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決着
移動のタメの準備と、戯れ言
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ダンザインが脳裏に響く声で告げる。
“オーガスタス。
ワーキュラス殿が、『悪いがいつものを、してくれ』と”
オーガスタスは一つ頷くと、ぐったりしたディアヴォロスを抱き寄せる。
ギュンターもローランデも。
ディングレーもディンダーデンもが、ぎょっ!
として、抱き合う二人を見つめる。
弱味など、およそ人目にさらしたことの無いディアヴォロスが。
自分より僅かに体格の勝るオーガスタスの腕に、ぐったりとした身体を抱き止められている。
目を閉じ、オーガスタスの肩に顔を埋め、力の抜けた様子で。
黒の長い縮れ毛はいつも、毛先にまで力が漲っているように見えたし。
清浄な空気と光を纏い、圧倒的な存在感を見せつけていたディアヴォロスが。
オーガスタスに抱き止められ、今はまるで…か弱い存在に見えた。
一方抱き止めてるオーガスタスの…逞しい肩や胸元、力強い腕。
引き締まった表情と、赤く奔放に跳ねる赤毛。
そんな彼はとても男らしく見え…つい、心から愛する姫を抱き止める、勇猛な騎士に見えて…。
皆、押し黙る。
が、ローランデは触れ合ってる二人の心臓の辺りが、薄く金に光るのに気づく。
ふとシェイルの向こうの、ギュンターを見るが。
抱き合うディアヴォロスとオーガスタスに振り向き、目を見開いていて。
ディンダーデンもディングレーも、無言で顔を二人に向け、ギュンター同様目を見開いてる。
「?
ナニか、マズいのか?」
テリュスだけが皆の様子が変なのに気づき、そう尋ね、シェイルが答えた。
「二人がデキてるみたいな熱々シーン見せられて。
みんな驚いてる」
「なんで驚く?」
シェイルは銀の巻き毛を肩で揺らし、顔下げて腰に手をやり、煌めく緑の瞳を伏せ、俯いて。
一つため息吐く。
「ディアヴォロスの決まった相手は、一応俺だけだし。
オーガスタスはバリバリのノーマル。
王立騎士養成学校時代、カップルと誤解されてたギュンターにすら、手を出さなかった。
…だから今までの皆の常識が、ブチ壊れるシーンなんだ」
「なるほど」
シェイルはテリュスを見たけど。
どう見てもこの中じゃ小柄で、可愛い系の美少女風な風貌にもかかわらず、とぼけた様子で。
分かってる風じゃなくて、またため息吐く。
「…俺じゃダメなんだ。
体力無いし…」
ローランデが背後から、微笑んで告げる。
「精力を、分けてるんだね?」
シェイルは優しげなエンジェルヘアで湖水のような青い瞳の、ローランデに振り向く。
一瞬、非の打ち所の無い貴公子の彼に見とれながら、口開く。
「ちょっと…違う。
ディアヴォロスはもう、ワーキュラスからあんまり光を受け取れない。
ワーキュラスの光は、とても強いから。
弱ってる時は…逆に体を痛めちまう。
けどオーガスタスを、一旦通すと。
オーガスタスがディアヴォロスを気遣って、送る光を加減するから…」
間もなく、ディアヴォロスが手を上げ、オーガスタスの肩を押す。
「もういい…。
これ以上は君が危険だ」
「立てるのか?」
「支えられれば、何とか」
それを聞き、オーガスタスが身を離す。
ディアヴォロスが岩に両腕乗せ、立ち上がろうと足に力を入れる。
フラついていたけど…立ち上がり、オーガスタスに腕を支えられたまま、じっとしてる。
オーガスタスが、心配げにディアヴォロスの顔を覗き込みながら、尋ねた。
「…どんな…具合だ?」
その二人の様子も…やはり勇猛な騎士が、とびきり高貴な姫だけには優く、凄く親密な間柄に見え。
ギュンターもディングレーもディンダーデンもが。
視線を外したくても、吸い付いて離れないのを意識した。
ディアヴォロスは指先をゆっくり動かし、痺れを追い払ってるように見えた。
「…足の感覚も戻った。
ひどく…だるくて、持ち上げるのが億劫だが」
オーガスタスは頷いて、囁く
「じゃ、俺の後ろに乗れるな。
俺にしがみついてられそうか?
