?
それとも、ラウリッツか?」
ファントレイユは、頷きながら口を開く。
「…やっと特徴を聞き出して。
スターグだと解ったので…。
慌てて彼を捕まえ、事情を問い正した。
ところがあいつは、自分がそんなヘマをする訳が無いと言い張る。
…ソラン。じゃがいもが、冷める」
ファントレイユに目線で促され、テーブルの上の湯気の立った皿に気づく。
注文の品が次々届き、テーブルの上に乗っていた。
ソルジェニーは慌てて、スプーンを取り上げる。
「…ああ。そのベーコンもとうもろこしも、絶品だ」
マントレンに言われ、口に運ぶ。
皆それは素材を活かした素朴な味で、ソルジェニーは一気に空腹を思い出す。
がつがつがつがつがつ…!
その勢い込んだ食べっぷりに、ヤンフェスとマントレンは思わず目を見合わせた。
ヤンフェスが、呆れたようにつぶやく。
「…とてもお腹が、空いていたようだ…」
ファントレイユはとうとうくすくす、笑い出す。
「育ち盛りだものな」
「…それで?」
マントレンが促すので、ファントレイユは思い返して話を続けた。
「…ともかく。
スターグと話していると、熱血の兄貴は待たせた部屋からまた、剣を抜いて喚きながら俳諧するし…。
スターグは絶対女性が嘘を付いてる!と言い張るし…」
「…言い張るんじゃなく、嘘を付いてる。あっちが」
ファントレイユの言葉を継いで、テーブル横から声がし。
皆が揃ってそちらに振り返る。
真っ直ぐな黒髪を肩まで伸ばし、肩幅のがっちりした鋭い青い瞳の、顔立ちの整った黒髪の伊達男だった。
けど尖ったナイフの様な印象の。
少なくとも上級貴族なんかじゃなく、宮廷に縁無く品も無い、荒んだ感じのする若者に見えた。
このテーブルのみんなよりは、若く見える彼は、憮然と言い放つ。
「…あんたに世話になって申し訳無いが、この後は俺が話を付ける」
ファントレイユがブルー・グレーの瞳を真剣に輝かせ、その若者を見据える。
「…両親を亡くし、兄一人しか身内のいない女性だぞ…。
兄貴を斬り殺し、天蓋孤独にする気じゃないだろうな…!」
ファントレイユに低い声でそう怒鳴られ、スターグの顔が歪む。
「…ともかく女と話させてくれ…!
それきり、あんたに世話はかけない」
ファントレイユはその言葉に唸った。
「…兄貴が監禁しているんだ…!
第一貴様を見た途端。
あの瞬間沸騰の兄貴は、斬りかかって来るぞ…!
どうせお前はかわしたりせず、ばっさり殺る気だろう?」
ファントレイユが低い声で言い諭す間にも、黒髪の男は、言い返そうと口を開く。
が。
「…じゃあ君が、女性と話すしか無いだろう?」
皆が一斉に、すかさず口を挟む、マントレンを凝視する。
マントレンは相変わらず表情を変えず、冷静な態度を崩さない。
ヤンフェスも、少しとぼけたような口調で話を繋ぐ。
「…ファントレイユ。
君なら大抵の女性は、うっとり見とれて口を割る」
思わずソルジェニーは、横のファントレイユを見た。
けどファントレイユはそれを聞くなり、げんなりして小声で呻く。
「…全然嬉しく無い評価だ」
ヤンフェスは素っ気なく頷く。
「…そうだろうな。
秘め事で無くもめ事納めに、その美貌を使うとなれば」
ファントレイユはヤンフェスを軽く睨むが、それしか手が無いのか。
次に大きなタメ息を吐いた。
年上で役職も上の男らにセリフをかっさらわれ、震いながら立ってるスターグを、ファントレイユは見上げ、口を開く。
「…本当に、覚えが無いんだな?」
ファントレイユが念押しすると、スターグは頷く。
が。
スターグは美貌の色男に、貸しを作るのは凄く嫌な様子だった。
苦虫噛みつぶしたような表情で、ファントレイユを見ていたから。
突如後ろから。
スターグの肩に腕を回し、スターグの顔を覗き込んだ、栗色巻き毛の軽い男が。
スターグに告げる。
「…俺が兄貴を押さえといてやるから、女と話を付けろ」
もう一人の問題児、ラウリッツの登場だった。
二人はファントレイユ達より幾らか年下。
近衛の中で、腕も立ち見目も良く、乱暴者で。
しかも遊び人で有名だった。
ラウリッツもやっぱり、品の無い若者だった。
が、栗毛の巻き毛を肩まで伸ばし、はしばみ色の瞳をした、それはチャーミングな人好きのする美男だった。
が、これにはマントレンが、猛烈に意義を唱える。
「…どう話を付ける!脅す気か?
