森と花の国の王子

あーす。

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決戦

能力者の映像で見る、ごった返すザムル城

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 バルバロッサ王の二階、一行の居るソファだらけの大広間では。
ノルデュラス公爵はやっと起きて来たロットバルトとオーガスタスが、のそり…と向かいのソファに座り、冷めた食事に手を伸ばすのを見た。

「…温かい食事を…届けさせましょうか?」
ノルデュラス公爵に聞かれ、ロットバルトは顔を上げると、横のオーガスタスを見る。
オーガスタスはまだ意識が朦朧としてるみたいで、聞こえてない様子。
「…私は冷めてても、平気だが…」
ロットバルトが呻くと、オーガスタスは口をもぐもぐさせ、同様呻く。
「…食えればナンでもいい…。
冷めても、美味いし。
これ」

そしてやっと顔を上げると
「他は?」
と尋ねる。

途端、シュアンかエドウィンだろうか。
まるでその回答のように、突然脳裏に映像が浮かび上がって来る。

ザムル城を上空から見た映像。
城の玄関右横の門から、多数の騎兵が城内に雪崩れ込み続けてた。

玄関前の広い道から、庭園にかけては騎兵だらけ。
敵味方に分かれ戦ってる。
が、肌の白い紺色の制服の男らは、体格良い浅黒い肌の騎兵達に、どんどん取り囲まれ始めてる。

圧倒的な数の浅黒い肌の騎兵達が、城の庭を埋め尽くしていた。
更に城内が透けて見えて来る。

が、こちらもあちこちの入り口から次々、バルバロッサ王の騎兵らが突入。
慌てて飛び出てくる敵を、斬り裂き雪崩れ込み、城内を占領し始めていた。

突然の襲撃に、慌てふためく城内。
昨夜合流した、庭園に居る盗賊らは。
皆、奇襲にこっそり逃げだそうとし、直ぐバルバロッサ王の騎兵に囲まれ、捕まり。
城内に逃げ込んだ盗賊らは部屋に侵入し、揃ってみんな、どさくさ紛れに高価な宝石を物色してた。
が、そんな連中もあっと言う間に部屋に突入した、王の騎兵に取り押さえられ、お宝を取り上げられてた。

敵騎兵は王の騎兵に出会うと、斬りかかるので斬り殺され。
盗賊らは直ぐ降参するので、捕らわれている。

城の一階、東廊下を走るバルバロッサ王が映し出される。
その背後を駆ける、ギュンター、エウロペ、ゼイブン、ラフォーレンの姿もが映し出された時。
オーガスタスは呻く。

「…これ…」

“今!
戦ってるの!!!”

シュアンの声が響き、オーガスタスは暫し沈黙した。
直ぐ、エドウィンの声が響く。
“あ、オーガスタスが起きたら!
城はオーガスタスが護ってって、王様が言付けてって。
ラステルはオーデ・フォール中央王国軍がどんな状況か、知って采配下すために城に居るけど。
もし襲撃されたら、オーガスタスが指揮を執ってって、言ってた!”

“言ってた…ってエドウィン…。
つまり俺が寝てる間に。
襲撃に行ったのか?”
“そう!”

オーガスタスは呆れた。
けどロットバルトが
“じゃ、ラステルもエルデリオンも。
デルデは動けないと思いますが、みんな城に居る?”
と尋ねる。
シュアンが弾んだ声で返答した。
“えっとね。
王とエウロペと、ギュンター、ゼイブン、ラフォーレン以外はみんな居る!
でねっ!
ゼイブンは、エウロペに惚れそうなんだって!
『麗しの赤い魔女』に呪文ブツけると、凄く醜くなってギュンターが綺麗に見えるのが嫌なんだって。
ギュンターは乱暴だから、好きになりたくないんだって!
でねっ!
顔がギュンターで性格がエウロペなら、男でも好きになるかも。
ってすっごく、怖がってた”

ノルデュラス公爵が、思わず尋ねる。
“…なんで怖がる?”
“ゼイブン、男は好きになりたくないから。
でもね、でもねっ!
ゼイブン、王立騎士養成学校時代、ディングレーに迫られたときねっ!
ディングレーに惚れそうになったんだって!”