それとも紐でくくらないと、落ちそう?」
ディアヴォロスは一旦顔を下げ…けれど斜め横に立つオーガスタスに顔を向け、微笑った。
「しがみつく事にしよう」
オーガスタスは眉間寄せる。
「おい…!
恥ずかしいとか、言ってる場合じゃ無いぞ?!」
そう言って、ディンダーデンとディングレーに視線向け、ディアヴォロスに戻した後。
二人が凝視してるのに気づき、再び二人に振り向き、怒鳴った。
「絶対!!!
他言無用だ!!!
これが敵に知られれば…弱ってるところを殺られる!!!
彼はワーキュラスと繋がってる以上、無敵じゃ無いとダメなんだ!!!」
言った後ギュンターにも振り向き、怒鳴りつける。
「お前も、分かってるな?!!!!
彼が死ねば!!!
一気に『影』が活性化する!!!
『光の王』降臨前な今は、特にヤバい!!!
封印を破られかねない!!!」
それを聞いた途端。
ふざけまくってた、ウェーブのかかった濃い栗毛を粋に背まで伸ばし、青い流し目の美麗な顔立ち、体格良いディンダーデンが、一気に表情引き締めるのをテリュスは見た。
「…そんな、怖いことか?」
テリュスに問われ、ディンダーデンはテリュスを見る。
「『影』と、出会ってナイか?
あんなゾッとする化け物が、続々出てくるんだ。
俺はヘタに…古代史なんて読みふけってたから。
どれだけヤバい化け物がいるか、知り尽くしてる。
もし出来るんなら、このままここに留まり、アースルーリンドには帰りたくないね」
テリュスはそれを聞くと、顔を下げた。
「…そうか」
ディングレーは憮然として腕組む。
「…アースルーリンドで、済むか。
奴ら“障気”飛ばして、この地でも動いてた。
血に飢えた化け物が、アースルーリンドの民を食い尽くしたら…」
途端、テリュスが青ざめて遮った。
「止めてくれ…。
もう、分かった」
「この地だって、侵略される」
ディングレーが言いかけた言葉の続きを、それでも言うので。
テリュスはキレて怒鳴った。
「分かったって!!!
言ったろう?!!!!」
ディアヴォロスはオーガスタスに掴まりながら、微笑む。
「ディングレーはいつも自分の意思が、簡単に通る王族だから。
他人の気持ちを気遣ったり、空気を読むのが苦手だ。
が、性格は素直で、とても良い。
そこを…見てやって欲しい」
ディングレーはディアヴォロスに庇われ、頬染めて俯き。
テリュスもチラと、真っ直ぐな黒髪を背に流し、男らしい顔立ちで目力のある青い瞳で、尊大な態度のディングレーが。
恥じ入るように顔を下げる姿が、意外に可愛く見えるのに気づき、顔下げ
「分かった」
そう、ぼそりと告げた。
オーガスタスはディアヴォロスを助け、支え歩き出すと、ザハンベクタに振り向く。
もうそれだけで。
オーガスタス同様、大柄な赤毛で四つ足の相棒は、二人の側へと歩を踏み出した。
二人がザハンベクタに寄り、オーガスタスはディアヴォロスが、乗るのに手を貸す。
ただ一人、岩場に横たわったまま残された、濃い栗毛でこの中では優雅に見えるアイリスが、呻く。
「…で、私は全然動けないんだけど」
けどディンダーデンが顔背け、ギュンターも顔下げる。
途端、シェイルがいきり立った。
「ナンのために来たんだギュンター!