もし彼女が嘘を付いているんだとしても、脅されて女性が本音を言うか?
…それでますます頑なになったら、お前は彼女に乱暴しないと、誓えるのか?!」
スターグが目を剥いて、反論しようとした。
が、ヤンフェスがその前に、静かな声で口を挟む。
「…もちろん、穏やかに話せるんだろう?
スターグ?」
途端スターグは、今の状態ではそれが自分に出来そうに無い事に思い当たり、うなだれる。
ヤンフェスはその様子を目にした途端、肩をすくめ、マントレンも
『そら見ろ!』
と首を横に、振った。
ソルジェニーはまた、劇とかお話の一節のようなその場の展開に。
スプーンを口に運びながらも、わくわくした。
ファントレイユは彼らのやり取りを見守っていた。
が、口を開く。
「…私に、借りを作るのは。
凄く、嫌らしいが、仕方無いな?」
ファントレイユに念を押され、スターグはうなだれた。
ラウリッツは隊長ら、年長者の無言の迫力に。
やれやれと肩をすくめると、友の肩を、ぽん!と叩き励ました。
スターグは立ち去ろうとして振り向くと、ぶっきら棒にファントレイユに告げる。
「ここの食事は、奢らせてくれ」
ファントレイユは彼の貸しを少しにしてやろうと、頷く。
「…奢られてやる」
スターグは、頷いた。
背を向け、ラウリッツと一緒に、酔っぱらい達の間に、その姿を消す。
途端、ヤンフェスがソルジェニーに向き直った。
「…りんごのパイも、美味いぞ!」
マントレンも畳みかける。
「チーズのケーキも、凄くいける」
そして二人はソルジェニーの返事を待たず注文を取るため、揃ってウェイターを呼んだ。
ソルジェニーがその二人に呆れ、ファントレイユの様子を伺う。
ファントレイユは事後処理を一気に任された事に、額に手を当て、俯き加減で首を横に振っていた。
店の者が注文を取りに来ると、ファントレイユはすかさず顔を上げ、言い放つ。
「…葡萄酒だ!この店で一番上等のをくれ!」
ソルジェニーはそれを聞いて、思わず自分の言葉を飲み込んだ。
が、俯きながらつぶやく。
「…生クリームたっぷりのケーキは、ありますか?」
ヤンフェスとマントレンはその言葉に思い切り頷くと、直ぐにそれを注文した。
テーブルに運ばれた山盛りのデザートと高級酒を、全員がそれは満足そうに。
心ゆくまで正味したのは、言うまでも無い事だった。
ファントレイユはチラと振り返りつつ、王子の乗馬をこっそり観察していた。
が、王子の乗馬の、それは自然で乗り慣れた様子に一つ、頷くと。
突然、拍車をかける。
ファントレイユの、自分を置き去りにする早さに。
ソルジェニーも思わず必死に後を追う。
追いついて横に並ぶと、ファントレイユはそれは優雅に馬を操りながら、ソルジェニーに振り向いて微笑みを送り。
更に速度を上げてみせる。
ソルジェニーがそれでも追いついて横に並ぶと。
誉めるように微笑み返す。
ソルジェニーはファントレイユの視線を受け取った途端、心が弾む自分に気づいた。
彼に見つめられると、自分は何だか特別な人間になったようで、凄く、胸が熱くなった。
間もなく、ファントレイユは並ぶ家々の軒先から粗末な門を見つけ、潜って中に馬を進める。
少ない灯りの暗い馬場の奥へと進み、居並ぶ馬の列の横に、自身の馬を付けると。
ひらりと飛び降り、自分の馬を繋ぐ。
ソルジェニーが習って馬を降り、繋ぐ様子を見。
ファントレイユは笑った。
「…そんなに自分で何でも出来るんなら、城の中はさぞかし、もどかしいでしょう?」
ソルジェニーは城での生活を思い返すと、ため息交じりに告げた。
「…皆、私に何も、させてはくれません」
ファントレイユはそのソルジェニーのぼやきに、心からの笑顔を見せた。
あんまりその笑顔が屈託無く明るくて、ソルジェニーもつられて満面の笑みを見せる。
ファントレイユの手が背に回され、押されて促される。
その手の温もりに、ソルジェニーはどきん…!と胸が高鳴った。
そんな風に親しげに、自分に触れてくれる相手が。
城の中で誰一人、居なかったからだったけど…。