その時。
ザムル城の廊下を走ってる、ゼイブンが怒鳴った。
“シュアン、いい加減に俺の意識読むの止めろ!!!”
シュアンが即座に言い返す。
“だって、オーレが読めちゃって、ボクにも分かっちゃったんだもん…”

ノルデュラス公爵が尋ねる。
“ディングレー…って?”
“えっとね…”

その時、酒場でディアヴォロス一行を出迎えた、真っ直ぐの長い黒髪。
青い瞳の、狼を彷彿とさせる風来坊風イイ男が、三人の脳裏に浮かび上がる。
“このディングレーと、ゼイブンとギュンターって、王立騎士養成学校の同学年なんだって。
ディングレーも喧嘩っ早いけど、王族だから我慢してて。
いっつも直ぐ喧嘩出来る、平貴族のギュンターが羨ましかったんだって”

ノルデュラス公爵は、よく分からず尋ねた。
“王族に見えないけど、イイ男は確かだな。
襲われて、実は内心嬉しかったってこと?
ゼイブンって、ディングレーに惚れられてたのかな?”

途端、ゼイブンが
“とんでも無い事、言うな!!!
ヤツは酒に酔うと、男女見境無く押し倒しといて、本人には記憶が無い!!!”

ノルデュラス公爵はその返答に、直ぐ事情が分かり、頷く。
“…あ、そういう事”

とうとうギュンターが
“オーレ、シュアンの回路切れ!!!
こっちは取り込み中だ!”
と要請が出て、オーレがぼやく。
“いや、ゼイブン心話に慣れてるから。
自分の話題が出たら、勝手に彼の方からフォーカスし、乱入したんだ。
が、俺が強制的に弾いとく”

最後にゼイブンが
“俺の居ないところで勝手に俺の噂…”
と喚いた途端。
ぶちっ!と言う音と共に、声は消えた。

ロットバルトは顔を下げると
「ゼイブンって…顔は確かに、もの凄く整ってますからねぇ…。
私達には分からないご苦労が、きっとあって。
あれだけ男嫌いに、なったんでしょうねぇ…」
と沈んだ声で告げるので。
ノルデュラス公爵は肩すくめた。
「私だって幼少の時は、男に口説かれましたよ。
けれど母が、出来る年頃になると片っ端から女を宛がうし、身分も高かったので。
お陰で、男に犯された経験はありません。
どーしてだか、女好きなちゃら男は。
例え美少年でも、男好きな男には好かれないものなんです」

ロットバルトがそれを聞いた後、暫く沈黙し、そして口を開いた。
「…本当は、男に口説かれたかった…んですか?」

ノルデュラス公爵は暫く、返答を待つロットバルトとオーガスタスの顔を見た後。
首を横に振った。

「別に。
けど母の教育方針が無かったら。
今頃、男に抱かれてたかもしれませんねぇ。
今考えると」

オーガスタスが呆れた。
「が、男に組み敷かれて喜びそうなタイプに、全然見えない」
ノルデュラス公爵は、肩を竦めた。
「どーいう訳だか、男に組み敷かれると萎えちゃって。
組み敷くと、直ぐ上向きになるんです」

ロットバルトはウィンナーにフォークを伸ばしかけた途端、そんな事言われ、手を止め思い切り顔を下げた。
が、雑草育ちのオーガスタスは気にもせず
「なるほど」
と言うと、ロットバルトの狙ってた大きなウィンナーをフォークでぶっ刺し、口に放り込んだ。

ロットバルトがオーガスタスを見ると、オーガスタスは
『まだある』
とばかり、皿に幾つも乗ってる、茹でた大きなウィンナーを目で指し示す。

けれど結局ロットバルトはウィンナーに手を出さず、その横の焼かれたベーコンに、フォークを刺した。

その後オーガスタスが
「ゼイブンは王立騎士養成学校、入学当初から、上級に狙われ続けてたが。
下品な女の猥談怒鳴りまくって、襲いに来る野郎を尽く、萎えさせ逃げ延びたんだ」
と、ぼそりと告げるので。

ノルデュラス公爵もロットバルトも、目を見開いた。

「…なるほど。
萎えたら犯せませんものね」
ロットバルトが頷くと、ノルデュラス公爵は微笑む。
「少年期の、私に似てるな」

すかさずオーガスタスが
「だがあいつゼイブンは、男は犯さない」
と言い捨て、ノルデュラス公爵の顔を下げさせた。

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