ローランデを押し倒すためか!!!」
ローランデがそれを聞くなり、頬染めて顔を下げるのを、テリュスは見。
ディングレーに尋ねる。
「…つまりあの貴公子が…ギュンターの、思い人?」
ディングレーは無言で頷く。
テリュスはそれを見て、呟く。
「…確かに優しげだけど…凄く、強そうに見える」
ディンダーデンは笑顔でテリュスに振り向く。
「へえ。
確かな見識眼持ってるな」
テリュスは肩すくめた。
「これでもシュテフザイン一の、弓使いだ。
目が良くなきゃ、的を射抜けない」
ディングレーが振り向く。
「ああそれで…ローフィスの代理として、同行したのか…」
テリュスはディングレーが、途端自分に敬意の籠もる眼差しを向けるのを見て、目を見開く。
「…ローフィスの代理…は、凄いのか?」
ディンダーデンは頷き。
ディングレーも頷きながら、口開く。
「目端が効き、機転も利き。
腕も確か。
彼がいると、死ぬ気がしない。
本人は…他人のために頑張る割に、よく自身を危険にさらすから、ハラハラものだが」
テリュスが頷くと、ディンダーデンは呆れる。
「その通りだが。
ディングレーはローフィスに、特に心酔してるからな」
言った後、金髪美貌、紫の瞳のギュンターに顎しゃくって促し、歩きながらぼそり…と告げた。
「隙あらばローフィスを、押し倒したいと思ってる」
ディングレーは横から去るディンダーデンに咄嗟振り向き、その背に怒鳴った。
「思ってない!!!」
ローランデの前に立つ、妖精のように可憐なシェイルに凝視され、今度ディングレーはシェイルに振り向き
「ディンダーデンの嘘だ!!!」
と怒鳴った。
けどテリュスが見てる限り、シェイルもローランデも納得行ってない表情で、二人とも俯き加減で、もじってた。
テリュスが聞こうとしたけど、ローランデが言った。
「…けど色事にかけては…ディンダーデンの見解は貴方より確かだし…」
ディングレーはかっかして怒鳴る。
「俺が!!!
ローフィスを押し倒すかどうかは、俺が決めるんだ!!!」
シェイルは小声で、心配そうに囁く。
「でも…ディングレーって深酒すると、記憶も理性も無くなって、ゼイブンにすら迫り、寝ようとかするじゃないか…」
ディンダーデンは横たわるアイリスの側に立つと、聞いた途端、くっ!!!と広い背を揺らし、笑った。
ギュンターもアイリスへと歩み寄りながら、気の毒そうに、過去の汚点を暴露されたディングレーを見る。
ディングレーは真っ赤になって…けど、どもり始めた。
「あ…あれ…あれは!!!
まだ学生時代の過ちだろう?!
若い頃には、未熟な間違いだって、する!!!
だろう?!」
突然ディングレーに振り向かれ、同意を求められて、テリュスは目を見開く。
が、言った。
「…若者の特権だ」
ディングレーは同意を得、発奮した表情で、シェイルとローランデを見る。
けれど二人は視線下げ、ディングレーを見ないよう愛馬へ向かって、こそこそと歩き出した。
“オーガスタス。
ワーキュラス殿が、『悪いがいつものを、してくれ』と”
オーガスタスは一つ頷くと、ぐったりしたディアヴォロスを抱き寄せる。
ギュンターもローランデも。
ディングレーもディンダーデンもが、ぎょっ!
として、抱き合う二人を見つめる。
弱味など、およそ人目にさらしたことの無いディアヴォロスが。
自分より僅かに体格の勝るオーガスタスの腕に、ぐったりとした身体を抱き止められている。
目を閉じ、オーガスタスの肩に顔を埋め、力の抜けた様子で。
黒の長い縮れ毛はいつも、毛先にまで力が漲っているように見えたし。
清浄な空気と光を纏い、圧倒的な存在感を見せつけていたディアヴォロスが。
オーガスタスに抱き止められ、今はまるで…か弱い存在に見えた。
一方抱き止めてるオーガスタスの…逞しい肩や胸元、力強い腕。
引き締まった表情と、赤く奔放に跳ねる赤毛。
そんな彼はとても男らしく見え…つい、心から愛する姫を抱き止める、勇猛な騎士に見えて…。
皆、押し黙る。
が、ローランデは触れ合ってる二人の心臓の辺りが、薄く金に光るのに気づく。
ふとシェイルの向こうの、ギュンターを見るが。
抱き合うディアヴォロスとオーガスタスに振り向き、目を見開いていて。
ディンダーデンもディングレーも、無言で顔を二人に向け、ギュンター同様目を見開いてる。
「?