それを別にしてもファントレイユの、柔らかい癖にどこか強引な態度は、男らしい美貌も伴って、相手をどぎまぎさせる。
ファントレイユの肩に後頭部が触れ、振り返ったりすると彼の胸元が、それは近くって。
そんな風にエスコートされると何だかとても…どきどきしている自分に、ソルジェニーは戸惑った。
が、ファントレイユは何でも無いように、灯りの漏れた賑やかな戸を開けると、ソルジェニーを中へと促す。
質素な剥き出しの木が壁一面を覆い、広いカウンターも、幾つもあるテーブルや椅子も。
全て木材なのが一目で解る、その広い店は。
酒の入った男達で、ごった返していた。
ファントレイユが姿を現すと、奥のテーブルに掛けていた男が彼の姿を見つけ、杯を上げて合図を送る。
ファントレイユはその男に視線を送り、王子の肩を抱いて彼らのテーブルへと、酔っぱらい達を腕で掻き分け、進んだ。
幾人の、カウンター前で立って飲んでいた男達が、ファントレイユの姿を見つけて声をかける。
「…隊長!どうしたんです?
王子の護衛以来、こんな店とは無縁でしょう?」
「…身分の高い美人ばかり相手にして、ここはお見限りかと思いましたよ!」
が、連れているソルジェニーに目を止め、その隊員らしい酔っぱらい達は二人を取り囲んで目を丸くした。
「…貴方にしては、ずいぶん………」
「…こんなに幼い少女が好みだったとは…。
…そりゃ、美少女だとは思いますがね。
護衛を始めて、趣味が変わったんですか?」
「……いつもは必ず、どこから見つけてくるのかと思うような。
そりゃあ色気のある品良い美人を、とっ代えひっ替え連れ歩く癖に…!」
ファントレイユは五月蠅げに、その酔っぱらい達に眉を寄せると。
ソルジェニーに手を伸ばそうとする男達を、手で払い退けて言った。
「知り合いの親戚の子供だ!
いいから、絡むんじゃない!」
咄嗟、ファントレイユの胸に抱き寄せられる格好になって、ソルジェニーの心臓が跳ね上がった。
衣服をそれは優雅に付けていて解らなかったが、触れてみるとファントレイユは引き締まった、しなやかで逞しい体付きをしていて。
ソルジェニーの心臓が、どくん…!と鳴った。
『風の民』ではもっとたくさん逞しい男達がたくさんいて。
抱き上げられたり肩を抱かれたりしたのに、こんなにどきどきした事なんて、一度だって無かった。
ソルジェニーは
「(成熟した大人の男性って…こんな風なのか)」
と改めて思って、頬が熱くなった。
ファントレイユは彼らから護るようにソルジェニーを胸に抱いたまま、ようやく、杯を上げた友の元へと王子を連れて行き、彼らの向かいにソルジェニーを腰掛けさせ、自分も隣に座る。
杯を上げた男は明るい栗毛の癖っ毛を肩の上で揺らし、穏やかな茶の瞳の、いかにも平民のような田舎顔で、気さくで気のいい優しげな表情を、浮かべて笑った。
「…今夜はずいぶん、若い連れだな」
ファントレイユは途端、気を悪する。
「ヤンフェス。
…君まで、そんな事を言うのか?」
だが男は気にする様子無く、ソルジェニーに微笑みかける。
「食事かい?ここのじゃがいもは、美味いぞ」
ソルジェニーは彼の親しみやすい笑顔に、釣られて笑った。
「それを食べてみたい」
ソルジェニーのその様子に、ファントレイユも思わず笑みを漏らし、注文伺いに来た男にそれを告げる。
ヤンフェスの横には、金に近い真っ直ぐな栗毛を伸ばし。
理知的な青い瞳で小顔、少し青冷めた顔色の、利発そうだが弱々しげな体格をした、小柄な青年が座っていた。
彼は理性的な言葉遣いで、ソルジェニーの考えを読んだように告げる。
「…ファントレイユは特別だ。
彼に扱われる大抵の相手は、どきどきするらしい」
ファントレイユは気づいたように隣のソルジェニーに振り向き、尋ねる。
「どきどき?」
ソルジェニーは途端、心を読まれ、恥ずかげにファントレイユから顔を背け、俯いた。
ファントレイユは言った青年を見たが、彼はすまして杯を、口に運ぶ。
ファントレイユの、眉が寄る。
が、ヤンフェスと呼ばれた気さくな男が、肩をすくめてみせた。
「…君くらい性的魅力に溢れた男は珍しいと、マントレンは言いたかったんだろう?
