森と花の国の王子

あーす。

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決戦

一番怒らせちゃマズい相手

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 室内では、ソファの端で抱き合い様子を伺ってる、エドウィンとシュアンを背に回し。
フラフラのローフィスが、目前の敵に剣を振り切る。
軽く避けられ、ローフィスは剣の柄を握り込んで睨め付ける。

確かに。
短剣が飛ぶと感知された途端、敵は警戒し狙いはれ、れず手負いのまま、敵は突っ込んで来る。

二度、三度。
振られた剣を、それでも避けながら。
ローフィスは敵の隙を狙い澄ます。
が、デルデが脳裏で叫んだとおり、黒装束は手強い…。
しかも胸を短剣が掠ったりしてるから、殺気込めて襲い来る。

早く鋭く、急所狙う敵の剣を、ローフィスは避けるだけで精一杯。
幸い新たな敵は、扉から雪崩れ込んで来ない。
が、敵は自分を、る気満々。
狙いは背後の二人、美少年のル・シャレファ金の蝶ら。

二人は背後で、高速で心話してる。
が、シュアンの
“デルデの大声で脳が痺れて…”
と言う悲鳴のような言葉が認識出来た程度。

真上から振られた早い剣を、なんとか身を横にねじり、避ける。
が剣は直ぐ下がり、下から腹へと真っ直ぐ突き出され、ローフィスは背後に吹っ飛びたかったが、ソファが邪魔し無理。

“…ヤバ…!”
決死で腹を横に避けようと、身をひねる。
“避けきれない…!”
ローフィスがかなりの重症を覚悟した、その時。
部屋に突進して来たオーガスタスは敵の背を、剣を振り上げ様一気に斬り裂く。

ずばっ!!!

敵の剣が腹に届く、ギリギリで止まる。
激しく上下にブレた後、敵は剣ごと下に崩れ落ちた。

敵の背後から荒い息吐いて剣下げる、真っ赤な奔放にくねる髪乱し、鬼神のような表情かおのオーガスタスを見た時。
ローフィスはもう少しで歓喜のあまり、抱きつきそうになって…。
必死に、踏みとどまった。


ロットバルトは、寝台の上でデルデに抱きつくエルデリオンへ、詰め寄ろうとした敵の背を追いかけて室内へと駆け込み、一気に真横に剣を振り切る。

「がっ!!!」

敵は咄嗟殺気に反応し、身を捻り避けようとした。
が、脇腹に深手負い、床に転がる。

ロットバルトは激しく息切らしながらも。
敵が起き上がってくる様子を、身を僅か屈め伺う。
が敵は深く斬られた脇腹が痛むのか。
床に這いつくばったまま、苦悶に身をくねらせている。
ので、ロットバルトは転がる敵の背から心臓へと、上から一気に剣を突き立てた。

「ぐわっ!!!」

もがいてた敵は動きを止め、ロットバルトはやっと、顔を上げる。
が、振り向くエルデリオンが目を見開くのを見、背後、頭上から降って来る剣を、咄嗟剣を持ち上げ
がっし!!!
と、間一髪受け止めた。

その直後、部屋に入ってきたノルデュラス公爵は、振り向き敵と剣を合わせてるロットバルト。
やはり同様、敵と剣合わせてるラステルを、首振って見回す。

ロットバルトに顎振って促され、ラステルと剣合わせてる敵の背後に回り込み、一気に横に斬り裂き、ラステルを助けた。

「がぁっ!!!」

ラステルは押し合いしてた敵が消え、後ろから姿見せるノルデュラス公爵に、にっこり微笑んで礼を言う。
「ありがとうございました」

が、ノルデュラス公爵はロットバルトに視線振る。
ロットバルトは剣を軽く振り上げフェイントかまし、直ぐ下から剣を突き出し、敵の腹に剣を突き立てた。

寝台の上のエルデリオンは、デルデに抱かれ、彼の胸にしがみついてロットバルトの戦い様を心配げに見つめていたけど。
無事仕留めたロットバルトを、歓喜溢れる表情で見つめていて。
ノルデュラス公爵は心からブスっ垂れ
「不本意だが」
そう、思いっきり不機嫌な声で、ラステルの礼に言葉を返した。