ナニか、マズいのか?」
テリュスだけが皆の様子が変なのに気づき、そう尋ね、シェイルが答えた。
「二人がデキてるみたいな熱々シーン見せられて。
みんな驚いてる」
「なんで驚く?」
シェイルは銀の巻き毛を肩で揺らし、顔下げて腰に手をやり、煌めく緑の瞳を伏せ、俯いて。
一つため息吐く。
「ディアヴォロスの決まった相手は、一応俺だけだし。
オーガスタスはバリバリのノーマル。
王立騎士養成学校時代、カップルと誤解されてたギュンターにすら、手を出さなかった。
…だから今までの皆の常識が、ブチ壊れるシーンなんだ」
「なるほど」
シェイルはテリュスを見たけど。
どう見てもこの中じゃ小柄で、可愛い系の美少女風な風貌にもかかわらず、とぼけた様子で。
分かってる風じゃなくて、またため息吐く。
「…俺じゃダメなんだ。
体力無いし…」
ローランデが背後から、微笑んで告げる。
「精力を、分けてるんだね?」
シェイルは優しげなエンジェルヘアで湖水のような青い瞳の、ローランデに振り向く。
一瞬、非の打ち所の無い貴公子の彼に見とれながら、口開く。
「ちょっと…違う。
ディアヴォロスはもう、ワーキュラスからあんまり光を受け取れない。
ワーキュラスの光は、とても強いから。
弱ってる時は…逆に体を痛めちまう。
けどオーガスタスを、一旦通すと。
オーガスタスがディアヴォロスを気遣って、送る光を加減するから…」
間もなく、ディアヴォロスが手を上げ、オーガスタスの肩を押す。
「もういい…。
これ以上は君が危険だ」
「立てるのか?」
「支えられれば、何とか」
それを聞き、オーガスタスが身を離す。
ディアヴォロスが岩に両腕乗せ、立ち上がろうと足に力を入れる。
フラついていたけど…立ち上がり、オーガスタスに腕を支えられたまま、じっとしてる。
オーガスタスが、心配げにディアヴォロスの顔を覗き込みながら、尋ねた。
「…どんな…具合だ?」
その二人の様子も…やはり勇猛な騎士が、とびきり高貴な姫だけには優く、凄く親密な間柄に見え。
ギュンターもディングレーもディンダーデンもが。
視線を外したくても、吸い付いて離れないのを意識した。
ディアヴォロスは指先をゆっくり動かし、痺れを追い払ってるように見えた。
「…足の感覚も戻った。
ひどく…だるくて、持ち上げるのが億劫だが」
オーガスタスは頷いて、囁く
「じゃ、俺の後ろに乗れるな。
俺にしがみついてられそうか?
それとも紐でくくらないと、落ちそう?」
ディアヴォロスは一旦顔を下げ…けれど斜め横に立つオーガスタスに顔を向け、微笑った。
「しがみつく事にしよう」
オーガスタスは眉間寄せる。
「おい…!
恥ずかしいとか、言ってる場合じゃ無いぞ?!」
そう言って、ディンダーデンとディングレーに視線向け、ディアヴォロスに戻した後。
二人が凝視してるのに気づき、再び二人に振り向き、怒鳴った。
「絶対!!!
他言無用だ!!!
これが敵に知られれば…弱ってるところを殺られる!!!
彼はワーキュラスと繋がってる以上、無敵じゃ無いとダメなんだ!!!」
言った後ギュンターにも振り向き、怒鳴りつける。
「お前も、分かってるな?!!!!
彼が死ねば!!!
一気に『影』が活性化する!!!
『光の王』降臨前な今は、特にヤバい!!!
封印を破られかねない!!!」
それを聞いた途端。
ふざけまくってた、ウェーブのかかった濃い栗毛を粋に背まで伸ばし、青い流し目の美麗な顔立ち、体格良いディンダーデンが、一気に表情引き締めるのをテリュスは見た。
「…そんな、怖いことか?」
テリュスに問われ、ディンダーデンはテリュスを見る。
「『影』と、出会ってナイか?
あんなゾッとする化け物が、続々出てくるんだ。
俺はヘタに…古代史なんて読みふけってたから。
どれだけヤバい化け物がいるか、知り尽くしてる。
もし出来るんなら、このままここに留まり、アースルーリンドには帰りたくないね」
テリュスはそれを聞くと、顔を下げた。
「…そうか」
ディングレーは憮然として腕組む。
「…アースルーリンドで、済むか。
奴ら“障気”飛ばして、この地でも動いてた。
血に飢えた化け物が、アースルーリンドの民を食い尽くしたら…」
途端、テリュスが青ざめて遮った。
「止めてくれ…。
もう、分かった」
「この地だって、侵略される」
ディングレーが言いかけた言葉の続きを、それでも言うので。
テリュスはキレて怒鳴った。
「分かったって!!!