第一私が君と同じ事をしても…。
彼女?…それとも、彼か?」
ファントレイユに尋ねるが、彼は首を振っただけで答えなかった。
ヤンフェスは何かを察したように、頷くと続ける。
「…ともかく、私が君と同じ扱いをしても。
きっと相手は、どきどき、したりはしない」
ファントレイユが、どうかな、と首を傾ける。
青年が、畳みかけるように言う。
「…そりゃ、そうだろ?」
が、ファントレイユはソルジェニーに向き直ると、二人を紹介した。
「…こっちはヤンフェス。
近衛一の、弓の達人だ」
人の良さそうな栗毛の男は、笑顔で頷いた。
「…そして、君にロクでも無い注釈をしたのは、マントレン。
参謀としては誰もが兜を脱ぐ、頭脳派だ」
マントレンは無表情で告げる。
「…ロクでも無い注釈をした割には、ご大層な紹介をしてくれて、感謝すべきか?
…それで…彼…だろう?
何て呼べばいいんだ?」
二人はどうやらファントレイユの連れが王子だと、気づいている様子だった。
が、それを口にする事は無かった。
「…どう呼ばれたい?」
そう、伺うように顔を傾けて尋ねる、ファントレイユのその美貌は。
粗末な酒場の中では更に輝きを増し、浮き立つように見えて。
ソルジェニーは途端どぎまぎしたが、そっと告げた。
「じゃあ…ソランと…。
『風の民』には、そう呼ばれていたので…」
ファントレイユは頷いた。
が、二人は王子のはにかむ様子に目を丸くし、お互い顔を、見交す。
「…何か凄く、免疫が無さそうだが大丈夫かい?」
ヤンフェスが心配げな表情で小声で言うと、マントレンも唸る。
「君を推したのはギデオンだろう?
そりゃ適材とは言え、君相手じゃソランは初過ぎる…」
二人の友の見解に、ファントレイユの眉がますます寄った。
「…君達は、何が言いたいんだ?」
ソルジェニーはそんな素のファントレイユの様子がすごく新鮮で、つい見入った。
ファントレイユは冷静な態度を崩さぬまま、憮然と彼らに告げる。
「…別に見合いをしている訳じゃないし、第一マントレンが言ったように“彼”だ」
二人は納得しかねるたようだったが、友のその態度に同意するように、素知らぬ顔を作ると話題を切り替えた。
「…で、食事に来たのか?」
ヤンフェスの問いに、ファントレイユは優雅に笑う。
「遅くなったのでね」
ヤンフェスは頷くと
「君が遅刻する原因を作ったその、問題の主達は。
反省する気も無く、ここに顔を出してるぞ」
と、カウンター近くの人混みへと、視線を送る。
マントレンも続ける。
「君に厄介事を押しつけて、いい気なものだ」
ファントレイユはとっさに、思い出して二人の友の顔をじっと見た。
「…押しつけたのは、君達もじゃないか…。
騒ぎを聞いて、そっと逃げたろう?」
ヤンフェスとマントレンは互いを見合った後、揃って肩をすくめた。
「色事は君の、専門分野だ」
ヤンフェスが素っ気なく言うと、マントレンもくぐもった声で告げる。
「正直…決闘騒ぎは、私じゃ手に負えない」
ファントレイユは友達甲斐のない二人に、呆れた。
ソルジェニーはその言葉を聞き、そっとファントレイユに問う。
「…女性の問題で、決闘騒ぎが、あったんですか?」
ファントレイユは美貌の面を向け、ささやいた。
「…問題を起こしたのは、私じゃないがね…。
マントレンの隊の者で
『妹を孕ませて捨てた!』
と、その兄が剣を抜き、まっ昼間、近衛の兵舎に怒鳴り込んで来たんだ」
ファントレイユはそのまま告げた。
が、やっぱりソルジェニーは目を見開いて、ぱちくりさせた。
途端、ファントレイユが額に手を当てる。
「…やっぱり、刺激が強いようだな…」
ファントレイユがぼそり。とつぶやくので、ソルジェニーは慌てて尋ねた。