デルデは危機を排除してくれたロットバルトに、感謝の眼差しを向ける。
エルデリオンは潤んだヘイゼルの瞳でロットバルトを見つめ、微かに頷く。

ロットバルトは頷き返そうとし…。
突如気づき、デルデに怒鳴った。
「…まさか、その傷で!
剣振ろうとか、してたのか?!!!!」

エルデリオンは頷くと、頬に涙伝わせ、掠れた声で告げる。
「ミラーレスが、傷が開くからっ…て、デルデの剣を私の手に…。
けれど最初の一人を、デルデは剣振りきって、斬っ…」

言いかけてエルデリオンは顔を震わせ、頬に涙を伝わせ俯く。
が、さっ!と顔上げると、ロットバルトに叫んだ。
「言ってやって!!!ロットバルト!!!
私を抱いて妻にすると誓った以上!
もう絶対…無茶をするなと!!!
未亡人に、私をするなと!!!」

エルデリオンの絶叫を聞き、庇ってくれたオーガスタスに感情を抑え、冷静に礼を言おうとしたローフィスも。
そしてオーガスタスもが。
目を見開いて、エルデリオンに同時に振り向く。

ラステルとノルデュラス公爵は扉を睨み、後続隊が来ないかを警戒し続けてたけど。
絶叫を耳に、ため息を吐き出しそうになるのを耐えた。

シュテフとオーレはもう、ロットバルトの内心が分かり、顔を下げ。
ミラーレスはどこで口挟もうか。
狙い澄まして腕組み、待機する中。
ロットバルトはやっと
「…だ、そうだ。
私の言いたい事全部、エルデリオンが言ってしまった。
が。
重々、自重しろ」
と、怪我人デルデに言い渡した。

ミラーレスは即座にデルデの肩に手をかけ、空圧でデルデを寝台にすっ倒して怒鳴る。
「人が苦労して塞いだ傷が、開いちゃったじゃ無いですか!!!
私の苦労を、一体ナンだと思ってるんです?!!!!」

エルデリオンは抱きついてたデルデが、突然背を寝台に付け横たわるのを見、目を見開いた。

が、ローフィス、オーガスタスのみならず、シュテフ、オーレの心話が脳裏に響くのを聞く。

“うわ…。最悪…”
“一番怒らせちゃマズイ相手、怒らせちまったな…”
“…誰もデルデに知らせてないのか?
ミラーレスだけは、怒らせちゃダメだって…?”

エルデリオンとロットバルトは首振って、揃って項垂れるように顔下げてるローフィス、オーガスタス、シュテフ、オーレを見回す。

ソファに座るエドウィンも顔を下げていて、横のソファで寝こけてたラフィーレは、寝ぼけ眼で身を起こし、レンフがも顔を上げ、心話で唸る。

“誰、怒らせたんだ?”

シュアンが唯一、明るく無邪気な声で回答した。

“あのね、ミラーレス”

レンフは暫し沈黙した後。
沈んだ声で告げる。

“命知らずだな。
あいつ仕返しに、むっちゃ痛い治療するぞ?
俺ですら、絶対怒らせないよう気を使うのに…。
つうか、“里”で能力高く、デカい面してる俺様猛者でも。
ミラーレスは、怒らせない”

それを聞いた後。
エルデリオンは心配そうに横たわるデルデに、手をかざすミラーレスを見る。
デルデは眉間寄せ、油汗すら額に滲ませ、苦痛に耐えている。

“あの…デルデ…虐めないで…”

そっ…と小声で頼むけど。
ミラーレスに
“誰に言ってるんです?!
幾ら貴方が、大国の王子だろうが!
私にその権力は通用しません!
治療に口出し、しないで下さい!!!”
と、怒鳴り返された。

デルデはとうとう
「ぐぅっ…!」
と呻き、痛みに首を横に振り始める。

ロットバルトとノルデュラス公爵は、揃って戸口を見張る振りし、顔をそむけてたけど。
オーレとシュテフに、同時に脳裏に
“そっちからは、もう来ないぞ”
“敵は途絶えた”
と言われ、顔下げきった。
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