言ったろう?!!!!」
ディアヴォロスはオーガスタスに掴まりながら、微笑む。
「ディングレーはいつも自分の意思が、簡単に通る王族だから。
他人の気持ちを気遣ったり、空気を読むのが苦手だ。
が、性格は素直で、とても良い。
そこを…見てやって欲しい」
ディングレーはディアヴォロスに庇われ、頬染めて俯き。
テリュスもチラと、真っ直ぐな黒髪を背に流し、男らしい顔立ちで目力のある青い瞳で、尊大な態度のディングレーが。
恥じ入るように顔を下げる姿が、意外に可愛く見えるのに気づき、顔下げ
「分かった」
そう、ぼそりと告げた。
オーガスタスはディアヴォロスを助け、支え歩き出すと、ザハンベクタに振り向く。
もうそれだけで。
オーガスタス同様、大柄な赤毛で四つ足の相棒は、二人の側へと歩を踏み出した。
二人がザハンベクタに寄り、オーガスタスはディアヴォロスが、乗るのに手を貸す。
ただ一人、岩場に横たわったまま残された、濃い栗毛でこの中では優雅に見えるアイリスが、呻く。
「…で、私は全然動けないんだけど」
けどディンダーデンが顔背け、ギュンターも顔下げる。
途端、シェイルがいきり立った。
「ナンのために来たんだギュンター!
ローランデを押し倒すためか!!!」
ローランデがそれを聞くなり、頬染めて顔を下げるのを、テリュスは見。
ディングレーに尋ねる。
「…つまりあの貴公子が…ギュンターの、思い人?」
ディングレーは無言で頷く。
テリュスはそれを見て、呟く。
「…確かに優しげだけど…凄く、強そうに見える」
ディンダーデンは笑顔でテリュスに振り向く。
「へえ。
確かな見識眼持ってるな」
テリュスは肩すくめた。
「これでもシュテフザイン一の、弓使いだ。
目が良くなきゃ、的を射抜けない」
ディングレーが振り向く。
「ああそれで…ローフィスの代理として、同行したのか…」
テリュスはディングレーが、途端自分に敬意の籠もる眼差しを向けるのを見て、目を見開く。
「…ローフィスの代理…は、凄いのか?」
ディンダーデンは頷き。
ディングレーも頷きながら、口開く。
「目端が効き、機転も利き。
腕も確か。
彼がいると、死ぬ気がしない。
本人は…他人のために頑張る割に、よく自身を危険にさらすから、ハラハラものだが」
テリュスが頷くと、ディンダーデンは呆れる。
「その通りだが。
ディングレーはローフィスに、特に心酔してるからな」
言った後、金髪美貌、紫の瞳のギュンターに顎しゃくって促し、歩きながらぼそり…と告げた。
「隙あらばローフィスを、押し倒したいと思ってる」
ディングレーは横から去るディンダーデンに咄嗟振り向き、その背に怒鳴った。
「思ってない!!!」
ローランデの前に立つ、妖精のように可憐なシェイルに凝視され、今度ディングレーはシェイルに振り向き
「ディンダーデンの嘘だ!!!」
と怒鳴った。
けどテリュスが見てる限り、シェイルもローランデも納得行ってない表情で、二人とも俯き加減で、もじってた。
テリュスが聞こうとしたけど、ローランデが言った。
「…けど色事にかけては…ディンダーデンの見解は貴方より確かだし…」
ディングレーはかっかして怒鳴る。
「俺が!!!
ローフィスを押し倒すかどうかは、俺が決めるんだ!!!」
シェイルは小声で、心配そうに囁く。
「でも…ディングレーって深酒すると、記憶も理性も無くなって、ゼイブンにすら迫り、寝ようとかするじゃないか…」
ディンダーデンは横たわるアイリスの側に立つと、聞いた途端、くっ!!!と広い背を揺らし、笑った。
ギュンターもアイリスへと歩み寄りながら、気の毒そうに、過去の汚点を暴露されたディングレーを見る。
ディングレーは真っ赤になって…けど、どもり始めた。
「あ…あれ…あれは!!!
まだ学生時代の過ちだろう?!
若い頃には、未熟な間違いだって、する!!!
だろう?!」
突然ディングレーに振り向かれ、同意を求められて、テリュスは目を見開く。
が、言った。
「…若者の特権だ」
ディングレーは同意を得、発奮した表情で、シェイルとローランデを見る。
けれど二人は視線下げ、ディングレーを見ないよう愛馬へ向かって、こそこそと歩き出した。
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