「…それで、どうやって収めたんです?」
ファントレイユは額に手を当てたまま、俯いて説明する。
「私が責任者だと名乗り出て…。
ご存じの通り、マントレンは逃げたのでね」
言って自分の正面に座る、マントレンを。
顔を上げて真っ直ぐ見つめる。
マントレンはファントレイユに流し目で睨まれ、横を向き、バックレた。
ファントレイユは知らんぷりするマントレンを睨みながら、言葉を続ける。
「…事情を聞くからと、ともかく剣を鞘に納めさせた」
ヤンフェスが机の上で腕組み、身を乗り出して尋ねる。
「…それから?」
ファントレイユは彼を見、思い切り首を横に振った。
「…それからが、長くってねぇ…。
剣を抜いて来るくらいだから、もっと直情的な男かと思ったら、愚痴り初めて…」
マントレンが、すかさず口を挟む。
「だがどうせ君の事だ。
さっさと話を切り上げたんだろう?」
が、ファントレイユがそれは弱り切った表情を見せた。
「…そうしようとすると、泣き出す」
それを聞いて、二人共が下を向く。
マントレンは、タメ息混じりにささやいた。
「…それは…どうしようも無いな…」
ソルジェニーも、そう思った。
ヤンフェスが顔を上げる。
「…それで結局、どっちだったんだ?
スターグか?
それとも、ラウリッツか?」
ファントレイユは、頷きながら口を開く。
「…やっと特徴を聞き出して。
スターグだと解ったので…。
慌てて彼を捕まえ、事情を問い正した。
ところがあいつは、自分がそんなヘマをする訳が無いと言い張る。
…ソラン。じゃがいもが、冷める」
ファントレイユに目線で促され、テーブルの上の湯気の立った皿に気づく。
注文の品が次々届き、テーブルの上に乗っていた。
ソルジェニーは慌てて、スプーンを取り上げる。
「…ああ。そのベーコンもとうもろこしも、絶品だ」
マントレンに言われ、口に運ぶ。
皆それは素材を活かした素朴な味で、ソルジェニーは一気に空腹を思い出す。
がつがつがつがつがつ…!
その勢い込んだ食べっぷりに、ヤンフェスとマントレンは思わず目を見合わせた。
ヤンフェスが、呆れたようにつぶやく。
「…とてもお腹が、空いていたようだ…」
ファントレイユはとうとうくすくす、笑い出す。
「育ち盛りだものな」
「…それで?」
マントレンが促すので、ファントレイユは思い返して話を続けた。
「…ともかく。
スターグと話していると、熱血の兄貴は待たせた部屋からまた、剣を抜いて喚きながら俳諧するし…。
スターグは絶対女性が嘘を付いてる!と言い張るし…」
「…言い張るんじゃなく、嘘を付いてる。あっちが」
ファントレイユの言葉を継いで、テーブル横から声がし。
皆が揃ってそちらに振り返る。
真っ直ぐな黒髪を肩まで伸ばし、肩幅のがっちりした鋭い青い瞳の、顔立ちの整った黒髪の伊達男だった。
けど尖ったナイフの様な印象の。
少なくとも上級貴族なんかじゃなく、宮廷に縁無く品も無い、荒んだ感じのする若者に見えた。
このテーブルのみんなよりは、若く見える彼は、憮然と言い放つ。
「…あんたに世話になって申し訳無いが、この後は俺が話を付ける」
ファントレイユがブルー・グレーの瞳を真剣に輝かせ、その若者を見据える。
「…両親を亡くし、兄一人しか身内のいない女性だぞ…。
兄貴を斬り殺し、天蓋孤独にする気じゃないだろうな…!」
ファントレイユに低い声でそう怒鳴られ、スターグの顔が歪む。
「…ともかく女と話させてくれ…!
それきり、あんたに世話はかけない」
ファントレイユはその言葉に唸った。
「…兄貴が監禁しているんだ…!
第一貴様を見た途端。
あの瞬間沸騰の兄貴は、斬りかかって来るぞ…!
どうせお前はかわしたりせず、ばっさり殺る気だろう?」
ファントレイユが低い声で言い諭す間にも、黒髪の男は、言い返そうと口を開く。
が。
「…じゃあ君が、女性と話すしか無いだろう?」
皆が一斉に、すかさず口を挟む、マントレンを凝視する。
マントレンは相変わらず表情を変えず、冷静な態度を崩さない。
ヤンフェスも、少しとぼけたような口調で話を繋ぐ。
「…ファントレイユ。
君なら大抵の女性は、うっとり見とれて口を割る」
思わずソルジェニーは、横のファントレイユを見た。
けどファントレイユはそれを聞くなり、げんなりして小声で呻く。
「…全然嬉しく無い評価だ」
ヤンフェスは素っ気なく頷く。
「…そうだろうな。
秘め事で無くもめ事納めに、その美貌を使うとなれば」
ファントレイユはヤンフェスを軽く睨むが、それしか手が無いのか。
次に大きなタメ息を吐いた。
年上で役職も上の男らにセリフをかっさらわれ、震いながら立ってるスターグを、ファントレイユは見上げ、口を開く。
「…本当に、覚えが無いんだな?」
ファントレイユが念押しすると、スターグは頷く。
が。
スターグは美貌の色男に、貸しを作るのは凄く嫌な様子だった。
苦虫噛みつぶしたような表情で、ファントレイユを見ていたから。
突如後ろから。
スターグの肩に腕を回し、スターグの顔を覗き込んだ、栗色巻き毛の軽い男が。
スターグに告げる。
「…俺が兄貴を押さえといてやるから、女と話を付けろ」
もう一人の問題児、ラウリッツの登場だった。
二人はファントレイユ達より幾らか年下。
近衛の中で、腕も立ち見目も良く、乱暴者で。
しかも遊び人で有名だった。
ラウリッツもやっぱり、品の無い若者だった。
が、栗毛の巻き毛を肩まで伸ばし、はしばみ色の瞳をした、それはチャーミングな人好きのする美男だった。
が、これにはマントレンが、猛烈に意義を唱える。
「…どう話を付ける!脅す気か?
もし彼女が嘘を付いているんだとしても、脅されて女性が本音を言うか?
…それでますます頑なになったら、お前は彼女に乱暴しないと、誓えるのか?!」
スターグが目を剥いて、反論しようとした。
が、ヤンフェスがその前に、静かな声で口を挟む。
「…もちろん、穏やかに話せるんだろう?
スターグ?」
途端スターグは、今の状態ではそれが自分に出来そうに無い事に思い当たり、うなだれる。
ヤンフェスはその様子を目にした途端、肩をすくめ、マントレンも
『そら見ろ!』
と首を横に、振った。
ソルジェニーはまた、劇とかお話の一節のようなその場の展開に。
スプーンを口に運びながらも、わくわくした。
ファントレイユは彼らのやり取りを見守っていた。
が、口を開く。
「…私に、借りを作るのは。
凄く、嫌らしいが、仕方無いな?」
ファントレイユに念を押され、スターグはうなだれた。
ラウリッツは隊長ら、年長者の無言の迫力に。
やれやれと肩をすくめると、友の肩を、ぽん!と叩き励ました。
スターグは立ち去ろうとして振り向くと、ぶっきら棒にファントレイユに告げる。
「ここの食事は、奢らせてくれ」
ファントレイユは彼の貸しを少しにしてやろうと、頷く。
「…奢られてやる」
スターグは、頷いた。
背を向け、ラウリッツと一緒に、酔っぱらい達の間に、その姿を消す。
途端、ヤンフェスがソルジェニーに向き直った。
「…りんごのパイも、美味いぞ!」
マントレンも畳みかける。
「チーズのケーキも、凄くいける」
そして二人はソルジェニーの返事を待たず注文を取るため、揃ってウェイターを呼んだ。
ソルジェニーがその二人に呆れ、ファントレイユの様子を伺う。
ファントレイユは事後処理を一気に任された事に、額に手を当て、俯き加減で首を横に振っていた。
店の者が注文を取りに来ると、ファントレイユはすかさず顔を上げ、言い放つ。
「…葡萄酒だ!この店で一番上等のをくれ!」
ソルジェニーはそれを聞いて、思わず自分の言葉を飲み込んだ。
が、俯きながらつぶやく。
「…生クリームたっぷりのケーキは、ありますか?」
ヤンフェスとマントレンはその言葉に思い切り頷くと、直ぐにそれを注文した。
テーブルに運ばれた山盛りのデザートと高級酒を、全員がそれは満足そうに。
心ゆくまで正味したのは、言うまでも無い事だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる